コンピュータ&ネットワークシステムラボラトリー
松岡 康男
3.IVIとは
IVI組織が他の組織と大きく違う所は、正会員は現場を持つ企業で、IT企業はあくまでサポート企業として分かれている事である。IVI活動の最初は「お困りごとシート」というものを各企業が出し合い、それを基に問題解決のためのビジネスシナリオを研究し、企業間を「ゆるやかな標準」でつながることを考えて、サイバーフィジカルな生産システムで各企業のバリューを高める活動を進めている。「ものづくり」と「IT」が融合し、あたらしい社会をデザインし、それぞれの企業が連携してイニシアティブをとるためのフォーラムである。
中でも人が中心のものづくりがIoT時代にどのように変わるかを議論し、協調領域(各企業で共通にすべき部分)をリファレンスモデルとして、相互につながるしくみを構築することを可能とし、”ゆるやかな標準”でつながることを考える。2015年発足以来、現在、参加企業は280社を超え延べ750名近いメンバー、累積で100を超える業務シナリオワーキングの活動実績が大きな財産。今でも活発な活動を繰り広げているモノづくり中心の業界団体である。
4.IVI活動事例
IoT(モノのインターネット)は極めて広い分野で応用が進み、産業、科学、そして生活まで大きな変革をもたらしつつある。こうした中、IVIが検討する12のテーマの中でも、予知保全は日本の産業競争力の強化に直結するテーマとして、様々な議論と実証実験が精力的に進められている。現在、ものづくりにまつわるIoTや人工知能(AI)の応用分野の中で最も熱いテーマが「予知保全」であり、全体要望の6割以上が何らかの課題と認識している現状がある。
工場の中に置いた製造装置にセンサを取り付け、そこで収集したデータを分析することで、不具合や故障の発生を事前に予知するものだ。工場で使う生産設備の不具合や故障は、多くの場合、突然起こる。予期せずこうした事態が起きると、原因究明や部品手配などに手間取り、長期間の操業停止を余儀なくされる。当然メーカーが被る損害は大きい。(Broken Maintenance)これが予知保全(Predictive maintenance)によって、まだ動いている状態で予測できるようになれば、計画的な点検や修理を進められて、損害を最小化できる。
4-1.工場で予知保全を実証実験
今回は、次世代センシング技術による予知保全データの活用という関連テーマで取り組んできた事例を中心に紹介する。
実証実験は、予知保全に関心のあるメンバー企業とのマッチングを行い課題を明確にしたうえで具体的なゴール(TO BE)を目指して実証検証を行った。工場内の生産工程の中から溶接、溶着、ロボット、プレス加工など10の要素に分けて進めてきた。次世代センシング技術の一例として、まず、最初に手掛けたのは、予知保全に最適なセンサとしてAEセンサを取り上げ活動し実証検証を実施。センサから収集したデータを4段階の特徴抽出処理、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、強化学習までを連続的に再帰学習するAIを宿した自律型フォグ・コンピューターでの実装検証の現状の一例を紹介する。*4)*5)
AEセンサとは、材料や構造物が変形・破壊する時に発生する弾性波を検出する検査装置である。これを使えば、破壊に至る前の原因となる小さな欠陥を見つけられる。下図では、エッジコンピュータにてAE波形の生データ解析規模:900MB/分で収集したイメージを示す。(図2)
実証実験の手順シナリオのフローを図3に示す。
実際にはこれを何度か回すことを実践してブラッシュアップしてゆく活動が通常で。活動期間は基本一年で完結させる。
次に多くの現場を回って活動した実証事例を基にその見解を整理した
① 加工:ドリルの寿命を監視と加工制御に応用可能
② ロボット:複数個所にAEセンサを設置することで多軸ロボットの軸毎の寿命を診断可能
③ プレス:プレス時の品質、設備の異常監視可能
④ モーター:軸受けの寿命監視可能
⑤ 鍛造:鋼材の切断時の高周波信号を分析することで設備の寿命、切断加工品の品質合否判定が可能
⑥ CTL(シリンダー):軸の摩耗監視可能
⑦ 溶着:溶着品質がセンサで確認可能
⑧ カッター:包装材の刃の寿命監視可能
⑨ 3D/加工機:ドリル寿命モニタリング可能
⑩ 表面処理:メッキ処理時の膜厚監視可能
⑪ リーク:密閉度(リークテスト)の代替活用可能
次週に続く-
【著者略歴】
松岡 康男
(株)東芝 研究開発本部 研究開発センター
コンピュータ&ネットワークシステムラボラトリー
専門は半導体プロセス微細加工技術、生産システム情報工学、脳型人工知能チップ研究開発、次世代エッジコンピュータの研究開発。
IVI(Industrial Value Chain Initiative)のビジネス連携委員長(2017-2018)、センサーデータ活用技術研究会:主査(2018-2019)、応用物理学会会員(1985-2019)、一般社団法人 日本USA産業振興協議会・準会員(2016-2019)
ローカル5Gによるセンサネットワーク(2)
推進コンソーシアム・上席顧問
/次世代センサ協議会・理事
岡崎 正一
2.電波の特性
5G活用によるIoTシステム構築においては、図1に示すような超高速、多数同時接続、超低遅延の通信サービスを使って、センサデータを効率よく収集するといったシステムを構築することができる。特に、ローカル5Gの無線環境を効果的に活用した無線ネットワーク構築のためには、無線の特性を知った上で、システムの目的に合わせてシステム構築することが必要である。無線システムでは、電波を用いて情報を伝搬させる。電波はその周波数によって電波の伝わり方が異なる。センサネットワークを効率よく動作させるためには、これらの電波特性を知っておくことが重要である。
図3に周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴を示す。以下に、無線システムを構築するために必要な主な無線の特性(受信感度、通信距離、周波数特性)を示す。
(1)受信感度
・帯域幅に反比例
・通信速度にほぼ反比例
(2)通信距離
・周波数に反比例(自由空間)
・送信出力の2乗に比例/受信感度の2乗に比例
(3)周波数特性
・周波数が高いほど、直進性が強い(建物にさえぎられる)
・周波数が高いほど、ガラスや木材などの電波の透過損失が高い
・周波数が高いほど、情報伝送容量が増加傾向になる
・周波数が高いほど、アンテナの大きさは小さくなる
・周波数が低いほど、建物の陰に回り込む
・周波数が低いほど、通信距離は大きくなる
(注) 通信距離は送信出力や受信感度の大小にも影響を受ける
図3 周波数帯ごとの主な用途と電波の特性
次週に続く-
【著者略歴】
岡崎 正一(おかざき しょういち)
1975年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了.
同年三菱電機株式会社入社,基本ソフトウェア,ネットワークシステム,大規模応用システム開発等に従事.主な著書「UNIX-基本操作から実践活用まで-」,翻訳「PCパーフェクトガイド」等.
2012年より,MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)にて,IoTシステム技術等を推進.技術士(情報工学)、博士(情報学).
IoT時代のセンサ開発に何が必要か?(2)
/次世代センサ協議会会長
小林 彬
5.LOSの考えられる具体的効用例とケーススタデイ
◆LOSの活用における効用例を列挙すれば以下の通りである。
●新センサ開発に伴う考慮項目の抜けが防止できる(開発)
●開発が円滑に進められ開発期間が短縮される(開発)
●ニーズ側の基本的要望を明確化でき、そのシーズによる実現を合理的に議論できる(開発・ユーザ)
●センサ技術者養成用の手順としても有効と考えられる(開発)
●計測装置の設置方法等に関するガイドライン(標準化)に繋がる(設置メンテ)
●各現場での安全・安心・信頼性(ハード、ソフト、システム)を保証するチェック項目が整備される(設置メンテ)
●装置変更に伴う仕様条件・データの品質の継続性が保証される(ユーザ、設置メンテ)
●改良・修理・修繕・保守の際の作業前後におけるデータ品質の継続性が保証される(反復性(再現性)、定量性)(設置メンテ)
●同種センサ・計測機器類の容易な比較が可能となる(ユーザ)
●セールスポイントの根拠として認定を活用することができる(販売)
◆また、LOSの利用は、ステークホルダーが危惧する様々な課題の解決に繋がると考えられるが、想定されるいくつかのケースを示せば以下の通りである。
●ケース1:開発経過の手戻りを無くし、開発期間を短縮
□解決策:設計に入る前に、ユーザとメーカ担当者間で「利用時の品質(要望)」と「製品の品質(要件)」の全ての項目をリストアップし、その要否を含めた合意形成を得ながらLOS_CUBEに纏め、漏れのない開発計画に落とし込む
●ケース2:製品の適切な仕様変更を実現した「新製品開発」
□解決策:開発の前段階としてLOS_CUBEの「製品の仕様」に紐付いている「利用時の品質(要求)」と「製品の品質(要件)」の確認を行い、既存製品のニーズを正確に把握することで、適切な「製品仕様」の変更が可能になる。
●ケース3:暗黙知の再確認とノウハウの伝承
□解決策:製品開発時にLOSのプロセスを経てLOS_CUBEを作成することで、暗黙知となっていた情報を漏れなく整理し顕在化させて残すことで、ノウハウの適切な伝承が可能になる。
●ケース4:最適な製品選定の実現
□解決策:ユーザが、調査対象の製品について、そのLOS_CUBEの「利用時の品質(要望)」の項目を入口として、ニーズに対応する「製品の仕様」項目を確認し、必要なニーズに対応できていることを納得できれば、最適な製品の選定も可能となる。またその際、「製品の仕様」に付随する必要な情報も得ることができる。
●ケース5:他社製品との差異を明確にしたセールス時の適切な説明
□解決策:製品の販売担当者が、LOS_CUBEの「製品の仕様」に紐付けられた「製品の品質(要件)」と「利用時の品質(要望)」を確認することで、他社製品と自社製品の仕様の差異を適切に比較することができ、担当製品の長所をユーザ目線でユーザが分かり易い言葉で説明することに繋がるので、公正な販売の機会を得ることが可能になる。
●ケース6:公的・社会的に客観性のある「製品の品質」の主張
□解決策:対象製品がLOSの認定を取得していることを示すことで、適正なLOSプロセスを経て「製品の品質」が実現されていることが証明でき、同時に、安全、安心、信頼性に関わる具体的なチェック内容もLOS_CUBEの記載内容で説明でき、公的・社会的に客観性のあるアピールが可能となる。
6.ノウハウの取扱いについて
以上のような情報を取扱うについて気になることは所謂「暗黙知」の継承方法も含め、ノウハウの取扱いである。細かいことは別にして、以下のようなことに留意して取り扱うことが望ましいと考えられる。
●ノウハウの区分と情報公開の範囲の考え方
①技術中枢に関わる、免許皆伝的なノウハウ:
ノウハウの中のノウハウで、言わば企業等における競争力、ビジネス優位の源であり、当事者・関係者以外非公開とすべき情報である。
②製品の運用に関わる、「暗黙知的」ノウハウ:
いわば当たり前のような、知っている人は知っている情報ではあるが、企業として適切に伝承しておかないと現場でトラブルの要因となる可能性のあるノウハウで、特に世代間での伝承に遺漏が生じ易く、少なくとも企業内では念入りに公開とされるべき情報である。
③公的共有性を図るべきノウハウ:
技術の適正な競争と抜けの無い技術継承を図るため、ユーザも含め広く共有化すべき情報で、積極的に一般公開すべきである。オープンイノベーションを進める上でも鍵となる考え方である。
7.おわりに
センサ開発・普及に伴うセンサの仕様条件項目の整理とその意義につき説明し、次世代センサ協議会で検討されている、LOSの考え方を紹介し、さらにその効用と考えられるいくつかのケーススタデイを列挙し、その概要を述べた。
ご意見があれば次世代センサ協議会LOS推進WGまでご連絡頂ければ幸いです。また、活動に参加ご希望の方も多いに歓迎します。
【著者略歴】
小林 彬(こばやし あきら)
昭和44年03月 東工大理工学研究科博士課程修了(制御工学専攻)、工学博士
昭和62年12月 東工大工学部 制御工学科 教授
平成17年03月 東京工業大学 大学院理工学研究科 定年退職
平成17年04月 大学評価学位授与機構客員教授
平成17年04月 帝京平成大学現代ライフ学部教授
平成22年04月 帝京平成大学現代健康メディカル学部教授、平成24年03月定年退職
平成27年07月~ 次世代センサ協議会会長
EMI-LAB、プログラミング対応 小型無人車両の販売を開始
(株)イーエムアイ・ラボ(EMI-LAB)は、小型の無人車両の販売を開始したと発表した。
国産の多目的無人ロボットの開発と販売を手がけるEMI-LABでは、小型無人車両の販売を開始した。この小型無人車両は、プログラミングあるいはAIの教材として活用して頂ける。大きさは全長400mm×幅300mmとなっており、各種センサやカメラなどが搭載可能という。
また、駆動力も高いため、水道管の点検用のベース機材、有害鳥獣の追い払い機材などにも活用可能。EMI-LABでは組み立てパーツでの販売のほか、完成品での販売、各種センサなどを搭載したオリジナル機の開発販売の対応もできる。
販売価格については、EMI-LABまで。
EMI-LABでは若手エンジニア及びキッズ向けの組み立てワークショップやプログラミング講習なども今秋より開始するとのこと。今年度は長野県内において実施する予定。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000041567.html
アイネット、天の技(あまのぎ)と人工衛星関連事業の業務提携契約を締結
(株)アイネットと東京工業大学(以下東工大)発スタートアップである(株)天の技は、この度、人工衛星関連事業の展開に関し業務提携契約を締結したと発表した。
1.東工大研究テーマの【革新的衛星技術実証1号機】での実証
2019年1月18日、国立研究開発法人宇宙航空開発研究機構(JAXA)の【革新的衛星技術実証1号機】が、イプシロン4号機により打ち上げられた。宇宙での実証機会を提供する本プログラムには、公募により選定された東工大の研究テーマ【深層学習を応用した革新的地球センサ・スタートラッカーの開発(DLAS)】が搭載されている。
<実証テーマ>
① 深層学習の手法を画像認識に活用し、衛星が撮影した画像から陸地パターンを識別する技術の活用実証
② 民生品を用いた低コストのスタートラッカー(撮影した星の配置から衛星の姿勢を計算するデバイス、すべての衛星に必要不可欠かつ最も重要な部品の一つ)の動作実証
<関連URL>https://www.titech.ac.jp/news/2018/043225.html
2.天の技による事業化
実証終了後、天の技は東工大のノウハウを活用した【東工大発ベンチャー】として、以下の事業化を目指しているという。
① 衛星用コンポーネントビジネス(スタートラッカー「Amanogi Star Compass※左上画像」販売)
今後、小型衛星の打上げが急増することは確実視されているが、国内にはスタートラッカーのベンダーが存在せず、海外製は10百万円程度と高価でサポートもない状況である。
一方、天の技のスタートラッカー「Amanogi Star Compass」は従来の半分以下の価格・開発期間を実現し、国際的にも競争力を有する。2020年から市場に投入、国内のみならず海外事業者への販売も検討する。
② AI衛星データビジネス
衛星データは即時性と通信・運用コストに課題があるが、Edge Computing(AIやデータ解析を小型計算機や論理合成を応用して小規模かつ低消費電力で実現すること)の衛星への応用により、必要なデータのみを地上に送信することで『欲しい宇宙データを迅速に低コストで入手』を実現する。
事業化計画は以下の通り。
●2020年 AI衛星開発プロジェクトスタート
●2023年 AI衛星の打上げの技術的実証
●2024年 AI衛星の実証結果を基に衛星ビジネススタート
3.業務提携契約の概要
1977年の気象衛星ひまわり初号機の打上げからスタートし、宇宙開発事業には40年以上の経験を有するアイネットは、同時に独立系トップクラスのデータセンター事業者でもあることから、今回の業務提携内容は以下の通り、宇宙開発、データセンター両分野にわたるという。
<業務提携契約の骨子>
① 衛星用コンポーネントの共同開発
② 人工衛星の共同開発
③ データセンターを利用した恒星センササービスの共同開発衛星データのAI解析サービスの共同開発
④ 衛星データのAI解析サービスの共同開発
アイネット、天の技、東工大の三者の知見、研究成果を融合させることで早期の事業化を推進していくとしている。
ニュースリリースサイト(アイネット):
https://www.inet.co.jp/news/docs/20190904.pdf
凸版印刷と東京理科大学、ZETAを活用し熱中症リスク表示
凸版印刷(株)は東京理科大学と共同で、ZETA(※1)を活用し数メートル空間単位で熱中症に関するデータを収集・分析し、リアルタイムで個人に合わせた熱中症リスクを表示するサービスの開発に向けて共同研究を開始する。共同研究の開始に先立ち、2019年7月から9月末まで東京理科大キャンパス内とその周辺において、熱中症リスク評価センサとZETA通信の連動性の確認などを行う実証実験を実施しているとのこと。
この共同研究は、東京理科大理工学部土木工学科 仲吉信人准教授が研究する、可搬型熱中症リスク評価センサを用い気温だけでなく、湿度・風速・日射・輻射熱の気象データから計算される体感温度指標と個人の属性(年齢・性別・着衣量・活動状況)や所在する環境などの情報を組み合わせ、リアルタイムで個人に合わせた熱中症リスクを表示するサービスの開発に取り組むもの。移動可能なセンサによるデータ取得と通信に活用するZETAの特長である、中継器によるマルチホップにより、LTE(携帯)電波が届かないエリアでも通信環境を延長でき、山間部などの遠隔地含めた広範囲なエリアの熱中症リスクを表示することが可能。これにより、従来では取得が難しかった市区町村よりもさらに細かいエリアにおける熱中症リスクのデータ取得を実現するという。また、ユーザー個人の属性・体感とセンサで取得した気象データを連携することで、従来の気象データによる熱中症リスク測定では考慮されていなかった、個人に合わせたリスク表示が可能となる。屋外労働者の労務管理や市民に向けた防災サービスとして熱中症予防への貢献を目指すとしている。
◇実証実験の概要
・場所:東京理科大学野田キャンパス、および周辺環境
・時期:2019年7月~9月末まで
・目的:可搬型熱中症リスク評価センサとZETA通信の連動性確認および今後の製品開発・サービス化 に向けての基礎データ収集
・主な実証内容
① 可搬型熱中症リスク評価センサとZETA通信の連動性確認
② 屋外活動時の熱中症リスク評価
③ クールビズの効果調査
◇役割
・凸版印刷:ZETA通信環境の整備、サービス化に向けたアプリケーションの開発
・東京理科大学:可搬型熱中症リスク評価センサ提供、取得データ分析、熱中症リスクガイドラインの策定、実証フィールドの提供
(※1) ZETA
ZiFiSenseが開発した、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信、メッシュネットワークによる広域の分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能といった特長を持つIoTに適したLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格。LPWAの規格のひとつであるZETAは、中継器を多段に経由するマルチホップ形式の通信を行うことで、他のLPWAと比べ基地局の設置を少なくでき、低コストでの運用が可能な方式。
ニュースリリース(TOPPAN):
https://www.toppan.co.jp/news/2019/09/newsrelease190906_3.html
OKI、道路インフラシステム実用化に向けたシミュレーション技術を開発
OKIは、自動運転車の円滑な走行を支援するために実用化が期待される道路インフラシステム(路側センサ、路車間通信(注1)装置など)の設置条件の検討および運用効果測定のためのシミュレーション技術を開発した。自動運転車の安全走行実現への取り組みが進展している一方で、円滑な走行の実現は大きな課題となっている。本技術は、高速道路などの自動運転車の合流地点において、実道路に設置する道路インフラシステムの導入効果を事前に確認できる。また、交通流、道路環境、路側センサの検知性能や路車間通信装置の通信性能など、さまざまな条件に応じて、設置環境に最適な設備の構築を検証することが可能となる。これにより道路インフラシステムの検証・構築をサポートするとしている。
自動運転車は車載の自律系センサ(注2)により周囲の安全を認知・判断しており、円滑な走行を行うためには、道路インフラシステムによる支援が望ましいケースが想定される。特に、建造物などに遮られた合流地点では、自動運転車が本線側を走行する車両(以下、本線車両)の位置や速度などを把握できず、合流のタイミング調整が困難となる。円滑な合流を実現するためには、本線車両の情報を提供する新たな支援システムの適用検討が必要で、その際の道路インフラシステムの設置条件の検討、効果測定および運用の検証が課題となっていた。
OKIはこの点に着目し、自動運転を支援する道路インフラシステムの実用化に向け、自動運転車や混在する一般車の車両制御モデル、各種道路の上限・下限速度、路車間通信の路側機設置条件や路側センサの設置条件などを取り入れたシミュレーション技術を開発した。本技術により、道路インフラシステムを導入した合流地点における車両走行の安定化を検証することができるとのこと。
OKIは、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1期/自動走行システム」の一環として2018年度に実施された「実環境を想定した自動走行通信支援のメッセージセット及びプロトコルに関する調査検討」において、本シミュレーション技術を用いて、実環境で想定される周辺車両による電波の遮蔽やマルチパスなどの影響を考慮し、車両挙動の安定化や交通流の円滑化を支援する通信のメッセージセットおよびプロトコルを検討し、その効果を評価した。この成果を活用し、都市高速道路および都市間高速道路の合流のモデルケースにおいて車両の挙動の安定化検証をさらに拡張し、本線車両を検知するための路側センサ、および自動運転車に本線車両の情報を配信する路車間通信装置の設置条件の検討に加え、自動運転車の挙動の把握や合流地点の交通流の変化の推測など、自動運転車合流時の円滑走行に効果が期待できる運用条件を分析することも検証したという。
OKIは、次世代交通分野でインフラと車などが通信手段により情報交換を行うインフラ協調型ITSサービスを推進しており、今回開発した本シミュレーション技術の検証結果を踏まえてフィールドでの検証を重ね、自動運転の普及と道路交通に関するさまざまな課題の早期解決をめざして、道路インフラシステムの実用化に幅広く取り組んでいくとしている。
注1:路車間通信
LTEなどの基地局を介さない、道路に設置した通信設備と自動車間で行われる直接通信のこと。
注2:自律系センサ
車両単独で周辺の障害物などを検知可能なレーダやカメラなどの車載センサのこと。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000303.000017036.html
ネクスティエレ、リアルタイムデータを使って熱中症のリスクを見える化
ネクスティエレクトロニクス(株)は、2020年夏頃の本格販売を目指し、熱中症に対するリスクの把握・管理を目的とした「熱中症見守りシステム」を、新たに開発した。
本システムは、厚生労働省が熱中症の発生するリスクを把握する指数として推奨している、暑さ指数WBGT値(※1)を見える化し、熱中症のリスクを低減するシステム。センサを設置した場所のWBGT値を遠距離からリアルタイムで、スマホやタブレットなどにより簡単に確認できる。またWBGT値が一定のレベルを超えた場合に、警告メールを自動配信することも可能とのこと。
◆システムの特徴
センサ端末を測定対象現場に設置し、測定情報をクラウドサーバーへリアルタイムに送信・記録する。記録されたデータはPCやモバイル端末に送信され、遠距離から設置現場の状況を把握し、熱中症対策の実施を設置現場側に促すことができる。また設置現場側では、警報通知メールの自動配信に加え、センサ端末のLEDライトが点灯するため、タイムリーに熱中症のリスクを把握することができる。
このシステムは、障害物の影響を受けにくく、安定的に通信が可能な通信帯域を使用している。またメッシュ型通信(※2)を採用しているため、センサ端末の設置位置次第で非常に広い範囲をカバーすることが可能であり、更に、センサ・ホスト端末は、単三電池4本で1シーズン稼働可能な省電力設計。建設現場、教育施設、介護施設など、屋内外を問わず様々なシーンで活用できるという。
※1 WBGT値:①相対湿度、②日射・輻射熱、③周囲環境温度の3つの指標から算出される指数で、WBGT値が高い時に熱中症が起こりやすくなる。
※2 メッシュ型通信:子機(センサ端末)が中継器の役割をすることで、直接又は子機を中継して親機(ホスト端末)へデータ転送する方式
◆製品詳細
・センサ端末からホスト端末を経由して、設置現場のWBGTをリアルタイム(※3)にクラウドサーバーへ送信
・クラウドシステムのため、いつでもどこからでもPCやモバイル端末で設置現場の状況把握、ログ管理やグラフ化が可能
・設置現場管理者や作業員に対し、メールで警告通知が可能
・ホスト端末とセンサ端末間の通信は920MHz帯を採用し、障害物の影響を受けにくく、WiFi/Bluetoothに比べ安定した長距離通信が可能
・メッシュ型通信を採用することで、広域通信が可能
・設定したWBGTの警告水準に達すると、センサ端末のLEDが赤点灯し、設置現場で警告を視認することが可能
・蓄積されたログ情報と翌日の天気予報をもとに、翌日のWBGT予測を検討中
※3 通信環境によりタイムラグが発生することがある
プレスリリース(ネクスティエレクトロニクス):
https://www.nexty-ele.com/wp/wp-content/uploads/2019/09/Release_J20190903.pdf
MediaTek社MT6737搭載システムオンモジュール「POC-COM-MT6737M」販売
ポジティブワン(株)は、R.9 Cat-4 LTEソリューションとして、台湾大手半導体メーカMediaTek社MT6737搭載システムオンモジュールの販売を開始すると発表した。
MediaTek社MT6737は、VoLTE、ViLTE、VoWiFi、RCSなどの豊富なネットワーク機能を可能にするIMSもサポートしている。これは、オールバンド4Gモデムがサポートされている。マルチメディア、ディスプレイ、写真のエクスペリエンスが強化されたMT6737は、差別化された手頃な価格のエクスペリエンスをエンドユーザーに提供することを目的とした世界的な手頃な価格のデバイスプロジェクトに最適となり、実際、MT6737は、わずか512MBのメモリでAndroidと互換性があるとのこと。
さらに、MT6737は、エネルギー効率の点で競合ソリューションよりも優れており、GPSおよびFMシナリオではエネルギー使用量を半分以上削減し、ビデオ再生またはゲームシナリオでは3分の1削減。パフォーマンスの面では、Cortex A53に基づくクアッドコア64ビットCPUとMali T720 MP2 GPUが、人気の3Dゲームを含めてトップのAndroidアプリをスムーズに実行するのに十分なパフォーマンスを提供。
4Gテクノロジーは、高度なネットワーク機能、ディスプレイの改善、高度な画像信号処理テクノロジーを提供。MT6737は、デバイスの充電を高速化するテクノロジであるMediaTek PumpExpress 2.0と互換性があるとしている。
プレスリリースサイト(ポジティブワン):
https://www.positive-one.com/info/news-0000176602.html
IoT時代のセンサ開発に何が必要か?(1)
/次世代センサ協議会会長
小林 彬
1.はじめに:時代背景の総括(センシング技術の観点から)
IoT、Society5.0、ビッグデータ社会への期待が盛んに議論される中、センサ技術・センシング技術への新たな関心が寄せられている。近い将来、IoT情報の、オンライン・リアルタイム運用は必然であり、センサ技術の基盤技術としての役割は極めて大きい。また同時に多様な分野へセンサ技術・センシング技術が浸透し、新しい機能を持つ《量》の計測が新規に要求される中、速度感を持ってセンサ技術・センシング技術の円滑な開発を進めることが重要である。そのためには、開発目的を実現するに必要となる仕様条件や開発プロセスの各段階で検討すべき項目等をガイドラインとして網羅的に整備し、開発における手戻りを極小化することを目指しつつ、育まれた技術を抜けなく継承して行く手法を構築して置く必要がある。本講では、各製品の仕様条件を、「利用時の品質(要望)」、「製品の品質(要件)」、「製品の仕様」の3つの側面から3次元的に整理する手法として提案されているLOS(エルオーエス)について、その考え方と、整理作業を進めるためのツールや効用について概要を述べる。
2.測るべきものが大きく変わる! :新たな生産性向上への寄与
IoTという事に伴い、センサ技術・センシング技術が多様な分野に浸透していくことを指摘したが、言うまでもなく、そこでは、これまでのインダストリーを中心とする分野での仕事と異なる内容の仕事がなされている。従って、当然のことながら、仕事の仕方・見方も評価の観点も違ったものとなり、今までと異なる量(一般にはインデックス(指標))の計測が求められることになる。
必要なインデックス(指標)として要望されることは、
1)システムを効率的に働かせ、
2)状況の変化に迅速に対応する、
3)安全・安心を確保できる運用の実現、等
であり、社会活動全般に対してその生産性向上に繋げる情報が求められると言え、インダストリーでの生産性とは異質の生産性が追求されることに留意する必要がある。
そのようなことに応えるには、従来型センサの出力とソフトウェアの連携が重要であり、センサの知能化による新たな付加価値が付けられた情報の提供が急務で、センサ技術も基盤として大事だが、最早物理量を測ってそれで終わりでは済まされない。
社会インフラ維持管理の観点から言えば、道路橋のモニタリングの場合、橋梁の振動・加速度情報以上に橋梁の健全度、例えば、地震直後の橋梁の安全性(通行可能か)を直に判断できるような情報が現場での要望であり、言い換えれば、迅速かつ的確な行政判断に有効な情報の要求ということで、ここには行政判断における生産性の向上に向けた新たな意味がある。
つまり、新たな生産性の向上とは、人間作業におけるリードタイムの短縮を意味し、作業の中身が「状況の判断及び意思決定の連鎖」ということに気付けば、的確な状況モニタリングと客観的な評価指標の提示が鍵となることは明らかである。
この点、地震情報に基づくガス供給停止判断システムにおいてインデックスSI値が利用されていることは興味深い。
すなわち、SI(Spectral Intensity)値は、地震による構造物の揺れ速度の最大値(応答速度スペクトルSv)を平均化した値として定義されるが、この値は、加速度情報と比較したとき、構造物について予想される被害の大きさとの相関が高く、地震による被害が一定水準を超えたときガスの供給を停止させたい判断に呼応し、その判断を迅速に実現することができる。つまり、SI値を提供することで、管理者の能力を支援し、結果として迅速な判断を可能とさせ、管理作業における生産性を等価的に向上させている。
3.センサの新規開発と技術継承問題
●技術継承はなぜ必要か
前述したように、IoT社会の振興、あるいはそれを円滑に促進することを目的に、今後、センサの新規開発(新機能センシングシステムの開発)あるいはヴァージョンアップ、さらには知能化が高い頻度で生じることが予想される。
これは、その都度何かが変ることを意味するが、この際、気付かずに新たな問題を孕むことに充分注意する必要がある。つまり、変化には進化と退化が有り、
◆進化とは:機能や性能の向上、センサの適用分野や使用環境の拡大、等であり、
◆退化とは:技術情報の伝達ミス、技術情報の伝達忘れ(ウッカリ)、等であるが、
気付かずに、退化が生じることによって、本来、変化の前後において、本質的な機能や性能について必要な継続性が確保されなければならないにも関わらず、それに支障を来すからである。
すなわち、漏れや抜けの無い技術継承を図ることが大切で、データの持つ機能や性能等、データの品質につき継続性が保証され、同時にセンサの設計、製造、設置、運用、に関わる、様々なノウハウが遺漏なく継承されることに留意するべきである。
●技術継承の対象と効用
技術継承を考える上でまず重要なことは、何を継承すべきかにつき、技術継承の効用を総括した上で、そのことを意識しつつ、再び何を継承すべきかをリストアップすることである。
技術継承の価値は、言うまでもなく、企業的・ユーザー的・社会的に意味のある知的財産をそれぞれ独自の立場あるいは相互的立場に立って公正に守ることである。
具体的項目を細目に渡りリストアップすることになるが、そのようなリストは、必要な範囲で必要に応じ可能な限り公開されることが望ましい。
公的に共有され、技術の共通基盤として合意(標準化)されれば、技術の継承の範囲にとどまらず、社会の円滑な発展にも繋がると考えられる。
後段で詳しく説明するが、効用として重要な項目として大きく以下の3項目が考えられる。
1)センサの新規開発等、開発速度の加速化(手戻りの少ない開発の実現)
2)センサ等に関する重要情報の網羅的リストアップ(オープンかクローズか)
3)公正・適正な競争(共通基盤に立った比較と選択)
4.必要項目リストアップのための新しい手法の提案:LOS(エルオーエス)
次世代センサ協議会では、抜けのない開発項目整備と技術継承のための新しい手法として、LOS(エルオーエス)ということを検討している。
LOSとは、 List Of Specifications (to authorize sensor system design,development and its social implementation)の頭文字をとったものである。
IEC/TC65の分野では製品仕様を網羅するリストLOP(List Of Performance)として、CDD(Common Data Dictionary)が開発されているが、LOSにおいては、この考え方をより発展させ、製品仕様のみに留まらず、
1)「利用時の品質(要望)」
2)「製品の品質(要件)」
3)「製品の仕様」
の3つの評価軸に従って、製品特性の品質を特徴付ける仕様項目(specifications)を3次元的に分析・整理し、網羅的にリストアップしようとしている。
ここで重要なのは、センシングにおいてニーズ、シーズ、に加え「利用時の品質(要望)」、つまりユースの観点が加わったことで、IoT時代のセンサ技術として特に留意すべきことである。
結果として、LOSの図式は3つの評価軸による、3次元空間配置を持つLOS_CUBEとして表現される。各評価軸は、製品の特性を分析するに必要な視点(カテゴリ)から構成され、それぞれ以下のようなカテゴリが列挙されている。
① 「利用時の品質(要望)」
・利用者(ユーザ、メンテナンス担当者など)が製品で実現してほしいと考えるもの(こと)
・表記:「~してほしい」で記述
・カテゴリ:有効性、効率性、満足性、リスク回避性、利用状況網羅性、等
② 「製品の品質(要件)」
・製品が満たすべき目標条件
・表記:「~すること」で記述
・カテゴリ:機能適合性、性能効率性、互換性、使用性、信頼性、セキュリティ、保守性、移植性、等
③ 「製品の仕様」
・製品の品質を実現する具体的技術手段
・表記:具体的な数値
・カテゴリ例:基本仕様(計測範囲、等)、電気的仕様(定格電圧、等)機械的仕様(質量、等)、環境仕様(使用温度、等)、調整仕様(ソフトウエアを含む調整機能、等)等
また、ここでの「品質」はQualityを意味するものであり、信頼性だけでなく製品の全般の質に関する特質、特性も視野に入れている。LOS_CUBEのイメージを示せば図3の様である。
図3において、各評価軸につきカテゴリ項目を一つづつ選択して決まるCUBE内のひとつの区画に
が入っていれば、各評価軸カテゴリ項目間に紐付けがあることを意味し、センサ開発、技術継承に際し、留意すべきノウハウを検索することができる。
なお、LOS_CUBEを作成するためのツールとして、LOS_CUBE/Tが用意されている。
次週に続く-
【著者略歴】
小林 彬(こばやし あきら)
昭和44年03月 東工大理工学研究科博士課程修了(制御工学専攻)、工学博士
昭和62年12月 東工大工学部 制御工学科 教授
平成17年03月 東京工業大学 大学院理工学研究科 定年退職
平成17年04月 大学評価学位授与機構客員教授
平成17年04月 帝京平成大学現代ライフ学部教授
平成22年04月 帝京平成大学現代健康メディカル学部教授、平成24年03月定年退職
平成27年07月~ 次世代センサ協議会会長
