アーカイブ

CdTeを用いた次世代X線イメージセンサ(1)

(株)ANSeeN 代表取締役
小池 昭史

1.はじめに

 X線が発見されたのは1895年であり、物体を透過する特性をもつことから医療などでよく用いられており、レントゲンの名称で広く知られている。X線は可視光と同じ電磁波であるため、フィルムで感光することが可能であることから発見以来、様々な分野で内部状態の検査を目的とした透過像撮影に活用されてきた。医療以外では手荷物検査に代表されるセキュリティチェックや、食品異物検査、建造物検査、溶接検査などが主要な用途である。
 近年では、工業製品の生産時の検査として可視光だけでは実現できない内部状態の確認のために用いられ始めており、特に電子デバイスの回路基板の実装不良検査などで有用性を示している。今後の社会では、従来は人間が担っていた製造やメンテナンスをロボット等の機械が担っていくことが期待されており、人間の五感を超えたセンシングの拡張は重要な要素となっている。
 株式会社ANSeeNは半導体プロセス技術や独自信号読出回路の設計技術、大面積実装技術を組み合わせて化合物半導体を用いたX線イメージセンサの開発を行っている。これまでにCdTeやTlBr等を活用したセンサを開発しており[1]-[4]、従来センサと比較して感度、及び解像度を大幅に改善することが可能である点が最大の特徴である。
本稿では、主にイメージングを前提としたX線センシングの原理(受光素子やセンシング方式)と、CdTeを採用したX線イメージセンサによる撮像例等を紹介する。

2.X線センシングの原理

 X線をセンシングするためにはX線を効率的に吸収して検知可能な信号に変換する受光素子と、その信号を処理する信号処理回路の2つの組み合わせが必要である。それぞれについて2つの方式があるため以下の節ではこれらについて述べる。

2.1.受光素子と検知の仕組み

 検査などに用いられるX線は波長が1オングストローム以下の電磁波であり、物体の原子間距離よりも短いために、相互作用を起こすのは原子核周辺の電子である。この相互作用を光電変換と呼び、エネルギーを得た電子は原子核の束縛を離れつつ、周辺の電子にエネルギーを連鎖的に与え、複数の自由電子を生成する(図 1)。
 受光素子には、間接変換型と直接変換型の2種類がある(図2)。間接変換型の受光素子はシンチレータと呼ばれ、従来から広く使われている汎用性の高い受光素子であり、代表的なものとしてはCsI(ヨウ化セシウム)やGd2O2S(ガドリニウム酸硫化物)などがある。これらの素子はX線により励起された電子からエネルギーを受け取り可視光程度の波長領域で発光する特徴を持っており、いわゆるX線から可視光への波長変換素子のように振る舞う素子である。波長変換後は通常のフォトダイオードで受光可能となるため光電子増倍管やCMOSイメージセンサなどと組み合わせたセンサが構成可能である。一方で、常温環境下においてX線を直接的に検知できる直接変換型の受光素子としては化合物半導体があり、代表的なものとしてはCdTe(テルル化カドミウム)やTlBr(臭化タリウム)などがある。これらの素子はシリコン等のフォトダイオードと同様に上下面を電極で挟み、電圧印加により発生電荷を輸送するデバイス構造とすることでX線センサとして動作させることが可能である。X線検知の原理も基本的には可視光のフォトダイオードと同様であり、素子結晶内にて相互作用を起こした際に励起した電子群が電界に沿って移動し、いわゆる電流として検知可能となる。フォトダイオードとの大きな違いはデバイスの厚みであり、X線センシングの効率を高めるために通常は0.3〜1.0mm程度の厚みを有感層として用いるため、通常のSiフォトダイオードと比較すると100倍以上厚いデバイスとなる。
 直接変換型のメリットは、光電変換以降は99%以上の電荷収集効率を実現できる点であり、また相互作用が起こった深さも信号収集効率に関係ないためにX線から電気信号への変換効率が高い。

図 1:X線による光電効果
図 1:X線による光電効果
図 2:シンチレータ(間接変換素子)と化合物半導体(直接変換素子)の構造
図 2:シンチレータ(間接変換素子)と化合物半導体(直接変換素子)の構造

2.2.信号処理の方式と仕組み

 一般的なイメージセンサの信号処理方式はスキャン方式と呼ばれるものであり、原理的にはピクセル毎にスイッチを切り替えて順次読み出していく方式である。この方式ではすべてのピクセルがスキャンされるまでの時間間隔が動画レート(30〜120Hz)になるように設計されており、初回の読出しから次回の読出しの間は信号が溜まっていくために、X線イメージセンサの分野では電荷蓄積方式とも呼ばれる。
 もう一つの方式としてフォトンカウンティング方式というものがあり、すべてのピクセルにおいて発生した信号をリアルタイムで処理をする方式である。最近では主にLiDAR用途でSingle Photon Avalanche Diode(SPAD)と呼ばれるセンサが開発されている[5]が、基本的な動作原理はこれと同じである。X線の場合の違いは、可視光と違い1光子で発生する電荷数が数千から数万個と非常に多いためアバランシェによる電子増倍を行う必要がない点である。この方式を実現するためには、1ピクセル内にAD変換とカウント値を保持するレジスタが必要となるために、必然的に回路規模が大きくなる。
 X線イメージセンサにおけるフォトンカウンティングの利点は、X線光子のエネルギーと受光素子での信号発生量が比例関係するので、光子の入射タイミングが離散的に見える速度で処理ができればX線のエネルギー(波長)を知ることが可能な点である。
 フォトンカウンティング方式を実現するにはSPADと同様で受光素子からくる電気信号が回路ノイズよりも多い必要があるが、直接変換型のほうが前述の通り変換損失が少ないために、ここでも有利に働く。



次回に続く-



参考文献

  1. Katsuyuki Takagi, Tsuyoshi Terao, Akifumi Koike, Toru Aoki, “Study of an X-ray/Gamma Ray Photon Counting Circuit Based on Charge Injection” SENSORS AND MATERIALS 30(7) 1611-1616 2018
  2. T. Terao, A. Koike, K. Takagi, H. Morii, T. Okunoyama, T. Aoki, “Characterization of CdTe diode detector with depletion layer modulation for energy discrimination X-ray imaging”, Journal of Instrumentation 14(6) 2019
  3. Katsuyuki Takagi, Toshiyuki Takagi, Tsuyoshi Terao, Hisashi Morii, AKifumi Koike, Toru Aoki, “Readout Architecture Based on a Novel Photon-Counting and Energy Integrating processing for X-ray imaging”, IEEE Transactions on Radiation and Plasma Medical Sciences 1-1 2020
  4. Katsuyuki Takagi, Kohei Toyoda, Hiroki Kase, Toshiyuki Takagi, Kento Tabata, Tsuyoshi Terao, Hisashi Morii, Akifumi Koike, Toru Aoki, Mitsuhiro Nogami, Keitaro Hitomi, “Bias Polarity Switching-Type TlBr X-Ray Imager”, IEEE Transactions on Nuclear Science 68(9) 2435-2439 2021
  5. https://global.canon/ja/technology/spad-sensor-2021.html


【著者紹介】
小池 昭史(こいけ あきふみ)
株式会社ANseeN 代表取締役

■著者略歴
2007年 静岡大学情報学部情報科学科 卒業
2009年 静岡大学総合科学技術研究科情報学専攻 卒業
2013年 静岡大学創造科学技術大学院自然科学系教育部 退学
2014年 博士(工学)取得 2011年〜2012年 ANSeeN取締役
2012年〜現在ANSeeN代表取締役

エーテンラボ、大学・企業と連携した生活習慣病予防プロジェクト

 堺市立総合医療センターと関西大学人間健康学部、カゴメ(株)、エーテンラボ(株)は、本年5月より、4者による共同事業として、働く世代を対象とした生活習慣病予防プロジェクトを実施する。本プロジェクトは、産学医連携による生活習慣病予防の取組みであり、出張健康教室などを通じたメタボリックシンドロームの予防と筋力の低下予防・維持を目的として実施する。

1.実施期間
令和4年5月から令和8年3月まで

2.プロジェクトの概要
メタボリックシンドロームの予防は、虚血性心疾患の予防や高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防に効果があり、これらの生活習慣病への対策が健康維持・健康寿命の延伸には重要となっている。仕事や子育て、親の介護等で自らの健康に関心を向けることが難しいと言われている壮年期世代の人達が自らの体に関心を向け、今までの生活習慣を変えることで病気を未然に防ぐことができるよう、大学や企業と協力して出張健康教室や定期的なフォローアップを実施し、その効果を検証する。

3.実施対象
堺市上下水道局職員※1(開始時の年齢が35歳から59歳までの約50名)

4 大学、企業との連携
(1)関西大学人間健康学部
同学部は、令和4年3月に当院と地域における健康増進・健康寿命の延伸等を目的とした包括連携協定を締結しており、本プロジェクトでは、主に出張健康教室等で収集したデータの分析を担う予定。

(2)カゴメ株式会社
同社が開発したセンサに手のひらを当てるだけで野菜摂取レベルや推定野菜摂取量を測定することができる「ベジチェック」により、参加者が自身の推定野菜摂取量を知ることや、食生活改善活動の成果を実感することで、対象者の行動変容を促すことを補佐する。
≪参考:ベジチェック≫
https://www.kagome.co.jp/library/products/healthcare/news/pdf/20200923002.pdf

(3)エーテンラボ株式会社
同社が提供する習慣化アプリ「みんチャレ」を活用し、日々の活動量(歩数)の記録とデータの集計を行うとともに、チャットや写真の共有を行いながら参加者の継続率の向上を目指す。
≪参考:みんチャレHP≫
https://a10lab.com/service/healthcare/

※1 堺市上下水道局は、職員及び市域の健康増進・健康寿命の延伸に向けた取り組みに関し、当院と連携協定を締結している。

プレスリリースサイト(a10lab):https://a10lab.com/news-20220425/

リチウムイオンキャパシタ・リチウムイオン電池用「タブリード」を開発

双葉電子工業(株)は、新たにリチウムイオンキャパシタ(LiC)・リチウムイオン電池(LiB)用「タブリード」を開発した。

タブリードは、ラミネート型LiC・LiBの内部から電気を取り出すための端子である。世界各国においてカーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの利用やEVへのシフトが加速するなか、LiC・LiBの市場拡大に合わせてタブリードの需要が急拡大している。 これまで同社は、車載向けデバイスとしてタッチセンサや有機ELディスプレイおよびLiC・LiB向けのラミネートフィルム成形加工や金型用器材を多くのお客さまに供給してきた。そこで培った技術を応用することで、長寿命かつ高い信頼性を有するタブリードの開発を実現した。なお、2022年4月より量産を開始するという。

高容量・高出力化と高い安全性が求められるLiC・LiB市場の要望に応えるため、今後も開発を進めると共に標準ラインナップの拡充に努め、顧客の製品開発およびSDGsの目標※実現に向けて取り組んでいくとのこと。

※SDGs目標7:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能で近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

■特長
① 当社独自のリード被膜処理およびシール材料により長寿命と高い信頼性を実現
・耐電解液性:672hでシール密着強度 8N/cm以上
・封止性:リードバリ・シール空隙なし
・シール絶縁性:2種3層シール(密着層/耐熱層/密着層)で絶縁層と密着性を両立
② 特殊形状対応
・L字形状、穴あき、リード厚型、L字などの特殊形状に対応
③ 品質保証
・二次元コードを印字し、品質解析ソフトによるトレーサビリティ管理を実施

ニュースリリースサイト(futaba):
https://www.futaba.co.jp/product/tab_lead/tab_lead_new/release_20220425

「人とすれ違える」コンパクトな自律走行型搬送ロボットを開発

(株)スマートロボティクスは横46㎝、縦65㎝、高さ35㎝のコンパクトサイズながら最大150㎏の重量物を搬送できる自律走行型搬送ロボット「SR-AMR150」を開発、販売を開始した。

搬送作業の完全自動化が難しく、ロボット専用の走行路も確保できない中小工場、物流倉庫、医療機関、福祉施設など向けに、「人とすれ違うことができるサイズ」を実現した。既存設備やロボットアームとの連携、荷台などのカスタマイズも可能。

ロボットは、本体のセンサと3D(三次元)カメラが自己位置と障害物を検出して自律走行する。操作は、本体のタッチパネル(コントローラー)やパソコンの操作画面をワンクリックするだけで簡単。搬送ルートにガイドレールは不要で、障害物を自動で回避し、任意のポイントまで移動する。最高速度は1秒間に1.4m。1回の充電で走行できる時間は最長8時間となっている。

テストマーケティングにおいて、「人と共存できる搬送ロボット」「ポイントに配置された人員がタブレットで操作できるシンプルな運用」「既存設備との連携や、将来を見据えた拡張性」などのニーズがユーザーから寄せられ、コンパクトサイズの自律走行型搬送ロボットを開発した。

スマートロボティクスは「だれもがロボットを使いこなし、社会全体へ浸透する未来を実現する」をビジョンに掲げて2016年3月に設立。これまで遠隔地から運搬、会話、見回りができる「テレワークロボット」や、医療機関向けの「自律走行型殺菌灯搭載ロボット」などを開発、販売している。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000049774.html

MR用ヘッドマウントディスプレイの広視野角モデル“MREAL X1”を発売

キヤノンは、現実映像とCGをリアルタイムに融合するMR(Mixed Reality:複合現実)システム「MREAL(エムリアル)」シリーズの新製品として、広視野角モデルのヘッドマウントディスプレイ“MREAL X1”を2022年6月上旬に発売する。

「MREAL」は、ビデオシースルー方式※1により、現実世界とCG映像を違和感なく融合し、あたかも目の前の現実に3D CGが存在しているかのような臨場感を提供するMRシステム。“MREAL X1”は小型・軽量・高画質に加え、表示面積の拡大により検証効率や臨場感の向上を実現し、製造業をはじめ、幅広い分野での3Dデータを活用したDXの推進に貢献するという。

■「MREAL」シリーズ最大表示面積によりユーザビリティーの向上を実現
表示面積の拡大により、視野角が広がることで、大きく頭を動かすことなく視認エリア全体の確認が可能。一度に視認できる範囲が拡大したことで、検証効率が向上し、対面での作業や自分の足元を確認しながらの作業でも安心して使用できる。

■小型・軽量による快適な装着性と高画質を両立
質量約359g(ヘッドマウントユニット含む、ディスプレイ部のみの質量は約158g)の小型・軽量設計と、人間工学に基づき設計されたヘッドマウントユニットにより、使用時の負担を軽減し、快適な装着感を提供する。また、キヤノン独自のディスプレイパネルと長年培ってきた光学技術を駆使したレンズを搭載することで、小型・軽量と高画質を両立している。

■ポータブルなシステムにより多様なビジネスの現場での利用が可能
モバイルワークステーション※2への対応により、システム全体の小型・軽量を実現し、さまざまな場所に持ち運んでの利用が可能。また、空間特徴位置合わせ技術により、屋内/屋外※3問わず高精度な位置合わせを実現する。さらに、遠隔地間を接続し3D CGを共有することができるため、人の移動に制限がある状況下での業務支援にも貢献する。

※1 ヘッドマウントディスプレイに内蔵されたカメラのCMOSセンサが捉えた目の前の映像(現実映像)と仮想空間の3D CG(仮想映像)をコンピューターでリアルタイムに合成し、ヘッドマウントディスプレイに表示する方式。
※2 高い処理能力を備え、複雑で高度な処理を安定して行うノート型コンピューター。
※3 防じん・防滴は未対応。使用場所や用途に制約がある場合がある。

ニュースリリースサイト(canon):https://www.canon-its.co.jp/news/detail/20220421mr.html

宇都宮市の地域交通課題解決の実証実験に「BOCCO emo」が採用

ユカイ工学(株)は、スマートキャピタルと連携して、栃木県宇都宮市と株式会社ゼロワンブースターが共同運営するプログラム「宇都宮アクセラレーター2021」に採択され、ICT分野においてコミュニケーションロボット「BOCCO emo」(ボッコ・エモ)を活用した地域交通課題を解決するための実証実験を実施した。

実施背景
宇都宮市では、公共交通空白地域等にお住まいの方の通院や買い物などの日常生活に必要な移動手段を確保するため、地域住民が主体となって運営する乗合タクシーを活用した「地域内交通」を導入し、主に郊外部で活用されている。
今回の実証を行った河内地区では、平成27年度より地元企業アサヒタクシーと連携した「さぎそう河内号」が運行されていた。従来の電話予約では受付オペレーターの業務負荷の課題があり、以前に実証されたスマホを活用した事例では高齢者がスマホを使いこなせないなど、予約システムにおけるインターフェースの課題を抱えていた。

実施内容
実験では、参加高齢者の各宅内に設置した「BOCCO emo」に話しかけて地域内交通タクシーを予約するというもので、高い音声認識率で行き先や予約時間を文字起こしし、オペレーターを介して情報を伝達することでスムーズに配車することができた。
また、親しみやすいデザインや簡単な操作で利用を完結できたことで、利用者からも「すぐに操作できた」「癒やしの地域内交通」「家族の一員みたい」という好評の声を貰った。
加えて、「宇都宮市の天気情報」の知らせや、利用者にヒアリングして事前登録した指定時間の「モーニングコール」、「服薬や予定のリマインド」も多く活用された。
「BOCCO emo」のしゃべってお知らせする基本機能を活かし、日常生活から生活者に寄り添いサポートすることで、より親しみやすい存在として認識された。

今後の展望
人的オペレーターの介在しない運用や、利用者がより安心感を得られる活用を目指し、事業化に向けて予約システムのパートナー企業との協業を進める。
日本全国で様々な地域課題が加速化する中、ユカイ工学では家族の一員のような存在となれるコミュニケーションロボットで、地域と住民を繋ぐなど、地方や自治体の活性の一助になることを目指す。

実証実験概要
実施日程:2022年2月21日〜3月4日の10日間
モニターの年齢:60代1名、70代4名、80代2名(計7名)
場所:宇都宮市河内地区

解決したい課題
①電話予約:オペレーターの業務負担、予約情報のデジタル化
②スマホアプリ予約:高齢者のスマホ活用のハードルが高い

実証実験内容
高齢者の各宅内に設置したコミュニケーションロボット「BOCCO emo」に話しかけて音声を送信し、地域内交通タクシーを予約
※本実証での操作は、BOCCO emo本体の録音ボタンを押すのみ
※地域内交通の予約締切時間は8〜18時の間。1時間ごとに運行している各便の30分前に予め設定されており、自宅から地域内の目的地までの送迎が可能

実証結果
・2週間で16件の予約を受領。うち2名が4件ずつ予約をした。平均1.6件の利用。
・期間中BOCCO emo本体を活用せずにお電話で予約が1件発生。(規定した予約時間超過のため)
・送信された音声データからの目的地の文字起こし正答率100%。
主な目的地として「河内地区市民センター」「ほたるの里 梵天の湯」「岡本駅西口」など。
・利用者からは「スマホと比較すると予約が圧倒的にしやすい」「ロボットが家族の一員みたいで朝起きるのが楽しみだった」等の声が寄せられた。

ニュースリリースサイト(Yukai Engineering):https://www.ux-xu.com/news/20220421

「富山市センサーネットワーク」を利活用した実証実験公募開始

 富山市では、ICTを活用して都市機能やサービスを効率化・高度化するスマートシティの実現に向け、平成30年度にLPWA網(LoRaWAN)と都市OS(FIWARE)からなる「富山市センサーネットワーク」を構築した。

 このネットワークを民間企業や研究機関等の皆様に無償で開放し、様々なIoT技術の研究開発の為の実証実験環境として利活用して頂く事業を実施している。
IT、福祉、農業など幅広い分野において、令和元年度から累計で50件を超える実証実験(継続事業含む)が行われ、成果報告会には100名を超える人が参加した。

 今年度も公募を開始したので、興味のある人は、検討して欲しいとのこと。 (本事業以外にもスマートシティに関する企画を検討している。同市のスマートシティに提案があったら、連絡を貰いたい。)

【この件に関する問い合わせ先】
富山市企画管理部スマートシティ推進課
[Mailto] smartcity-01@city.toyama.lg.jp
[TEL] 076-443-2006

公募詳細サイト(富山市):
https://www.city.toyama.toyama.jp/kikakukanribu/smartcitysuishin/toyamasc_koubo.html

IHIグループ初となる衛星打上げを受注

 IHIグループの(株)IHIエアロスペース(以下「IA」)は,九州の宇宙スタートアップ企業である(株)QPS研究所と,同社の小型SAR衛星(※1)QPS-SAR3号機および4号機(※2)の打上げをQPS研究所がIAに委託することで合意し,4月18日(月)に契約を締結した。


 本衛星はQPS研究所が北部九州を中心とした日本全国25社以上のパートナー企業と一緒に開発,製造中で2022年度にイプシロンロケット6号機で打ち上げられる予定。
 IAにとって商業衛星の打上げ受注は,今回が初となる。

 今回IAが打上げを受注した本衛星は,JAXAによりイプシロンロケット6号機で打ち上げられる。
 IAは,現在JAXAと開発中の「イプシロンSロケット」を用いて,衛星打上げ輸送サービスに参入する。今回の商業衛星打上げの受注はそれに先駆けての取り組みとなり,「イプシロンSロケット」は国のミッションの確実な打上げに留まることなく,今回の受注を弾みとし,商業衛星打上げ市場においても,民間ミッション向け輸送サービスの受注・打上げの取り組みを加速していくという。
 IAは,我が国における自立的な宇宙輸送システムを確保しつつ,防災対応やビジネス目的,その他官民様々なステークホルダーが抱える社会課題の解決に,衛星打上げ輸送サービス事業により貢献していくとのこと。

※1 SAR衛星:
リモートセンシング衛星の1つで,天候・昼夜に関係なくレーダーを用いて地表を観測する衛星。 SAR(合成開口レーダー,Synthetic Aperture Radar)は,電磁波(マイクロ波)を使うセンサで,地表に向けて照射し,はね返ってきた電磁波を受信・解析することにより,地表の状態を画像化する。

※2 QPS-SAR 3,4号機概要:
QPS研究所は収納性が高く,10kgと軽量でありながら大型の展開式アンテナ(特許取得)を開発。そのアンテナによって強い電波を出すことが可能になり,従来のSAR衛星の20分の1の質量,100分の1のコストとなる高精細小型SAR衛星「QPS-SAR」の開発に成功し,現在はQPS-SAR1号機「イザナギ」,2号機「イザナミ」の2機を打ち上げ運用している。 QPS-SAR3,4号機は2号機からさらに改良を加えている。

プレスリリースサイト(IHI):
https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2022/aeroengine_space_defense/1197838_3479.html

直径2インチ超高純度ダイヤモンドウェハの量産に成功

アダマンド並木精密宝石(株)は、超高純度の直径2インチのダイヤモンドウェハの量産技術を開発した。量子コンピュータ*1に使う量子メモリ*2や超高感度の磁気センサには窒素濃度3ppb以下(ppb=10億分率)の超高純度ダイヤモンドが用いられ、開発が加速しているが、これまで使えるダイヤモンド結晶は4mm角程度の寸法でしかなかった。今回開発したのは、超高純度で直径2インチ(約55ミリメートル)のダイヤモンドウェハ。今後、量子コンピュータの実現につながることが期待されまる。本製品は2023年に製品化の予定という。

アダマンド並木精密宝石は、佐賀大学との共同研究で、独自のステップフロー成長法*3を用いて直径2インチの高品質ダイヤモンドウェハ(商品名:KENZAN Diamond(TM))を開発したことを2021年9月9日にプレスリリース*4した。このダイヤモンド結晶成長技術では、高い成長速度を得るために窒素ガスを使わなければならず、そのため数ppmの濃度の窒素不純物がダイヤモンド結晶に混入して量子コンピュータには使えなかった。
一方、市販されている窒素濃度3ppb以下の超高純度ダイヤモンドは、4ミリ角の寸法でしかなく、研究用に使えても、実用上使うことができなかった。

そこで同社では、結晶成長で窒素の混入を極力抑えて、超高純度の直径2インチのダイヤモンドウェハの量産技術を開発した。ダイヤモンドを用いた量子メモリは超高密度のデータ記録が可能で、直径2インチのダイヤモンドウェハ1枚でBlu-rayディスク10億枚分のデータが保存できる。これは全世界で1日に流通する全てのモバイルデータ量に相当し、ダイヤモンドウェハ1枚に収まるとのこと。
今後は、周辺技術を確立し、2023年に製品化するという。

研究成果の公表媒体
2022年5月10日International Conference on Compound Semiconductor Manufacturing Technology「Two-Inch High Quality Diamond Heteroepitaxial Growth on Sapphire for Power Devices」。

<用語説明>
*1 量子コンピュータ
従来のコンピュータは、01の二進法で計算するのに対し、量子力学の原理を使うコンピュータを言う。量子力学を使うため、従来のコンピュータでは時間のかかった計算を、飛躍的に短時間に行うことができ、世界で開発競争が加速している。

*2 量子メモリ
量子コンピュータで用いる記憶素子(メモリー)。ダイヤモンド中のNVセンターという結晶欠陥が、原理的に量子メモリに最高性能を示すことがわかっており、世界で開発競争が加速しているが、従来の超高純度のダイヤモンド結晶は4ミリ角の寸法しかなく、実用には難しいと考えられていた。

*3 ステップフロー成長法
数度傾斜させることで、原子レベルで階段構造にした基板をダイヤモンド成長に用いる結晶成長方法。この方法では、成長速度を高く維持するため、窒素ガスを結晶成長中に用いなければならなかった。

*4 プレスリリース
直径2インチ ダイヤモンドウェハの量産技術開発に成功 パワー半導体デバイスの企業研究開発に拍車
(https://www.ad-na.com/magazine/archives/1598)

ニュースリリースサイト:https://www.atpress.ne.jp/news/305750

エネルギーハーベスティングコンソーシアム(2)

(株)NTTデータ経営研究所
竹内 敬治

4. EHCの具体的な活動内容

 機密情報扱いとなる活動が多いため、詳細には記すことができないが、最近のEHCの活動内容(図4)を紹介する。

図4 EHCの活動内容
図4 EHCの活動内容

4.1 総会

 EHC総会は年4回開催される。原則として全会員が参加し、第2部と懇親会には、公的な立場のオブザーバ(官公庁・自治体・国研・大学)も参加する(非公開で、事前招待・承認制)。
参加者数は、100~200人程度であったが、2020年度以降は、新型コロナウイルス感染拡大により、ほぼオンライン開催となった。

4.2 意見交換会

 様々なテーマの意見交換会、見学会を不定期に開催してきた。新型コロナによって、会員企業間の直接の交流機会が減少したことから、2022年以降、会員企業が順次発表する会員企業意見交換会をオンラインで定期的に開催するようになった。

4.3 WG活動

 具体的な活動目標を定め、一部企業が参加するWG活動を行ってきた。テーマは非公開である。WG活動は自主活動であるが、一部は国家プロジェクトへと発展したものもある。

4.4 国家プロジェクトへの参画

 EHCとして参画した主な国家プロジェクトを以下に挙げる。EHCは任意団体で法人格を持たないため、EHC会員企業や、事務局である株式会社NTTデータ経営研究所が、契約の当事者となる。

 経済産業省 2012年度「国際標準共同研究開発事業」
「MEMS振動発電デバイスの特性測定方法に関する国際標準化フィージビリティスタディ」
(一般財団法人マイクロマシンセンターと株式会社NTTデータ経営研究所の共同実施)

 総務省 2014~2016年度
「スマートなインフラ維持管理のためのICT基盤の確立」
(アルプス電気、NTTデータ、NTTデータ経営研究所の共同実施)

 NEDO 2014~2016年度 クリーンデバイス社会実装推進事業
「省エネルギー化センサシステム普及拡大のための環境発電デバイス実装事業」
(アルプス電気、竹中工務店、パナソニック、富士電機、NTTデータ経営研究所の共同実施)

 NEDO 2014~2015年度
「エネルギー・環境新技術先導プログラム「センサモジュールの研究開発」」
(アルプス電気、テセラ・テクノロジー、東京応化工業、東京大学、東北大学、弘前大学の共同実施)

 NEDO 2015年度
「エネルギーハーベスティング技術の用途の特定と市場動向・技術開発動向に関する分析」
(NTTデータ経営研究所が受託)

 NEDO 2016~2020年度 IoT推進のための横断技術開発プロジェクト
「超低消費電力データ収集システムの研究開発」
(東芝、アルプス電気、テセラ・テクノロジー、DSPC、神戸大学、東京工業大学、産総研、東京大学の共同実施)

4.5 展示会への共同出展

 会員のシーズ技術紹介や実証実験成果報告などを中心に、国内外で共同出展を行ってきた。
 ET/IoT展には、2017年から2019年まで、3年連続で共同出展を行い、IoT Technology優秀賞受賞を3年連続で受賞した。2017年は、株式会社フジクラの「マルチホップ無線EH型環境センサシステム」、2018年は、アルプス電気株式会社(現:アルプスアルパイン株式会社)と株式会社NTTデータ経営研究所が共同開発した「局所集中型超低消費電力無線通信技術」、2019年は、富士電機株式会社の「電池レス無線SAW温度センサ」である(図5)。
 海外では、2016年に米国で、2017年にドイツで、会員企業の共同出展を行った。

図5 ET/IoT展でのIoT Technology優秀賞受賞技術
図5 ET/IoT展でのIoT Technology優秀賞受賞技術

4.6 情報提供

 会員企業向けに、エネルギーハーベスティング技術を体系的に整理した報告書を提供している。また、2017年10月からは、ニュースレターを発行し、海外動向を中心に、最新の情報を提供している。現在、ブログ「WBB最新情報」の更新は行っていないが、会員向けに海外の最新情報の提供を続けている。ブログの記事よりも情報量は格段に多い。

おわりに

 エネルギーハーベスティングは、世界的ブーム後の「冬の時代」を乗り切り、徐々に普及の兆しが感じられる。ガートナー社のハイプ・サイクル(図65)に沿った動きといってもよいのではないか。
 エネルギーハーベスティングを巡る今後の大きなトレンドとしては、EUの電池規制における「一次電池の段階的廃止の動き」6、及び6G(第6世代移動通信システム)での採用の動き7がある。いずれも、2030年頃が転機となりそうである。
 EHCの、2022年3月時点での会員企業は50社である(図7)。また、正式オブザーバとして登録されている官公庁・自治体・国研・大学は、100を超え8、日本における産官学連携のハブともなっている。引き続き、我が国企業のエネルギーハーベスティング事業の立ち上げを支援していきたい。

図6 ガートナー社のハイプ・サイクル
図6 ガートナー社のハイプ・サイクル
図7 EHCの構成メンバー(2022年3月時点)
図7 EHCの構成メンバー(2022年3月時点)




【著者紹介】
竹内 敬治(たけうち けいじ)
株式会社NTTデータ経営研究所
エネルギーハーベスティングコンソーシアム事務局

■著者略歴
1988年3月京都大学大学院工学研究科修士課程修了(工学修士)。大手シンクタンクなどを経て、2010年5月より株式会社NTTデータ経営研究所。
2010年5月、エネルギーハーベスティングコンソーシアムを設立し、事務局を務める。
JST CREST・さきがけ複合領域「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」領域アドバイザー。
文科省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム「磁歪式振動発電事業化プロジェクト」事業プロデューサ(金沢大学客員教授)。
JST未来社会創造事業大規模プロジェクト型「センサ用独立電源として活用可能な革新的熱電変換技術」採択課題「磁性を活用した革新的熱電材料・デバイスの開発」アドバイザー(NIMSリサーチアドバイザ)。 NEDO技術委員。(いずれも記事掲載時点)