鹿島建設(株)土木管理本部 技術管理部長 川端 淳一
1. はじめに
日本のインフラは高度成長期の1960年代以降の20~30年間に急激に整備されたものが多い。したがって耐用年数ともいわれる建設後50年に達するインフラの割合は今後急速に増加し,2020年~2040年の20年間に橋梁(70万余)は22%から73%,トンネル(1万余)は10%から53%に増加する。すなわち今後15年間で日本のインフラは急速に劣化していく1) 。一方,自然災害の激甚化に対する懸念が目に見える形で進行している。例えば2) ,今後30年以内の南海トラフ地震(マグニチュード8~9クラス)の発生確率は70~80%,相模トラフ沿いのプレートの沈み込みに伴うマグニチュード7程度の地震の発生確率は70%程度(2022年1月1日基準)とされ,大地震発生時の対応,特に重要インフラ復旧のシナリオ(BCP)の整備の必要性が叫ばれている。また,短時間降雨量が増加し土砂災害や洪水被害も毎年発生している2) 。
さて,インフラを取り巻くこのような現状に対して様々な社会的課題が指摘されている。インフラ維持管理関連予算の不足,生産年齢人口の急速な減少,専門技術者の不足,先端技術の活用による点検の生産性の向上等々である。これらのうち「先端技術による維持管理の生産性向上」に関して新技術による成果創出が大きなニーズとなっている。先端技術を活用した生産性向上が実現すれば,人手不足に対応できるだけでなく,先端的なセンサ技術等からこれまでにない新しい情報がタイムリーに得られるはずである。これによりインフラの維持管理や運用方法の進化,ひいてはインフラの付加価値の向上が期待でき,関連産業の活性化といった相乗効果も期待できる。インフラは“老朽化するもの”というイメージが強いが,発展的に再整備しながら進化させていくべきものであり,新技術の活用を含めたインフラの再構築が求められる。
分布型光ファイバモニタリング技術は,まさにそうした先端技術の一つとして位置づけられるものであり,技術展開されればインフラの維持管理や運用の方法をゲームチェンジし一新させる可能性を秘めている。技術の大きな特長としては,分布計測で網羅的に構造物の状況を捉え劣化箇所を見逃さない,通信用光ファイバがセンサであり電気計測に比し寿命が長く安定している,通信用光ファイバと繋げるため拡張性が大きい等が挙げられる。光ファイバのインフラモニタリングに対する親和性が非常に高いことは以前より知られていたが,実用性の観点から精度,速度が追い付かず普及が進んでいなかった。しかし,今般のDX革命を背景とした技術革新が進んでおり実用に耐えうる性能を発揮できるようになった。一方,日本の通信用光ファイバは,高速道路,国道,鉄道,一級河川堤防内を縦横無尽に走っており,光ファイバ通信網の世帯カバー率も99.8%を越える等,世界有数の通信ネットワークが構築されている。これらとインフラモニタリング用の光ファイバを相互に接続できれば,センシングはネットワーク化され,遠隔地からインフラを監視することが可能となる。また,最後に述べるように光ファイバセンシングはインフラの維持管理のみならず,インフラ運用にも活用が可能であり,今後大幅な進化が期待できる。
インフラに設置した光ファイバと既存の光ファイバ通信網を活用したインフラセンシングネットワークのイメージ
2.分布型光ファイバモニタリングとは
1.1. インフラセンサとしての意義と構成
光ファイバセンサは小型軽量で,電磁気ノイズの影響を受けない,長距離伝送が可能,錆びずに長寿命(数十年以上)などの多くの特長を有する。なかでも,“分布型“光ファイバセンサは,光ファイバそのものがセンサとして機能するため,光ファイバ全長に沿って「ひずみ」,「温度」,「振動」などの情報を分布で得ることができ,通信用光ファイバと直接繋ぐことも可能である。「ひずみ」は構造物の設計に使われる基本パラメータであり,構造物の状態が建設直後から変化がないかどうかの指針として本質的なものである。すなわち,それを網羅的に捉えられるということは,構造物の劣化状況や地震等災害直後の状況の確認を行う上で決定的な情報を把握することとなる。また,「温度」や「振動」もインフラには非常に重要なパラメータであり,例えば道路等の構造物がどのような環境にさらされているか等の情報を,光ファイバを敷設した全線分布で知ることができるようになる。
センシング技術の基本的な構成は非常に単純であり,光ファイバの片端を測定器に接続するだけである。測定器から入射されたパルス光が伝播するとともに,光ファイバ内ではわずかな散乱光が発生し,その一部が入射端に帰還する。散乱光が帰還するまでの時間から位置を,散乱光の信号を分析することでその位置で生じたひずみや温度を得ることができる。
光ファイバセンサの構成
1.2. 優れた特長と基盤技術
光ファイバ内で生じる散乱光には三種類あることが知られており,ラマン散乱は温度の影響を受けることから火災検知などで広く展開されている。ブリルアン散乱は温度とひずみの影響を受けることから,インフラ分野における構造モニタリングなどでも一部で適用が進んでいた。近年,レイリー散乱を用いた温度とひずみ計測技術が具現化された。ブリルアン散乱を用いた計測技術では,計測レンジは大きいものの計測精度や計測時間の点で課題があったが,レイリー散乱を用いた新たな計測技術では,非常に高速・高精度での分布計測を実現できる。光ファイバセンサの特長は,こうした様々な計測技術を一本の同じ光ファイバで実現できることであり,新たな技術の出現によって僅かな変化から大きな変化までカバーできるようになり,技術的な足枷がほぼなくなってきており,インフラ分野における展開が急速に広がっている3) 。
インフラモニタリングで重要なことのひとつは,光ファイバをいかに対象物へ設置するかである。各計測技術の特長を十分発揮できるように,対象と光ファイバを一体化させる必要がある。計測対象に生じる挙動を考慮したうえで,適切な光ケーブルを選択し,光ファイバの伝送損失がないよう光ケーブルを設置することが重要であり,弊社ではそうした技術の標準化を進めている。
様々な光ケーブル
2. インフラモニタリングにおける活用事例
2.1. トンネル(支保,盤ぶくれ,既設トンネルのひび割れ)
インフラ構造物の維持管理は近接目視による定期点検がその基本であり,それに基づき部材の変状などを把握したうえで,診断,措置が施されることとなる。最近のトンネルの維持管理で問題となっているのは建設後の地盤の圧力や変状に起因する底盤部の盤ぶくれの変状である。トンネルの点検は5年間隔で行われ,目視可能な変状しかとらえることができないが,盤ぶくれによる変状は交通機能を損なう可能性があり,特にわが国のように山が多く,地形が複雑な国では,早目にこうした変状を捉えることが重要である。光ファイバセンサは小型軽量で,支保や覆工,インバートなどへの設置や埋込みが容易であり,これまで様々なトンネル現場での光ファイバセンサ設置を通じて,その適用性を検証してきた4) 。特に,部材に沿った網羅的な情報が得られるため,これまでのポイント型によるモニタリングと比較して,ひずみが最大値となる箇所も見逃すことがない。また,設置した箇所から光ケーブルを延伸しておけば,いつでも道路規制することなく高頻度な常時モニタリングが可能となる。長寿命な光ファイバを活用して客観的なデータ取得を長期的に実現できるため,徐々に生じるような変状に対しても有効である。
光ファイバによるトンネルの監視とモニタリング結果例
2.2. 橋梁
橋梁の維持管理の定期点検において,コンクリート床版や橋脚などの点検項目において表面のひび割れ点検は重要な項目である。ひび割れはコンクリートの美観を損ねるだけでなく,水や酸素などの劣化因子が侵入して耐久性を低下させたり,ひび割れが進展すると構造的な強度を低下させる原因にもなりかねない。そこで,ひび割れ幅が0.2mm以上の場合には記録とともに原因や注入などの補修の検討が必要とされている。橋梁はその構造上,交通規制をかけながら高所作業車や特殊な橋梁作業車によって近接目視点検されている。最近では,ドローンによって得られる高解像な画像が点検の効率化に寄与しているが,ひび割れ点検を見逃しなく網羅的,定量的に捉えられる技術があれば,維持管理はもちろん,震災後などにおいての道路啓開判断にも有効なものとなる。
下記の写真はPC橋梁の主桁部に全長光ファイバセンサを固定して,そのひび割れの有無を長期的にモニタリングしている事例である。コンクリートのひび割れ発生位置を予め特定することは困難であるが,最新の分布型光ファイバセンサによれば,非常に微小なひび割れの有無や箇所,その幅,進展をリアルタイムで捉えることができる。当該橋梁においては,供用後15年間の定期的なモニタリングを通じて,少なくとも20ミクロン幅以上のひび割れが生じていないことを確認している5) 。光ファイバケーブルの端部は橋脚部の端子箱に収納されており,道路占有などは不要で,簡単にいつでも迅速にひび割れモニタリングを実施することが可能となっている。
光ファイバによる橋梁の監視
2.3. 法面
近年頻発する豪雨災害において,生命や財産を守るという観点から,法面面監視の重要性は非常に高い。ゲリラ豪雨は予測がむつかしいことから,崩壊などの余長を早期に把握し,のり面災害発生のリスク低減が求められている。人々の生命や財産を守るうえでも,また交通などのインフラの機能維持などの点からも重要である。グラウンドアンカーは,広く普及しているのり面補強工のひとつで,地盤内のアンカー体の張力をテンドンと呼ばれる緊張材を通じて地表面を固定している。地すべりを抑止するためには,テンドンに加わる緊張力の管理が大切である。地表面付近の緊張力の確認には特殊な試験装置を用いて,現場に足場を築いての計測が必要で手間がかかる他,地表面付近の緊張力だけから変動要因まで把握することは不可能である。スマートストランド®は,光ファイバを組み込んだPCケーブルであり,グラウンドアンカーに適用すれば,その全長にわたる緊張力を常時把握できる。そのため,緊張力の変動,地盤内の変動箇所や地盤に起因する原因推定ができ,対策工や緊急対応時に活用することができる。地すべりが生じているのであれば,当該アンカーを再緊張すれば良いが,アンカー体の引抜き抵抗力が低下しているのであれば,アンカーの追加設置が必要である。これまでに,設置後5年を越える実績を重ねるとともに,高速道路近傍ののり面でも適用と実証を進めている6) 。豪雨時にも,遠隔から安全にのり面状況を監視可能で,設計値などとの比較をもとにその安全性を評価できる技術である。
光ファイバによるのり面の監視
2.4. 空港(羽田空港)
羽田空港4本目のD滑走路は,2010年に供用が開始されたが,その構造は,埋立部,多摩川河口域の桟橋部,そのあいだを結ぶ接続部と連絡誘導路部の4つに大別される。埋立部では,空港基盤として世界で初めてジャケット構造(鋼管杭と鋼桁)が採用された。施工当時,将来的な構造監視を想定して光ファイバセンサがジャケット構造の一部に設置されている。特に,地震などにおける杭損傷の有無を早期に把握することは,わが国の経済活動を支える重要な社会交通基盤の観点から極めて重要である。
光ファイバによる空港設備の監視
以前に行われていたブリルアン散乱のみによるひずみ分布計測の精度では,鋼管杭の構造評価を行うことは難しかった。そこで,同じ光ファイバを用いて,レイリー散乱も含めたひずみ分布計測を適用,検証した結果,ひずみゲージと同等の精度で鋼管杭の挙動を把握できることを確認した。海中の劣悪環境下においても,わずかな変状を見逃すことなく監視できる手段としての実用性が証明できた7) 。現在,実際の監視業務のなかへ実装できるような評価方法やシステム化の検討を進めている。
次回に続く-
参考文献
国交省 社会資本老朽化対策情報ポータルサイト インフラメンテナンス情報 – 社会資本の老朽化対策情報
防災白書 令和5 年 特集1 第2 章 第1 節 自然災害の激甚化・頻発化等 : 防災情報のページ – 内閣府
今井道男,川端淳一,平陽兵,永谷英基(2022),革新的光ファイバセンサによるインフラモニタリング~ 高速・高精度な分布型光ファイバ計測のインフラへの活用~,電子情報通信学会技術研究報告,121(332),17-20.
石井雅子,黒川紗季,野中隼人,宮嶋保幸,今井道男,川端淳一(2021)光ファイバによるインバートの計測管理技術,トンネル工学研究発表会講演集,31,1-6.
小泉恵介,藤原航太郎,今井道男,平陽兵,川端淳一,太田伸之,早坂洋太,髙梨大介(2023),光ファイバセンサによる UFC 製橋梁主桁の 15 年次計測,令和 5 年度土木学会全国大会第 78 回年次学術講演会,CS11-63.
今泉尚也,永田政司,杉本伸,青木楓,栗原健吾,曽我部直樹,今井道男,江上眞,高梨大介(2023),高速道路切土のり面のグラウンドアンカーへの光ファイバ張力計測システムの適用,令和5 年度土木学会全国大会第78 回年次学術講演会,VI-1146.
樽谷早智子,新原雄二,新井崇裕,今井道男,野津厚,小濱英司,大矢陽介,山路徹(2024),羽田空港D滑走路における光ファイバ計測の維持管理への適用検討,第49 回海洋開発シンポジウム.
【著者紹介】
川端 淳一(かわばた じゅんいち)
鹿島建設(株)土木管理本部 技術管理部長
■略歴
1986年 早稲田大学 大学院 建設工学修士卒
1992年 筑波大学 工学研究科 工学博士
1992年 鹿島建設㈱ 技術研究所
1999年~2000年 英国 ケンブリッジ大学 工学部 派遣研究員
2005年~2006年 鹿島建設㈱ 名古屋支店 現場勤務
2018年~ 鹿島建設㈱ 本社 土木管理本部
(株)トリマティス 代表取締役 鈴木 謙一
1.はじめに
日本を取り巻く広大な海洋およびその資源の有効活用,老朽化する水中インフラや新たな水中インフラの効率的な点検のためには,海中の詳細データの取得が不可欠であり,水中へのICT/IoT技術の積極的な導入が期待されている1,2) .しかし現状では研究機関用の水中技術が主体である.ところで水中では地上で広く使われている電波が使えないことから,水中での伝搬損失の小さい音波が広く使われてきた.一方,音波は水中での伝搬損失が小さく到達性に優れているが電波に比べて扱える情報量が少ない欠点がある.そこで,水中での損失が小さい可視光を使った水中光無線技術の適用を検討し,既存の水中技術と併用することにより水中を見える化する大容量ネットワークの実現を目指す2,3) .
図1 水中(海中)での音波,電波,および光の損失
水中(海中)での音波,電波,および光の損失を図1に示す.図に示す様に,水中での電磁波,音波の損失は周波数が高くなるほど大きくなる.一方光については,可視光領域,特に青色から緑色(浅海や濁度が高いところでは黄色)で損失が小さくなることが知られている.また深海では、青~緑色の光が低損失,近海・沿岸、浅海・湾内と濁度が高くなると緑から黄色へと低損失波長が(さらに汚くなると赤が低損失波長に)シフトする.
次に水中で利用可能な光デバイスについて述べる.青色光源としては,変調帯域がGHz程度以下と狭いが,高出力で,低コストなGaN-LDが普及している.また緑色光源としても期待されている.LD以外にも,ファイバーレーザー,固体レーザーや波長変換による緑色光源が入手可能である.黄色光源としては,固体レーザーや波長変換による研究開発が行われている.受光素子としては,可視光に感度があり高速なSi-APDや,さらに高感度なMPPC(Multi-pixel Photon Counter),PMT(Photo Multiplier Tube)の利用が期待されている2) .
2.水中LiDAR
2.1 水中LiDARの開発状況
トリマティスの開発するLiDAR(Light Detection and ranging)は,計測対象物にパルス化したレーザー光を照射し,その反射光が戻ってくるまでの時間から対象物までの距離を計測するToF(Time of Flight)LiDARがベースである.またレーザー光で縦横にスキャンすることで“ものの大きさ”を正確に測定することが可能である.
トリマティスでは,電波に比べて水中での損失が小さく,音波に比べて扱える情報量の多い可視光を使った水中LiDARの開発を行っている2) .これまでの水中LiDARの開発状況を図2に示す.
図2 水中LiDARの開発状況
初期に開発した水中LiDARは,直径φ200mm×全長L440mm(約16.6リットル)と大きく,計測もガルバノスキャナを用いて時間をかけて行うものであったが,開発した水中LiDARを使って水中実験を繰り返すことにより課題の抽出と解決を図った.実装の改善,パルスエッジ検出精度の改善,およびMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)による高速スキャナの採用などにより,小型・高精細で高速スキャン可能な水中LiDARを実現した.これによりφ150mm×L300mm(約6.6リットル)のサイズダウン,スキャン速度20フレーム/s,最大計測点数120万ポイント/sの高速スキャンを実現した.
2.2 水中LiDARによる計測例
実際に泳いでいる魚を水中LiDARで計測した結果を図3に示す.図に示す様に,スキャン速度の向上により動いている計測対象物をリアルタイムに計測することが可能となっている.また測定対象物(魚の模型)を側面から計測し,視点を変えて3D表示した結果を図4に示す.取得した点群データを3D表示することで,視点を変えて,側面,斜め,上方から見た測定対象物の形状を再構築することができ,単一視点からの計測でも立体的な計測情報を得ることができる.
図3 泳いでいる魚を水中LiDARで計測した結果
図4 測定対象物(魚の模型)を側面から計測し,視点を変えて3D表示した結果
さらに高機能化(高精細+新機能)を行うため,RGBカメラと水中LiDARを融合させたフュージョンセンサー(アクアフュージョンセンサー)を開発している4,5) .アクアフュージョンセンサーは水中にある物体(構造物,地形,生物など)の3次元データを、レーザーでスキャンすることにより得られた精密な3次元位置情報と,カメラより得られたカラー画像と組み合わせてリアルタイムに取得,表示できる先進的なセンサーである.また水中では初となるRGB3色を用いた3次元計測,LiDARとカメラの計測データの融合を可能としている.
次回に続く-
参考文献
内閣府 海洋資源の開発及び利用(2024年8月8日閲覧)
https://www8.cao.go.jp/ocean/kokkyouritou/yakuwari/yakuwari03.html
鈴木謙一,高橋成五,“水中LiDAR ~水中における可視光3DスキャンLiDARの開発~“,電子情報学会 通信ソサイエティマガジン No.60,春号2022, pp.307-313
ALAN (ALANコンソーシアムWeb page,2024年8月8日閲覧)
https://www.alan-consortium.jp/
鈴木謙一,奥澤宏輝,川端千尋,手塚耕一,“視光デバイスを用いた水中 LiDAR の開発”,2023年電子情報通信学会総合大会,ABI-1-4,(2023-3)
Ken-Ichi Suzuki, Hiroki Okuzawa, Chihiro Kawabata, Koichi Tezuka, “Underwater LiDAR utilizing Visible Light Devices”, URSI GASS 2023, paper D02-2-3, August 2023.
【著者紹介】
鈴木 謙一(すずき けんいち)
株式会社トリマティス 代表取締役,博士(情報科学)
■略歴
NTT研究所において超高速光伝送方式や光アクセスシステムの研究開発,IEEE802.3WG,1904WGにおいてPONの標準化に従事後,2019年株式会社トリマティス入社.水中LiDARや水中光無線通信技術の研究開発に従事.2024年4月より現職.OPTICA(前OSA),IEEE,信学会各会員.
パナソニック ホールディングス(株)ならびにパナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)は、2024年4月に九州工業大学との共同研究にて設計・製造を行った3Uサイズ(10 cm x 10 cm x 30 cm)の超小型人工衛星「CURTIS」を国際宇宙ステーション(以下、ISS)から放出し、「CURTIS」そのものの動作実証とともに、パナソニックグループにて製造販売している部品やコンポーネンツの宇宙空間での技術実証を実施している。このたび、搭載しているパナソニック オートモーティブシステムズ(株)の車載カメラの実証により得られた画像を公開した。
人工衛星や宇宙機器には様々な電子部品やコンポーネンツが搭載されていくことが想定される中、地上で利用されている車載カメラを用いて宇宙空間での静止画及び動画撮影の実証を行っている。宇宙空間や地球上空からの撮影、ならびにISSから放出された20秒後に行ったISSの撮影にも成功した。技術実証を通じ、宇宙用途として転用できる可能性を検証していくという。
■車載カメラの特徴
車載カメラは身近なスマホ、デジカメなどとは異なり、軽量でありながら、低温から高温までの幅広い温度条件範囲での使用や、防塵・防滴、振動・衝撃に対する高信頼性など、様々なシーンでの高い視認性が求められる。
また、宇宙空間での技術実証にあたり、宇宙空間で必要とされる熱真空試験、振動試験、放射線照射試験などの地上での信頼性試験に合格している。
<仕様>
・HDR(ハイダイナミックレンジ)対応260万画素CMOSセンサー採用
・ローカルトーンマッピング(局所輝度補正)技術により白飛び、黒つぶれを防止し、適正コントラストを実現
・低遅延、非圧縮の高速LVDS(Low Voltage Differential Signal)同軸デジタル伝送
・動作温度:-30℃~85℃
※本成果の一部は、経済産業省 産業技術実用化開発事業費補助金(令和2年度~令和4年度)、情報処理・サービス・製造産業振興研究開発等事業費補助金(令和5年度)を活用した研究開発において得られたものである。
プレスリリースサイト(panasonic):https://news.panasonic.com/jp/topics/205856