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岡山大、AIを用いた果物・野菜収穫用空間センサーの開発に成功

◆発表のポイント
・農業用ロボットには、屋外の光環境が変化しても計測結果が変化しない計測特性が求められる。
・一方、屋外用ロボットは、空間計測(対象物の位置・寸法をリモート計測すること)時の周囲環境(晴雨、雲の移動、風による木漏れ日など)の変化や、太陽の日周運動による角度変化、季節による太陽高度の変化などの時変光環境外乱の影響を大きく受けるため、屋外空間計測の高精度化は困難な課題だった。
・複眼カメラには、左右カメラ画像情報の比較に基づく画像処理時に時変光環境外乱の影響を受ない、という特徴がある。これは、撮影時の光環境状況が左右カメラの画像に同時にかつ同等に反映されるためである。この複眼の特徴を利用することで、時変光環境外乱に影響されない画像処理が可能となり、屋外の照度変化に影響されない空間計測が可能になる。
・今回、計測対象物の写真を事前に登録しておくことで、登録写真の変更のみでどんな対象物でも位置と寸法の計測が可能な計測システムを構築した。
・また、任意対象物の位置・寸法計測装置を小型化することで、移動ロボットのハンド部への取り付けが可能(ハンドアイシステムと呼ばれる)となり、ロボットの動きによってカメラ視点を対象物(野菜・果物など)の近くに移動させて計測できることから、高精度な空間計測ができ、作物を正確に把持・収穫する農業用ロボットの開発が可能になった。

 岡山大学発ベンチャーの(株)ビジュアルサーボ(見浪護特命教授(研究)が起業)は、ステレオビジョンを用いた空間計測について研究を続け、任意対象物の3次元位置姿勢を計測するコンピュータビジョン構築に成功し、泳ぐ魚の寸法計測などを行ってきた。
 この画像計測方法は、左右複眼カメラに同じ対象物が写っていれば、その位置・姿勢・寸法の計測が可能であるという特徴があり、そのアイデアは、ビジュアルサーボ所有の特許6784991、6760656で権利化されている。今回、AI手法を用いた画像処理方法により、野菜や果物などの任意不定形対象物でも、位置・寸法の計測が可能となった。
 農業用ロボットは、屋外の光環境が変化しても計測結果が変化しない計測特性が求められる。性能を確認するために野菜、果物、日用品を16種用意し、寸法を実測すると共に、屋外の日向(照度約52,000ルクス)および日陰(1,530ルクス)の光環境で対象物の寸法と3次元位置を計測し、日向と日陰の照度差に影響されない位置・寸法の計測を実証した。
 上記の結果より、(1)果物・野菜・日用品の寸法と3次元位置を屋外で非接触での空間計測が可能なこと、(2)寸法計測結果は、屋外の日向・日陰の照度環境に影響されないこと、(3)補正後の寸法平均誤差は1[mm]以下、標準偏差は3[mm]程度であることが分かった。
 今後、果物・野菜収穫用ロボットの開発を、(株)SECと共同で進める予定。収穫時に果物の熟度などの計測・寸法に基づく仕分け作業なども可能な多機能ロボットの開発を進め、2023年度中に農場でのフィールドテストを開始する予定であるという。

ニュースリリースサイト(okayama-u):https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1159.html

リブレット形状を航空機に大面積施工し、燃費改善効果を計る飛行実証実験を開始

 オーウエル(株)は、日本航空(株)〔以下「JAL」〕、(国研)宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)と共に、航空機の燃費改善によるCO2排出量削減を目指し、同社独自の“塗膜形成技術”を活用したリブレット技術(※1)を用いて機体外板の塗膜上に約60㎠のリブレット(※2)を施工した航空機(ボーイング737-800型機)による飛行実証試験を2022年7月より進めてきた(※3)。

 同社の施工方法による機体は、2023年4月時点で施工後約1,900時間、2023年6月時点で施工後約2,300時間が経過し、十分な耐久性を有することが段階的に確認されているが、このたび、航空機外板への大面積施工が完了し、実際の燃費改善効果の検証を進めることとなった。

(※1)“塗膜形成技術”を活用したリブレット技術(Paint-to-Paint Method)
 既存の塗膜上に、水溶性モールドで塗膜に凹凸を形成する手法(画像)
(※2)リブレット
 サメ肌形状によって水の抵抗が軽減されることにヒントを得て考案された微細な溝構造。航空機の飛行時の空気の流れに沿って機体外板に微細な溝構造を形成することで、飛行時の抵抗を軽減することができる。
(※3)2023年2月28日付プレスリリース
『JAL、JAXA、オーウエル、ニコン 世界初、塗膜にリブレット形状を施工した航空機で飛行実証試験を実施』
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS00965/f661175d/0487/484e/970a/43ebffe3b2da
/140120230228519308.pdf

 航空機の大面積への施工を実現するためには、(1)水溶性モールドの大型化、(2)大型化に伴う施工技術の確立、といった課題を解決したうえで、(3)施工箇所・面積を評価する必要があり、同社はJAL、JAXAと共同で最適な方法を検証してきた。
(1)水溶性モールドの大型化(オーウエル)
①水溶性モールドの量産を見据えた材料および製造工程の見直し
②現場施工を可能とするフィルム構成に改良
(2)大型化に伴う施工技術の確立(オーウエル、JAL)
①施工現場である整備格納庫の気温および湿度の影響を調査し、最適な要件を確定
②水溶性モールドを機体に施工する際の専用ツールの考案・作成
③機体に施工する作業者によるトレーニング
(3)施工箇所・面積の評価(JAXA)
①空力シミュレーション、風洞試験を行い、機体抵抗低減の効果を算出

これらの工夫や検証を実施した結果、航空機外板への大面積の施工が可能と判断し、2023年11月、ボーイング737-800型機の国内線航空機1機(JA331J)の胴体下部に、合計約25㎡のリブレット形状を施工することに成功した。

引き続き、同社はJAL、JAXAと共同で今回の大面積に施工したリブレット形状の耐久性、美観性、および燃費削減効果を確認していくとともに、来年度以降、より燃費削減効果の高い国際線機材へのリブレット形状の施工を展開することで、更なるCO2排出量の削減に取り組むとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000131440.html

モーションリブ、三菱電機、日鉄エンジ、慶應大の四者共同研究により、幅広い三菱電機製サーボアンプでリアルハプティクス®が利用可能

モーションリブ(株)及び慶應義塾大学は、三菱電機(株)製のデジタル通信仕様サーボアンプにおいて力触覚(※1)技術「リアルハプティクス(※2)」による制御ができることを日鉄エンジニアリング(株)が保有する装置にて実証し、その有用性を確認した。

1.研究の背景
 リアルハプティクスとは、アクチュエータの力加減を自在に制御することができる、慶應大学が開発した技術である。近年、遠隔操作ロボットなどにも用いられている。この技術を簡便に利用するため、モーションリブの製品である汎用力触覚コントローラICチップ「AbcCore®」が使用されている。このAbcCoreを産業用オープンネットワークCC-Link IE TSN(※3)に対応させ、シーケンサ等の上位システムとの通信利便性を高める製品として、モーションリブはAbcCore通信変換モジュール「RT-TSN1」を2021年に開発した。しかしながら、CC-Link IE TSN経由でサーボアンプやモータを直接制御する機能はなく、これまではアナログ接続に対応したサーボアンプを利用しシステム構築する必要があった。これに起因し、要件によってはリアルハプティクスの装置実装が困難であった。

2.本研究の成果と意義
 今回、モーションリブはRT-TSN1に対しデジタル通信規格に対応する追加開発を実施し、RT-TSN1からサーボアンプに対しCC-Link IE TSNを経由した通信を可能とした。そして三菱電機、日鉄エンジニアリング、慶應大学及びモーションリブの四者共同研究開発において、AbcCore-三菱電機製サーボアンプ間をデジタル通信で制御し、リアルハプティクスが適用できることを実証した。本実証実験では、三菱電機製サーボアンプ MELSERVO-J5シリーズのMR-J5-Gを利用し、リアルハプティクスが用いられている日鉄エンジニアリングが保有する装置に対し高精度な力触覚制御が実現できることを確認した。

今回の研究成果により、設備をCC-Link IE TSNで構築している製造業をはじめとするユーザーのより自由で柔軟な機器とシステムの選定が可能となり、リアルハプティクス機能搭載装置を開発することができる。
産業分野におけるリアルハプティクスの活用促進と産業界への更なる貢献を目指し、今後も連携して研究開発を継続するという。

≪用語説明≫
※1 力触覚: 触れた物の硬さや柔らかさを伝える、力と位置変化に関する感覚。
※2 リアルハプティクス:慶應大学で発明された力触覚伝送技術で、アクチュエータの力加減を自在に制御することができる技術。 この技術により、力センサレスで力触覚をともなう「遠隔操作」「計測可視化・分析」「自動化」「感触の再現・VR」が可能となる。
※3 CC-Link IE TSN:TSN(Time-Sensitive Networking )技術の活用により、サイクリック通信でリアルタイム性を保証した制御を実施しながら、ITシステムとの情報通信が混在可能なネットワーク。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000027265.html

北見市にて路面凹凸をクルマ走行で自動計測するシステムが運用開始

 (株)要が開発した、道路維持管理システム「セーフロードV」が11/1より北見市にて運用開始となった。「セーフロードV」は、車種を問わず、どの車であってもセンサを取り付けて走行させるだけで、路面の凹凸を計測することができるシステムで、従来の専用計測器や専用車両を使う方法より、圧倒的に低コストで活用することが可能であるという。

〔北見工大の富山研究室(社会インフラ)との共同研究から5年、低コストで運用可能な道路維持管理システムを開発〕
現在、広く使われている路面の凹凸計測器は、専用車両を利用するなどコスト面で負担の大きいものであった。そこで同社では、一般車両に取り付けられるセンサ機器とWEBアプリケーションにより、低価格で計測できるシステムを開発した。

◆道路維持管理システム「セーフロードV(ブイ)」概要◆
機能:センサで国際ラフネス指数(※)データの取得と可視化 日常道路パトロールと並行が可能。

 道路の凹凸の点検は、市民のみなさんが生活するうえで、安心・安全に直結するので、公平かつ迅速な対応が求められる。路面の補修箇所の早期発見と道路状況のデータベースを蓄積することで、道路の長寿命化に貢献する。当システムの計測データは、WEBブラウザでマップ上に表示され、PCやタブレット端末で確認できる。損傷の度合いによって色分けされる機能や当該地点の画像データを確認できる機能を有する。道路点検は目視や手作業の記録が中心のところ、システムにより「見える化」され、道路管理の解像度がより明確になるものと考えられる。過去データとの対比なども容易で、道路管理DX化の一歩となるものである。

※国際ラフネス指数(International Roughness Index、略称IRI)
IRIとは道路路面の凸凹の程度を数値として表現したものであり、世界銀行により提唱された評価手法。このIRIを地図上に明示することにより、道路の良好な舗装区間と改修が必要な舗装区間が一目で把握でき、将来の道路改修・維持管理計画を策定する上での重要な判断基準の1つになる。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000038875.html

NSKとTOPPANエッジ、 温度センサー搭載RFIDタグを活用した産業機械設備向け保全管理システムの共同開発

日本精工(株)とTOPPANエッジ(株)は、温度センサー搭載RFID*1タグを活用した、産業機械設備向け保全管理システムの共同開発を開始した。

概要
 本システムは産業機械設備に取り付け可能な ①温度センサーを搭載したRFIDタグ と、そのタグに対応した ②RFIDリーダー および ③取得したデータを管理分析可能なシステム で構成されている。温度センサー搭載RFIDタグを保全対象となる軸受や直動製品などの近傍に取り付けておき、機械設備の稼働時や点検/保守の際にRFIDリーダーをかざすだけで複数のID情報と温度情報を一括で読み取り、効率的な管理をすることができる。NSKの産業機械設備のノウハウとTOPPANエッジのRFIDタグの設計技術を掛け合わせることで、産業機械設備向けの新しい保全管理システムを実現し、産業機械や設備の点検/保守履歴の見える化による作業効率向上や、現場で保守履歴・温度推移が確認可能になることによる予防保全の効率化を目指す。

開発の背景
 近年、センサを常設することで機械設備の状態を監視し、トラブルを未然に防ぐ予知保全のニーズが高まっている。一方で、従来から生産現場においては、機械設備のトラブルを未然に防ぐために人手による定期点検および予防保全が行われており、多大なリソースが掛かっている。
 NSKとTOPPANエッジはこのような現場の作業を効率化し、作業負担の軽減と安全性のさらなる向上に貢献する。

本システムの特長
1. バッテリーレスかつ金属に対応した温度センサー搭載RFIDタグ*2
 今回開発したRFIDタグは、産業機械設備の金属面の電波干渉を受けても通信が可能*3。
 温度測定に必要な電力もリーダー側から無線で給電されるパッシブ方式*4で設計しているため、バッテリーレスでメンテナンスの手間が軽減される。
 また、独自のアンテナ設計と基板構成の最適化により小型でスマートなため、貼り付ける場所を選ばない。

2.点検や保守の履歴記録を自動化
 RFIDリーダーにて取得したID情報と温度情報から、点検/保守の履歴や過去からの温度推移の他に、製品番号や稼働開始日など、様々なデータをより早く容易に記録/照合できる。

今後NSKとTOPPANエッジは、2024年度のパイロットユーザーによる実機検証の実施を目指すとのこと。

*1 Radio frequency identificationの略。電波を用いて非接触でデータを読み書きする技術。
*2 タグが接する表面温度の測定が可能。温度ロギング機能は無い。
*3 周辺の電波環境や使用環境による。
*4 電源を持っていないタグが読み取り機(リーダーライタ)からの無線電力を使用して応答通信する方式

ニュースリリースサイト(toppan):
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2023/11/newsrelease231107_1.html

自律型無人探査機(AUV)戦略について(1)

角田 智彦(つのだ ともひこ)
内閣府総合海洋政策推進事務局
角田 智彦

(1)はじめに

 四方を海に囲まれ、世界第6位の広大な管轄海域を有する我が国にとって、経済社会の存立と成長の基盤に「海」を活かしていくこと、そして、貴重な人類の存続基盤として「海」を継承していくことは、非常に重要である。
 政府では、こうした認識に基づいて、平成19年に成立した海洋基本法のもと、海洋政策を総合的・計画的に推進してきた。また、令和5年4月に、向こう5年間の海洋政策の指針となる「第4期海洋基本計画」を閣議決定した。
 第4期海洋基本計画は、海洋政策の大きな変革、いわゆる「オーシャン・トランスフォーメーション」を推進すべき時との認識の下、我が国の海洋政策の今後の指針を定めるもので、「総合的な海洋の安全保障」と「持続可能な海洋の構築」を2つの柱として位置付けている。
 本稿のテーマである自律型無人探査機(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)は、全自動で水中を航行できる海中ロボットであり、海洋安全保障や海洋資源開発、洋上風力発電、海洋環境の保全等の様々な分野での利用が期待されている。
 このようにAUVは、第4期海洋基本計画の2つの柱の実現にも貢献するものであり、同計画でも、第2部の「6.海洋調査及び海洋科学技術に関する研究開発の推進等」において「海洋観測・監視、海洋資源探査、洋上風力発電の設置・保守管理、海洋インフラ管理、海洋生態系のモニタリング等への活用が期待されるAUVの社会実装を推進するため、産学官の枠組みを構築し、将来ビジョン、ロードマップ、人材育成を含む戦略を策定する。また、共通技術の開発に向けた関係機関と産学官の連携及び科学技術の多義性を踏まえた公的利用の推進を含めて戦略を着実に実施する」こと等が示されている。本稿では、この第4期海洋基本計画に基づいて内閣府総合海洋政策推進事務局において検討を行っている、AUVの社会実装に向けた「AUV戦略」について紹介したい。

(2)AUVを取り巻く国内外の状況

 海域では、自律型無人艇(ASV: Autonomous Surface Vehicle)や遠隔操作型無人潜水機(ROV: Remotely Operated Vehicle)等のさまざまな海洋ロボティクスが活躍している。そのなかでAUVは、人による遠隔操縦を必要とせず、機器本体が自律的に状況を判断して全自動で水中を航行できるロボットである。AUVにソナーやカメラを取り付けて水中を航行させることで、水中の状況を可視化することができる。
 AUVの特徴としては、天候の影響を受けず、長時間の活動も可能であること、自律制御により水中での活動を省人化・無人化できること、ケーブルがないため大水深・広範囲での活動が可能であること等が挙げられる。

図1:Team KUROSHIOが開発したAUV-NEXT(提供:JAMSTEC)
図1:Team KUROSHIOが開発したAUV-NEXT(提供:JAMSTEC)

 AUVについて日本では、1990年代後半に研究開発が開始された深海巡航探査機「うらしま」をはじめとして、数多くの世界をリードする研究開発が行われてきた。近年でも、海底探査技術の国際競技大会「XPRIZE」において、日本の「Team KUROSHIO」が活躍したほか、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的深海資源調査技術」において、AUVを複数機同時に運用する技術が開発される等、日本の強みを活かした技術開発の事例が見られる。
 一方、海外では、欧米を中心に安全保障や海洋調査、石油・ガス開発の分野でAUVが幅広く利用されており、その結果、AUVの産業化において日本は海外に後れをとり、現在、日本で販売されているAUVの多くが海外製となっている。
 これに対し、海洋資源開発や、洋上風力発電、海洋インフラ管理、海洋観測・調査、海域監視等の分野では、これまで以上に広範囲の海域における活動が必要と見られている。また、現下の人口減少も相まって省人化・無人化の必要性が高まっており、AUVの国内での更なる利活用ひいては、国産化・産業化が期待されている。

(3) AUV戦略の検討

 このような状況を踏まえ、政府では、AUVの社会実装に向けた戦略「AUV戦略」を策定することとした。令和5年度中の戦略策定を目指し、令和4年度には、総合海洋政策本部参与会議の下に、「AUV戦略プロジェクトチーム(PT)」を設置し、戦略策定に向けた検討を始めた。
 AUV戦略PTは、参与会議の参与と有識者、関係府省庁を構成員とし、令和5年4月には、AUVの国産化・産業化に関する現状を共有し、AUV戦略策定に向けた論点の整理を行った上で、AUV戦略の方向性を示した「中間とりまとめ」を行った。
 AUV戦略PTの「中間とりまとめ」では、将来的なAUVの国産化・産業化を見据えた将来ビジョンやロードマップ、搭載センサを含めた関連技術を“見える化”した技術マップを作成して戦略に位置づけるという、AUV戦略の方向性が示された。このほか、部品やソフトウェアの規格の共通化や、実証フィールドの整備、スタートアップの支援、AUVを活用した情報サービス業の活用、AUVについて官民が議論する場の形成、研究開発の推進等に向けた方策についても、戦略に記載することとされた。各項目の概要は次の通りである。

「中間とりまとめ」で示されたAUV戦略の方向性(7項目)

  • 官民プラットフォームの形成:産学官連携による枠組みを構築し、AUV戦略の詳細を検討。戦略策定後も民間や研究機関主体での技術動向共有、共通基盤の構築等の継続的な取組を実施
  • 将来ビジョンの作成:開発側と利用側が将来ビジョンを共有した上で、市場開拓を行う分野を戦略的に検討。ロードマップの作成
  • AUV技術マップの作成:我が国が強みとする主要技術を分析し、国産化に向けた戦略を検討
  • 共通基盤の構築:将来の規格化を見据え、官民連携の枠組みで、部品やソフトウェアの共通化・互換性を確保
  • 制度環境の整備:常設で技術実証や技術公開に利用できる実海域試験場の整備、運用規範・ルール、知財、データの共有や管理
  • 企業活動の促進方策:サービスプロバイダの活用・育成、海外展開支援、スタートアップ支援、技術開発や運用を担う人材の育成
  • 研究開発の推進:海洋ロボティクスの研究開発・技術開発の推進、情報交換や共同研究・技術開発を進める枠組みの活用
図2:近い将来のAUVを含めた海洋ロボティクスの利用イメージ
図2:近い将来のAUVを含めた海洋ロボティクスの利用イメージ


次回に続く-



【著者紹介】
角田 智彦(つのだ ともひこ)
内閣府 総合海洋政策推進事務局 上席政策調査員 

■略歴

1996年京都大学理学部(海洋物理学教室)卒業、1998年東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修了。1998年に三菱総合研究所に入社し、2008年より主任研究員として、海洋再生可能エネルギーや海洋情報管理などの事業に従事(2015年退職)。2015年より笹川平和財団海洋政策研究所にて海洋酸性化などの海洋環境問題や海域管理に関する調査研究に取り組むとともに、「海洋白書」の編集統括などを担当。2022年より現職(出向)、第4期海洋基本計画の策定やAUV戦略の検討に従事。

MEMSジャイロを用いて慣性航行できる日は来るか(1)

田中 秀治(たなか しゅうじ)
東北大学
田中 秀治

1.原子力潜水艦に使われた超高性能ジャイロ

 ジュール・ヴェルヌの「海底二万マイル」に登場する潜水艦「ノーチラス号」は、陸地とは一切の交流を絶って海洋探検を行う。これが現実になったのは原子力潜水艦が登場してからであろう。潜水艦発射型弾道ミサイル「ポラリス」を搭載する「ポラリス潜水艦」は、1950年代に開発が始まり、1960年に配備された。このポラリス潜水艦は原子力潜水艦であり、仕様上は数か月の連続潜航が可能であると言われている。それには慣性航行のための超高性能のジャイロが必要とされ、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のHoward Knoebel教授らのアイデアに基づいて1950年代に開発された。
 ポラリス潜水艦に搭載されたジャイロは“Electric Vacuum Gyro”または“Electrically-Suspended Gyro”(ESG)と呼ばれる(参考ウェブサイト1) ,2) )。これは、金属球を静電力によって空中に浮上させ、電磁誘導によって高速回転させるものである。1979年に出版されたRockwell Internationalによって書かれた論文(Dale L. McLeod, Miniaturization of The Solid Rotor Electrostatic Gyro, IEEE Proc. National Aerospace and Electronics Conference (NA ECON), Part III, 1979, pp. 1199-1205)から、その「狂気の技術」の一端を紹介しよう。
 その金属球は直径1 cmで、軽くて硬いベリリウムでできており、2500 rpsで回転する。ローターの角運動量が大きい方が有利なので、この金属球は高速回転するが、回転中に真球であることが望ましい。しかし、2500 rpsで回転すると、遠心力で金属球は赤道直径が0.13 μm、膨らんでしまう。また、金属球を安定回転させるためには、真球にもかかわらず、軸周りの慣性モーメントが最大でなくてはならない。さらに、金属球の回転を検出するために、金属球の重心を幾何中心から0.4 μm、ずらすことにした。さて、これらの要件をどうやって実現したのだろうか。
 図1にその方法を示す。ベリリウム丸棒に比重の大きなタンタル線を3本埋め込み、一軸押出成形する。これによってベリリウム棒は軸方向に0.56 ppm/℃だけ大きな熱膨張率を示す。金属球を使用時より7.2℃低い温度で真球に加工する。このときタンタル線の位置をX線透過観察によって確認し、金属球の重心が所望の位置に来るようにする。真球に加工された金属球を使用温度にすると、金属球は熱膨張によって回転軸方向(押出方向)により多く伸びて、微妙に楕円体になる。これを2500 rpsで回転させれば、遠心力によって赤道直径が膨らみ、真球になるというわけだ。

図1 ESGのローターの作り方(Dale L. McLeod, Miniaturization of The Solid Rotor Electrostatic Gyro, IEEE Proc. National Aerospace and Electronics Conference (NA ECON), Part III, 1979, pp. 1199-1205)
図1 ESGのローターの作り方(Dale L. McLeod, Miniaturization of The Solid Rotor Electrostatic Gyro, IEEE Proc. National Aerospace and Electronics Conference (NA ECON), Part III, 1979, pp. 1199-1205)

2.ジャイロの性能

 このように、当時、ありったけの技術を注ぎ込んで作ったESGは、0.0001 º/hのバイアス安定性を誇っていた。図2にジャイロの種類と性能を整理した。ここにはいくつかの種類のジャイロがバイアス安定性を横軸に取って示されているが、右側がハイエンドで、ESGは最も右側にあり、一方、左側はローエンドで、MEMSジャイロはここに位置する。ジャイロは性能にして6桁もの幅があるセンサであるが、それに応じてお値段にも1億円以上から100円以下まで幅がある。

図2 ジャイロの種類と性能
図2 ジャイロの種類と性能

 ところで、上にジャイロの性能と一口に言い、また、その指標の1つとしてバイアス安定性を挙げたものの、これには少し説明を要するだろう。ジャイロは回転を検出センサなので、どのくらいゆっくりとした回転を検出できるかが最も重要な性能になる。今、あるジャイロがどのくらいゆっくりとした回転を検出できるかテストするとしよう。ジャイロを任意の角速度で回せる装置(レートテーブル)に載せて、検出軸まわりに回転させる。ジャイロをある角速度で回して、その角速度を次第に小さくしていくと、ジャイロからの出力信号はどんどん小さくなり、やがてノイズに埋もれて判別できなくなるはずである。ここが検出限界である。
 しかし、出力信号の時間平均を取れば、ノイズは小さくなる。これ幸いと、いくらでも長い時間をかけて出力信号を測定し、それを時間平均すれば、いくらでも小さな出力信号、すなわち角速度を判別できるようになるかと言えば、そうはならない。その限界がバイアス安定性である。その様子を図3に示す。右下の図の横軸は平均時間のようなもの、縦軸はノイズのようなもの(アラン分散)である。この図は、「平均時間」τを長くしていけば、ノイズはの割合で減っていくものの、あるところで下げ止まり、それ以上にτを長くすると、かえって誤差が増えること表している。その底の部分がバイアス安定性に相当する(正確には、バイアス安定性の1/0.664倍)。センサ等を取り扱った経験があれば、図3の左側のスロープはホワイトノイズ、右側のスロープはブラウンノイズ、真ん中の平らな部分はフリッカノイズやピンクノイズなどと呼ばれることをご存じだろう。
 もちろんバイアス安定性の他にもジャイロにとって重要な性能指標はある。バンド幅はどのくらい速い角速度の変化を測定できるかの指標であり、応答性とも言える。スケールファクターの安定性は感度、たとえば、角速度 1 º/sあたりの出力電圧の安定性である。ゼロ点の安定性も重要である。他には並進加速度に対する不感性もある。ジャイロは回転を検出するセンサなので、並進運動には反応すべきではない。しかし、実際にはジャイロにショックを与えると、出力信号が乱れることがある。そして、おおよそ全ての用途で深刻なのが、温度に対するスケールファクターとゼロ点の不安定性である。図3の右側のスロープはこの温度特性によるところが大きい。ジャイロの温度特性が悪いと、このスロープが上側にシフトし、その結果、検出できる最小の角速度が大きくなる。

図3 レートジャイロのノイズ
図3 レートジャイロのノイズ

3.MEMSジャイロ

 図2に様々な種類のジャイロを示したが、世の中で最も使われているのはMEMSジャイロである。その小ささ、低廉さ、使い易さなどから、スマートフォン、ゲーム機器、自動車、ドローンなど、身の回りの多くの製品にMEMSジャイロが入っている。図4にMEMSジャイロを示す。その外観(a)は典型的には樹脂モールディングされた黒い電子部品である。その樹脂モールドを除去し、さらにメカニズムを保護している蓋(ウェーハレベルパッケージ)を取ると、(b)に示すようなものが現れる。このMEMSダイ(TDK-InvenSense MPU-9250)では、右側に3軸加速度センサ、左側に3軸ジャイロが形成されおり、ジャイロの実質的な大きさは1 mm2 程度である。なお、このジャイロがどのように動作するかについては 別の記事3) を参考にして欲しい。

(a) MEMSジャイロの外観
(a) MEMSジャイロの外観
(b) MEMSジャイロの内部構造(TDK-InvenSense MPU-9250、撮影:田中・塚本研究室)図4 MEMSジャイロ
(b) MEMSジャイロの内部構造(TDK-InvenSense MPU-9250、撮影:田中・塚本研究室)
図4 MEMSジャイロ

 さて、MEMSジャイロは振動ジャイロの部類に属するが、図5を用いてその原理を説明する。ここで、おもり(m)が直交するx軸とy軸にばね(kx、ky)で支持され、各方向に振動する系を考える。今、この系が静止した状態で、おもりをx方向のみに一定振幅で振動させる。y方向には力は働かないので、おもりはy方向には静止したままである。ここで、この系を角速度Ωzで面内に回転させると、この系から見ておもりにコリオリ力が働く。コリオリ力は元の振動に直交した向き、すなわちy方向で、その大きさは元の振動の速度vxとΩzに比例し、2mvxΩzである。これによってy方向に振動が生じるが、定常状態でその振幅はΩzに比例するので、これによってΩzを測定できる。

図5 振動ジャイロの機構
図5 振動ジャイロの機構

 ここまでの説明で納得できた人は多いと思うが、何だかおかしいと感じている人もいるだろう。y方向に静止しているおもりを加振したら、おもりに生じる振動は、減衰自由振動と強制振動の足し合わせたものになるはずで、Ωzに振幅が比例するのは後者だけのはず…そのように思った方は機械力学を学んだ方だ。おもりの振動が後者だけになるには、前者が十分に減衰するのを待たなくてはならない。しかし、これでは刻々と変わる角速度を測ることはできないため、実用的とは言えない。
 これを解決する1つの方法は、前記2つの振動を周波数で分離することである。x軸とy軸の共振周波数、それぞれfxとfyを少しだけ違えておく。x方向に共振周波数fxで振動させると、y方向に生じる減衰自由振動の周波数はfyであり(実際には少し違うが、MEMSジャイロでは減衰係数が小さいので、ほぼ正しい)、一方、強制振動の周波数はfxであるから、後者の周波数成分だけ取り出せばよい。これはx方向の駆動信号を用いて同期検波すれば、可能である。こうやって復調された信号には、DC、|fy−fx|、|fy+fx|などの周波数成分が含まれるが、今、欲しい周波数成分はDCなので、|fy−fx|以上の成分をローパスフィルターでカットする。この方法は単純であるものの、|fy−fx|以上の角速度変化は測定できない、つまりバンド幅が|fy−fx|以下に限られるという欠点を持つ。



次回に続く-





【著者紹介】
田中 秀治(たなか しゅうじ)
東北大学 大学院工学研究科 教授

■略歴

  • 1999年3月東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻博士課程修了。博士(工学)。
  • 1999年4月東北大学大学院工学研究科助手。
  • 2001年4月同講師。
  • 2003年4月~2013年7月同助教授。
  • 2013年8月同教授。
  • 2004年1月~2006年3月科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー(兼務)。
  • 2006年4月~2018年3月同特任フェロー。
  • 2017年度日本機械学会マイクロ・ナノ工学部門 部門長。

IEEE Fellow、日本機械学会フェロー。
日経クロステック等に多くのMEMS関連記事を執筆。
ビジネスディベロップメントコンファレンス“MEMS Engineer Forum”代表
JST ACT-X「強靭化ハードウェア」領域総括
IEEE MEMS 2022 General Co-Chair.
Transducers 2023 Executive Program Chair.
MEMSセンサ、弾性波デバイス、集積化技術、MEMSパッケージング技術、圧電デバイス・材料などの研究に従事。

海洋へのレーザー応用(1)

染川 智弘(そめかわ としひろ)
(公財)レーザー技術総合研究所
染川 智弘

1.はじめに

 日本の領海・排他的経済水域は国土面積の12倍程度も大きく、海底鉱物・エネルギー資源の採掘、CO2の大規模削減を目指すCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)、海底パイプラインなど、有効な海底利用が期待されている。海底開発では資源探査手法の開発だけでなく、海底インフラのメンテナンスや事故の早期発見、開発に伴う海洋生態系・環境への影響評価が重要とされている。現状の採取・採水測定による海中環境の評価は、頻度や評価可能なエリアに限度があるため、広範囲な領域を短時間でモニタリングが可能な水中ライダーを提案している。
 ライダーはLIght Detection And Ranging (LIDAR)の略語であり、レーダーの光源をラジオ波からレーザーに置き換えたリモートセンシング技術である(1)。レーダーでは雨粒などの測距だけでなく、偏波・ドップラー効果といった電磁波の特性を利用することによって、降水粒子の識別(雨、雪など)や風の観測など、付加情報を生み出している。一方、レーザーを利用すると、その高い電場強度によってレーダーでは観測されない蛍光、ラマン散乱なども観測することが可能となる。先の降雨の例で言えば、雲を形成する前の水蒸気の状態から観測が可能となるため、この情報を利用した気象予測モデルの精度向上が検討されている(2)

図1 ライダー装置の概念図
図1 ライダー装置の概念図
図2 水の減衰係数
図2 水の減衰係数

 ライダーでは、パルスレーザーを照射し、測定対象との相互作用を望遠鏡などで受信するのが一般的な装置構成である(図1)。送信レーザーのトリガー信号(T)に対する散乱信号などの時間遅れを距離に換算することで、測定対象の距離情報の取得が可能になる。この光の飛行時間を測定する方式がTime Of Flight(TOF)方式である。大気中であれば数kmに及ぶ測定対象の高度分布情報を取得することが可能であり、様々な環境計測で測定が実施されてきたが(1)、水中への応用となると海底地形の把握程度で応用例が格段に減少する(3)。これは、光が水を通り抜けにくいことが原因の一つであろう。水は光の吸収体としてよく知られてはいるが、図2に深紫外から近赤外領域の水の減衰係数(透過特性)を示すように(4)、紫外から青、緑の波長領域の光は透過特性が良い。そこで、これらの透過特性の良い波長のレーザーを利用して、測距だけでなく水中の成分分析まで可能なライダーの利点を活かした、水中ラマンライダーの開発を実施している(5)-(13)

2.ラマンライダーによる水中モニタリングの可能性

 ライダーで水蒸気などのガスを測定しようと考えると、一般的に吸収とラマン散乱計測の2通りのアプローチがある。吸収は、ppmのオーダー程度の微量濃度評価が可能な手法であるが、図2に示したように水の透過領域で対象ガスの吸収ラインが都合良く存在しないため水中計測に利用することはほぼできない。一方で、ラマン散乱は現象自体が微弱であり、微量分析には不向きという欠点はあるが、使用するレーザー波長に制限がないため、水の透過が良いレーザーを利用すれば導入は容易である。水の透過領域である紫外~緑色の波長領域では、大気中のラマンライダーでも良く利用される波長532、355 nmで高パルスエネルギーであるNd:YAGレーザーが豊富にある。そこで、水に溶けているCO2ガスとして、市販の炭酸水の瓶を20 m先に設置して、ラマンライダーによって瓶の中のCO2ガスが見えるのかを確認した。

図3 ラマンライダーによる炭酸水の識別
図3 ラマンライダーによる炭酸水の識別

 図3がラマンライダーによる炭酸水の識別試験の結果である(5)。(a)が炭酸水と同じ瓶にいれた蒸留水、(b)が炭酸水の観測結果である。~583 nmに見られるのが水のラマン信号であり、水・炭酸水の両方に観測されている。それに加えて炭酸水からは~574.3 nmのCO2のラマン信号が観測されている。この実験では、水中にあるCO2ガスではなく、大気中に設置した炭酸水の瓶を観測しているため、~579.9 nmに大気成分である酸素のラマン信号も測定されている。このようにラマンライダーを利用すれば、1台の水中ライダーシステムで複数ガスや油の同時モニタリングが可能になり、海底開発に伴う環境影響評価などに対して効率的な水中モニタリングが期待できる。図3に示した水に溶けているCO2ガスだけでなく、気泡状態での定量分析手法の検討や(6)、海水に含まれる成分の干渉がないことも確認し(7)、本手法の海中モニタリングへの適用可能性を検証するために海上ラマンライダー観測を実施した(8)-(10)



次回に続く-



参考文献

  1. C. Weitkamp: ed., Lidar: Range-Resolved Optical Remote Sensing of the Atmosphere, Springer (2005)
  2. 染川智弘, 佐藤悠, 高橋真弘, 高田望, 藤田雅之 : 日本リモートセンシング学会誌, 3, 360 (2013)
  3. J. L. Irish and T. E. White : Coastal Eng. 35, 47 (1998)
  4. R. C. Smith and K. S. Baker : Appl. Opt. 20, 177 (1981)
  5. T. Somekawa, A. Tani, and M. Fujita: Appl. Phys. Express, 4, 112401 (2011)
  6. T. Somekawa, T. Takeuchi, C. Yamanaka, and M. Fujita: Proc. of SPIE, 9240, 92400J (2014)
  7. T. Somekawa and M. Fujtia: EPJ Web of Conference, 119, 25017 (2016)
  8. T. Somekawa and M. Fujita, EPJ Web of Conferences, 176, 0102 (2017)
  9. T. Somekawa, S. Kurahashi, J. Kawanaka, and M. Fujita, Proc. SPIE, 10791, 1079104 (2018)
  10. 染川智弘:レーザー研究,48,599 (2020).
  11. T. Somekawa, J. Izawa, M. Fujita, J. Kawanaka, and H. Kuze, Opt. Commun. 480, 126508 (2021).
  12. T. Somekawa, J. Izawa, M. Fujita, J. Kawanaka, and H. Kuze, Appl. Opt., 60, 7772, 2021.
  13. T. Somekawa, S. Kurahashi, S. Matsuda, A. Yogo, and H. Kuze, Opt. Lett., 48, 5340 (2023).


【著者紹介】
染川 智弘(そめかわ としひろ)
(公財)レーザー技術総合研究所 レーザー計測研究チーム 主任研究員
大阪大学 レーザー科学研究所 招へい教授

■略歴

  • 2008年3月大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻 博士(理学)
  • 2008年4月~公益財団法人レーザー技術総合研究所 入所 研究員、副主任研究員、上席研究員を経て現在、主任研究員
  • 2023年4月~大阪大学レーザー科学研究所 招へい教授

海洋化学センサ(1)

下島 公紀(したしま きみのり)
東京海洋大学
海洋資源環境学部 教授
下島 公紀

1.はじめに

 海洋は地球環境変動に大きく関与しており、地球環境の現状把握や将来予測のためには海洋の広範囲にわたる生物地球化学的な観測を実施し、海洋の役割を理解する必要がある。人工衛星や航空機を使ったリモートセンシングは、広範囲に観測データを取得することが可能であるが、海洋のごく表層での数種類の測定項目に限定され、データの取得は気象条件に左右される。観測船による採水・船上分析は、基本的かつ確実な手法であるが、海洋の広い範囲で水柱全体の鉛直連続観測や長期間連続観測は不可能である。さらに海洋の化学成分分析・解析は、専門技術・知識を持った「職人技の世界」であり、取得できるデータ数が制限されてきたことは否めない。
 一方、現場計測装置は海水中の化学成分を現場(海中)において計測できる装置であり、空間的・時間的に連続したデータを取得することが可能である。現場計測装置は現場分析計と化学センサに大別される。現場分析計は、試料と試薬を混合して光学的手法で計測する陸上での分析技術を、連続流れ分析化(連続的に流れている試薬中に試料を導入してキャピラリーチューブを流れる間に化学反応をさせた後、検出器で分析成分を検出し定量する自動分析法)して現場計測に適用したものである。多化学種測定機能や自己補正機能を持たせることが可能であるが、試料採取から測定までのタイムラグが大きく、装置自体が高価であることや試薬が必要であるために装置全体が大型化することは避けられない。化学センサは、電極や半導体素子などの電気化学的デバイスを用いたり、試薬を含浸させた膜や特定の成分に感応する物質と光学的デバイスを組み合わせて、対象成分を直接現場計測するものである。電子回路基板やデバイスなどの構成部品が小型で試薬等を必要としないため、装置自体が小型・軽量・安価で取り扱いが容易であるが、測定は単一の化学種に限定される。いずれの現場計測装置にしても、海洋で使用するための測器の開発は水圧との戦いであり、海水中に高濃度に存在する主要イオンに対して対象成分を正確に計測するためには、より高い選択性が要求される。
 本稿では、現場計測装置のうち化学センサについて、筆者が取り組んできた化学センサの開発と現場への適用を紹介する。

2.化学センサによる現場計測

 海洋科学の研究で海水の直接計測に利用されているセンサとしてはCTDが最も一般的である。CTDは電気伝導度(Conductivity)・水温(Temperature)・深度(Depth)を同時に連続的に測定するためのセンサパッケージであり、透過度計(あるいは濁度計)、蛍光光度計、光量子計、溶存酸素計などのセンサもCTDと組み合わせて利用されている。CTDセンサパッケージは多筒採水システムと組み合わせて観測船上からの鉛直連続計測が行われているが、前述のように、この方法では観測できる測点数に限界がある。
 近年、機動性の良い小型の無索無人海中ロボット(AUV)、自律型水上船(風力や波力を利用した推進力によって海上を移動して観測が可能な自動観測機器)、海洋グライダーやフロート(自身の浮力を調整することで水中の鉛直プロファイル観測が可能な自動観測機器)などの自律して移動する海洋観測プラットフォームがめざましい発展を遂げている。小型・軽量の化学センサは、ペイロードの小さい自律型海洋観測プラットフォームへの搭載が容易であるため、化学センサ搭載海洋観測プラットフォームによる広範囲・長期間の連続海洋観測への展開に期待が寄せられている。しかし、このような海洋観測プラットフォームは常に移動しているため、現場計測においては搭載する化学センサに素早い応答速度が求められる。

3. 現場型pH/pCO2/ORPセンサ

 大気中のCO2濃度上昇に伴う海洋の炭素循環メカニズムの解明や海洋酸性化のモニタリング、新規海底熱水活動域(熱水鉱床)の探査、CCS(CO2回収・貯留)における貯留CO2の漏洩検知や海洋への拡散・挙動モニタリングなどに関連して、海洋の表層から深海まで、海洋中のpHと二酸化炭素分圧(pCO2)の高精度な連続計測や長期計測へのニーズが高まっている。
 筆者は、これまでに海洋中のpH、pCO2、酸化還元電位(ORP)を高精度に同時計測するための現場型センサを開発し1),2)、深海を含む種々の海域において現場計測を行ってきた。図1に現場型pH/pCO2/ORPセンサを示す。pHセンサは、pH電極としてイオン選択性電界効果型トランジスタ(ISFET)を、参照電極として塩化物イオン選択性電極(Cl-ISE)が用いられている。pCO2センサは、この現場型pHセンサの電極部を内部液で満たしたガス透過膜で封止しており、海水中のCO2がガス透過膜を透過して内部液のpHを変化させることでpCO2を計測する。ORPセンサは、作用電極として白金を、参照電極としてCl-ISEが用いられている。これらのセンサに用いられている電極は全て固体電極であるため、耐圧性や耐衝撃性が高く、計測においては応答時間が1秒以下と極めて短いため、移動する海洋観測プラットフォームへの搭載に最適である。

図1 現場型pH/pCO2/ORPセンサ
図1 現場型pH/pCO2/ORPセンサ

 海洋観測プラットフォーム等への搭載に際し、電子回路基板の小型・省電力化とマルチチャンネル化が必要であった。図2は小型・省電力化した電子回路基板である。開発当初の電子回路基板ではデータロガー基板とサブ基板(ISFET-pH電極あるいはORP電極の制御)の組み合わせで1成分の計測であったが、この電子回路基板では、小型・高性能化した1枚のメイン基板(サブ基板の制御とデータロガ)と3枚のサブ基板(ISFET-pH電極とORP電極の制御)を組み合わせてマルチチャンネル化し、3成分(pH/pCO2/ORP)の同時計測を可能とした。また、この電子回路基板は、1枚のメイン基板に対して最大で16枚のサブ基板が接続できる。

図2 小型マルチチャンネル電子回路基板
図2 小型マルチチャンネル電子回路基板


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参考文献

  1. 下島公紀,許正憲: 化学センサの海洋学への適用 −ISFETを用いた深海用pHセンサの開発−, 地球化学, 32, 1-11 (1998).
  2. Shitashima, K., Kyo, M., Koike Y. and Henmi. H. “Development of in-situ pH sensor using ISFET”, Proceedings of the 2002 International Symposium on Underwater Technology. IEEE/02EX556, 106-108 (2002).


【著者紹介】
下島 公紀(したしま きみのり)
東京海洋大学 海洋資源エネルギー学部門 教授 学術博士

■略歴

  • 1989年3月広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程後期修了 学術博士
  • 1989年4月日本学術振興会特別研究員(東京大学海洋研究所)
  • 1990年8月(財)電力中央研究所 我孫子研究所 研究員
  • 2006年7月(財)電力中央研究所 環境科学研究所 上席研究員
  • 2011年6月九州大学 世界トップレベル研究拠点カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 CO2貯留研究部門 准教授
  • 2016年4月東京海洋大学 大学改革準備室 教授
  • 2017年4月東京海洋大学 海洋資源エネルギー学部門 教授

■受賞歴
2004年10月 第一回 堀場雅夫賞

産業用水中音響探査技術(1)

浅田 昭(あさだ あきら)
東京大学 名誉教授
浅田 昭

1. ソーナーを使用したシールドマシンのトンネル掘進作業支援技術開発

 シールドマシン作業の音響支援を通じて、工事に起因した地盤の沈下などに配慮して、施工工事における安全管理技術の一環として実施した。
(1) 音響反射波を捉える工夫
シールドマシンが起動中、掘削スポーク裏面からの音響反射波を計測するため、中心周波数30kHzのチャープ波を使い、帯域を広げ、検出能力を上げた。また、発信の干渉ノイズ、鋼板内部反射を除去、掘進作業騒音を除去、攪拌翼の反射波を避けることが重要な課題である。そこで、様々な工夫を試行錯誤した。ノイズに埋もれた反射波を抽出するため、回転に伴うスポーク反射波の変動特性との相関に注視した。ノイズ除去法と、加重平均による反射点の抽出法を開発、自動解析処理化を図った。ノイズを除去し弱い反射波を捉えるため、掘削回転移動している音響反射情報を利用し、スポークを通過する、1スキャン当たり平均200回程度自動計測することとした。また、1スキャンを10分割とし、センターに近づく信号と遠ざかる信号を比較して、反射波を抽出することが可能となった。最終的には音速と、反射強度からベントナイト泥の密度を監視、加泥量を制御するための基本情報を得ることが可能となった。
本技術開発は鉄建建設株式会社の事業として実施した。

図1 シールドマシン装備の音響ソーナーと回転する掘削スポークの配置
図1 シールドマシン装備の音響ソーナーと回転する掘削スポークの配置
図2 スポーク反射点の検出位置、音速度、反射音響強度
図2 スポーク反射点の検出位置、音速度、反射音響強度

2.海鷹海脚のメタンプルーム湧出量の定量観測手法開発と実用化

  1. 音響ビデオカメラVoyager3000とガスサンプラーの2つの定量計測
    音響ビデオカメラ3MHz、分解能3mm、高度2m で海底から湧出するメタンガスプルームを計測し、浮上速度の計測、ガス粒子径、航走速度を補正して湧出量Q(m3/h)を求める高精度技術を開発し、実用化を推進した。
  2. EM2040wcd(water column display) による各サイト湧出ポイントと湧出量の計測
    マウンド地形と大きな湧出プルームの位置関係、活動状況を高度40mで、低速航走し、300kHz、分解能0.1mで湧出量を計測・解析する技術を開発・実用化した。
    ガスプルームの反射が強く、システムが海底と区別できない状態の情報を使い、そのまま海底地形抽出すると、海底のマウンド地形と大きな湧出プルームの位置関係、活動状況が詳細に分かる技術を開発した。
  3. REOPARD ROV作業により独自製作ガスサンプラー8㍑計量容器を湧出口に被せて、5分から30分の湧出量の計量を行い、正確な湧出量を計測した。重要な参照値として位置づけられる。
  4. EM122wcd海鷹海脚全体の湧出量を音響反射強度から定量計測し、湧出活動の時空間変動の関係を把握した。EM2040wcd及びEM122wcd計測原画像から、送信ビームのセクター、海底検出情報を、音響画像情報に重畳し広範囲のプルーム湧出位置と量を計測する。次に、干渉ノイズを除去、トンネル効果干渉ノイズを除去、ビーム間の干渉ノイズを除去、プルームの海底直上の検出境界下限を設け、的確にプルームの反射強度を抽出する。さらに、受信サイドローブビームに映るゴーストを自動除去し、ランダムに時間変動するノイズを除去、同じ空間位置の連続する反射波を自動抽出することにより正確性を向上した。
    湧出プルームの定量解析する際に、送信サイドローブゴーストを自動除去する工夫を行い、実用性を高めた。最終的に、詳細なプルーム涌出量のマッピングを行い、EM122wcd海脚全体の湧出量を音響反射強度から定量計測を繰り返し実施し、湧出活動の時空間変動の関係を把握する手法を開発した。

    本研究は、経済産業省のメタンハイドレート研究開発事業の一部として実施した。
    This study was conducted as a part of the methane hydrate research project funded by METI (the Ministry of Economy, Trade and Industry, Japan).
図3 Voyager3000による計測結果
水深892mのメタンハイドレートマウンドから噴出するプルーム、と光学写真との比較
図3 Voyager3000による計測結果 水深892mのメタンハイドレートマウンドから噴出するプルーム、と光学写真との比較
図4 EM2040wcdの計測、解析結果
図4 EM2040wcdの計測、解析結果
図5 EM122wcd, EM2040wcd水中音響映像情報の定量解析機能
図5 EM122wcd, EM2040wcd水中音響映像情報の定量解析機能


次回に続く-



【著者紹介】
浅田 昭(あさだ あきら)
東京大学 名誉教授

■略歴

  • 昭和52年3月早稲田大学工学部電気工学卒業
  • 平成7年10月東京大学理学博士授与
  • 昭和54年4月海上保安庁海洋情報部入庁
  • 平成12年4月東京大学生産技術研究所教授
  • 平成25年4月東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センター長
  • 平成31年3月定年退職
  • 令和元年6月東京大学名誉教授

学会活動:
WSS2008,Scientific Committee (平成20年)
IEEE/OES Japan Chapter , 表彰選考委員(平成20年)
海上保安庁UJNR海底調査専門部会, 日本側技術顧問(平成22年)
UT2013, Technical Committee Co-chair (平成25年)
TECHNO-OCEAN General Co-Chairs (平成30年)