2. ウェハレベルパッケージングによる圧力センサ (センサ + (回路) + パッケージ)
センサの多くは測定対象に装着して使われるが、圧力センサの場合は圧力以外の影響を受けないようにセンサを外部から保護する必要がある。このためのパッケージングは、センサの安定性だけでなく小形化や低コスト化にも重要な要素で、これをウェハ状態で行うウェハレベルパッケージングが有効である。
シリコンに形成した薄いダイアフラムが両側の圧力差によって変形するのを検出するのに、ダイアフラムに加わる歪を抵抗変化として検出するピエゾ抵抗型と、ダイアフラムと対抗電極との間隔を静電容量変化として検出する静電容量型がある。
図5はウェハレベルパッケージングによるピエゾ抵抗型圧力センサの写真と製作工程である4)。N型のシリコンウェハに、ピエゾ抵抗用のp+型拡散層を形成する。これに穴の開いたガラスを陽極接合するが、これは400℃でガラスに-500V程の電圧を印加すると、静電引力により界面で共有結合する方法である。ガラスの孔に配線取り出し用の金属を堆積させた後、裏面のシリコンをエッチングして薄いダイアフラムを形成する。その後リード線を取り付けた後、1.5mm角の各チップに分割して完成する。図5の左上のようにガラスを通してみるとニュートンリングが見えるが、これは大気圧下で接合した時の温度Tが670Kで、室温(270K)にするとボイル-シャルルの法則(PV=nRT)よって、圧力Pが約0.4気圧と減圧になってダイアフラムが変形していることによる。この圧力センサは補助人工心臓に取り付けて血圧を連続モニタするのに用いられた5)。
このウェハレベルパッケージングを用いると、チップに分割するときにセンサ部が保護されて信頼性が上がる。チップサイズのセンサを封止された状態で得られだけでなく、容器や組み立て装置が不要になり3割ほどのコストで実現できる。このためいろいろなセンサなどに用いられている6)。
図6はウェハレベルパッケージングによる集積化容量型圧力センサである7)。この集積化容量型圧力センサでは、圧力によるダイアフラムの変位による微小な静電容量を検出するため、容量検出用のCMOS集積回路を内部に形成してある。図7のような原理で、この容量検出回路によって出力周波数がセンサ容量で変化する。この周波数は、2本の電源線だけでその電流変化として測ることができ、また温度や電源電圧の影響を受けないように作られている。このセンサは微圧用センサとして実用化され、エアコンのフィルタにおける目詰まり検出などに用いられた8)。
文献
4) M. Esashi, Y. Matsumoto and S. Shoji, Absolute pressure sensors by air-tight electrical feedthrough structure, Sensors and Actuators, A21-A23 (1990) 1048-1052
5) S. Nitta, Y. Katahira, T. Yambe, T. Sonobe, H. Hayashi, M. Tanaka, N. Sato, M. Miura, H. Mohri and M. Esashi, Micro-pressure sensor for continuous monitoring of a ventricular assist device, The International Journal of Artificial Organs, 13, 12 (1990) 823-829
6) M. Esashi, Wafer level packaging of MEMS, J. of Micromechanics and Microengineering, 18 (2008) 073001(13pp)
7) 松本佳宣, 江刺正喜, 絶対圧用集積化容量形圧力センサ, 電子情報通信学会論文誌C-II, J75-C-II, 8 (1992) 451-461
8) T. Nagata, H. Terabe, S. Kuwahara, S. Sakurai, O. Tabata, S. Sugiyama and M. Esashi, Digital compensated capacitive pressure sensor using CMOS technology for low pressure measurements, Digest of Technical Papers Transducers’91, San Francisco, USA (1991) 308-311