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Sigfoxネットワークの概要および実用事例(1)

京セラコミュニケーション
システム(株)
LPWAソリューション事業部
宮下純一

1.加速するIoT

IoT市場が加速している。IDC Japanの調査によれば、国内IoT市場の市場規模は、2017年の支出額は5兆8160億円で、2022年までに年間平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)15.0%で成長し、2022年の支出額は11兆7010億円になる見込みだという。また総務省の平成30年版情報通信白書によると、IoTデバイス数は2017年には約270億、2020年には約400億の予測としている。言い換えれば、あらゆるモノからデータの価値を収集できる時代の到来とも捉えることができ、このインパクトは、人々のライフスタイルを変革させる可能性を秘めたものだと筆者は考えている。
IoTサービスは、情報を取得するセンサ、情報を伝えるネットワーク、情報を収集し価値へと変えるソフトウェアの組み合わせで実現する。これまでに数多くのPoC(Proof of Concept)を経て、実用サービスが立ち上がりつつある一方で、PoCから先に進めないサービスも数多く存在している。IoTサービスの成功には、サービスの拡大に比例して大きくなるデバイス費用と通信費用をいかに抑えるかが重要なファクターとなる。
今、余分なものを削ぎ落とし、必要十分な機能を安価に提供できるIoTに特化したネットワークが求められている。

2.LPWAネットワーク「Sigfox」とは

SigfoxはLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークのひとつで、フランスのSigfox社が提供するグローバルIoTネットワークである。Sigfox社と契約した各国のオペレータがインフラの構築・運用を行っており、2019年4月現在、全世界60か国でサービス提供されている。日本国内においては、筆者が所属する京セラコミュニケーションシステム株式会社が電気通信事業者として展開している。人口カバー率は2019年2月時点で94%に達しており、都心部に限らず多くの場所がすでに通信可能エリアとなっている。
Sigfoxのアーキテクチャは非常にシンプルだ。①デバイスからデータ送信。②受信した基地局全てからSigfoxクラウドへデータ送信し蓄積。③Sigfoxクラウドからユーザ側アプリケーションへデータ転送。基本的には以上である。この統一された仕様で世界中どこからでも利用できる。また課金モデルに関しても、自国のオペレータと契約すれば他国での利用も可能であり、サービス提供国ごとに異なる事業者と契約を結ぶと言った煩雑な対応は必要ない。
さらに、利用者自身でインフラ整備をする必要がないにもかかわらず、通信費用年額100円からという超低価格による通信サービスを提供している。また通信モジュールの価格も2ドル程度からと低価格となっている。
今後、モバイル通信において高速・大容量の5Gが全盛となることは間違いないだろう。しかし、単純なセンサデータの収集であれば、IoT専用サービスを利用するという選択肢がある。Sigfoxはシンプルと低価格に徹底的にこだわり抜いた、いわば「0Gネットワークサービス」なのである。

通信料金は契約回線数および1日あたりの通信回数によって異なる。

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【著者略歴】

宮下 純一(みやした じゅんいち)
京セラコミュニケーションシステム株式会社
LPWAソリューション事業部
LPWAソリューション部
LPWAソリューション課 課責任者

2005年京セラコミュニケーションシステム株式会社入社、研究部配属。
以降、広域無線LANシステム、地デジ中継局FRCワイヤレスリンクシステム開発、自治体向けソリューションの開発普及、人工知能の活用によるセキュリティシステム開発、画像認識サービスLabellioの活用、顔認証システムの開発普及に従事。
2019年1月、Sigfoxネットワークの日本展開を加速させるため、技術責任者としてLPWAソリューション部に異動。

LoRaWANネットワークの概要と利用事例紹介(1)

(株)エイビット 開発部
古川勇一郎

LoRaWANネットワークの概要

LoRaWANはIoT(Internet of Things、モノのインターネット)で用いられるLPWA(Low Power Wide Area)の通信規格の一つである。
日本においてLPWAには「ライセンス系」と「アンライセンス系」があり、LoRaWANは920MHz帯(サブギガ)のアンライセンスバンドを使用する「アンライセンス系」であり、免許が不要で誰でも使用することが可能である。
LoRaWANでは、デバイスが直接インターネットを介してLoRaWANネットワークサーバに接続するのではなく、基地局(LoRaゲートウェイ)を介して接続される。また、現時点ではデバイス間の通信(マルチホップ)は想定されておらず、スター型の構成となる。

LoRaWANネットワーク構成図

データレートは低く0.3~50kbpsであり、伝送距離とデータレートはトレードオフの関係にある。SF(Spreading Factor:拡散率)というパラメータがありこれを10とした場合、伝送距離は延びるが使用できるデータサイズ(ペイロード)は11byteとなる。また、この時の最小送信間隔は4.4秒となる。
電波の伝搬距離は最大で10㎞程だが、実際に通信ができるかはデバイスやゲートウェイの設置環境や電波状況によって大きく異なる。また、低消費電力についても同様の事が言え、通信で用いられる電力は比較的小さいが、電池で数年の運用を行うには総合的に消費電力を抑える必要がある。

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【著者略歴】

1996年 3月 日本電子専門学校電子音響工学科卒業
1996年 4月 株式会社東洋リンクス入社 マイコン関連開発業務に従事
2009年 1月 株式会社エイビット(技術部)入社
2017年 5月 総務省実証事業「八王子防災プロジェクト」に従事

センサイト・キュレーション:「LPWA(Low Power Wide Aria)ネットワーク」(1)

センサイト編集部

「LPWA(Low Power Wide Aria)ネットワーク」はスマートフォンなどの大容量・高速送受信するのとは対極的に異なり、名前の通り、速度は遅くデータ量が小さくとも広い範囲をカバー出来て、電力の消費が極端に抑えられたネットワークとなる。これからのセンサネットワークにおいては欠かせない通信方法で、既に実際の導入も進んできている。現在も規格・料金等が変化を遂げていく途上である。今回のキュレーションでは「LPWAネットワーク」について見てみよう。

1.〔LoRaWAN ソリューション〕 運営:株式会社エイビット
今回記事を執筆されているエイビットによるLoRaWANの解説サイト。
「八王子防災プロジェクト」のサイトも見ることが出来る。
http://www.abit.co.jp/products/lorawan/

2.〔Sigfox対応製品・ソリューション〕 運営:京セラコミュニケーションシステム株式会社
こちらも今回記事を執筆されている京セラコミュニケーションシステムのSigfoxの解説サイト。
さまざまな実例が掲載されている。
https://www.kccs-iot.jp/solution/

3.〔LPWA (LPWAN) とは?〕 運営:株式会社ソラコム
LoRaWAN、Sigfox、セルラー(LTE-M)など、さまざまな種類のLPWAネットワークに接続するサービスを提供しているソラコムの解説サイト。
https://soracom.jp/lpwa/

4.〔LPWAとは〕 運営:センスウェイ株式会社
LoRaWANを扱っているセンスウェイのLPWA解説サイト。他の方式についても述べてある。
https://www.senseway.net/technical-information/what-is-lpwa/

5.〔3分でわかるIoTとM2Mの違い〕 運営:沖電気工業株式会社
M2Mとセンサネットワーク、IoT等についてお互い影響するすることを踏まえた解説をしているOKIのサイト。
https://www.oki.com/jp/iot/doc/2016/16vol_10.html

6.〔LPWA(LPWAN)について〕 運営:株式会社村田製作所
一覧表や動画を使い、ムラタのLPWAへの取り組みを紹介しているサイト。
見やすく構成されている。
https://www.murata.com/ja-jp/products/lpwa/outline/about

7.〔LPWAとは〕 運営:マスプロ電工株式会社
Sigfoxを使ってサービスを提供しているご存知アンテナのマスプロ。
写真と図解で見やすく例を挙げている。
https://www.maspro.co.jp/products/lpwa/

8.〔IoTシステム構築に欠かせないLPWAの選定〕 運営:東京エレクトロンデバイス株式会社
三つの主流の方式のLPWA以外について紹介している東京エレクトロンデバイスのサイト。
https://www.teldevice.co.jp/ted_real_iot/column/lpwan_select/

9.〔ZETA LPWAネットワーク〕 運営:ZETAアライアンス
ZiFiSense社が開発したLPWAN通信規格の紹介サイト。
https://zeta-alliance.org/zeta.php

10.〔Safer, Smarter Homes Start with Z-Wave〕 運営:Z-WAVE
Zensys社が開発した無線通信プロトコルの紹介。
通信距離が短い故に、他のLPWAと比較すると伝送スピードが早い。
https://www.z-wave.com/

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モーション検知機能の設計を簡略化する6軸モーション・センサ用GUI

STマイクロエレクトロニクス(以下ST)は、最新の6軸モーション・センサ(LSM6DSOおよびLSM6DSOXを含む)に搭載されたステート・マシン(FSM : Finite State Machine)ロジックおよび機械学習コア(MLC : Machine Learning Core)ロジックの設定を簡略化するグラフィック・ユーザ・インタフェースの「Unico GUI」を発表した。
FSMロジックによって、ジェスチャおよびモーション認識アルゴリズムをセンサ内部で直接実行できるため、常時動作による利便性の向上と低消費電力化を可能にする。MLCロジックは、機械学習分類機能を搭載しており、リアルタイムでモーション認識と振動パターン認識を常時動作させることができるとのこと。

Unico GUI(Linux向け:STSW-MKI109L、Mac OSX向け:STSW-MKI109M、Windows向け:STSW-MKI109W)を使用してモジュールの内部レジスタと、組込みのFSM / MLCロジックを設定することにより、独自のモーション認識アルゴリズムを迅速かつ簡単に作成することができる。また、このGUIは、モジュール内の加速度センサおよびジャイロ・センサのデータに加え、地磁気センサなどの外付けセンサからの入力を組み合わせることも簡単にできるため、コンテキスト認識機能のさらなる向上が可能という。

スマートフォン、ウェアラブル機器および産業機器に、FSMとMLCを低消費電力のジェスチャ / モーション認識用組込みエンジンとして組み込むと、メイン・プロセッサがスリープ状態でもユーザ・インタフェースやコンテキスト認識アプリを動作させ続けることができるため、バッテリによる駆動時間の長期化に貢献する。LSM6DSOには、最大16個の独立したステート・マシンのロジックが搭載されています。各ステート・マシンが、設定されたモーション・パターンを判別し、ハードウェア割込みを生成します。また、LSM6DSOXにもロジックが搭載されており、多数の階層を持つ決定木を使用して機械学習の分類を実行するとのこと。

詳しくは、ウェブサイトを参照。
https://www.st.com/content/st_com/ja/campaigns/unico_gui.html?icmp=tt11130_gl_pron_apr2019 

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000963.000001337.html

AIを活用して等身大バーチャルキャラクターが 警備・受付業務する 「バーチャル警備システム」を開発

セコム(株)、AGC(株)、(株)ディー・エヌ・エー(以下「DeNA」)、(株)NTTドコモは、世界初※1となるAIを活用した警戒監視などの警備や受付業務が提供可能な「バーチャル警備システム」の試作機を開発しました。現在、 2020年の発売に向けて実用化を進めているとのこと。

このたび開発した「バーチャル警備システム」は、常駐警備員が提供してきた業務のうち、警戒監視、受付などを、現実空間を映しこむミラーディスプレイ上に3Dモデルとして表示した「バーチャル警備員」が提供し、対処、緊急対応など熟練した常駐警備員ならではの能力と組み合わせて、新たな警備のあり方を実現するもの。
最新のテクノロジーの力で人の力を増幅することで、常駐警備員配置の効率化、有人施設における受付を含む警備強化をコストを抑えながら実現し、より多くの利用者ニーズに応えるとしている。
本サービスは、日本初の警備会社としてセコムがこれまで培ってきたセキュリティのノウハウに、AGC、DeNA、NTTドコモ各社の最新技術を掛け合わせて実現したオープンイノベーションの成果とのこと。
4社は「バーチャル警備システム」の2020年の実用化に向け、今後も連携を強化し「安全・安心・快適・便利」な社会の実現に向けて取り組んでいくという。
※1 2019年4月現在(セコム調べ)

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000036837.html

アクロディアと筑波大学、IoT野球ボールに関する共同研究をスタート

(株)アクロディア(以下「アクロディア」) と筑波大学は、センサを内蔵し投球データ解析が可能なIoT野球ボールと、それを用いたピッチングフォーム及び球質の解明に関する共同研究を開始したことを発表した。

アクロディアは、中心部にセンサーを内蔵し、スマートフォンとの連動が可能なIoT野球ボールを開発しており、このたびの共同研究では、筑波大学 体育系 川村卓准教授がこれまで蓄積してきた、野球の投球・打撃動作の分析に関する知見を活用し、モーションキャプチャーから得た投球動作と、このIoT野球ボールから得たボールの回転軸、回転数、速度変化、変化量の関係性を解明するとともに、IoT野球ボールの機能検証を行うとのこと。
TECHNICAL PITCHサイト:https://technicalpitch.net/ 

この研究を通して、更にピッチングフォームと球質の解明を行い、最適なトレーニング方法の提案やIoT野球ボールの更なる活用方法を発表していくとともに、ビッグデータから適切なコーチングが出来る基礎理論を研究・構築することを目指すとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000355.000001924.html

遠隔で灌水予約・管理ができる「灌水制御システム」の有用性が認められ大川市が導入促進

(株)SenSproutは、スマートフォンやPCから水やりができる「SenSprout 水制御システム」が、試験導入の結果、大川市に同システムの有用性を認められ、情報通信技術導入促進のための市単独の助成措置と、JA福岡大城アスパラガス部会の生産者を中心に本格的に導入が決まったことを発表した。

2019年3月に一般販売を開始したばかりの「SenSprout 灌水制御システム」は、SenSproutの事業提携先および共同研究機関を中心に2年前より導入され好評を得ているとのこと。今回の導入は、2019年1月に開催した大川市での試験設置および現地説明会をきっかけに、大川市農業水産課や福岡県大川市、三潴郡大木町、久留米市城島町のアスパラガス農家で組織されたJA福岡大城アスパラガス部会の生産者に有用性が認められた結果であるという。

【SenSprout 灌水制御システムの特長】
・スマートフォンやPCで遠隔から灌水予約・管理ができるので圃場に移動する工数を削減
・土壌水分量と温度を計測するSenSprout Pro センサーシステムと連携して適切な水分管理が行える
・コンセントプラグの差し込みで設置できるので大がかりな工事が不要

 SenSprout 灌水制御システムは、灌水制御装置、灌水ゲートウェイ、専用電磁弁がセットになったシステム。圃場に行くことなく遠隔地からPCやスマートフォンを使って灌水予約ができ、「いつ」「どこで」「どのくらい」灌水したかの記録や管理もおこなえる。既存の100V/200Vコンセントプラグに差し込み専用の電磁弁と接続するだけなので、大がかりな設置工事も必要ない。
 SenSproutの灌水制御システムを導入することで、遠隔操作による灌水と管理が可能となり、圃場に行く移動時間および、灌水作業に掛かる労力の削減につながる。
 灌水制御装置の販売価格は、灌水制御装置 x 1台、灌水ゲートウェイ x 1台、専用電磁弁 x 2台の一式で398,000円(税抜)。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000025463.html

凸版印刷、ZETAとAIで錦鯉の養殖の見守り実証実験

凸版印刷株式会社(以下 凸版印刷)は、ZETAアライアンスの一員として、次世代LPWA規格ZETA(ゼタ)※1の普及を推進しており、、ZETAとAIを活用したさまざまな見守りサービスの開発を推進している。
このたび、ZETAとAIを活用し錦鯉の養殖状況を可視化できる見守りサービスを開発。2019年5月7日から10月31日まで大日養鯉場(株)の協力のもと、新潟県にある複数の養鯉場で実証実験を実施するとのこと。

このサービスは錦鯉の養殖を行う山間部の池付近に、各種センサ、カメラなどを組み合わせて設置し、水位、酸素量、給餌などの養殖管理に必要なデータの取得とその変化を検知することで、遠隔から育成状況、酸素不足などによる死亡や育成不良などのトラブル予知の把握を実現するもの。センサで検知した情報はクラウド又はオンプレミス※2上に蓄積され、管理事務所など別の場所に設置されたPCやスマートフォンなどで確認が可能。人手による定期的な目視管理は錦鯉の品質や生産量安定のため欠かすことができないが、養鯉場の多くは養殖に適した環境である山間部などの遠隔地に点在しており、作業負担が課題となっていた。ZETAの特長である中継器によるマルチホップ(メッシュアクセス)を活用することにより、LTE(携帯)電波が届かないエリアでも通信環境を延長できるため、山間部などの遠隔地に点在する養鯉場における養殖状況の可視化と常時管理が可能となった。
 また、水位、酸素量、給餌などのデータと育成結果を紐づけて蓄積し、AIを活用しさまざまな育成パターンの学習を行う。これまで、水産養殖の生産方法は、主に熟練生産者のノウハウやアナログな記録が頼りとなっていたが、最適な育成パターンをデータ化し可視化することで生産プロセスの標準化を図り品質の安定を実現するとのこと。

◇ サービスの特長
●ZETAの特長である中継器によるマルチホップ(メッシュアクセス)を活かしたサービス
 ZETAでは中継器によるマルチホップ(メッシュアクセス)が可能となる為、施設の奥まった箇所や山間部、遠隔地に点在する池など電波が届きにくい場所に対しても、中継機を活用する事で安定的に通信することが可能。
●エッジ処理によりLPWAを活用した遠隔管理が可能
 数百bpsといった低速度のLPWAでは、サイズが大きい画像のようなデータは送信が困難である為、端末側でデータ加工を行うエッジ処理により、遠隔管理に必要十分な範囲に機能を限定し不必要なデータをサーバへ上げずコストを抑える方法を採用。
●生産プロセスの可視化とAIを活用しさまざまな育成パターンを学習
 水温、酸素量、給餌などのデータを蓄積することで、熟練生産者のノウハウやアナログな記録に頼り不透明になりがちな生産プロセスを可視化。AIを活用しさまざまな育成パターンを学習させることで、本サービスの精度を高め品質の安定に寄与する。

◇ 今後の目標
 凸版印刷は本サービスの技術検証を進め、2019年秋からサービスの提供を開始し、2022年度に関連サービスも含め約10億円の売上を目指す。また将来的にはIoTカメラ(ZETA版)※3とも連携し、養殖施設だけでなく、農業施設や公共施設管理などにも用途を拡張し、ZETAとAIを活用した見守りサービスの開発を推進していくという。

※1 ZETA
ZiFiSenseが開発した、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信、メッシュネットワークによる広域の分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能といった特長を持つ、IoTに適した最新のLPWAネットワーク規格。LPWAの規格のひとつであるZETAは、中継器を多段に経由するマルチホップ形式の通信を行うこで、他のLPWAと比べ、基地局の設置を少なくでき、低コストでの運用が可能な方式として注目されている。
※2 オンプレミス
自社でサーバなどハードウェアを設置・導入し、管理・運用する形態。ZETAはクラウド上に用意されたZETAサーバの活用が前提となる為、オンプレミスを利用する場合は他のネットワーク規格も含めて現場に合ったシステム構成を検討する。
※3 IoTカメラ(ZETA版)
2019年4月18日に株式会社ACCESSと凸版印刷が協業開発を発表したヒト、モノを認識するAI機能を搭載した低消費電力の小型IoTカメラ。低解像度の画像データをエッジ側でAI処理することにより不要なデータをサーバへ上げることによる通信コスト増大を回避できます。電源・通信設備不要のため、本カメラを設置するだけで既存の施設や設備を簡単に低コストでIoT化することが可能。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000218.000033034.html

パイオニアとキヤノン、3D-LiDARセンサを共同開発

パイオニア(株)とキヤノン(株)は、3D-LiDARセンサの共同開発契約を締結した。

3D-LiDAR センサーは、レーザー光で対象物までの正確な距離を測定し、遠方や周辺の状況をリアルタイムかつ立体的に把握できるため、レベル 3(※1) 以上の自動運転の実現に不可欠なキーデバイスと言われている。
パイオニアは、2020 年以降の量産化を目指し、高性能で小型かつ低コストなMEMS(※2)ミラー方式の 3D-LiDAR センサの開発を進めており、昨年の 9 月より 2018 年モデルの提供を開始するとともに、3D-LiDAR センサーを活用した高精度な「物体認識アルゴリズム」および「自車位置推定アルゴリズム」の開発を行っている。また、自動運転事業をさらに加速するため、2019 年 1 月に自動運転に関する研究開発、技術開発、事業開発を統合する新組織を設立しているとのこと。
キヤノンは、長年培ってきた光学技術基盤を多様な産業領域へ融合・拡大することを進めており、特に自動運転に代表される技術革新により急拡大が期待される自動車関連産業への取り組みを強化しているとのこと。

両社は、本契約の締結により、パイオニアが量産化に向けて進めている 3D-LiDAR センサの開発を共同で行う。パイオニアが保有する小型化技術やデジタル信号処理技術などの車載機器開発に関する知見やノウハウに、キヤノンが保有する光学の先進技術とノウハウが加わることで、高度な自動運転車両向けの小型で高性能な 3D-LiDAR センサの早期実現が可能になるという。

(※1) 米国の自動車技術会(SAE: Society of Automotive Engineers)が定めた自動運転レベル。レベル 3 は、全ての自動運転をシステム側が行うものの、緊急時には運転手が運転操作を担うという状態。
(※2) MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):微小電気機械システム。

ニュースリリースサイト(パイオニア):
https://jpn.pioneer/ja/corp/news/press/2019/pdf/0417-2.pdf

空間系LiDARから水中への展開(4)

島田 雄史
(株)トリマティス
代表取締役
鈴木 謙一
(株)トリマティス
マネージャー

4.ALAN(Aqua LAN)コンソーシアム

日本を取り巻く広大な海洋およびその資源を活用する機運20)が高まっており、そのためのインフラの整備が急務である。また海中を代表する水中環境は、音波等、限られた手段しか使えない”最後のデジタルデバイド領域”であり、水中環境の有効活用のためには、水中での地上並みの通信ネットワークの構築が、喫緊の課題である。
これらの課題を解決するため、ALANコンソーシアムは、水中環境を一つの生活圏と捉え、水中に光無線技術を適用したLocal Area Network(LAN)を構築することを目的として、2018年5月21日にJEITA「共創プログラム」の第1弾に採択された21)のを受け、6月21日に旗揚げされた。

またALANコンソーシアムは、可視光が水中での損失が小さく、可視光レーザー技術が国内に蓄積されていることに着目し、
・基礎レベルから青色光源を中心とした光無線技術(水中光無線通信、水中LiDAR、水中光無線給電)の研究開発
・音波や有線技術等とのすみわけによる、より柔軟性のある(水中)ネットワークの実現
・人間に代わり水中で自由に行動できる水中ロボットの活用
・水中環境を次世代の新経済圏と捉えた民需に特化した材料・デバイス・機器・システム・ネットワーク開発
を推進することをコンセプトとしている。

ALANコンソーシアムの体制を図6に示す。ALANコンソーシアムは、コンソーシアムの運営方針を決定する運営員会(委員長 島田(トリマティス))、要素技術およびその技術課題を議論する実行委員会(委員長 安達特任教授(東北大))、水中技術を活用した応用分野を開拓する市場検討員会で構成されている。実行委員会の配下には、各要素技術を検討するワーキンググループが設置されており、水中LiDARの技術検討を行う「水中LiDARワーキンググループ」も設置されている。

図6 ALANコンソーシアムの体制

ALANコンソーシアムは、2019年度からの3年計画22)により、要素技術の確立を目指している。3年後の目標イメージを図7に示す。目標イメージにある水中ロボットに搭載された水中LiDAR(などのセンサ)による水中の詳細データ化、水中無線通信の適用による水中でのデータ転送、水中通信ネットワークのプラットフォームの構築により水中と地上とのシームレスな通信環境、水中無線給電による水中ロボットの長時間運用の実現可能な要素技術の確立を目指している。

図7 3年後の目標イメージ

このように、ALANコンソーシアムは、要素技術のを確立による水中光技術の飛躍的進歩を、新規ビジネスにつなげたいと考えており、市場検討委員会が中心となり下記のような市場の検討を行っている。
・水中モニタリング:
海沿岸施設や海岸線の監視に加え、養殖施設における魚の成長管理を行う。また、水中ロボットからの映像を陸上で視聴する「VR水族館」など新たな水中ビジネスの創出に貢献する。
・海底地形・水中構造物調査:
海底地形図の作成、水中構造物の点検、および海底ケーブルの調査を容易にし、日本のインフラ維持に貢献する。特に、建築年度が判明している橋の67%、港湾岸壁の58%、および河川管理施設(水門等、建築年度が不明で建築後50年以上の施設を含む)の64%が、2033年3月までに築後50年を突破すると試算されている23)ため、水中構造物の点検への対応は急務である。
・海洋エネルギー調査:
日本近海に賦存が期待されている海中エネルギー資源の探査効率を改善することにより、エネルギー・資源問題解決に貢献する。

5.おわりに

LiDARの技術動向と、これからの市場拡大が期待される水中LiDARへの取り組みや海洋探査への応用例について紹介した。また水中環境を一つの生活圏と捉え、水中光ネットワークの実現するための水中LiDARを始めとした要素技術の確立と、その活用による新市場の開拓を目指すALANコンソーシアムについて紹介した。

参考文献

20) 内閣府 海洋資源の開発及び利用(2019年3月20日閲覧)
https://www8.cao.go.jp/ocean/kokkyouritou/yakuwari/yakuwari03.html

21) JEITA報道発表(2018年5月21日)
https://www.jeita.or.jp/japanese/topics/2018/0521.pdf

22) OPTRONICS ONLINE(2019年2月21日)
http://www.optronics-media.com/news/20190221/55736/

23) 国土交通省「平成28年版 国土交通白書」」p.7,図表1-1-10
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/hakusho/h29/menu.html

著者略歴

島田 雄史 (しまだたけし)
• 1994年 4月国際証券株式会社(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社
• 1995年 9月株式会社応用光電研究室(現在は消滅)入社
• 2001年 7月株式会社オプトクエスト設立に参加
• 2002年 8月富士通東日本ディジタル・テクノロジ株式会社(現在は富士通に吸収)入社
• 2004年 1月有限会社トリマティス(現株式会社トリマティス)設立、代表取締役 CEOに就任
• 2018年一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の共創プログラムであるALANコンソーシアムの代表にも就任

鈴木 謙一(すずき けんいち)
• 1990年4月日本電信電話株式会社入社
• 2009年3月博士(情報科学)取得(北海道大学大学院博士後期課程修了)
• 2011年IEEE1904.1 SIEPON WG(現IEEE1904 ANWG)副議長
• 2012年8月HATS推進会議光アクセスAd-hoc WG(現光アクセス相互接続連絡会主査
• 2013年4月日本電信電話株式会社NTTアクセスサービスシステム研究所グループリーダ
• 2019年2月株式会社トリマティス入社