1. はじめに
IoT時代となった現在では、大規模工場から家電に至るまで世の中では様々なセンサが活躍している。本稿では、1950年代以降日本国内および海外の工業分野において生産過程に用いられている工業用センサ、いわゆる工業計器の製品コンセプトと設計の考え方について紹介する。
工業用センサは、生産工場の製造プロセスで使用され、プロセス(生産設備に原料を供給し、エネルギーを加えて一定の環境条件のもとで原料が加工処理されて製品が生産される一連の過程)の状態を計測・制御するために用いられる。このようなプロセス状態(温度、圧力、流量、レベルなど)を計測するためのセンサの主な種類として温度センサ、圧力・差圧センサ、流量センサ、レベルセンサのように分類される。(図1)
工業用センサは、一般のセンサに比べて連続して使用されるので稼働率が高く、使用環境が悪いことも多いので、特に耐久性、信頼性が要求される。
2. 工業用センサの製品コンセプトと構成
工業用センサは、検出部(プロセス状態量を物理的または化学的原理などに基づいて検出する機能を持つブロック)および信号変換部(検出によって生じた電気信号や機械的変位などを電気回路を通して出力信号に変換する機能を持つブロック)の2つのブロックで構成される。(図2)
検出部と変換部を1つの製品として組み合わせた1体形センサ、また検出部と変換部を分けた分離形センサの2種類がある。分離形センサは、検出部と変換部を専用のリモートケーブルで接続する構造で1体形と同様の機能を持つ。分離形は、主に測定するプロセスの条件が高温のため電気回路を組込んだ信号変換部が検出部と同じ場所に設置出来ない場合、また出力信号の表示部を点検が容易な場所に設置する場合などに使用される。いずれも工場プラント内の屋内・屋外のプロセス状態量を測定するための多くの場所に設置されるため、現場設置形センサとしてコンパクトな形状の製品コンセプトとなっており、また過酷な環境条件でも20年以上に及ぶ長期の連続使用を要求されるケースが多い。
センサの機能によって、検出部としてプライマリー・エレメント(センサエレメント)を通してプロセスの状態量を検出する方式がある。代表例として、温度センサ(熱電対、測温抵抗体など)、流量センサ(オリフィスなど)がある。
また、信号変換部の伝送方式として、①外部からの電源供給を24VDC、信号出力も同一ラインで4-20mADC、パルス、および各種の通信などを出力する2線式、②電源供給を100-240VAC、信号出力を別ラインとする4線式がある。
センサの製品例を図3、設置例を図4に示す。
次回に続く-
参考文献
1) 山崎弘郎 「センサ工学の基礎(第2版)」オーム社 2000年
2) 黒森健一ほか 「産業応用計測技術」コロナ社 2003年
3) 大木眞一 DVD教材「流量計測入門講座」日本工業出版 2017年
4) 福島豊治 「センサ概論とスマートトランスミッタ」安全工学 Vol.25 No.6 (1986)
5) 横河電機(株)HP https://www.yokogawa.co.jp/
【著者紹介】
大木 眞一(おおき しんいち)
・日本工業大学 特別研究員
・日本工業出版 「計測技術」企画委員
・一般社団法人 次世代センサ協議会 技術委員
■略歴
横河電機(株)にて、流量計開発設計・製品企画・流量設備設計などの業務に携わる。
■主な著書
・「渦流量計の創造」 日本工業出版 大木他
・「流量計測入門」 日本工業出版 DVD教材
・「蒸気流量計測」 日本工業出版 DVD教材