―センサイト コラム(1)―
「研究室はセンサアイデアの宝庫」
新しい研究に計測技術の進歩は不可欠であると言われているように、研究開発における計測センサの役割は重要である。生物・化学・材料・医療・電子・機械などの研究室では目的の研究を実証確認するために独自の計測手法を開発使用している。本来の研究目的の実証的手法として計測センサを使用・開発してきたがこれらは計測センサの新事業の種を育てていることにもなる。
著者もコンサルタントと言う業務経験の中で、多くの大学、国立研究所、企業研究所を訪問している。本来はその研究室で行っている研究テーマに関するコンサルタント目的に訪問するのだが、実際の研究室を見るとその研究を支援するために独自の計測技術を使っている状況を多く見ることができた。研究者としては彼らの目的に使えるデーターが取れれば良いのであるが、センサ事業家の目で見れば新しい計測センサの種を見つけた気持ちになる。研究目的であるのでバラックセット的であり、また既存の市販装置を組み合わせた大型の計測システムを使用しているため、そのまま製品化できるものはまず見つけられないが、将来の事業と言う目で見た時には「目から鱗」のような気持ちになり心躍ることがある。
特にアメリカの大学発ベンチャー企業的を訪問するとこの傾向は顕著である。DARPAあるいはSBIRなどの資金をもとに大きなシステム開発を行っているベンチャー企業には、計測センサの視点で観察すると驚くべき発見をすることがある。著者もアメリカ滞在中にMIT、Georgia Tech、California Techなどを多く訪問し、実際の研究室を訪れ、そこで微小変位量を測定するためのコンタクト計測装置、地下水の環境改善研究のための光導波路型水分分析計測技術、宇宙服開発用の各種ウエラブルセンサ、CNT(カーボンナノチューブ)の材料開発の時に確認実験され開発されたガスセンサ技術などがある。アメリカの場合は、これら開発支援のための計測技術が実用化研究に向けられることは多いように思われる。
日本の場合は特に大都市圏以外の大学での事例が多く見つけられる。例えば耐環境性光ファイバの研究におけるファイバセンシング技術、スクリーン印刷によるMEMS技術開発における各種MEMSセンサなどを経験した。
このように新しいセンサ事業に結びつけるシーズ技術の元として、最新研究における計測技術に注目するのも重要であると考えている。特にこれからはバイオ及び生物医療系での期待が大きい。先端技術を研究している研究者にとっては、本来の研究促進進することに専念しているためなかなか客観的なセンサ観点での着目は難しいと思われる。センサ関係の技術者はセンサ開発の立場でこれら研究を支援し、新しい計測センサの誕生の種を見つけて欲しいと願っている。