株式会社KRI
1.はじめまして
株式会社KRIは1987年2月に大阪ガスの100%出資の元に設立し、ラボとコンサルティング部門を併せもつ日本で唯一の民間の総合受託研究機関として30年以上にわたり研究ビジネスに携わってきた。1989年に京都市に全国初の民間運営の都市型の京都リサーチパーク(KRP)が京都市内に設立したのを機にKRIも同年にKRPに移転した。 現在は本社機能および材料、調査、電池の部門がラボを構えて業務を行っている。また大阪にもラボ機能を持つ、分析・解析、燃料電池、バイオおよび化学プロセス部門があり、現在のKRI組織は図1に記載したように、各研究部、研究室合わせて22の研究組織より編成されている。発足以来、基幹産業を牽引するトップメーカを中心に、ベンチャー企業含め延べ2000社以上のクライアント様があり、日本以外にもヨーロッパ、US、東アジアなどの各国の企業様からも受託を受けてきた。図2には一例として各研究部の研究例や設備を載せたが、どれも自社技術に基づく研究例である。
2.KRIの委託研究の特徴
KRIの研究員はほとんどが中途採用者で企業での研究開発の経験がある方が多い。また大学のスタッフや国内外の研究機関で研究員として活動されていた方も在籍しており経歴も専門分野も様々である。またそれぞれが専門領域で尖った技術を持ち合わせており、それを基軸として受託研究を行っている。実際にはプロジェクトチームを作り受託研究を実施することが常であり、このチーム編成は研究テーマやクライアントの要望をお聞きしてから短期間に行われる。またKRIの研究部間でのコラボレーションによるプロジェクトメンバーの編成も容易である。異なる専門分野の研究員が集まって複眼でものを見ることの重要性は科学技術の発展を見れば否定されることではなく、受託テーマにおいて専門外の研究員がブレークスルーを成し遂げることも多く経験してきた。
我々の受託研究は機密保持の徹底と成果は原則、お客さまのものという二大成約のもと、クライアント様の技術課題の解決に徹することで民間企業からの受託のみで人件費や設備費、将来のへ投資を含めて会社の経営を維持してきており、世界でも類を見ない独自の受託研究の事業スキームを確立してきた。世間ではオープンイノベーションによる課題解決も図られているがKRIでは徹底したクローズドな環境下で課題を解決してきたことが長年支持されてきた結果の一つと受けとめている。KRI発足の当初は世界最先端の研究開発を行いその成果を企業に提供し社会に大きなイノベーションを起こすことを目指していたが、日本では企業での技術創造の中心であった中央研究所が廃止されていく中、開発環境が変わり研究開発のあり方、進め方自体が大きく変わってきた。そのような中、KRIも体制や考え方を変えながら事業を継続してきた。
一般の製造メーカにも研究開発部門があるが、メーカのプロの研究員がなぜKRIに研究開発を委託するのであろうか。研究開発は製造メーカにとって将来への投資と言えるが、経営上はコストであり、リスクを抱え込むことになるので、効率よく研究開発を行い成果を出すことが当然目標とされる。しかし研究現場ではテーマの設定には様々な要因が絡んでくるのが常で、全て自前で成し遂げられるわけではなく、状況においては、KRIと委託研究をすることにより利点が生まれ、事業経営の効率化に役立つと考えられることも多い。その例を下記に示した。
クライアント様の委託研究の動機 | KRIとの委託研究で期待できる効果 |
---|---|
すぐに研究を始めて早く結果が欲しい。 | 研究開発のスピードアップ。いつでも必要な時期に始められる。 |
技術課題の解決に自社内に専門家がいない。 設備やインフラもない。 |
自社のリソース不足をカバーできる。 いつでも必要な時期に始められる。 |
新テーマを研究設備や研究員を確保し自社で開始するにはリスクが高い。 フイジビリティをすぐにしたい。 |
固定費の変動費化(人件費や設備費削減) いつでも必要な時期に委託でき、自社の研究部門と同様の立ち位置で研究できる。 |
新しいテーマを探している。新規分野に進出してみたい。 | KRIが所有している技術を活用できる。 技術や市場調査からでも始められる。 |
技術トラブルの問題解決への道筋をつけたい。 | 違う視点での提案が得られる。専門家により確実性や高品質な結果が得られる。 共同作業により早期解決が図れる。 |
自社内では煮詰まってしまったR&Dの状況を新たな発想や技術との融合で打破したい。 | 独創的で専門性の高いアイデアの獲得。 複眼による気づき。 |
2つめは双方の成長をあげる。委託研究は実際には試作したサンプルをお互いに評価したり、検討内容の分担等、共同研究のスタイルで進行する場合も多くある。その中でクライアント様とKRIの研究員とで行われる様々な議論を通じて、発明や気づきがなされ、お互いに触発され成長していくことにより課題解決が図られることも多いように思う。このような共同作業は緊張感があるものの大変楽しくもある。KRI問わず大学や海外の研究機関など、企業の研究員にとっては外部との共同作業は成長のために重要な経験になると確信している。
3.KRIとの研究の進め方
KRIの委託研究の流れを図3に示した。最初の打合せ段階から秘密保持契約を締結する場合も多いですが、フランクに相談いただいても問題はない。研究テーマや課題解決に対してはKRIから、背景や目的・目標、研究のコンセプトやアイデア、検討内容、研究期間、費用などが記載された提案書を提出する。これをもとにクライアント様と納得するまで何度か打ち合わせを持つ。そこで合意が得られれば契約書を締結して研究に入る。また研究期間中は進捗の打合せや特許出願の準備も行い、期日内に最終報告書を提出し終了する。成果は研究報告書や特許出願、試作サンプルやデバイスである。また最終報告会の時に次の検討(次Phase)に入るか、あるいは新しいテーマに取り組むかなど話し合いも持たれるが、実は、KRIにおいて同一クライアント様から継続して受注するリピート率は70~80%を占め非常に高いことがある。前述したなぜKRIに委託すのかという背景が継続委託に繋がっているのではないだろうか。毎年委託費を予算化して頂くクライアント様も多くおられる。
KRIではクライアント様の受託研究以外に、社内での自主研究を推進しており、KRIが所有している有効特許も約180ある。これらを使ってマーケティングや研究プロジェクトを企画しクライアントを募集している。一例として2000年代後半から2010年代前半にかけマルチクライアントプロジェクトとして企画したセルロースの溶解技術と応用研究の概要を図4に示した。
難溶性であったセルロースを溶解させる技術をKRI内で開発し、国内・海外に出願し、その技術情報の詳細な開示と技術移転ならびに商品化への応用研究を募集したプロジェクトである。現在は終了しているが、このようなKRIが保有している特許や技術ノウハウを元にした受託研究も多くなされている。センシング技術について言えば社会的ニーズを元に、応用物理や材料科学、精密加工、電気、機械、数理工学の技術が複合化された高度なエンジニアにより実現される場合も多い。KRIのホームページ http://www.kri-inc.jp/ にはセンシング技術以外にも微細加工や材料など様々な分野の技術紹介や提案が掲載されているので、ご覧頂ければ幸いである。
技術分野に限らず委託研究などについてお問い合わせやご要望、ご相談などがあれば下記までご連絡いただければありがたい。
株式会社KRI
材料統括 工博 堀 正典
直通: 090-5668-4801 tel: 075-322-6830
e-mail: hori(a)kri-inc.jp