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パイオニアとNextDrive、「EV充放電制御システム」の開発で協業

 パイオニア(株)は、エネルギー管理とクラウドサービスの開発・提供を行うNextDrive(株)と協業し、電力データと移動データを掛け合わせることによりEV関連のエネルギーマネジメントを最適化する「EV充放電制御システム」の開発を行う。

 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、走行時にCO2を排出しないEVの導入を検討する事業者が増えている。また、EVを蓄電池として利用し、太陽光などの再生可能エネルギーを効率的に活用する「V2H(Vehicle to Home)」の導入も進んでいる。その一方で、すでにEVやV2Hを利用している事業者からは、「複数台のEVを導入したが、充電タイミングが重なると電気代が高くなり、想定よりもコストがかかってしまう」「EVの充電が間に合わず、翌日の業務に支障を来した」といったコストや運用に関する課題が上がっている。さらに、一部のEV充電制御システムでは、導入時に既存の充電機器を取り換える、もしくはメーカーやモデルを統一する必要があるといった課題も存在している。
 本協業では両社の技術を活用し、電力データと車両の移動データを掛け合わせることでEV関連のエネルギーマネジメントを最適化し、それらの課題を解決する「EV充放電制御システム」の開発を行う。パイオニアは、車両の移動データを収集し、独自のプラットフォーム「Piomatix for Green(パイオマティクス・フォー・グリーン)」を活用してEVのSoC(State of Charge:充電状態)や消費電力量を予測。
 NextDriveは、同社のエネルギーマネジメントコントローラー/IoEゲートウェイ「Atto(アット)」を活用した電力データ収集およびEV充電機器やV2H機器の操作を担当する。両社が収集したデータを最適に制御することで、翌日の走行距離まで考慮した複数車両の充電制御やEVを蓄電池として利用した再生可能エネルギーの有効活用など、無駄のないエネルギーマネジメントが可能になり、EV導入事業者の運用効率化、電力コスト削減につながる。また本システムは、既にEVや充電機器を導入されている事業者にも幅広く活用してもらえるよう、車種や充電機器メーカー・モデルを問わずに後付け可能なシステム構成を想定している。

 今後両社は、本開発への賛同企業と共に、2023年度中に「EV充放電制御システム」の開発および実証実験を行い、エネルギーマネジメントの有用性を検証していくとしている。

ニュースリリースサイト(pioneer):https://jpn.pioneer/ja/corp/news/press/index/2793

アイサンテクノロジー、ドローンと自動運転車連携による農産物輸送の実証実験

 アイサンテクノロジー(株)は、「幸田町におけるドローン・自動運転車連携による農産物・買い物支援輸送」をテーマとした実証実験に、自動運転に関わる地図作成、および、自動運転車の提供・走行の分野より参加する。

 愛知県は、あいちロボット産業クラスター推進協議会を核とし、ドローンの開発支援や、社会実装を目指した実証実験の実施など、ドローンの産業活用に向けた取組を推進している。

 本実証実験は、国土交通省が公募した「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」に名古屋鉄道(株)が代表者として申請し、採択されたことに基づき、2自治体、3社、1大学の共同体で幸田町において実施するもの。

■内容について
実証テーマ:幸田町におけるドローン・自動運転車連携による農産物・買い物支援輸送の検証
概要   :幸田町山間部においては、人口減少や高齢化の影響により、通勤・通学や買い物の利便性に課題を抱えている。また、「筆柿」がブランド品として日本一のシェアを誇っているものの、高齢化や人材不足の影響により、販売量減少が懸念されている。
 その解決策として、農業の担い手不足の軽減や販売量増加による産業活性化に繋げるために農産物輸送をドローンと自動運転車が連携し、自動化する実証実験を実施する。
 実験に際しては、ドローンはレベル3(無人地帯での目視外飛行)相当で飛行し、自動運転車はレベル2(システムが前後・左右の両方の運転操作を支援)で走行。

自動運転実施ルート:道の駅 筆柿の里・幸田→ながや農園→道の駅 筆柿の里・幸田(画像)

使用車両  :ゴルフカート

・自動運転OS Autoware*1及び事前に取得する高精度3Dマップを使用して走行
・自己位置推定、障害物認識等の機能を実装
・乗車定員は2名(別途、オペレータ等が同乗)
・ヤマハ発動機開発のゴルフカートをベースに、自動運転専用に改造した車両。LiDAR*2を天井に搭載

*1自動運転システム用オープンソースソフトウェア。The Autoware Foundationの登録商標。
*2Light Detection and Rangingの略。レーザー光を使って離れた場所にある物体の形や距離を測定するセンサ技術。

ニュースリリースサイト(aisantec):https://www.aisantec.co.jp/ir/information/2023/09/post-79.html

水晶と水晶を用いたセンサー(1)

佐藤 健二(さとう けんじ)
セイコーエプソン(株)
マイクロデバイス事業部
佐藤 健二

1 はじめに

 水晶は「産業の塩」とも言われるほど、電子機器には欠かせない物質である。温度安定性の高さから、多くの通信機器の周波数源として水晶振動子や水晶発振器などが使われている。また、その高い温度安定性は、センサーとしても利用価値が高く、QCM(Quartz Crystal Microbalance)や圧力センサー、ジャイロセンサーなどのセンサー素子にも水晶は用いられている。
 ここでは、水晶について説明した後に、水晶を用いたセンサーを紹介し、水晶を用いる利点や特徴を解説していく。

2 水晶とは

 水晶は無色透明で、圧電性を有する単結晶である。宝飾品としても用いられるが、圧電性を利用した工業用電子部品としても幅広く利用されている。以下に水晶の特徴について述べる。

2.1 水晶の結晶異方性 1), 2)

 水晶は結晶学的にいうと、二酸化珪素(SiO2)の単結晶であり、異方性をもつ三方晶系・点群32に属している。二酸化珪素の単結晶の一つを石英と呼ぶが、石英にはα-石英とβ-石英の2つがある。α-石英は圧電性をもつ三方晶系であり、β-石英は圧電性をもたない六方晶系である。このα-石英のことを一般に水晶と呼んでいる。α-石英がα-β転移温度573℃を超えると、β-石英に転移してしまう。
 図1は水晶の結晶を表しており、図中のアルファベットは結晶面を表している。水晶はz軸を回転軸として120°毎に同じ結晶構造が現れる3回回映軸と2回の対称軸をもつ結晶である。そのため、x軸が3本表記されている。
 水晶は結晶の異方性によって、ウェハのカット角(切断角ともいう)に伴い、物理特性が変化するため、電子部品として用いる場合はその振動形態(振動モード)に合わせて、適したカット角を選ぶ必要がある。これまで、多くの研究者によって、各振動形態に合わせたカット角が提案されている。図2はZ板の人工水晶にそれらのカット角を示したものである。

図1 水晶の結晶面と座標軸
図1 水晶の結晶面と座標軸

 図中のアルファベット2文字で表されているのがカット角の名称である。例えば、「AT」カットは通信向けのMHz帯の厚みすべり振動子として用いられている。このATカットは常温付近で共振周波数の温度特性がフラットになるゼロ温度係数をもった特徴あるカット角である。
 ここに図示されていないが、Z軸に垂直なXY面のウェハを「Zカット」と呼び、X軸あるいはY軸に垂直な面のウェハは「Xカット」、「Yカット」と呼ばれる。図中には「+2° X」などのように、座標軸に垂直な面からの回転角度で表されたものもある。Zカットを、X軸中心に+2° 回転させた「+2° X」は、音さ振動子など屈曲振動で共振周波数の温度特性が上に凸状の2次の温度特性をもち、常温付近に頂点温度をもたせたものである。
 この他にも、このような特徴のあるカット角が、水晶には20種類以上存在している。3)

図2 Z板人工水晶とカット角 2)
図2 Z板人工水晶とカット角 2)

2.2 圧電性

 水晶の大きな特徴であり工業的に多用される理由は、水晶がもつ圧電性にある。圧電性とは、圧電効果や逆圧電効果のことを指す。圧電効果とは、圧電性のある物質に圧縮力(あるいは伸張力)を加えることで、物質の表面にその力に応じた電荷が発生する現象のことである。それとは逆に、圧電性のある物質に電界を掛けると、物質に歪みが生じる現象のことを逆圧電効果と呼ぶ。圧電性をもった物質のことを圧電材料と呼び、水晶の他にも圧電結晶として、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ロッシェル塩などがある。また、圧電性をもった半導体材料やセラミックス、高分子材料などもある。圧電材料の詳細については専門書を参照することをお奨めする。4)
 水晶の圧電性は、1880年にP. CurieとJ. Curieの兄弟によって発見され、1922年にはW. G. Cadyによって水晶発振器が発明された。それ以降、水晶は通信機器の周波数源として欠かせないものとなっており、現在でもスマートフォンや多くの電子機器に幅広く利用されている材料である。

3 人工水晶

3.1 人工水晶の製造法

 水晶振動子については、1950年代から多くの研究が行われていた。当時は地中から採掘される図3に示すような天然水晶を使用していた。天然水晶は地中で結晶化する過程で異物が入り込むことが多く、電子部品として利用できるのは採掘されたもののうちのほんのわずかな量であった。
 現在のように、日本の水晶産業が大きく発展したのは、それまで天然水晶を利用してきたところを、結晶育成法を確立し、人工水晶の工業化に成功したところが大きい。世界で初めて人工水晶の工業化に成功したのが、東洋通信機株式会社(現セイコーエプソン株式会社)である。図4にさまざまなサイズの人工水晶を示す。
 人工水晶は、水熱合成法と呼ばれる結晶育成法によって製造されている。図5に示すようなオートクレーブと呼ばれる炉の中に、人工水晶の成長の起点となる種水晶と、溶解して再結晶化させるラスカ(水晶片)と、溶解液であるアルカリ性溶液を入れる。そして、炉内を高温・高圧の状態にし、溶解域から成長域に溶解液が自然対流により循環し、種結晶の表面に再結晶化され、結晶成長していく。図6は、製造した人工水晶をオートクレーブから引き上げた様子である。人工水晶は、天然水晶の性質とまったく差がなく、非常に高品質の水晶が安定的に供給されている。

図3 天然水晶
図3 天然水晶
図4 人工水晶
図4 人工水晶
図5 オートクレーブの構造
図5 オートクレーブの構造
図6 人工水晶の引き上げの様子
図6 人工水晶の引き上げの様子


次回に続く-



参考文献

  1. 「弾性波デバイス技術」, 日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会編, オーム社, (2004)
  2. 「マイクロ・ナノデバイスのエッチング技術」, 式田光宏/佐藤一雄/田中 浩 監修, シーエムシー出版 (2009)
  3. 「人工水晶とその電気的応用」, 滝 貞男著, 日刊工業新聞社, (1974)
  4. 「圧電材料学の基礎」, 池田拓郎著, オーム社 (1984)


【著者紹介】
佐藤 健二(さとう けんじ)
セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部 TD商品開発部

■略歴

  • 1995年山形大学 理工学研究科 電子情報工学専攻 博士前期課程修了
  • 1995年東洋通信機株式会社 入社
    水晶振動子(MHz帯)の設計業務に従事
  • 2000年東京都立大学 工学研究科 出向
    有限要素法による水晶振動子の設計応用の研究およびメサ型水晶振動子の工業化の研究
  • 2004年山形大学 理工学研究科 生体センシング機能工学 博士後期課程修了
    水晶を用いたジャイロセンサーの研究開発に従事
  • 2005年セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部
    車載向けのジャイロセンサーの開発・設計業務に従事
    車載/センサーのマーケティング、戦略業務に従事
    加速度センサーの開発業務に従事

水晶ジャイロセンサーについて(1)

押尾 政宏(おしお まさひろ)
セイコーエプソン(株)
マイクロデバイス事業部
押尾 政宏

1. ジャイロセンサーとは

 ジャイロは「角速度」を検出するセンサーであり、角速度センサー、レートセンサー、ジャイロスコープとも呼ばれる。ジャイロとは、ギリシャ語で「回転」を意味するジャイロ(γυροσ)を語源とする。ジャイロが検出する「回転」とは、慣性空間に対する回転、すなわち方位変化で、通常ジャイロは移動物体そのものに取り付けて使用する。回転センサーというと、ロータリーエンコーダーの様に回転している部位を、基準となる固定部位より検知して回転数や回転角度をみるセンサーも含まれるが、このような回転センサーはジャイロとはメカニズムも用途も異なる。ジャイロは一般の人々には馴染みのない「角速度」を検出するセンサーであるため前述の回転センサーや「加速度」センサーと混同されやすい。この理由として、「角速度」が人間の感じる「角加速度」と異なる物理量であり、一般の人々にはイメージしにくいことが挙げられる。
 現在、産業・コンシューマ市場にて用いられる各種ジャイロセンサーの精度と価格の関係を図1-1に示す。価格の高い方から、リングレーザージャイロ(RLG)、光ファイバージャイロ(FOG)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動ジャイロなどが実用化されている。
 近年ではスマートフォンや車載ナビゲーションへの応用をきっかけに、MEMS振動ジャイロの小型・低コスト化や加速度センサー等の他のセンサーと組み合わせた多機能化が進んでいる。

図1-1 各種ジャイロセンサーの精度と価格の関係
図1-1 各種ジャイロセンサーの精度と価格の関係

 本稿で紹介するダブルT型水晶ジャイロは振動ジャイロに分類され、低コスト化や小型化に適している。図1-2はバネと質点で表した振動ジャイロの力学モデルである。図に示すような質量mを持つ質点をx方向に振動させている系を考える。この系に角速度Ω0の回転が加わったときに、速度vxで運動する質点には、式(1.1)に示すコリオリの力 Fc がy方向に作用する。

Fc = 2m (vx × Ω0 )  (1. 1)

このような回転時に発生するコリオリの力Fcは、振動方向と回転軸のそれぞれに直交する方向に発生し、その大きさは振動速度vxと回転角速度Ω0に比例する。したがって、何らかの方法によって、質点mの動きを観測すること、例えば、y方向に取り付けられたバネによってy方向の振動を観測することができれば、角速度Ω0を知ることができる。つまり、振動ジャイロでは、まず、ある方向に一定の振動=駆動振動を励振させて振動速度を発生させることと、次に、その駆動振動と直角方向の振動=検出振動を計測することの2つが必要である。このようなメカニズムは人間の方向の感覚とは根本的に異なるものである。人間は主に三半規管によって方向の変化を認識している。三半規管は管内の本来止まっているリンパ液の慣性を利用して「角加速度」を検出しているが、振動ジャイロの場合には、振動しているものに働くコリオリの力によって「角速度」を検出している。センサーを使用するにあたっては、この様な性質を踏まえることが重要である。

図1-2 振動ジャイロの力学モデル
図1-2 振動ジャイロの力学モデル

2. ジャイロセンサーのアプリケーション例

 図2-1に示す様に、ジャイロセンサーの性能やサイズによってアプリケーションは多種多様である。従来は、宇宙船や航空機、船舶などの移動体や産業機器における姿勢・方向検出といった用途が主なアプリケーションであった。しかし、小型で安価なMEMS振動ジャイロの台頭に伴い、カーナビゲーションや家庭用ゲーム機のモーションセンシングなどへの普及が近年急速に進んだ。以下に代表例として、「カメラの手ブレ補正」と「ロボット掃除機の走行制御」におけるジャイロセンサーの役割と特性による違いについて説明する。

図2-1 ジャイロセンサーの代表的なアプリケーション
図2-1 ジャイロセンサーの代表的なアプリケーション

2.1 カメラの手ブレ補正

 撮影時にカメラの揺れによって写真や動画がぼやけてしまうこと(手ブレ)を防ぐため、ジャイロセンサーを用いた手ブレ補正がおこなわれる。カメラの座標軸を図2-2の様に定義したとき、Z軸周りの回転(Yaw)とY軸周りの回転(Pitch)が手ブレに大きく影響する。そこで、ジャイロセンサーによりこれらの回転角度をリアルタイムに検出し、その情報をもとにカメラ内部のアクチュエーターを制御することで手ブレを抑制できる。厳密にはジャイロセンサーは回転の角速度を検出しているため、角速度を時間で積分して回転角度を算出するが、その角度精度はジャイロセンサーの特性に依存する。
 例として、積分時間5秒におけるYawとPitch誤差のシミュレーション結果を図2-2に示した。積分時間はカメラの露光時間に相当し、暗い場所での撮影時に露光時間は長くなる。比較しているセンサー特性は、角度ランダムウォーク(ARW: Angle Random Walk)と呼ばれるジャイロセンサーのホワイトノイズを表わす特性で、3章でも後述する様にジャイロセンサーにおける重要特性の一つである。シミュレーション結果より、ARWが小さく低ノイズであるほど、角度誤差も小さくなることが分かる。

図2-2 カメラの座標軸とYaw/Pitch誤差シミュレーション結果
図2-2 カメラの座標軸とYaw/Pitch誤差シミュレーション結果

2.2 ロボット掃除機の走行制御

 部屋をくまなく掃除するため、ロボット掃除機では事前に走行ルートが設定される場合が多い。目標とするルートに沿った走行を実現するには、ロボット掃除機がどの方向に進んでいるかを正確に把握して制御する必要があり、進行方向を検出する用途としてジャイロセンサーが用いられる。カメラの手ブレ補正と同様に、ジャイロセンサーで検出したロボット掃除機の角速度を積分することで、進行方向を表わす角度が得られる。
 図2-3に、積分時間1800秒(30分)における角度誤差のシミュレーション結果を示す。積分時間はロボット掃除機の走行時間に相当し、部屋の広さに応じて走行時間は長くなる。本計算では積分時間が長いため、ARWに加えて、3章で後述するバイアス安定性(BI: Bias Instability)も考慮してシミュレーションを実施した。更に、BIによるセンサー出力のずれ(オフセット)をロボット掃除機の停止時にゼロへ補正する前提とした。2.1節と同様に、ARWが小さく低ノイズであると角度誤差も小さいことが分かる。

図2-3 角度誤差シミュレーション結果
図2-3 角度誤差シミュレーション結果


次回に続く-




【著者紹介】
押尾 政宏(おしお まさひろ)
セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部 TD商品開発部 課長

■略歴

  • 2000年電気通信大学 機械制御工学科 修士課程修了
  • 2000年セイコーエプソン株式会社 入社
    弾性表面波デバイスの研究開発に従事
  • 2009年水晶ジャイロセンサーの開発設計に従事
  • 2020年TD商品開発部 課長

水晶加速度センサーについて(1)

中仙道 和之(なかせんどう かずゆき)
セイコーエプソン株式会社
マイクロデバイス事業部
中仙道 和之

1. 加速度センサーとは

 加速度センサーとは、基本的な物理量単位である加速度を計測するためのセンサーです。加速度センサーには多くの種類があり様々な用途で使われています。用途に応じて振動や衝撃を計測するのに適した方式や、傾斜やゆっくりした動きを計測するのに適した方式などがあります。表1に加速度センサーの検出方式による分類を示します。加速度センサーには、加速度によって発生する力を直接的に検出するオープンループ型と、何らかの方法でフィードバックをかけて間接的に検出するクローズドループ型があります。一般にクローズドループ型は、高感度であり微小にゆっくり変化する加速度を計測するのに適した方式です。構造が複雑で熟練者による調整などが必要なため生産性は高くなく、高価格の商品が多い傾向があります。オープンループ型は、低感度で大きく早く変化する加速度を検出するのに適した方式です。構造がシンプルで小型なため大量に生産可能で低価格の商品が多い傾向があります。更に検出原理が異なる様々な方式がオープンループ型にはあります。圧電型とピエゾ抵抗型は、印可された加速度をピエゾ抵抗や圧電材料が発生する電荷の変化として直接捉える方式です。衝突による非常に大きな衝撃や非常に高い周波数の振動を計測するのに適しています。加速度の計測範囲は、数100G~数1,000G、周波数範囲は、数10Hz~数10kHzとなります。静電容量型は、バネ構造を有する稼働可能な電極と固定された電極で構成され、印可された加速度を電極間の静電容量の変化として捉える方式です。近年、MEMS(Micro Electro Mechanical system)と呼ばれる超小型の機械構造を高度に集積した小型、高性能な方式が実用化され、大量生産可能で価格も安価であるため自動車や民生機器に広く普及しています。周波数変化型は、印可された加速度を周波数の変化として捉える方式です。他の方式にはない優れた特徴を有しています。しかし、これまで周波数検出などに技術的な課題があり、軍事用途などの特殊な領域での活用に留まっていました。

表1.加速度センサーの方式分類
表1.加速度センサーの方式分類

 次に、小型で高性能な加速度センサーを大量かつ安価に生産可能なMEMS方式について主な構造原理と特徴を表2に示します。現在、広く普及しているのは、表面MEMS型とバルクMEMS型となります。どちらの方式も、材料は半導体デバイスに使われているシリコンで検出方式は静電容量型です。静電容量型は、原理的に固定電極と稼働電極のギャップを広くすることが出来ません。ギャップ距離は一般的に数μmと狭く、検出できる加速度の計測範囲と分解能の関係はトレードオフとなります。一方、水晶MEMS型は、静電容量型のようなトレードオフはなく、非常に広い計測レンジと高い分解能を両立する事ができます。セイコーエプソンでは、クオーツ時計で培った水晶振動子の設計及び製造技術を応用して、これまで実現が困難だった水晶MEMS型センサーの開発に成功しました。本方式は、小型で大量生産可能でありながら、シリコンMEMS型に比べて、広い検出レンジと高い分解能の両立も可能な優れた方式です。

表2.MEMS方式の分類と特徴
表2.MEMS方式の分類と特徴

2. 水晶加速度センサーの動作原理と特徴

 水晶加速度センサーの素子構造と動作原理を図1に示します。基本構造は、双音さ水晶振動子と呼ばれる一定の周波数で振動する構造体の片側を固定端として、反対側におもりを付けた構造になっています。2本の平行に配置された構造は、点線で示す変位方向に機械的な共振を起こします。実際の構造は電子顕微写真に示すように振動するビームの4面に電極が付いており電圧を加えると、水晶の圧電効果で変形が生じ安定した高い精度の周波数で発振します。この構造体に図中に示す方向に力が加わると振動子に圧縮や引っ張りの力が加わります。振動子が圧縮されると双音さ振動子の周波数は低くなります。反対に引っ張りの力が加わると振動子の周波数は高くなります。ちょうどギターの弦を緩めると音が低くなり、強く張ると音が高くなるのと同じ原理です。センサー素子構造は、双音さ振動子に力を効率的に伝達するためにカンチレバーと錘を貼り合わせて一体とした構造になっています。双音さ振動子とカンチレバーの材料は水晶です。更に、振動の共振Q値を高くして周波数の安定度を高めるために、セラミックパッケージで真空封止した構造になっています。

図1.センサー素子構造と動作原理
図1.センサー素子構造と動作原理

 次に、3軸デジタル加速度センサーの機能ブロックを図2に示します。前述の印可される加速度の大きさに応じて出力される周波数が変化するセンサー素子は、1軸方向だけに加速度感度があります。従って3軸機能を実現するために、X軸、Y軸、Z軸に対応する3個のセンサー素子を搭載しています。センサー素子から出力される周波数は120kHz程度で軸間の干渉を回避するため各軸の周波数は数100Hz異なっています。後段には、各軸センサーから出力される周波数をカウントする周波数デジタル計測ブロックと単位変換や各種の補正処理を行う演算処理ブロックで構成されます。特徴は、アナログ要素が極限まで少ない技術アーキテクチャとなっており、電磁ノイズなどが大きな環境でも安定した計測を可能とします[1]。その他にも、以下に示す特徴があります。

■低ノイズで高安定、広い検出レンジ
 ○ 双音さ水晶振動子を開発することで、低ノイズで高安定な性能を実現
 ○ 周波数変化型の加速度センサーを開発することで、広い検出レンジと高分解能を実現

■3軸デジタルで高感度なのに使いやすい
 ○ 独自のアナログ回路を極限まで排除した周波数デジタル計測IPを開発
 ○ 利便性の高いフィルタ補償・演算処理機能を開発

図2.加速度センサーの機能ブロック
図2.加速度センサーの機能ブロック

 優れた特徴を持つ水晶加速度センサーですが、従来の周波数をカウントする技術には課題がありました。それは、高い分解能を得るには基準クロックを高速化する必要があり、消費電力が大きくなるという課題でした。これを解決するために、我々は並列周波数ΔΣ変調器(FDSMs:Frequency Delta Sigma Modulators)を考案しました[1]。図3に並列化したFDSMsのブロック図と信号イメージを示します。並列化されたFDSMsにより被測定信号を微小に遅延させることで、量子化誤差の低減と高速化を両立しています。本技術により、基準クロックが数10MHz程度でも、十分に高い分解能を得る事が出来るようなりました。

図3.並列周波数ΔΣ変調器
図3.並列周波数ΔΣ変調器

 実際に並列化の効果を実験で確かめた例を図4に示します。実験では、基準クロック25MHzで、被測定信号124kHz±5mHzに7.5Hzの変調をかけた信号を入力し、並列数を変えてノイズの低減効果を確認しました。後段のローパスフィルタとダウンサンプリングの条件は一定としました。その結果、並列数の増加に伴ってノイズが少なくなって周波数計測分解能が向上してることがわかります。本技術により、低速の基準クロックでも量子化誤差が少なく高速に周波数を計測できるため、水晶加速度センサーの低消費電力化が可能となりました。

図4.並列化によるノイズ低減実験
図4.並列化によるノイズ低減実験

 前述の独自に開発した技術により製品化した水晶加速度センサーのラインナップを表3に示します。すべてデジタル3軸で静止状態の重力加速度から、最大1,000Hzまでの振動を計測可能です。用途に応じて小型の組込みタイプとIP67防塵防水タイプを選択することができます。

表3.水晶加速度センサー ラインナップ
表3.水晶加速度センサー ラインナップ


次回に続く-



参考資料

  1. M.Todorokihara,“A resonant frequency shift quartz accelerometer with 1st order frequency ΔΣ modulators for a high performance MEMS IMU,” DGON Inertial Sensors and Systems,2018 September.


【著者紹介】
中仙道 和之(なかせんどう かずゆき)
セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部 TD商品開発部 課長

■略歴

  • 1995年長岡技術科学大学 電子工学科 修士課程修了
  • 1995年東洋通信機株式会社 入社
    光通信用光学デバイスの開発設計に従事
  • 2007年セイコーエプソン株式会社 入社
    水晶センサーの開発設計及び、新領域の事業開発に従事
  • 2018年MSM推進プロジェクト 企画設計 課長
  • 2022年TD商品開発部 課長

水晶振動子をトランスデューサとするe-Nose型ニオイセンサ(1)

橋詰 賢一(はしづめ けんいち)
(株)アロマビット
最高技術責任者
橋詰 賢一

1 はじめに

人の五感のうち視覚はカメラ、触覚はタッチセンサ、聴覚はマイクロホンというように物理的な波動や信号を使って感知するものについては既に電子化・デジタル化され、インターネット空間を使って伝達することも容易に行えるようになっている。
一方、嗅覚と味覚に関してはそれぞれ生物として根源的に重要な感覚であるにも関わらず化学的な情報をとらえる必要があることから電子化・デジタル化することが困難とされている。特に嗅覚に関しては味覚に比べそのオノマトペも貧弱であることから、自分の感じている香りを他人に伝えること自体難しく、1960年代から人の嗅覚を電子的な手法で測定できる技術の研究が連綿と続けられてきた。
近年、様々な分野において人の五感をデジタル化することでより安心で安全な省力化や環境に優しい機械制御などのニーズが高まっており、人の鼻のしくみを模倣したe-Noseと呼ばれるタイプのニオイセンサが実用化され始めている。

2 e-Nose型ニオイセンサとは

2.1 歴史

1960年代初頭、人が匂いを感知する仕組みとして様々なモデルが提唱されたが、その中でも化学物質の物理的な構造に対して親和性を持つ吸着サイトのようなものが人の鼻に存在し、それぞれのサイトごとに異なる特徴を持つ化学物質の構造部が吸着することで匂いに含まれている化学物質の組み合わせに応じた応答パターンを与えるという一種の鍵と鍵穴モデルが提唱された。
しかしながらその後20年間ほどはこうした電子鼻は研究者の関心を引くことは少なく、技術の進展は半導体をトランスデューサとした電子鼻の開発に成功した1982年のPersaud and Dodd 1)、 特性の異なる複数の酸化物半導体センサ素子をアレイ化して電子鼻を構成したIkegamiら2) の成功により再び研究者らの関心を引くこととなった。
この時期にこうした電子鼻をe-Noseと表現されるようになり、1990年にはNATOのAdvanced Research Workshopにてe-Noseを取り上げた特別セッションが開催されている。
このときにはそれまで人工鼻や電子鼻として表現されていたニオイセンサにたいして、e-Noseという統一した定義が与えられた。
図-1にはこのときに定義されたe-Noseの構成を示す。匂いを構成する分子に対して応答特性の異なる感応膜を装備した複数のトランスデューサを並列に処理する構造で匂いをパターンとして捉えるセンサがe-Noseと定義された。

図-1 e-Noseの定義と人の鼻との比較
図-1 e-Noseの定義と人の鼻との比較

その後、2004年にノーベル生理学賞を受賞したAxelとBuckにより、哺乳類の鼻には遺伝情報上にクラスタリングされることで複数の異なる化学物質親和性を持つレセプター部位が空間的に固定されて存在していることが報告され、人工的に化学物質親和性の異なる感応膜を複数のトランスデューサ場に形成した並列型センサシステムが機能的には哺乳類の鼻を模倣していると考えて良いことが裏付けられている。

2.2 特徴

e-Nose型ニオイセンサは前述のように親和性の異なる感応膜によるアレイ型構造を取ることにより、匂いを定量的な分析ではなく匂いを構成する化学物質のポートフォリオを鳥瞰するようなパターンとして捉えることを特徴とするセンサである。
この親和性は図-1の感応膜により制御されるが、親和性の選択性を高くすればするほど特定物質のみへの応答が強くなることから、選択性が高い感応膜だけからなるe-Noseセンサではカバーできる匂いの幅は狭くなる。一方で、選択性を広く取った感応膜の場合は多くの匂いを測定可能になるものの、匂い同士の境界線が曖昧になり匂いを構成する個別の物質の判別が難しくなる。
哺乳類の場合こうした親和性の選択性の広い部分と、ある特定の化学物質に特異的に応答するような狭い選択性を有する部分の両方を持つことで、生存に直接関わりのある匂いに対しては敏感に応答することができる嗅覚システムを持っている。(図-2)

図-2 哺乳類の匂いパターン化のイメージ 3)
図-2 哺乳類の匂いパターン化のイメージ 3)

3 e-Nose型ニオイセンサに用いられるトランスデューサ

e-Noseの性能において前述のように感応膜の設計と組み合わせが匂いの判別に大きな影響を与えることを説明した。一方、電子的なセンサとしての性能、大きさや安定性、感度に大きな影響を持っているのがトランスデューサの部分である。
表1にはe-Noseに利用される代表的なトランスデューサの一例を示した。

表1 e―Noseに用いられるトランスデューサの例
トランスデューサ 原理 特徴 感度 参考文献
QCM 表面に吸着した物質の質量による共振周波数のシフトを読み取る 基本的にはどのような感応膜でも利用可能。
高感度
吸着物質を選ばない
1ngの重量変化の検知が可能
アロマビット製QCMの場合0.1ppmNH3レベル
Nagle et al. (1998) and Kim and Choi (2002)
FET ニオイ物質の吸着に伴うFET上のスレッシュホールド電位の変化を検知する CMOS化により超小型化が可能。
感度の良い感応膜の設計技術の難易度が高い。
0.5ppm (例) Covington et al. (2001)
Kalman et al. (2000)
K Sawada (2017)
酸化物半導体 高温に加熱した酸化物半導体上での有機物の酸化に伴い生じるホールに由来する電気伝導度を測定する 構造が簡単
半導体結晶構造欠陥が進行するため短寿命
5-500ppm Nagle et al. (1998)
MEMSセンサ カンチレバー式やトランポリン構造を取ったシリコンMEMSにおいて共振周波数変化または歪み抵抗値を読み取り検知する 圧電素子を用いた振動MEMSでは膜の選択の自由度が高い。
歪み抵抗型MEMSの場合は膜設計に工夫が必要
1-100ppm  
光学式センサ SAW型の場合、名のメタル表面に発生する表面プラズモンの屈折率変化を読み取る 超高感度
高感度化のためには大型化が避けられない
Sub ppbレベル  

これらのセンサにおいて、水晶振動子を用いたセンサ(QCM)は人工水晶をX軸に平行でZ軸から35°15′の角度で切り出されたATカット水晶と言われるものを利用するのが一般的である。この水晶に電界を印加すると安定した高周波振動が得られるが、この振動は発振電極の表面になにかの物質が付着すると、その重量分だけエネルギーの損失が起き共振周波数の低下が起きる。
このため水晶振動子の表面に物質選択性を持つ感応膜を形成することで当該物質を検出するセンサを構成することができる。これを利用して、例えば抗体のような強い選択性を有する物質を表面に形成して特定の抗原を検出するようなセンサは旧来より使われている。これにたいして特定物質に対する選択性をもつ感応膜のかわりに、分子に対する親和性例えば親水性-疎水性、アルキル基の長さや塩基性-酸性などを制御した複数の感応膜をそれぞれ形成させ、これを並列に使用することによって図-1で定義されるe-Noseを構成することができる。
中本らはこのような水晶振動子をトランスデューサとし、それぞれに親和性の異なる複数種類の感応膜を構成し、ニューラルネットワークにより匂いパターンを分析するという水晶振動子型ニオイセンサの開発に成功している。4)

FETをトランスデューサとするセンサはゲート上に形成される感応膜にニオイ分子が吸着したときに起こる膜状の電荷変異やその他の電気的な変化を電圧閾値の変化として読み取る原理である。このFETをCMOSとして形成することで高密度にトランジスタアレイを形成したトランスデューサとして利用することができる。現在では1ピクセルあたり5μmレベルの高精細化が可能となっており、将来ニオイセンサを超小型化する際には他の追随を許さないものである。一方、このセンサに用いる感応膜は分子親和性を制御するアンテナ部と吸着によって膜状に電気・電子的な変異を誘発させる分子内トランスデューサ部の2つが必要であり、膜材料設計に高度な技術力が必要である。

酸化物半導体は構成が簡単で単素子であっても分子種による熱抵抗の変化の相違をパターン化することで匂い分析が可能とされるものの、同じ還元性のレベルの物質同士の峻別が苦手であること、半導体自体を500℃レベルの高温に加熱して使用する必要があることから高消費電力であること、使用を繰り返すと酸化物半導体の構造欠陥が拡大し使えなくなってしまうなどの問題がある。

また、MEMS型では圧電MEMSを用い、その表面に構成する感応膜へのニオイ分子の吸着による共振周波数変化を見ることでパターン化する原理のものと、歪抵抗変化を観測するひずみゲージ型MEMSをトランスデューサとするものが知られている。これらはいずれも通常のMEMS製造プロセスで製造可能なために素子の大きさは300〜500μm程度と水晶振動子に比べるとやや小型化が可能である点は優位な点である。
さらに前者は原理的には水晶振動子と同じで、基本的にはどのような膜材料も感応膜として利用できるために様々なタイプの匂いに対してまんべんなく応答しやすいe-Noseとすることができる。また、膜材料に表面の物理吸着が優勢なものだけを選択することで吸脱着の速度も早いものとすることも可能である。しかしながら共振周波数が水晶振動子に比べると3〜4桁低いために、検知のダイナミックレンジが低くなりがちであるという欠点を持っている。
一方、ひずみゲージ型MEMSの場合はこれとは少し異なり、感応膜内部にニオイ分子が含浸することで膜が膨張して発生する歪を検知する仕組みとなっている。そのためニオイ分子は表面に吸着するのみではなく膜内に浸透させる必要があるために脱着に時間がかかってしまうという点を解決していく必要がある。

光学式センサとして代表的なものはナノメタルに光を照射するとその表面に生成する表面プラズモン共鳴という現象を応用したSPRセンサと呼ばれるものがある。このセンサはナノメタル表面の光の屈折が分子の吸着によって起こる変化を光学系を構成して読み取るものであり、照射する単色光の強度を強くし、光路長を長く取ることでpptレベルの超高感度センサとすることも可能であるが、そのためには長い光路長を確保するために装置全体を大きくする必要がある。



次回に続く-



参考文献

  1. Krishna Persaud & George Dodd, Nature volume 299, pages 352–355 (1982)
  2. M. Kaneyasu; A. Ikegami; H. Arima; S. Iwanaga, IEEE Transactions on Components, Hybrids, and Manufacturing Technology, vol. 10, no. 2, pp. 267-273, June 1987
  3. Frontiers in Ecology and Evolution | www.frontiersin.org 1 May 2015 | Volume 3 | Article 53
  4. T.Nakamoto and T.Moriizumi,”Odor sensorus- ing quartz-resonator array and neural-network pattern recognition” Proc.IEEE Ultrasonics Symp.,Chicago,IL, U.S.A.,613-616(1988)


【著者紹介】
橋詰 賢一(はしづめ けんいち)
株式会社アロマビット 最高技術責任者

■略歴

  • 1983年日本カーリット株式会社中央研究所入社 主として電子材料・機能性化学品の開発に従事
  • 1991年ERATO吉村π電子物質プロジェクト研究員 ファインカーボン・テーラードカーボンの基礎研究に従事
  • 1999年ノキア・ジャパン株式会社ノキアリサーチセンター入社 リサーチマネージャおよびプリンシパル・サイエンティストとしてプリンタブルエレクトロニクス、バイオマテリアルおよび5感通信技術の研究を行った
  • 2008年Invention Development Fundにて材料技術・環境技術・エネルギー技術担当ディレクターとして10年先を見越した技術開発テーマの策定と知財化を行った
  • 2014年株式会社アロマビット最高技術責任者

Rist、オムロンと合意締結、画像処理システム製品「FHシリーズ」のAI技術開発面で連携

(株)Ristは、オムロン(株)との間に、オムロンの画像処理システム製品「FHシリーズ」の開発における協業基本合意書を締結した。


・Ristの外観検査AI開発について
 Ristは、画像AI事業を主力事業の一つとして、製造業を中心に外観検査AIシステムの導入実績を数多く有している。人の感覚や熟練検査員の経験・ノウハウに依存してきた目視検査をオーダーメイドのAI開発によって自動化することで、人員負荷や労働力不足の課題を解決してきた。

・締結の背景
 上記に述べた外観検査AIシステムの知見や開発実績を活かし、Ristは画像AIモデルの学習・評価・推論を行うソフトウェア・ツール「RPipe-Image」を開発した。「RPipe-Image」は、外観検査装置に組み込むことを前提に開発したプロダクトである。2022年10月に正式版、2023年6月には各種機能をアップデートした「RPipe-Image ver.2.0」をリリースした。

「RPipe-Image」は、AI技術を搭載した画像処理システムの技術開発を進めているオムロンにも、トライアルで利用された。

オムロンは、外観検査の自動化を実現する画像処理システム製品「FHシリーズ」の販売を行っている。「FHシリーズ」は、AI技術によって人の感性に近い判断基準によるキズ・欠陥検出ができる点が特長。昨今、AI技術の著しい発展に伴い、企業が外観検査装置に求めるニーズが多様化していることから、さらなる機能の向上を目指しているという。

今後、「FHシリーズ」のAI技術開発に「RPipe-Image」を活用することで「FHシリーズ」の機能向上を目指し、両社間で継続的に連携を図っていくため、この度の合意書締結に至った。

オムロンの画像センサは「人の目に迫り、超えていく」を掲げており、最新のAI技術の研究開発を行うことで、人の感性により近く、簡単に使いこなせるAI画像処理システムの実現を目指している。一方、Ristは「人類の感覚器官に、自由を取り戻す」をミッションに掲げ、人の感覚を再現する高いAI技術の提供と、一つでも多くの外観検査現場へのAI導入を目指している。

両社は異なるビジネスモデルを展開しながらも、目指す方向性において高い親和性を持っており、共に技術開発の連携を図ることによって、外観検査AIの開発技術力の底上げと、現場への高精度な外観検査AI導入の加速化に貢献できるとしている。

・今後の展望
 今回の協業基本合意書は、「FHシリーズ」のAI機能の向上と技術開発面において連携を図っていくことを目的としている。具体的には、ディープラーニング技術を用いてさまざまなシーンでの外観検査に対応できる機能を兼ね備えた「RPipe-Image」により開発したAIモデルを、「FHシリーズ」と連携することで、外観検査における、より高精度な分析結果が出せる機能にアップデートし、AIによる判断を人の感性にさらに近づけるための技術開発を目指すとのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000023649.html

3社によるベッドマットレスのポリウレタンケミカルリサイクルの実証開始

パラマウントベッド(株)、三井化学(株)、リバー(株)によるベッドマットレスに含まれるポリウレタンのケミカルリサイクルに向けた取り組みについて、環境省が公募している「令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業」※1のうち、「プラスチック等のリサイクルプロセス構築及び省CO2化実証事業」に採択された。
※1:環境省「令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業」とは
  https://www.env.go.jp/press/press_01282.html

1.背景
 ポリウレタンリサイクルについて、すでに海外化学企業ではバリューチェーンを構築し、廃棄マットレスをリサイクルするコンソーシアムを立ち上げるなど、ポリウレタンを循環材料とするための新しい手法、技術などを模索している。
 一方、国内では、ベッドマットレスを中心としたポリウレタンは廃棄物として回収され、その多くが焼却処理されています。また、ポリウレタン以外の他素材(ポリエステルやスプリング等の金属)が使用されるマットレスは、処理困難物となり、産業廃棄物の排出事業者や自治体にとって大きなコストとなっています。加えて、高齢化社会が進む日本において、介護用ベッドの需要が増すことで、廃棄されるベッドマットレスの数が増加すると見込まれている。

2.目的
 ベッドやマットレスの製造・販売を行うパラマウントベッド、ポリウレタン原料の製造・販売・研究を行う三井化学、リサイクルを行うリバーの3社は、低炭素なケミカルリサイクル技術や回収までのリサイクルシステムの確立を目指す。具体的には、本実証事業の実施期間となる2025年2月までを目途に、使用済みベッドマットレスの処理技術とケミカルリサイクル技術について、低炭素な技術およびプロセスの開発を進める。
 また、回収についてはパラマウントベッドが認定を受けている広域認定制度※2を活用し、介護保険制度が適用されるレンタル型サービスでリユースされた後、使用済みとなったベッドマットレスを回収するスキームの構築を推進する。

※2 パラマウントベッドが認定を受けている広域認定制度とは:
産業廃棄物広域認定制度(2012年4月認定 認定番号第217号)のスキームによる同社使用済み製品のリサイクル
3.各社の役割とリサイクルモデル
■各社とその役割
三井化学      ・代表事業者
          ・再生ポリオールの上市、事業化の検討、・ケミカルリサイクル技術確立

パラマウントベッド ・共同事業者
          ・ケミカルリサイクル原料の製品化
          ・使用済みウレタン製品の回収スキーム構築v

リバー       ・共同事業者
          ・解体、選別、粉砕の手法確立等

■リサイクルモデル 画像参照

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000092263.html

アバールデータ、2150nmまでの波長が撮像可能な近赤外線エリアカメラを発売

(株)アバールデータは、近赤外線エリアカメラ「ABA-001MIR」を2023年9月より発売開始する。

 今回開発した「ABA-001MIR」は、有効画素数320(H)x256(V)、画素サイズ20×20(µm)受光感度1300nm~2150nmのInGaAsセンサを搭載した近赤外線エリアカメラ。一般的な近赤外線カメラでは不可能な2150nmまでの波長を撮像することが可能であり、樹脂・油・繊維・医薬品など長波長側に感度を持つ被写体の選別や異物検査の用途にも有効である。

製品名 :中帯域近赤外線エリアカメラ
型式名称:ABA-001MIR(価格:オープン価格)
受注開始:2023 年 9 月 1 日
出荷開始:2023 年 12 月 1 日

■AHS-001MIR の特長
〇検出波長帯:1300nm~2150nm
〇画素サイズ:20μm×20μm
〇有効画素数:320H(空間) ×256V(分光)
〇フレームレート:Max.507fps

■主な仕様
製品型式     :ABA-001MIR
撮像素子     :aAs センサ 2 段電子冷却 / 有効画素数:320(H)×256(V)
          画素サイズ:20μm×20μm / 有効サイズ:6.4mm×5.12mm
インターフェース :1300~2150nm
シャッター    :Global shutter system
フレームレート  :Max.507fps
露光時間     :1μs ~ 1ms (設定可能範囲:1μs ~ 9.99sec)
黒レベル     :0LSB ~ 127LSB 可変 (10bit 時)
映像出力     :8 / 10 / 12 / 14bit
レンズマウント  :C マウント 1/2 インチ

■その他仕様
電源      :入力電圧範囲:DC +12V±1V / 冷却部:DC +12V±1V
         消費電力:17W(typ) / 冷却部:30W(typ)
動作温度/湿度 :+5℃ ~ +30℃/20 ~ 50% (但し結露無き事)
保存温度/湿度 :-5℃ ~ +55℃/20 ~ 80% (但し結露無き事)
外形寸法    :58(W) x 85.5(H) x 146.5(D) mm
         マウント部及び突起物含まず
重量      :750g
規格      :RoHS2

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000059109.html

東海理化、遠隔監視システムで川崎市が実施する自動運転バスの実証実験に参画

 (株)東海理化は、川崎鶴見臨港バス(株)が代表幹事を務める、KAWASAKI新モビリティサービス実証実験協議会実施の「2023KAWASAKI新モビリティサービス実証実験」において、自動運転バスの実証実験に参画する。


 「2023KAWASAKI新モビリティサービス実証実験」は国土交通省令和5年度共創モデル実証プロジェクトの採択を受け、川崎区内で自動運転バスの実証実験運行が実施される。
 同社は自動運転バス車両外に取付けた複数台のカメラの映像を合成処理し、映像品質を維持したまま低遅延な伝送を可能にした、監視者の負担が少ない、安心・安全な遠隔監視システムの実用化を推進する。同社はこれからも、地域交通への取り組みを通じて、自動運転車の社会実装実現を技術面で支えるという。

※参考(川崎鶴見臨港バス株式会社発表資料抜粋)
「2023KAWASAKI新モビリティサービス実証実験」自動運転バスの実証実験について

自動運転バス実証実験運行について
川崎の交通における大動脈である産業道路において行われる自動運転バスの実証実験は、将来的な社会実装を見据えながら、まずはバス運転者の負担軽減を目指しレベル2での実証実験運行を行う。

なお、大型バスを使用した自動運転バスの実証実験運行は川崎市内では初めてとなる。

●自動運転バス実証実験概要
 (1)実施期間:2023年10月23日(月)~27日(金)
 (2)実証区間:臨港バス塩浜営業所~産業道路~大師橋駅
 (3)車  両:日野レインボーⅡをベースとした自動運転バス
         (定員:運転席 1名、座席 24名) ※埼玉工業大学が開発する車両を使用
 (4)運行便数:1日6往復(運行時間:9:00~17:00)
         ※今回は技術検証を目的としており、一般のお客様のご乗車はできない。
         ※当日の天候や車両のメンテナンス状況などにより運行予定が変更となる場合あり。
 (5)自動運転レベル:レベル2:運転士が乗車し、状況に応じて自動・手動を切替えて運転。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000115.000088570.html