農業用センサ製品解説「農業AIブレーン e-kakashi」

製品名
「農業AIブレーン e-kakashi」  ソフトバンク株式会社

e-kakashiは農業現場向けのIoTソリューションであり、栽培環境の見える化、さらには計測データと栽培技術、植物生理に関する科学的知見の融合によって植物目線での栽培ナビゲーションを実現する製品である。

社会的背景
近年、わが国では農業従事者の高齢化と後継者不足が深刻な問題になっている。総務省の統計によれば、農業就業人口は昭和60年から平成17年、平成29年にかけて636万人から335万人、182万人と連続して減少しており、しかも60歳以上の高齢者が占める割合は79%(平成29年)に達している。日本は世界有数の農業技術を有する国であるが、これは農業機械の発展のみならず、優れた技術を持つ篤農家の存在が大きい。しかし、担い手不足の問題が進む今日では農業技術の伝承が難しい状況にあり、近い将来における農業技術の低下、消失が懸念されている。こうした中で今日では、優れた農業技術を保存し、さらに次世代に継承していくための技術開発が急務となっている。

環境データの計測
e-kakashiのデバイスは、センサノード、ゲートウェイ、各種環境センサで構成される。いずれも日立製作所謹製の製品であり、厳しい品質管理を通した頑健なつくりとなっている。また、屋外対応での利用に対応しており、露地栽培と施設栽培のどちらでも利用できる。これらのデバイスはすべてクラウドで動作監視をしており、機器の自動異常検知などにも対応している。
センサノードは、各種環境センサが計測した環境情報を収集する装置である。電源は、内蔵バッテリーと商用電源のいずれかを選択可能であり、商用電源が確保できないほ場でも利用できる。バッテリー駆動の場合でも、最長3年程度(利用環境による)はバッテリー交換が不要な省電力設計である。なお、執筆現在では、温度、相対湿度、日射、土壌温度/水分/EC、水温、CO2濃度などを計測する環境センサに対応している。環境計測に適した箇所は作物や栽培体系によって異なり、その設計には専門的知識が必要となるが、e-kakashi では設置支援などのサービスも提供している。
ゲートウェイは、センサノードから受信した環境情報をクラウドサーバーに転送する装置である。センサノードとは920MHzの無線通信に、クラウドサーバーとは3G/4Gの無線通信にそれぞれ対応している。

ekレシピと栽培ナビゲーション
多くの農業者が求めているのは、単なる環境の見える化ではなく、カーナビのようにこれまでの栽培環境、そして近未来の栽培環境の予測をもとに、高糖度や高収量といった目的を達成するための最適経路を示唆してくれる意思決定支援システムではないだろうか。
そこで開発されたのが、「ekレシピ」という機能である。ekレシピには、ある作物を育てる上での最適な栽培環境や栽培工程が体系的にまとめられている。ekレシピは、いわゆるビッグデータ的なアプローチによって生成されるものではなく、篤農家や指導員の経験や勘、そしてそれらを裏付ける植物生理学的な根拠に基づいて記述される。産地独特の環境特性を鑑みた栽培方法、あるいは同じ産地でも糖度や収量、果実の大きさなど目的に違いがある場合には、その部分を調整してレシピを記述する。このekレシピと環境データ、そして近未来の気象予測データが組み合わせることで、e-kakashiの栽培ナビゲーションが実現され、栽培に関する技術習得の支援や植物管理におけるリスクヘッジに貢献する。
また、e-kakashiのアプリケーションは分析ツールも備えており、環境データに対して様々な集計処理、統計処理を加えることで、ekレシピの材料となる知見の構築が簡単に行える。

導入事例
執筆時点で、国内外の約500箇所にe-kakashiが導入されている。詳しい利用事例については、下記リンクをご参照。
●福岡県宗像市 https://www.softbank.jp/biz/case/list/munakatashi/
●京都府与謝野町 https://www.softbank.jp/biz/case/list/yosanocho/
●静岡県川根本町 https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20190701_01
●コロンビア https://blog.e-kakashi.com/case/details09

参考リンク
総務省統計局、日本の統計2009
http://www.stat.go.jp/data/nihon/back09/index.html(最終アクセス日: 2019年7月11日)
総務省統計局、日本の統計2019
http://www.stat.go.jp/data/nihon/index2.html(最終アクセス日: 2019年7月11日)

応用範囲
●スマート農業
●施設栽培
●露地栽培
●植物工場

主な仕様

ゲートウェイ センサーノード
基本機能 無線通信機能
・920M 無線通信 IEEE802.15.4g/e
・3G/4G 無線通信 FDD-LTE/AXGP/HSPA/W-CDMA
位置情報取得(GPS)
計測データの測定
計測データの保持
状態モニタリング
位置情報取得(GPS)
電源 AC 給電:AC100/200V リチウム電池(一次電池)
AC 給電:AC100/200V
※オプションセンサ使用時は、AC給電とする。
電池寿命(参考値) 計測周期10分:3年
※使用条件により異なる
動作環境 温度:-10~60℃
湿度:20~90%RH ※結露なきこと
温度:-20~60℃
湿度:5~95%RH ※結露なきこと
使用条件 屋外(IP55 以上)※塩害、温泉地域を除く 屋外(IP55 以上)※塩害、温泉地域を除く
外形寸法 196mm×196mm×68mm ※突起部除く 196mm×196mm×68mm ※突起部除く
質量 0.8kg 以下 1.0kg 以下
消費電力 10.0W 以下 2.0W 以下

問合せ先
ソフトバンク株式会社 e-kakashi推進課 sc@e-kakashi.com
e-kakashi公式サイト https://www.e-kakashi.com/