アーカイブ

センシングを支えるアナログ・デバイセズの技術

永井 郁(ながい いく)
アナログ・デバイセズ(株)
リージョナル・ビジネス・グループ
永井 郁
井口 璃音(いぐち りおん)
アナログ・デバイセズ(株)
デジタルインフラストラクチャー
ビジネスグループ
井口 璃音
渡邉 慶太郎(わたなべ けいたろう)
アナログ・デバイセズ(株)
インダストリアルビジネスグループ
渡邉 慶太郎

 現代の情報通信社会において、物理世界のあらゆる環境事象はセンシングを通してデジタル世界に伝達され、我々の生活の中で日々の判断や行動に必要な情報として活用される。図1に物理世界とデジタル世界をつなぐセンシングの概念図を示す。図1の左より、物理世界の事象は化学的または物理的な現象を利用したセンサを用いて温度、湿度、音、振動などの様々なパラメータとして電気信号に変換される。データはノイズ除去などの信号処理を経て用途に応じた意味のある情報へ変換され、有線や無線の通信技術を通して人またはデータ・センターなどへ届けられ、判断や行動につながる洞察を得るために分析される。

図1.センシングの概念
図1.センシングの概念

 特に検出/測定および解釈の段階において、センサの微弱な信号から効率よくデータを生成し意味ある情報へ変換するうえでアナログ半導体が占める役割は重要である。米国Semiconductor Research Corporation (SRC)が2020年にリリースしたDecadal Plan (10か年計画) for Semiconductor1)によると、米国では年間約34億USドルの予算を半導体技術のブレークスルーのために投資し、そのうちの年間約6億USドルをアナログ半導体技術に投資するとされている。センサから生み出されてアナログ回路で処理・変換されたデータは年々増加し既に我々人類が処理できる量を超えているとされ、Decadal Planではアナログ半導体からのデータを100000分の1に圧縮し、より意味のある情報のみを抽出することで通信や解析の負荷を低減することを目標とし、その実現のためにアナログ回路、特にアナログ半導体での信号処理の高度化を含めたセンシング・システム全体の最適化が課題として挙げられている。
 アナログ回路にてデータ圧縮を行い個々の用途に応じた意味ある情報を抽出するためには、個々の用途における信号処理などの知見が必要である。弊社:アナログ・デバイセズ(以下ADI)では、いくつかの用途市場において、半導体ICやリファレンス・デザイン(参照設計)に加えて、ハードウェア・モジュールやアプリケーション・ソフトウェアを含むシステム・ソリューションを提供することで、顧客であるセットメーカーの高度なセット開発の期間短縮を支援し、同時に将来のセンシング・システムに適したIC開発に必要な信号処理の知見の獲得を目指す。ソリューションの例として、図2に産業オートメーション市場向け状態基準保全(Condition based Maintenance/Monitoring:以下CbM)向けの取り組みを示す。
 CbMとは、従来のある一定期間ごとの定期的な点検や部品交換などで対応していた機器の保全作業(時間基準保全)に代わり、様々なセンサを用いて常時監視し健全性の変化を早期にとらえて修理や部品交換を適切なタイミングで行う事により、機器のメンテナンスの費用対効果を改善する取り組みである。 ADIでは特に産業用モーターなどの故障による経済損失が比較的大きく、したがって時間基準保全における点検や部品交換の頻度が高い(=費用対効果の改善余地がある)機器に対するCbMソリューションを展開している。温度センサや振動・加速度センサ、マイクロフォン、電流センサなどのセンサにより駆動機器の故障の予兆となる発熱、振動、音、電流値や漏れ電流の変化などの兆候を検知し、適切なタイミングでの修理や部品交換を促すことで不要な点検、部品交換などの頻度を減らして機器のトータル維持コストを低減する。また、従来は熟練したベテラン技術者の勘と経験に頼っていた予兆の検知を定量化でき、メンテナンス技術の汎用性を高めることが出来る。

図2.産業オートメーション向けCbMソリューション
図2.産業オートメーション向けCbMソリューション

 モーターのCbMでは、対象となるモーターの構造や原理とそれに基づいた故障要因やその解析手法の理解などが求められる。また、対象となるモーターにセンサを取り付ける場合に、適切な箇所に適切な形でセンサを設置できるかどうかも重要であり、電気分野の知見のみならず機構設計やそれぞれのセンサに対する知見も重要となる。ADIではセンサICやマイコン、電源ICなどの半導体製品に加えて図2に示すようなモジュールやソフトウェアを含めたソリューションを展開し、CbMに対する知見を持った様々なセットメーカーやパートナーと協力して用途展開を進めている。
 図3に各マーケットでの主なアプリケーションと、そこでセンシングに使われるADIの技術の例を一覧として纏める。RF、コンバーター、アンプ、インターフェース、電源、センサなどの半導体コア技術をベースとしたこれらのIC製品をコアとして、それぞれのアプリケーションで求められる信号処理やアルゴリズムなどを組み合わせたソリューションを展開する。

図3.ADIの各市場向けコア技術とソリューション
図3.ADIの各市場向けコア技術とソリューション

 本特集では、これらの中から、ヘルスケア・医療分野のVSM技術、高精度計測分野でのインピーダンス計測技術、および機構部品のモニタリングやセキュリティ機能強化に役立つ1-wire技術を紹介する。

参考資料

  1. SRC (Semiconductor Research Corporation) Decadal Plan for Semiconductors: Decadal Plan for Semiconductors – SRC


【著者紹介】

永井 郁(ながい いく)
アナログ・デバイセズ株式会社 リージョナル・ビジネス・グループ

■略歴


  • 1999~2004年電子部品メーカーでセンサ開発に従事
  • 2004年~アナログ・デバイセズ社 MEMSセンサのビジネス開拓と技術サポート、その後、産業分野のビジネスなどに従事

井口 璃音(いぐち りおん)
アナログ・デバイセズ株式会社
デジタルインフラストラクチャー ビジネスグループ
ヘルスケア
フィールドアプリケーションエンジニア

■略歴

  • 2020年3月北海道大学工学部 卒業
  • 2020年4月アナログ・デバイセズ(株)(米国Analog Devices, Inc. 日本法人)入社
  • 以降フィールドアプリケーションエンジニアとして、主に医療機器向け各種ICのアプリケーションサポートに従事。

渡邉 慶太郎(わたなべ けいたろう)
アナログ・デバイセズ株式会社
インダストリアルビジネスグループ インスツルメンツ
シニアフィールドアプリケーションエンジニア

■略歴

  • 2015年3月東北大学理学部 卒業
  • 2017年3月東北大学大学院理学研究科 博士前期課程修了(修士(理学))
  • 2017年4月アナログ・デバイセズ(株)(米国Analog Devices, Inc. 日本法人)入社
  • 以降フィールドアプリケーションエンジニアとして、主に電子計測器市場向け各種ミックスド・シグナルIC及びモノリシック・マイクロ波IC(MMIC)のアプリケーションサポートに従事。
    2020年より、マイクロウェーブ展(MWE)実行委員会展示委員。

ロボットハンドの活用領域を大幅に拡張する「近接覚センサーTK-01」を新発売

(株)Thinker〔シンカー〕は、初の製品となる「近接覚センサーTK-01」を7月31日に発売する。それに先がけて、5月23日より、注文受付を開始する。販売価格は242,000円(税抜価格220,000円)。


■近接覚センサーTK-01について
「近接覚センサーTK-01」は、赤外線と高速・高精度AIを組み合わせた独自のセンシング技法により死角部分を含めたモノの位置と形を非接触で把握する。これにより、従来の産業用ロボットでは難しいとされていた鏡面・透明物質の取り扱いや、現場環境に応じた臨機応変なピックアップが可能となり、ロボットハンドによるピッキングの可能性を飛躍的に広げることができる。また、ティーチング(※注)の時間や労力を大幅に軽減できることから、これまでとは異なる領域でのロボットハンドの活用も期待されている。
※注・・・・・ティーチングとはロボットに作業を教え込む工程。

■仕様
測定内容      :距離、ピッチ軸、ヨー軸角度
測距範囲      :1.5 ~ 20.0mm(分解能0.1mm)
測角範囲      :-20.0 ~ +20.0deg(分解能0.5deg)
センサー基板サイズ :55mm × 15mm × 約2.5mm
AI基板サイズ    :55mm × 60mm × 約14mm
通信方式      :RS-422
仕様周囲温度    :0℃~40℃(結露なきこと)
電源電圧      :5V
最大応答速度    :約5ms

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000106143.html

エプソン、生産現場の微振動を独自の水晶方式で手軽に計測する「スマート振動センサー」

 エプソンは、生産現場などにおける微細な振動を高精度で測定できる新商品として、スマート振動センサー『M-A750FB』を2023年5月17日より受注開始した。

 今回の新商品は、振動による影響が大きい”精密機器を用いた生産現場”、もしくは”精密機器の開発・生産現場”において、特に計測の難しい周波数の低い振動を、エプソン独自の水晶方式により簡単に計測することを可能にした。従来、低周波振動の計測には、高価で大型の「サーボ式加速度センサー」が使われてきた。エプソンは、水晶材料の製造技術、および、独自の水晶微細加工技術により、サーボ式加速度センサと同等の高精度かつ小型・軽量で、簡単に測定できるスマート振動センサーを商品化した。

■スマート振動センサー開発の経緯/社会的課題
 半導体製造装置、画像検査装置などの精密機器は、設置環境の微細な振動の影響で期待される性能が発揮されない場合がある。例えば工場建屋の地盤・床、周辺装置から伝搬してくる振動は周波数が低く、人の感覚では気づきにくいことが多くある。そのような設置環境に左右されることなく、精度高い生産や検査を実現するには、振動状態の把握が不可欠となる。
本商品は、微細な振動を高精度かつ簡単に測定し、これらの課題解決に貢献する。

■スマート振動センサー『M-A750FB』の主な特長
1.小型軽量、持ち運びも便利
 手のひらサイズ 62.4(W)×36.2(H)×46.2(D)mm、軽量(約100g)を実現
2.簡単計測
 本体に小型ディスプレイ、メモリーを搭載しているため、手のひらサイズの本体だけで計測が可能
 (外部からのUSB給電が必要)
3.Windows®搭載 PCと連携することで、計測データのより詳細な分析が可能
・最大1,000(Hz)のサンプリング周波数で3軸の加速度計測が可能。
・計測した加速度データは、CSVファイルとして保存することが可能。
 これにより、簡単にExcel®や数値計算ソフトによる加速度データの表示や分析につなげることができる。

・加速度、速度、変位の3つの振動状態を一度に読み取ることができるトリパタイトグラフ表示機能を搭載。
これにより、Windows®搭載 PCで振動の状態を手軽に読み取ることができるようになった。
・トリパタイトグラフをExcel®のデータ(xlsxファイル)として保存することが可能。
これにより、トリパタイトグラフを用いた振動計測結果のレポートを簡単に作成することができる(簡易レポート作成機能)。

4.その他の特長
・加速度計測、傾き計測、振動レベル判定(VCレベル判定)が可能
・1台で3軸の加速度を同時に計測可能
・サーボ式加速度計と同精度の計測性能
・無線通信用専用USBレシーバーの使用により、Windows®搭載 PCと無線通信での計測が可能

ニュースリリースサイト:https://www.epson.jp/osirase/2023/230517.htm

東芝デジタルソリューションズとミーク、IoTプラットフォームで協業

東芝デジタルソリューションズ(株)とソニーグループのミーク(株)は、ミークのIoT向けモバイルデータ通信網を強みとする、NoCode IoT/DX Platform「MEEQ」を使って集めたIoTデータを、東芝デジタルソリューションズのIoT向けクラウドデータ基盤「GridDB Cloud」に蓄積し、活用できることを両社共同で検証、正常に動作することを確認した。両社は、「GridDB Cloud」と「MEEQ」を組み合わせたIoTプラットフォームをお客さまに提案していくという。

 東芝デジタルソリューションズの「GridDB Cloud」は、高頻度で発生する膨大なIoTデータを収集・蓄積し、リアルタイムで検索・分析することができる。これによりビジネス上の意思決定を迅速かつ正確に行うことができる。また社会インフラシステムなどで多くの実績があり、高い信頼性を備えている。
 ミークが提供する「MEEQ」は、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアのモバイルデータ通信網上に、セキュアな閉域網を簡単に構築できるため、既存のネットワークに、負荷やセキュリティの観点からIoTデータを流したくないユーザに向けて、安全な閉域網によるIoTシステムを提供している。
 今回、両社のIoT向けデータ基盤と通信網が連携できることを検証・確認したことにより、IoTシステム構築の自由度がさらに高まるとともに、構築にかかる時間とコストを削減できる。また、IoTを新たに使い始めたいユーザから要望の多いスモールスタートなど、柔軟性の高いシステム構築が可能になる。

◇GridDB CloudとMEEQによるIoTプラットフォームの特長
●IoTシステム構築にかかる時間とコストの削減
 クラウド上でデータを管理するデータ基盤と安全な閉域モバイルデータ通信網、さらには情報を可視化するためのツールが提供される。これらは連携して動作することが検証済みであるため、システム構築にかかる時間とコストを削減できる。
●スモールスタートと柔軟なシステム拡張が可能
 初期コストをおさえたスモールシステムとして開始することができる。IoTの成果が確認でき、ビジネスの拡大とともにセンサの数やデータ収集頻度を上げるなど規模を大きくしていくことが可能。
●汎用的なIoTプラットフォーム
工場IoTや農業IoT、交通IoTなどさまざまな領域に適用することができる。

 例えば工場IoTの場合、生産ライン上の機械や製品、作業員などにセンサを付けデータを収集し、データの分析や監視を行う。これにより、進捗管理や在庫管理、サイクルタイムをリアルタイムに可視化することが可能になり、工場の生産性や作業の効率を向上させることができる。
 しかしIoTを導入するにあたって、既存のネットワークにデータを流すと、負荷が高まり稼働中のシステムに影響が出る・クラウド接続によるセキュリティのリスクが発生するといった課題がある。本IoTプラットフォームはモバイルデータ通信を使うことにより、既存のネットワークを使用することなく、短期間で簡単にセキュアなネットワークを構築することができる。
 また、投資対効果が明らかになるまで、初期コストを抑えたスモールスタートとし、効果を見ながら、徐々にセンサの数やデータ取得頻度を増していきたいというユーザの要望がある。本IoTプラットフォームでは、システム規模に応じてモバイルデータ通信やクラウドデータ基盤を拡張できるので、初期段階ではコストを抑えたスモールスタートが可能になる。

ニュースリリースサイト:https://www.meeq.co.jp/news/20230517/

NITE、ベルトコンベアローラの軸受損傷を早期検知する技術「スマート保安技術カタログ第7号案件」を公開


 (独)製品評価技術基盤機構 【NITE(ナイト)】が事務局を務める「スマート保安プロモーション委員会」は、(株)三和テスコが開発した『ベルトコンベアローラの軸受損傷を早期検知する技術』を、従来の点検を代替するスマート保安技術として承認した。
本技術は、「スマート保安技術カタログ(電気保安)第7版」に掲載し、2023年5月12日よりNITEのホームページで公開している。

スマート保安技術カタログ >>
https://www.nite.go.jp/gcet/tso/smart_hoan_catalog.pdf
(本技術は、要素 00004-P1(資料1.1)~要素 00004-P7(資料3.2)に掲載)

 ベルトコンベアの損傷は、火力発電所等において火災の原因になっており、一度火災や運転停止が発生すると、再稼働まで相当の時間を要する場合があるため、損傷を早期に軽微な段階で、人間の感覚に頼らずに検知できる点検技術が求められていた。本技術はベルトコンベアローラの異常をトルクセンサによって検知し、結果をコンベアから離れたところに表示することで、早期の異常検知、点検作業の安全化につながる。

 スマート保安プロモーション委員会で本技術の妥当性評価を行い、電気保安品質の経済的かつ効果的な向上が期待できることが認められた。これにより事業者は、ベルトコンベア点検業務の品質向上、効率化及び安全確保が可能となる。また、この技術は石炭火力発電所やバイオマス発電所だけでなく、粉じんの多い劣悪な作業環境におけるベルトコンベア等、多種多様な施設でも広く利用が可能である。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000110.000092488.html

ST、保護機能付きの電力変換とIGBT / SiC / GaNトランジスタのゲート駆動向けに絶縁型バック・コンバータIC


 STマイクロエレクトロニクスは、10W 絶縁型バック・コンバータICである「L6983i」を発表した。同製品は、低静止電流や3.5V~38Vの入力電圧範囲といったメリットを備え、高効率化と実装面積の小型化に貢献するという。

 L6983iは、絶縁型のDC-DCコンバータが必要なアプリケーションに適している。絶縁型バック・トポロジを採用しており、従来の絶縁型フライバック・コンバータよりも必要な部品が少なく、オプトカプラも不要なため、部材コストの削減と基板面積の小型化が可能。

 さらに、L6983iのメリットには、2µAのシャットダウン電流と各種内蔵機能(調整可能なソフトスタート時間、内部ループ補償、パワー・グッド出力)のほか、過電流保護とサーマル・シャットダウン機能が含まれる。また、スペクトラム拡散方式を選択することで、EMC性能を向上させることができる。

 L6983iは、4.5Aまでの1次側電流のシンク / ソースが可能で、スイッチング周波数は200kHz~1MHzの範囲で調整でき、外部から同期することもできる。IGBT / SiC(炭化ケイ素) / GaN(窒化ガリウム)トランジスタ用の絶縁型ゲート・ドライバ、産業用オートメーション機器、小型トラクション・システム、充電スタンド、絶縁型の安全システムなどの駆動に使用できる。

L6983iの機能をすぐに活用できる評価ボード「STEVAL-L6983IV1」も用意されており、新製品の開発期間短縮が可能。

L6983iは現在量産中で、QFN16パッケージ(3 x 3mm)で提供される。単価は、1000個購入時に約1.38ドル。
詳細については、ウェブサイトを参照のこと。 http://www.st.com/jp 

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001310.000001337.html

オンセミ、次世代ADASを牽引するHyperluxイメージセンサファミリ


 オンセミは、Hyperlux™車載用イメージセンサファミリの発売を発表した。
Hyperluxファミリは、2.1 µmのピクセルサイズ、業界をリードする150dBの超ハイダイナミックレンジ(HDR)、全車載温度範囲でのLEDフリッカ抑制(LFM)機能を備え、次世代の先進運転支援システム(ADAS)を進化させる高性能、高速、高度機能を提供する。また、システムから警告を受けた時にのみドライバーが運転を引き継ぐレベル2+運転自動化への円滑な移行を可能にする。

 Hyperluxファミリは、解像度が3メガピクセル(MP)の製品から8 MP以上の製品まで多岐にわたり、センシングおよびビューイング両方のカメラアプリケーションに対応している。HDRは150dBで、低照度感度を犠牲にすることなく、最も過酷な照明条件下でも高画質で画像をキャプチャする。プラットフォームのLFM機能により、パルス光源がちらつかないため、フリッカに起因するマシンビジョンの課題を回避できる。

 Hyperluxは、ASIL(自動車安全水準) Dシステムの厳格な安全要件に適合するように設計されており、統合セキュリティがサイバーセキュリティの脅威に対して最大限に対応する。また、これらのセンサは異なる解像度でのデュアル出力ストリームも提供しており、センシングと他の機能を同時に実行できる。1台のカメラを複数の機能に使用できる柔軟なアーキテクチャにより、設計者は設計時間、リスク、コストを削減することができる。

 Hyperlux製品ファミリの最初の2製品「AR0823AT」と「AR0341AT」は現在、一部の顧客向けにサンプル出荷中。オンセミは5月9日~11日までデトロイトで開催中のAutoSens Detroit 2023に、他のインテリジェントなパワーおよびセンシング技術とともに、Hyperlux製品を出展しているとのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000255.000035474.html

miruws、ライダーの感情を可視化する「感情センシングアプリ」を共同開発

 北大発認定ベンチャーの(株)ミルウスは、ヤマハ発動機および横浜国立大学島圭介准教授と共同でベルトやウェアで取得した心電データを用いてライダーの感情を推定しスマホの地図上に表示するアプリケーションを開発した。同社は本成果で得られる感情データを血圧等の生体データ、睡眠・食事・運動などの生活データともにプライバシーを尊重して、ビックデータ化することにより、医療・健康さらにはマーケティング・観光等の新分野への活用を図るという。


[背景]
 リストバンド、ウェアなどに搭載された生体センサから得られるデータは、装着しているユーザの健康状態を可視化するツールとして、広く使われ始めているが、AI等の高度処理を適用することにより、心の状態である感情の可視化も可能となりつつある。 感情推定は、従来、脳波や表情を用いて行うのが一般的だったが、バイクライダーでは使用環境上の制約により現実的では無い。そこで、本共同研究では、精度の高い感情推定を行うために、AIの学習には脳波など多様なデータを用い、実際の感情推定には、ベルトやウェアで取得可能な心電データのみでAI判定する新技術(※1)を開発し、手軽にツーリングの感動や緊張を可視化するスマホアプリとして実現した。

[感情推定アプリ]
 今回開発したアプリは、身体に装着したベルト型センサで心電データを計測し、感動・喜びやリラックスした状態、緊張など、ライダーの感情をリアルタイムでスマートフォンに表示するアプリである。その推定された感情を地図上にプロットすることで、ツーリング先のビューポイントで得た感動や、複雑な交通環境での緊張、またイライラ感や眠気など、ライダーが行動を判断する上で参考となる心身状態を時系列でフィードバックする(画像)。

[今後の展開]
 ミルウスは、リストバンドやスマホで取得した血圧等の生体データや睡眠・食事・運動等の生活データからなるライフログをスマホの「貯健箱(R)」に保管(貯蓄)して、信頼できる活用先に、本人同意の下、提供して安全に活用する「仮想センサ/ミパル・パーソナルデータストア(PDS)」を推進しているが、そこに感情が加わることにより、応用範囲は、さらに広がる。特に、ビックデータとして収集・解析することにより、フレイル等の医療・健康分野だけでなく、観光、マーケティング、商品開発等の新しい用途が広がる。同社は今回の共同開発の成果をベースに、多様な研究機関や企業との連携を強化し、感情xライフログによる新分野の開拓を推進して行くという。

(※1)日本機械学会主催のロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMECH2021)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmermd/2021/0/2021_2P3-J17/_article/-char/ja/

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000057464.html

IoT重量センサを活用した食品の自動発注に関する実証実験

 パナソニック(株)は、(株)public and co、(株)つじ農園と共に、IoT重量センサを用いたお米の自動発注による業務効率化を目的とする実証実験を5月10日から実施する。

 public and co社が運営する関係案内所はつひので@材木座(以下、はつひので)は、人と人のつながりを生むことを目的に掲げたコワーキングスペースである。例えば、キッチンスペースに常備しているお米を炊いて皆で一つの食卓を囲むという行為を通じて、食事を共にすることから人の縁は生まれるという考えを体現している。お米は、この想いに共感した、人のつながりを尊重した農業の新しい形を推進するつじ農園が提供している。

 利用者は自由に炊飯できるため、お米の消費量は日によって異なる。利用者に気兼ねなく食卓を囲んでもらうため、はつひのでの管理人は、常にお米の在庫状況を把握しておかねばならず、その業務の効率化が求められていた。そこで、今回、パナソニックが開発したIoT重量センサを用いて、コワーキングスペースに常備されているお米の残量を遠隔把握し、規定値まで減ると自動的にお米を発注する仕組みを構築した。さらに、人のつながりを大切にするpublic and co社とつじ農園の思いを後押しするため、発注後には、つじ農園から発注完了のお知らせと同時に、お米をおいしく食べられるレシピなどのメッセージが届く仕様にしている。今回の実証を通じて、コワーキングスペースの無人化・省人化への貢献、ならびに生産者と購入者が直接つながることによる効果を検証する。

 昨今、リモートワークやオンライン化の促進などによる業務効率の向上が進む一方で、人との繋がりの希薄化が懸念されている。パナソニックは、コミュニケーションが生まれる場として注目されているコワーキングスペースの運営における業務効率と人の繋がり構築の両立を通じて、ウェルビーングの実現に貢献するとしている。

【共同実証実験での検証内容】
  IoT重量センサを用いたコワーキングスペースでのお米の自動発注
  コワーキングスペース管理人の業務効率の向上
  生産者と購買者の繋がり効果
【実証期間】
  2023年5月10日~2023年8月10日
【実証実験場所】
  関係案内所はつひので@材木座(神奈川県鎌倉市材木座2-1-17)
【各主体の役割】
 ■株式会社public and co
  コワーキングスペースの提供
 ■株式会社つじ農園
  お米の提供
 ■パナソニック株式会社
  本実証実験の企画および運営
  IoT重量センサの提供
  発注/通知プラットフォームの構築

プレスリリースサイト(panasonic):https://news.panasonic.com/jp/press/jn230510-1

書評「センサ技術の基礎と応用」

「センサ技術の基礎と応用」
株式会社コロナ社(ISBN978-4-339-03386-1)
計測・制御セレクションシリーズ6
計測自動制御学会編 次世代センサ協議会編

小林 彬   臼田 孝   栗山 敏秀 
室 英夫   高山 敬輔  石垣 武夫 
柴崎 一郎  石森 義雄  浅野 安人 
大木 眞一  関口 眞吾  足立 正二 
五十嵐 朗  菰田 夏樹   共著



◎センサを扱う開発には必須の一冊

【現在多く使われているセンサ技術のほとんどを網羅】
 本書の表紙でまず目に付くのは、14名という共著者の方々の「多さ」だ。しかも、どの方々もその世界では実績も多い方々ばかりで、嫌でも内容の濃さに期待がかかる。また、この先生方が揃って「計測自動制御学会」「次世代センサ協議会」という、日本を代表するセンサ関係の知見のある団体の所属というので、書店の工学書の棚でも、コロナ社らしい学術的な装いの地味な装丁にもかかわらず、存在感がある。
 ページは全体で300ページ以下、というのは、思わず、なにか端折っていることがあるのではないか?と勘ぐってしまうが、実際にページをめくって見ると、先生方の各々の専門の章それぞれで、短い文章で必要なことが網羅され、さらにはそれぞれの分野で特に必要とされている用語なども太字で編集されているなど、全体として、さながら「センサの辞書」のような形で使えるように構成してある。完全な素人向けではない書籍ではあるものの、大学の工学系の学部の教科書などには、一通りの必要なことが書かれていて、お勧めの内容となっている。

【最近のセンサのトレンド】
 最近のセンサ部品のトレンドは、使用されるソフトウエアを意識して作られていることだ。最小のハードウエア構成でソフトウエアで必要な結果を得ることができるように、これらの部品は意識して作られている。
 自動運転車などの部品としても最初に名前が上がることの多い、LiDAR( Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging )のように複数の種類のセンサを組み合わせたうえ、加えて高性能で小さく低消費電力となったコンピュータを搭載し、実際に自動運転のソフトウエアに提供されるのはセンサの元のデータではなく、複数のセンサの出力を計算処理した後のデータ、ということが増えてきた。こういったセンサを私達は「インテリジェント型センサ(知能を持ったセンサ)」と呼んでいる。最近はこの方式のため、温度センサのリニアライザもアナログのハードウエアで行わず、元のセンサのデータをそのままデジタルに変換し、その後にソフトウエア処理して温度データをリニアな数値にする、ということが普通に行われている。

【「元データ」はなぜできるか?は重要】
 実際にこれらのセンサを使ってみると、思いもかけない、明らかにエラーと思えるデータが出力されていることがある。インテリジェント型センサを使うときは注意が必要なのだ。こういったエラーデータに惑わされないためには、インテリジェント型センサから出力されるデータ処理後のデータを扱うにしても、元のセンサデータがどのような原理でどのように作られていて、原理はどのようなものか?また、限界はどこにあるのか?などをある程度以上は把握して置くことが重要だ。特にLiDARのみならず、飛行機などでも使われるセンサでは、その出力結果の扱いが人命にかかわる場合もあるので、特にこういった知識はモノ作りの現場では、これまで以上に必要という場面も出てきている。それだけではなく、インテリジェント型センサの出力後のデータの加工などにも、センサの知識は多くの場合必須だ。

【ソフトウエア時代における本書の意義】
 現在の世界の産業分野において、経済産業省の推進する「Connected Industories(相互に密接につながった製造業)」の推進のみならず、その基礎となるインターネットをはじめとした通信インフラ、交易等、様々な分野でのデジタル化はここ20年ほどのトレンドだ。今はそれがソフトウエアの力でさらに推進・強化されており、近年ではIoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence – 人工知能)などのソフトウエアの発展で更に加速している。しかしながら、そのソフトウエアに使う「データ」は、ほとんどセンサからのデータだ。本書でも触れられている撮像素子、音声を拾うマイクに使われる加速度を検知するセンサなどはそのわかりやすい代表例だ。世の中の森羅万象をセンサで受け取り、ソフトウエアでより高度な処理を行う、というこの流れも、元はといえばセンサの作ったデータだ。言い方を変えればセンサは「リアルな人間社会と機械の世界を繋ぐ重要な橋渡し役」ということになる。更に言えば「ITの時代」とは「センサの時代」なのかもしれない、とさえ、私は思っている。

本書が、さらなる人類の産業発展の多くの場面で活躍する方々のための「バイブル」として、センサの具体的な利用の場面で多く使われることを願ってやまない。


文:三田 典玄 (みた・のりひろ)
プロフィール:http://nmita.tw/?page_id=2

株式会社オーシャン(鹿島道路グループ) IoT事業部長
 http://www.oceanfp.co.jp/
一般社団法人センサイト協議会 委員