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キリン「βラクトペプチドと熟成ホップに関する研究」が日本抗加齢医学会より「研究奨励賞」

キリンホールディングス(株)のキリン中央研究所は、超高齢社会の日本国内において大きな社会課題となっている認知症や脳の健康に対し、食を通じて貢献するため、独自の認知機能改善素材「βラクトペプチド」と「熟成ホップ」の開発・研究を行ってきた。
この度、一連の研究成果とエビデンスの確からしさが認められ、国内の老化研究の中核的な学会である日本抗加齢医学会より2021年度の研究奨励賞を受賞した。研究奨励賞を企業研究員が受賞したのは初めてとのこと。

■受賞内容
1.受賞タイトル
 認知機能の維持向上に役立つβラクトリンおよび熟成ホップの発見と機能性食品の開発
2.受賞者
 キリンホールディングス株式会社R&D本部キリン中央研究所 阿野泰久
3.受賞研究内容
 超高齢社会を迎えた日本において、認知症や脳の健康は重要な社会課題となっています。十分な治療方法が無い中、認知機能の維持向上に繋がる日常生活での対策に、世間の関心が高まっている。
キリンは、食事と認知症発症に関する久山町(福岡県糟屋郡)での疫学調査※1に着目し、乳製品に含まれる認知機能を改善する有効成分を探索し、βラクトペプチドを独自に発見した。βラクトペプチドは、摂取後に血液脳関門を通過し、脳へ届いてモノアミン※2分解酵素の活性を阻害することで、記憶力や意欲に関わる神経伝達物質のドーパミンを増加させる※3。さらに、健常な中高年齢者を対象とした臨床試験によって、βラクトペプチドの摂取が記憶力や集中力等の認知機能を改善すること※4、前頭前野の脳血流を高めること※5を確認している。同社は、これら一連のエビデンスに基づき、βラクトペプチドを活用した機能性表示食品の事業化を実現した。また、βラクトペプチドの一連の研究成果は日本認知症予防学会よりグレードAのエビデンス認定を受けている。
※1 Ozawa M, et al, Journal of the American Geriatrics Society, 2014, 62(7): 1224-1230
※2 ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの総称。ドーパミンはモノアミン酸化酵素B(MOA-B)によって分解・代謝される。
※3 Ano Y, et al., Neurobiology of Aging, 2018, 72: 23-31
※4 Kita M, et al., Frontiers in Neuroscience, 2019, 13: 399
※5 Ano Y, et al., Aging (Albany NY). 2020, 12(18):18660-18675.

また、同社は「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分を、認知機能を改善する成分として独自に発見した。「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分は腸管の苦味センサ(苦味受容体)に働きかけて迷走神経を刺激し、脳と腸を繋ぐネットワーク(脳腸相関)を活性化することで認知機能や抑うつ状態を改善することを確認している※6。特に、苦みが低減された「熟成ホップ」を用いて健常な中高年齢者を対象とした臨床試験を行い、注意の制御機能、不安感が改善すること※7を確認した。同社は、これら一連のエビデンスに基づき、熟成ホップを活用した機能性食品の事業化を実現した。
※6 Ano Y, et al., FASEB J, 2019, 33(4): 4987-4995.
※7 Fukuda T, et al., J Alzheimers Dis, 2020, 76(1): 387-398.

βラクトペプチドや、熟成ホップなどを中心とした脳科学研究に関する取り組みは、国際誌に50報以上掲載されている。多くのメディアや書籍において紹介され、学術集会やシンポジウムにおける基調講演、特別講演での発表を行っており、学術的に高い評価を受けている。同社は、今後βラクトペプチドや熟成ホップを活用して、脳の健康がサポート可能な食習慣の提案を推進することで、日常生活を通じた認知機能の維持向上への貢献を目指すとしている。

ニュースリリースサイト(KIRIN):https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0620_01.html

エプソン、加速度センサ『M-A352』搭載の計測震度計が気象庁検定に合格

 セイコーエプソン(株)は、同社製の高性能な3軸加速度センサ『M-A352』を搭載した(株)ナレッジフォーサイト製の計測震度計「ゆれMON HYPER」が、6月上旬に気象庁の計測震度計検定に合格したと発表した。なお、同製品を搭載したクローバテック(株)製の計測震度計「LA-352」についても、2022年1月に同検定に合格しており、今回で2例目となるとのこと。

 エプソンは、2014年に加速度センサを発売して以来、さまざまなアプリケーションに採用され、多くの実績と高い品質により、市場から高い評価を得ている。近年では、頻発する地震や津波などに対する観測監視体制の強化や精度の向上が求められており、その課題の解決手段として、高精度加速度センサを用いた計測震度計の需要が高まっている。

 気象庁では、気象業務法に基づき届出を行う必要のある気象観測施設で利用する気象測器※1については、検定に合格したものを使用することとしている。今回の計測震度計は気象測器には該当しないが、測器利用者が精度を確保する上で検定を必要とする場合は、気象測器と同様に気象庁による検定が行われる。検定においては、測器の種類に応じて材料、部品およびその組み合わせなどが適切であるかを調べる「構造検査」と、個別の精度を調べる「器差検査(性能検査)」の2種類の検査が行われ、高い合格基準を超える必要がある。

 クローバテックとナレッジフォーサイトは、計測震度計に必要な1μG/√Hz以下のノイズ性能(サーボ加速度計※2クラス)と耐久性・生産性に優れた当社製加速度センサ『M-A352』を搭載し、計測震度計を開発、使い勝手の良さや高精度、耐久性を高い次元で両立させ、このたび気象庁の計測震度計検定に合格した。

 エプソンは、「省・小・精の技術」を極めた高精度センシング技術により、地震・環境振動計測をはじめ、大型構造物のヘルスモニタリングや橋梁モニタリングなど幅広い用途での高精度計測を実現、安全・安心な社会の実現に貢献するとしている。

※1:気象測器:温度計・気圧計・湿度計・風速計・日射計・雨量計・雪量計
※2:サーボ加速度計:地震観測や土木構造物の微動計測に広く使用されている高精度な加速度センサ原理方式

ニュースリリースサイト(EPSON):https://www.epson.jp/osirase/2022/220616.htm

TOPPANとブルックマンテクノロジ、最長30mの距離を測定できる次世代ToFセンサ

 凸版印刷(株)は、子会社の(株)ブルックマンテクノロジと共同で、1~30mの範囲で距離を測定できる「ハイブリッド駆動ToF(Time of Flight)方式」(※1)による「三次元距離画像センサ(以下 3Dセンサ)」を開発した。これにより、従来主流となっている「間接ToF方式」による3Dセンサの5倍以上遠くまでの範囲で距離の計測が可能となり、センサを搭載することにより障害物を回避するなどの動きをする自律飛行ドローンや自律走行型搬送ロボットなどの操作性と安全性の向上に寄与する。
 また、このハイブリッド駆動ToF方式による3Dセンサは、独自の外光ノイズ除去機能を搭載し、CMOS方式のイメージセンサとして世界で初めて(※2)真夏の日中に相当する照度10万ルクスの環境下で、最長20mまでの距離を測定できる。

 この新方式によるToFセンサの技術内容は、2022年6月13日から米国・ホノルルで開催の半導体技術に関する国際学会「VLSIシンポジウム(正式名称:2022 IEEE Symposium on VLSI Technology & Circuits)」(主催:米国電気電子学会)にて、2022年6月15日に、凸版印刷とブルックマンテクノロジおよび静岡大学により共同で発表された。

▮開発の背景
 近年、スマートフォンやゲーム機の高機能化、産業用の自律走行ロボットなどの普及に伴い、3Dセンサの市場拡大が期待されている。3Dセンサには、距離検出原理の違いによりいくつかの方式があるが、発した光が反射されて跳ね返ってくるまでの時間を測り、対象物までの距離を推定する「ToF方式」は、近年の技術開発の進展に伴い、小型化、低消費電力という特長からスマートフォンを皮切りに採用が進んでいる
 自律走行ロボットやドローンでは、数十m先の障害物を検知し、取得した映像から自分の位置を把握する「環境マッピング」機能が必要だが、従来主流となっている「間接ToF方式」の3Dセンサでは、屋外で使用する場合に十分な「外光耐性」が得られないことが、普及の障害となっていた。  凸版印刷は、ブルックマンテクノロジの子会社化を通じて、両社の保有する強みを活かし、新型の3Dセンサの開発を進めてきた。ブルックマンテクノロジが得意とする「ショートパルス駆動方式」(※3)を改良したハイブリッドなToF技術を新たに開発し、長距離測定性、高い外光耐性に加えて、高速撮像性と複数台の同時駆動を可能にした。

▮今回開発した新型ToFセンサの特長
➀ 30m先までの長距離測定が可能
 ハイブリッドなToF駆動方式の採用により、既存機種より約5倍長い、30m先までの距離測定が可能となった。
➁ 真夏の屋外でも測定可能なノイズ除去機能
 センサの画素一つひとつに外部光の成分を除去する機能を搭載した。これにより、外光のノイズを除去することができるため、真夏の日中程度である10万ルクスの外光下でも正確な距離測定が可能である。
③ 毎秒120枚の高速撮像
 距離の測定と、外光ノイズ除去を1フレームで完結させることで、「測定エラー」の原因となるブレを発生させることなく距離を測ることが可能。これにより、従来機種より約4倍多く、1秒間に最大120枚の距離画像を取得することができる。
➃ 最大256台のカメラの同時駆動が可能
 独自の制御法により、他のカメラが発する信号光を、外光と同じように除去できる。これにより、カメラ同士が干渉することなく、複数のカメラを同時に駆動できるため、最大で256台のカメラを同時に駆動することが可能。

▮今後の目標
 凸版印刷とブルックマンテクノロジは、新方式によるToFセンサが自律型移動ロボットや産業機器などの可能性を高める新たな「眼」として普及することを目指し、さらに安全で便利な社会の実現に貢献していく。凸版印刷は、この新しいToF方式による距離センサを搭載したカメラの開発も進めており、評価用モデルの提供を2022年12月に開始し、2023年秋の販売開始を計画しているという。

※1 「ハイブリッド駆動ToF方式」とは、静岡大学・川人祥二教授により提唱されたToF計測法で、位相差によって距離を計測する「間接ToF方式」をベースに、時間差によって計測する「直接ToF方式」の機能を組み合わせた、新しいセンシング技術。「マルチタイムウインドウ技術」と呼ばれる、複数の短時間ウインドウの組み合わせにより光の往復時間を推定するため、従来の間接ToF方式と比較して、屋外でのセンシング時に問題となる外光ノイズの影響を受けにくいという特長がある。
※2 アバランシェフォトダイオードを用いない、従来のCMOSイメージセンサ型の画素構造を用いたToFセンサとして。先行技術論文および先行製品のカタログ調査に基づくTOPPAN 調べ(2022年6月)。
※3 「ショートパルス駆動方式」とは、連続波の光を出し続ける「コンティニアスウェーブ方式」とは異なり、非常に短い時間幅のパルス光を照射して測距を行う駆動方式。

ニュースリリースサイト(TOPPAN):https://www.toppan.co.jp/news/2022/06/newsrelease220616_2.html

ST、車載・産業アプリケーション向けに柔軟性に優れた高電圧オペアンプ

STマイクロエレクトロニクスは、低消費電力の汎用デュアル・オペアンプ「TSB622」を発表した。
同製品は、車載・産業アプリケーションの堅牢性と設計の柔軟性向上に貢献するという。

TSB622は、ユニティ・ゲインで安定的に動作し、広い動作温度範囲(-40°C~125°C)を備えた車載グレードの製品である。電源電圧範囲が2.7V~36Vと広範なため、同製品を使用してさまざまな電圧仕様を持つ広範なアプリケーションを設計することができる。レール・ツー・レール出力によりダイナミック・レンジが最大化されているとともに、入力オフセット電圧が1mVと低いため、低電圧動作の機器において高精度を実現する。

TSB622は、1.7MHzのゲイン帯域幅(GBW)とチャネルあたり最大でも375μAの動作電流(36V電源使用時)を実現しており、消費電力に比べて高速動作が可能。消費電流が低いため、低消費電力が求められるアプリケーションに最適であるとともに、バッテリ駆動機器の動作時間延長に貢献する。

また、HBM(人体モデル)における4kVのESD耐性を備え、EMI(電磁干渉)耐性も強化されているため、産業機器および車載機器における苛酷な使用環境にも対応することができる。

TSB622は、SO8およびMiniSO8パッケージで提供され、基板面積とシステム全体の部品コストの削減に貢献する。また、2022年7月までに、車載対応のDFN8ウェッタブル・フランク・パッケージでの提供も開始される予定。同パッケージは、自動車産業で要求されるはんだ付け強度に対応する。

TSB622は現在量産中。1000個購入時の単価は、産業グレード対応品が約1.12ドル、車載グレード対応品が約1.34ドル。STのeStoreでは、無償サンプルも入手可能である。

製品詳細サイト(ST):
https://www.st.com/ja/amplifiers-and-comparators/tsb622.html?icmp=tt26943_gl_pron_may2022

超音波による薄型可変焦点レンズ(2)

小山 大介
同志社大学 理工学部
教授
小山 大介

4.液晶レンズ

 現在主にディプレイ用途として使われる液晶によって超薄型の可変焦点レンズを実現できる.よく知られる様に,液晶デバイスでは外力を加え,その分子配向を制御することによって光学的屈折率を変化することが可能であり,主に透明電極(酸化インジウムすず(ITO))による電界制御型が採用されている.しかしながらITOはレアメタルであるインジウムを含むため,代替材料の開発が急務とされている.一方著者らのグループはこれまでにITOを用いることなく,超音波の放射力によって直接的に液晶分子配向を制御する手法を開発した10,11).ここでは本技術を用いた超音波液晶レンズについて紹介する12-15)
 図6は超音波液晶レンズの構造であり,直径の異なる2枚の円形ガラス基板内側に液晶分子の初期配向が基板に対して垂直に並ぶ様に配向膜を塗布し,レンズ中心部に液晶層(厚さ50 µm)を設け,ガラス基板の外周にリング型圧電振動子を接着している.振動子に連続正弦波信号を入力すると,レンズ全体にたわみ振動が発生し,液晶層,ガラス,周囲空気の各界面に音響放射力が作用し,液晶の分子配向が変化する.液晶分子は光学的一軸異方性を示すため,分子配向が変化すると実効的な光学屈折率分布も変化し,その結果透過光は偏向・屈折する.よって,液体レンズ,ゲルレンズと同様に,入力電圧によって屈折率空間分布の制御が可能となり,焦点距離を変化することができる.
 図7はレンズ中心部分におけるガラス基板表面に発生する超音波振動(63.6 kHz)の分布(コンター図)と液晶分子の配向方向(黒棒)を表している.超音波非駆動時は垂直方向(紙面奥行き方向)に配向していた液晶配向は,超音波駆動によって,超音波たわみ定在波の腹の位置(振動振幅が大きい位置)であるレンズ中心付近から湧きだす方向に配向する.すなわち,超音波振動によって液晶分子の配向が軸対称に変化し,液晶分子配向に沿って入射光が屈折する光偏向効果によって焦点は変化する(図8).

図6 超音波液晶レンズ
図6 超音波液晶レンズ
図7 超音波液晶レンズ中心部分の振動と液晶配向
図7 超音波液晶レンズ中心部分の振動と液晶配向
図8 超音波液晶レンズを用いた撮影画像
図8 超音波液晶レンズを用いた撮影画像

5.おわりに

 本稿では,これまでに著者らのグループが開発した超音波を用いた可変焦点レンズを紹介した.液体レンズ,ゲルレンズ,液晶レンズの3種はいずれも音響放射力を用いた同じ動作原理に基づく超音波光デバイスであるものの,構造,時間応答性,耐震性,製品寿命,光学性能などの点において一長一短が存在することから,産業応用を考えた場合はこれらの特性を考慮する必要がある.しかしながら,言うまでも無くここで示した各実験結果はいずれも研究室レベルの域を超えないものであるため,今後具体的な産業用途に合わせた設計開発が必要であろう.



参考文献

  1. S. Taniguchi, D. Koyama, Y. Shimizu, A. Emoto, K. Nakamura, M. Matsukawa, Control of liquid crystal molecular orientation using ultrasound vibration, Appl. Phys. Lett., Vol. 108, No.10, p. 101103 (2016)
  2. Y. Shimizu, D. Koyama, S. Taniguchi, A. Emoto, K. Nakamura, M. Matsukawa, Periodic pattern of liquid crystal molecular orientation induced by ultrasound vibrations, Appl. Phys. Lett., Vol.111, No. 23, p. 231101 (2017)
  3. Y. Shimizu, D. Koyama, M. Fukui, A. Emoto, K. Nakamura, M. Matsukawa, Ultrasound liquid crystal lens, Appl. Phys. Lett., Vol.112, No. 16, p.161104 (2018)
  4. Y. Harada, D. Koyama, M. Fukui, A. Emoto, K. Nakamura, M. Matsukawa, Molecular orientation in a variable-focus liquid crystal lens induced by ultrasound vibration, Sci. Rep., Vol. 10, p. 6168 (2020)
  5. J. Onaka, T. Iwase, M. Fukui, D. Koyama, M. Matsukawa, Ultrasound liquid crystal lens with enlarged aperture using traveling waves, Opt. Lett., Vol. 46, No. 5, pp. 1169-1172 (2021)
  6. J. Onaka, T. Iwase, A. Emoto, D. Koyama, M. Matsukawa, Ultrasound liquid crystal lens with a variable focus in the radial direction for image stabilization, Appl. Opt. 60(33), 10365-10371 (2021)


【著者紹介】
小山 大介(こやま だいすけ)
同志社大学 理工学部 教授

■略歴
2005年同志社大学大学院工学研究科博士後期課程修了(博士(工学)).同年東京工業大学精密工学研究所助手,2011年同准教授.2012年同志社大学理工学部准教授,2018年同教授,現在に至る.
これまで超音波と光を用いた波動応用デバイス,特に超音波アクチュエータや医用デバイスに関する研究に従事.2008年日本音響学会粟屋潔学術奨励賞,2013年エヌエフ基金研究開発奨励賞優秀賞,コニカミノルタ画像科学奨励賞(優秀賞),2016年文部科学大臣表彰若手科学者賞など各賞を受賞.IEEE,日本音響学会,応用物理学会,電子情報通信学会会員.現在Nature Publishing GroupのScientific Reports誌編集委員を務める.

画像処理・画像解析による医療支援 〜内視鏡と画像強調解析における画像センサの役割〜(2)

納谷 友希
徳島大学大学院医科学教育部
医学研究科
徳島大学ポストLED
フォトニクス研究所
納谷 友希
髙成 広起
徳島大学ポストLED
フォトニクス研究所
髙成 広起

4.医療診断に求められる画像

 疾患の画像診断では、画像には「細かい病変まで見える」「病変と正常の境界が明瞭に見える」「経時変化が分かる」など多くの条件が求められる。画像センサのスペックはこれらの条件を満たすか否かを左右する重要な因子だが、中には両立が困難な条件も存在しうる。そのような場合は各条件に優先順位を設定しつつ、診断画像の用途に応じた必要条件を洗い出す必要がある。本稿後半では、画像診断装置の開発で考慮すべき画像の評価について、血管を例に挙げて概説する。

5.血管画像の評価

 データを評価するには主観的手法と客観的手法がある。主観的評価は観察者の受ける印象や感覚に基づくため、定量化が難しい、個人差によりばらつく、等の問題点がある。ただし主観的評価は現場の声を反映することもあり、医療機器開発で医師や看護師の主観的評価を取り入れることも少なくない。一方で客観的評価は物理パラメータを数値化するため、基準値による比較評価が可能である。開発製品を、先行・競合する製品と比較する際、客観的データは不可欠である。画像診断装置の場合、主に画像センサの解像度(画素数)や画像取得の更新頻度(サンプリングレート)が比較されるが、前者は空間分解能、後者は時間分解能に関係する。微小な病変を検出するには高い空間分解能が求められ、刻々と変化する生体の形態や性状の変化をリアルタイムで観察するには時間分解能が求められる。近年は画像センサが発達し、高精細な画像をリアルタイムに取得できるようになり、内視鏡などの画像診断装置に活かされている。

 画像センサのスペックとは別に「得られた画像からどのような印象を受けるか?」という評価もある。「被写体の輪郭が明瞭か」あるいは「画像の明暗がはっきりしているか」といった指標で、私達が画像から受ける印象は大きく変わる。主観的評価のようでもあるが、前者はシャープネスとして観察対象のエッジ付近の画素における階調変化を指標に、また後者はコントラストとして階調分布を指標に、それぞれ定量評価できる。

 私達は、単色照射光の波長や半値幅を変化させた場合に、得られる画像のシャープネスとコントラストがどのように変化するかを検証し、血管の強調画像分析にどのような光源が適しているかを考察した。画像のシャープネスは血管の輪郭部の鮮明さを指標とした。一方で血管内のコントラストは、血管で吸収される光の波長や散乱光の量に依存することから、血管の深さ情報を知りうると考えた。生体に光を照射した場合、波長の異なる青色光と緑色光では照射光到達深度が異なる。浅層に位置する血管では青色光と緑色光の両方が吸収されるために血管は黒く描出される。一方で深層に位置する血管には青色光が到達せず、緑色光のみが吸収されるため、合成画像の血管は薄いシアンに描出される。従って血管の走行位置が深くなるにつれて、合成画像の血管は黒色から薄いシアン、さらに薄い白色になると考えられる。図3に実際に用いた光学実験系を示す。白色光源とバンドパスフィルタの組み合わせで複数の中心波長・線幅を持つ光をマウスの耳組織(皮下の血管観察)に照射し、対物レンズ・結像レンズを介してモノクロCMOSカメラ(ThorLabs社製、1,920×1,080 pixel)で撮像した。撮影画像は画像解析ソフトウェアFiji Image J(ver. 1.53c)を用いて処理・解析した。

図3. a) 光学実験系のセットアップ、b) 光路の模式図
図3. a) 光学実験系のセットアップ、b) 光路の模式図

 合成処理した画像(図4a)で血管を横断する線(黄線)に沿って階調変化を微分すると、血管輪郭のシャープネスが理解できる(図4b)。さらに血管内部の明度分布をコントラストとし、シャープネスとコントラストの分布を見ると図4cのようになる。415 nm青色光の場合にシャープネスが、440 nm青色光の場合にコントラストが高くなった。血管画像のシャープネスとコントラストはある種トレードオフの関係にあり、毛細血管のような細かい血管を明瞭に可視化するには415 nm青色光が、大きな血管の深さ情報を得るには440 nm青色光が、それぞれ適している可能性がある。本研究結果はあくまで照射光による画像の見え方の違いを評価したのみであるため、さらなる研究が必要だが、センサのスペックや空間フィルタによって血管の情報をより的確に把握できるようになる可能性もあり、医療画像診断の高度化において画像センサや画像処理技術が潜在的な可能性を持つことを示唆する一例と考える。

図4. a) マウス皮膚の血管画像、b) 血管を横断する線上の輝度変化とその一次微分、c) 血管輪郭部のシャープネスと血管内部コントラストの分布
図4. a) マウス皮膚の血管画像、b) 血管を横断する線上の輝度変化とその一次微分、
c) 血管輪郭部のシャープネスと血管内部コントラストの分布

6.今後の医療に求められる画像センサ

 現代医療では今まで以上に診断・治療の低侵襲化や、疾患の早期診断に資することが求められている。内視鏡はCCD画像センサを内蔵したビデオスコープの開発によって、消化管領域の診断・治療に革命をもたらし、当該技術は腹腔鏡・胸腔鏡などの低侵襲手術に繋がる。さらに内視鏡の侵襲性低減を目指したカプセル型内視鏡など、医療機器の小型化・低侵襲化の歩みは止まらない。装置の小型化に伴って、画像センサもスペックを維持しつつ小型化する必要がある。

 2020年初頭から猛威を振るい、未だ終息の兆しが見えない新型コロナウィルス感染症は医療も大きく変化させつつある。以前より地域医療の分野では、地方の高齢者を対象として遠隔診療の重要性が指摘されていたが、人同士の接触を極力減らすべきWithコロナ時代では、都市部でも遠隔診療の需要が急速に拡大している。このような状況で患者の身体情報を正確に医師に伝達する手段として、画像センサの高度化と共に、画像情報を適切に処理・解析して情報化するIoT技術との融合が必要となるであろう。

謝辞
 ポストLEDフォトニクス研究所の鈴木秀宣先生には画像解析に関して、また江本顕雄先生にはデータ解析や原稿執筆に関して、多くのアドバイスを頂いた。この場をお借りして御礼申し上げる。



【著者紹介】

納谷 友希(なや ゆうき)
徳島大学大学院医学研究科医科学専攻 生体防御医学分野
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所 医光融合研究部門

■略歴
2017〜2021年 徳島大学理工学部 理工学科 情報光システムコース(光系)
2021年〜 徳島大学大学院医科学教育部 医学研究科 医科学専攻

理工学部から「医学と光技術を融合させた研究」に興味を持ち、徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所医光融合研究部門の髙成研究室で卒業研究を行う。現在も同研究室にて修論研究に従事している。

髙成 広起(たかなり ひろき)
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所 医光融合研究部門 准教授

■略歴
2000年 名古屋大学医学部医学科 卒業
2011年 名古屋大学大学院医学系研究科 学位(医学)取得
2011〜2013年 University Medical Center Utrecht(オランダ) 博士研究員
2013〜2016年 大分大学医学部 病態生理学講座 助教
2016〜2019年 徳島大学病院 糖尿病対策センター 特任講師
2019〜2022年 徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所 医光融合研究部門 特任講師
2022年〜 現職

6年間の臨床医としての経験を経て基礎研究へ転身。主に細胞や生体の生理機能を視覚的に捉えるバイオイメージングの研究を行う。2019年から徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所医光融合研究部門に所属し、「医学と光技術を融合させた研究」を目指して、従来のバイオイメージングに加えて新しいイメージング法の開発などに従事している。

非冷却型マイクロボロメータを検出素子とする赤外線サーモグラフィ装置を用いた アクティブサーモグラフィ法による非破壊検査
Active thermographic nondestructive testing using infrared thermography with uncooled microbolometers(2)

石川 真志
徳島大学
大学院社会産業理工学研究部
石川 真志

3.2 モルタル材料の検査

 アクティブサーモグラフィ法による非破壊検査のもう一つの例として、図6のようなモルタル試験片に対する検査例を示す。本試験片は300×300 mm、厚さ100 mmのモルタルブロックであり、人工欠陥として内部に4つの発泡スチロールを封入している。人工欠陥のサイズは25×25 mmおよび50×50 mmの2種類(いずれも厚さは10 mm)であり、表面から深さ10および30 mmの位置に設置した。本試験片の表面を500 Wのハロゲンランプで300秒間加熱した後に、加熱面を前節と同じ非冷却型マイクロボロメータを使用した赤外線サーモグラフィ装置(FLIR A315)で観察した。得られた熱画像を図7に示す。50×50 mmの欠陥についてはその存在が局所的な温度差として確認可能であるものの、熱画像ではサイズの小さな25×25 mmの欠陥検出は困難であった。図8は、前節と同様に、図7の熱画像を位相画像へ変換した結果を示す。位相画像変換することで50×50 mmの欠陥はより明瞭に確認できるようになり、また熱画像では検出が困難であった25×25 mmの欠陥も検出可能となっていることがわかる。これらの結果は、アクティブサーモグラフィ法およびそのポスト処理としての位相画像変換を利用することで、モルタルなどの土木材料中の表面から深さ数十mmに位置する欠陥部(空隙など)の検査も可能であることを示している。

図6 (a) モルタル試験片,および (b) 試験片の模式図
図6 (a) モルタル試験片,および (b) 試験片の模式図
図7 モルタル試験片へのハロゲンランプ加熱後に得られた熱画像
図7 モルタル試験片へのハロゲンランプ加熱後に得られた熱画像
図8 図7の熱画像を位相画像変換した結果, (a) 周波数0.002 Hz, (b) 周波数0.005 Hz
図8 図7の熱画像を位相画像変換した結果, (a) 周波数0.002 Hz, (b) 周波数0.005 Hz

4.おわりに

 赤外線サーモグラフィを利用した非破壊検査技術について、比較的安価で広く利用されている非冷却型マイクロボロメータを検出素子として使用した赤外線サーモグラフィ装置を使った検査の例を紹介した。また、その検査能力を改善する手法の一例として熱画像の位相画像変換技術を紹介した。この他、検査の条件・目的次第では、得られた熱画像/位相画像に対する一般的なデジタル画像フィルタやノイズ除去手法の適用も効果的な手段となる。量子型センサと比較して感度の劣る非冷却型マイクロボロメータによる赤外線サーモグラフィ装置を使用した場合でも、適切なポスト処理を行うことで多くの場合で高い検査能力を得ることが可能であり、様々な分野において実検査への適用が可能であると考えられる。
 なお、非冷却型マイクロボロメータのもう一つの欠点である応答速度の遅さについては、これらの処理での改善は困難である。非冷却型マイクロボロメータでの熱画像取得に際するフレームレートは高くて30 Hz程度であり、応答速度の限界を上回る非常に速い熱応答(例えば熱拡散率の高い金属材料中に生じる瞬時的な温度変化)の観察は不可能である。そのような高速撮影が求められる場合には、量子型センサを使用した赤外線サーモグラフィ装置の導入が必要となる。



【著者紹介】
石川 真志(いしかわ まさし)
徳島大学 大学院社会産業理工学研究部 講師

■略歴
2012年 総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻 修了
2012年 東京理科大学 基礎工学部材料工学科 助教
2015年 徳島大学 大学院ソシオテクノサイエンス研究部 助教
2017年 徳島大学 大学院理工学研究部(現 大学院社会産業理工学研究部) 講師
現在に至る
赤外線サーモグラフィおよび超音波を利用した非破壊検査技術の基礎および応用研究に従事。日本非破壊検査協会 赤外線サーモグラフィ部門 幹事。

高コヒーレンス波長掃引光源を用いたOFDRによる3次元形状計測(2)

腰原 勝
アンリツ(株)
センシング&デバイスカンパニー
腰原 勝
斉藤 崇記
アンリツ(株)
センシング&デバイスカンパニー
斉藤 崇記

4. OFDRによる形状計測

4.1 OFDR測定系の構成

 これまで示したOFDR測定系を実際に構築し、形状測定を行った。構築したOFDRシステムの外観写真を図3に示す。可搬性を考慮し、図2で示した波長掃引光源(AQA5500P)、光干渉計、受光器の他に、データ取得用のA/D変換ボードを1筐体に収めた。筐体サイズは370(W)×180(H)×340(D) mmであった。測定対象物へ光を照射するためのコリメータレンズ部は2自由度の回転ステージ上に固定し、筐体内に搭載した自動ステージコントローラによって2次元的に走査する構成とした。これにより、測定対象物の表面形状を測定できる構成とした。A/D変換ボードでサンプリングしたデータを解析、表示するためのPCは筐体外部に配置した。

図3 形状測定系の外観写真および構成
図3 形状測定系の外観写真および構成

4.2 車体側面の形状計測

 はじめに、車体側面の形状測定を行った。車体の大きさは、1.5(H)×4.4(W) m程度である。コリメータレンズは、車体から4.5 mの位置に置き、車体からの反射光パワーが最大となるように焦点距離を調整した。また、自動ステージを用いて縦方向φ±12°、横方向θ±27°の角度を走査することで、縦1.9 m、横4.6 mの範囲を測定した。波長掃引幅を24 nmとし、中央の線形性の高い10.5 nmの範囲を測定に用いた。これにより、理論分解能は113 µmとなる6)。波長掃引幅を広く設定することで分解能は向上するが、干渉信号の周波数は高くなる。また、測定距離を伸ばすことでも干渉信号の周波数は高くなる。測定系の周波数の上限はA/D変換ボードや受光器の帯域で決まる。ここで設定した波長掃引幅はAQA5500Pの製品仕様外での設定値ではあるが、長距離での測定を実現するため分解能を低くして測定を行った。なお、AQA5500Pの最大掃引幅は110 nmであるため、測定距離を短く設定すれば分解能は約10倍程度まで向上させることができる。
 測定の安定度を評価するため、定点測定を行った。コリメータレンズの位置を固定し、車体のドア付近を10秒間測定したところ、標準偏差(σ値)で5.6 µmであった。図4(a)に測定対象である車体の写真を、図4(b)に形状測定の結果を示す。形状測定の結果表示は縦500×横500ピクセルとした。測定箇所を分割して、その区域ごとにOFDRシステムの位置を移動させることなく、比較的大きな車体側面全体を一度に測定できている。図4(c)~(e)に、車体中央付近の断面図を示す。図4(e)に示した拡大図より、50 µm程度のリップルが観測されているが、遠距離から高精度に測定できている。

図4 車体側面の形状測定結果
図4 車体側面の形状測定結果

4.3 大型タンクの形状計測

 次に、大型タンクの形状測定を行った。本測定では波長掃引光源にAQB5500Pを用いた。AQB5500PはAQA5500Pに比べてコヒーレンス長が長いため、より長距離の測定が可能である。タンクの大きさは、8.5(H)×2.5(W) m程度である。コリメータレンズは、タンクから20 mの位置に配置し、自動ステージを用いて縦方向φ42°、横方向θ36°の角度を走査した。波長掃引幅を15 nmとし、中央の線形性の高い8.4 nmの範囲を測定に用いた。これにより、理論分解能は140 µmとなる6)
 前節で示した車体の形状測定と同様、測定の安定度を評価するため、定点測定を行った。コリメータレンズの位置を固定し、タンクからの反射光を30秒間測定したところ、標準偏差(σ値)で15 µmであった。図5(a)に測定対象であるタンクの写真を、図5(b)、(c)に形状測定の結果を示す。(b)に示す形状測定の結果表示は縦500×横500ピクセルとした。図5(c)より、20m先のタンクだけでなく、その後方10m程度(コリメータレンズからの距離30m)の距離まで測定できている様子が確認できる。

図5 タンクの形状測定結果
図5 タンクの形状測定結果

5. OCTへの応用

 測定対象物が光を透過する材質で構成されている場合、内部の屈折率境界面で反射された光を受光することにより、内部構造を可視化するOCTとしても利用することができる7)。図6(a)に測定対象であるポリプロピレン製の容器の写真を、図6(b)にOCT画像の全体図を、図6(c)に容器頂点部分の拡大図をそれぞれ示す。図6(b)に示すOCT画像の画素数は縦4027×横500ピクセルとした。図6(b)より、35 mmの距離を一度に測定できていることが分かる。また、図6(c)より、樹脂内部に層状の屈折率分布があり、縞模様として可視化されていることがわかる。測定深度が深くなるほど光量が減少するため鮮明度は低下しているが、4枚の容器がすべて確認できる。

図6 4枚のポリプロピレン製容器を重ねた場合のOCT測定結果
図6 4枚のポリプロピレン製容器を重ねた場合のOCT測定結果

まとめ
 アンリツ製波長掃引光源の製品仕様について説明した後で、本器を利用したOFDRによる形状測定について実測例と共に示した。高コヒーレンス性を特長に持つ当社製波長掃引光源を利用することで、大型の構造物を遠距離から一括で測定できることを示した。また産業用OCTへの応用についても言及した。
 本波長掃引光源は、その他の産業分野でも応用が期待できる。例えば、高コヒーレンス性の特長を利用して、手の届かない高所や、近距離からの測定が困難な高温部の形状や振動を遠距離から測定する用途が考えられる。また、光の透過性を利用して、ケースや恒温槽内部に置かれた対象物の経時的な形状変化や振動を槽外から窓を通して測定する用途などにも応用が可能である。更に、最大110 nmの広い波長掃引幅の特長を活かして、光デバイスの反射・透過特性の瞬時測定が可能であるなど、さまざまな用途で応用が期待できる。

参考文献

  1. 斉藤崇記,“高コヒーレンス波長掃引光源を用いた高精度形状測定”,IEICE Technical Report, OFT2020-43(2020-11).
  2. 腰原勝,“高コヒーレンス波長掃引光源を用いた光干渉測定”,光アライアンス,2021.11.


【著者紹介】

腰原 勝(こしはら まさる)
アンリツ株式会社 センシング&デバイスカンパニー 開発本部 第1開発部 主任

■略歴
2005年 法政大学大学院工学研究科情報電子工学専攻 修了。
同年、アンリツ㈱入社
その後、光計測器や波長掃引光源など、機器製品の設計開発業務に従事
現在に至る

斉藤 崇記(さいとう たかのり)
アンリツ株式会社 センシング&デバイスカンパニー 開発本部 第1開発部 主席研究員

■略歴
1988年 東京都立大学大学院理学研究課程物理学専攻修了。 同年アンリツ株式会社入社。 1993年 神奈川科学技術アカデミー大津「フォトン制御」プロジェクト派遣研究員。 光周波数コム発生器の研究に従事 1996年 アンリツ株式会社に復帰
1998年 東京工業大学より学位授与(工学博士)
現在、アンリツ株式会社センシング&デバイスカンパニー主席研究員。
ファイバセンシング、OFDRによる3次元形状測定等の研究に従事

東京ガス、事業者向けインフラ設備の遠隔監視・制御ソリューションの提供

 東京ガス(株)と東京ガスネットワーク(株)は、このたび、ガス事業者向けインフラ設備の遠隔監視・制御ソリューション(以下「本ソリューション」)の提供を開始した。

 本ソリューションは、東京ガスが提供する容易に監視・制御ソリューションが構築可能なソフトウェア「JoyWatcherSuite」を活用し、インフラ設備の監視・制御ノウハウを持つ東京ガスネットワークがシステムインテグレーターとして構築した都市ガスの整圧器*1(以下「ガバナ」)の遠隔監視・制御ソリューション。利用者のニーズに合わせて、ガバナから送出する都市ガスの圧力・流量等の多様なデータのリアルタイムな遠隔監視やガス遮断装置の遠隔操作など、さまざまなソリューション提供が可能となる。
 本ソリューションの導入により、現地での点検・保守作業の大幅な削減に加え、災害発生時の迅速な被害状況の把握やガバナの遠隔遮断を実現し、ガス事業者の監視業務の省力化やレジリエンス強化に貢献するという。(イメージ:画像)

 なお、鷲宮ガス(株)は、2022年6月1日より、ガバナのリアルタイム遠隔監視を目的に、本ソリューションを1ヶ所のガバナで導入した。PHSやFOMAのサービス終了に先立ち、4G/LTEを利用する本ソリューションへの切り替えを順次実施し、将来的に計15ヶ所のガバナに導入予定。

◆ガス事業者向けインフラ設備の遠隔監視・制御ソリューションの特徴
(1)多様なデータのリアルタイム遠隔監視
 「JoyWatcherSuite」に対応したテレメータを設置し、ガバナの圧力計、流量計、地震計、浸水センサ、監視カメラ等の多様なセンサ類を組み合わせてリアルタイムな遠隔監視が可能
(2)遠隔ガス遮断
 ガス遮断装置を組み合わせることで遠隔遮断が可能
(3)4G/LTE対応
 4G/LTEを利用しており、今後のPHSやFOMAのサービス終了に伴う停波への対応が可能

*1:都市ガス製造基地から送出される圧力の高いガスを、家庭向けなどで使用する圧力に減圧する装置。

ニュースリリースサイト(tokyo-gas):https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20220613-01.html

NejiLaw、IHIと共同で長大吊橋モニタリングシステムの運用を開始

(株)NejiLawは、(株)IHI及び(株)IHIインフラシステムと共同で、世界初となるNejiLawの「smartNeji」を用いた長大吊橋モニタリングシステムの運用を開始した。

 smartNeji は、NejiLaw の緩むことのないネジ「L/R neji」を軸力センサ化するとともに3D加速度センサ等の各種センサと通信モジュールを搭載したマルチセンシング IoT デバイス(ボルト)で、温度やボルト軸力などの情報をリアルタイムにクラウドサーバへ送信する。

 今回運用を開始したシステムは、間もなく竣工から50年を迎える長大吊橋に使用されている部材連結用高力ボルト(既設ボルト)の一部を、緩まないネジであるL/Rネジをベースとして構成されるsmartNeji に差し替え、部材間に生じる応力を精確に検出してモニタリングするもの。これにより、橋の荷重性能などを遠隔で定量的に常時把握可能とし、さらに地震や強風、走行車両の振動による応力状態を自律学習型AIによって自動分析することで、対象部材の損傷度合いを推定して通行規制の必要性を迅速かつ的確に判断することが可能になる。

 現在、橋梁をはじめとする社会インフラの老朽化が大きな社会問題となっている。一方、橋梁は主要部材をモニタリングして適切な維持管理を行うことで、その耐用年数を大幅に延ばし、橋梁全体の長寿命化につなげることが可能である。

 NejiLawと IHIグループは、最新の技術で社会インフラの健全性を効率的かつ定量的にモニタリングするシステムを構築し、労働人口が減少し続ける日本社会において社会インフラの維持管理を効率的かつ適切に取り組んでいくことで、国土強靭化政策に資するとともにサスティナブルな社会の実現に貢献するとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000045839.html