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AIを用いた掘削現場でのトラブル回避技術の開発(3)

(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
草薙 和也

3. 掘削データへのAI適用によるトラブル検知

掘削作業中のトラブルには掘削中の地層の地質性状を含め、その時々の様々な掘削条件が影響しているが、抑留についてはそのメカニズムが既に理解されているものがあり、発生前に何らかの予兆がマッドロギングデータに表れていると考えられるものが多い。鋼管の回転状況を反映するトルクを例にとると、坑壁が不安定で崩壊した際に坑内に落下する岩石との摩擦によりトルクの値は徐々に上昇し、最終的に回転が止まるといった過程が存在すると想定される。
これまで収集されてきたマッドロギングデータを詳細に解析することにより、データ内部に存在すると考えられる抑留の予兆を把握し、発生を事前に予測するモデルの作成を目的として、本研究では機械学習手法を用いた。本章では適用した機械学習の手法ごとに、手法と結果を概説する。

3.1. 実施体制
掘削の対象となる地下の特徴は不均質性が高く、フィールドごと、さらには坑井ごとに異なる。そうした条件のもと機械学習を用いて高い精度の解析を実現しようとすると、広範な操業環境を含むより大量のデータが必要となる。しかし石油開発においてはエネルギー市場への影響等から多くのデータが守秘情報とされ、自社が操業主体となっている案件のデータでなければ、その取り扱いに制約がかかることが多い。一方で各日本企業が操業主体として進めるプロジェクト数は限られるため、本件では、コンソーシアム形式として複数の参加企業からデータを提供していただいた。
JOGMECとJAMSTECの間で委託契約が締結されており、JAMSTECとの共同研究実施機関として東京大学、外注先として英国エジンバラ大学、協力機関として石油資源開発株式会社と国際石油開発帝石株式会社が参加している。

3.2. データ事前準備
参加企業からは合計で46坑井分のマッドロギングデータを収録した3810日分のcsvファイルが提供された(図3)。掘削データの事前準備において注意しなければならないのは、機械学習で重要な「高品質で大量の学習データ」という前提が成り立たないデータも多く含まれているということである。現場での作業は自然現象のみを理想的に反映しているわけではなく、その時々の現場状況等を勘案した人の判断が介入している。さらには、例えば逸泥トラブルであればどの程度までなら許容しながら掘削作業を進めるかというような、各社によって異なる”哲学”ともいうべきファクターも含まれている。また上述の通り、掘削作業が複雑な地下の地質を対象として行われており、その複雑な情報を反映するにはマッドロギングデータだけでは不十分なことも想定される。

図3. マッドロギングデータの一例

集められた掘削データが収録された当時はビッグデータの価値というのが現在ほど認識されておらず、機械学習の適用も想定されていなかったため、サンプリングレートや収録パラメータ、フォーマットといったデータ収録の標準も業界内において確立されていなかった。こうした理由から、まずは提供されたデータに対して事前準備として以下の整理を施した。

・共通して収録されているパラメータの抽出:合計で約20変数、うちどのパラメータの組み合わせを学習に用いるかはケースバイケース
・パラメータ名称および単位系の統一
・外れ値・欠損値が存在する測定区間の除去

3.3. ラベル付け
およそ全ての坑井掘削に際しては掘削日報が作成され、作業内容やトラブルに関する情報が記載されているので、それらを参照することでトラブルが生じている時間帯をおおよそ特定することが可能となる。しかし機械学習ではタイムステップ(今回では4秒周期)ごとにデータのラベルを付す必要があるので、最終的には時系列データを観察して以下のラベルを付した。

・0:正常掘進
・1:抑留状態(抑留からの離脱作業を含む)

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【著者略歴】
草薙 和也(くさなぎかずや)
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 デジタル推進グループ デジタル技術チーム

■略歴
1992年1月16日生
2016年3月 京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻 修士課程 修了
同年4月 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 入構

■専門分野
Drilling Engineering(石油掘削)

ABLIC、ZCL™ホールIC(磁気センサ)「S-576Zシリーズ」の販売を開始

エイブリック(株)(ABLIC)は、ブラシレスDCモータの開発・製造に革新をもたらす、ZCL™(※1)ホールIC(磁気センサ)「S-576Zシリーズ」の販売を本日より開始した。
この製品は、2018年10月に発表した「世界初(※2)の革新的検知方式を採用したZCL™ホールIC(磁気センサ)」が製品化され、一般民生機器向け製品として販売を開始するもの。

発売した「S-576Zシリーズ」は、片極検知でも交番検知でもない、全く新しい検知方式採用した「ZCL™ホールIC」の一般民生機器向け製品で、極性が変化する点( = ゼロクロスポイント)で出力信号を変化させることを実現したホールIC。
「S-576Zシリーズ」を使用することにより、設計段階における自由度が格段に向上するため、センサの位置精度や部品のばらつきといったモータの性能に影響を及ぼすマイナス要因を減少させたり、製造工程におけるキャリブレーション作業の負担軽減が可能となり、モータの開発者および設計者の課題解決に大きく貢献できる製品という。
また、センサの位置が理想的ではない状態では、交番検知を配置したブラシレスモータと比較した場合、15%超の消費電力の低減が見込める(※3)ため、環境にもやさしく、かつ、ブラシレスモータ搭載製品のパフォーマンス向上にも寄与するとのこと。

(※1)ZCL = “Zero Crossing Latch” の略
(※2) 2018年9月現在、ABLIC調べによる
(※3) 2019年11月現在、ABLIC調べによる

ZCL™技術紹介サイト(ABLIC):https://hub.ablic.com/ja/products/zcl

250㎏まで搬送可能「自動搬送モバイルロボットLD-250」世界一斉発売

オムロン(株)は、シリーズ最大の250kgまで自動搬送できる「モバイルロボットLDー250」を2019年11月15日よりグローバルで一斉発売する。また、業界初となる搬送重量(ペイロード)が異なるモバイルロボットを1つのシステムで制御可能にした「フリートマネージャ」とあわせて使用することにより、より柔軟で最適な自律搬送を実現するとのこと。
(画像:モバイルロボットLD-250)

近年、日本をはじめ先進国では労働人口が減少し、新興国では人件費が高騰する一方、モノづくりの現場では多品種変量生産でも生産性を高め利益率を向上させることが求められている。LDシリーズは、人や障害物を自動で回避しながら最適なルートを自ら考え、決められた場所に荷物を届ける搬送ロボット。今回発売する「LD-250」は、シリーズ最大の250kgを搬送可能で、ロボット上部面積を従来の約2倍としたことで、大型の自動車部品やかさの大きい梱包材など、従来、人がカートを使って移動させていた搬送作業の自動化を可能にする。また、業界で初めてペイロードの異なるモバイルロボットを1つのシステムで制御できる「フリートマネージャ」を使用することで、互換性やパフォーマンスを心配することなく、最大100台までのロボットを連携させて使用できるという。

オムロンは、「LD-250」を加えたオムロンのモバイルロボットLDシリーズにより、自動車、電機・電子、食品、日用品などのさまざまな業界において、搬送設備を固定することなく、需要の変動などに応じてフレキシブルに対応できる自動搬送システムを実現し、モノを移動させるという単純・単調で重労働な作業から人を解放し、より創造的な分野での仕事に従事してもらうことで、社会的課題の解決に貢献し続けるとしている。

ニュースリリースサイト(omron):https://www.omron.co.jp/press/2019/11/c1115.html

地方創生およびゴルフ場経営改善に向けた5G実証試験に成功

 NTTコミュニケーションズ(株)(以下、NTT Com)と、(株)NTTドコモ、(株)ミライト、富士通(株)、(株)長野京急カントリークラブ(以下、長野京急CC)は、ゴルフ場経営改善の実現に向け、長野京急CCで、第5世代移動通信方式(以下、5G)の実証試験を、2019年11月11日(月)から11月15日(金)まで共同で実施している。 2019年11月13日(水)には、端末の移動時における複数基地局、複数端末を接続した環境下で、平均1Gbpsを超える5Gを用いた映像伝送に成功した事を発表した。

 この試験では、長野京急CCの1番ホールに28GHz帯の5G通信エリアを構築し、ゴルフプレイヤーのショット映像で弾道分析をすることで落下地点を予測し、その結果をプレーヤーのタブレットおよび次世代ディスプレイカート※に表示させる「落下地点予測」と、ティーショットの映像を4K360度カメラで撮影し、高精細な映像を5G端末などにライブ配信する「ライブ映像伝送」の試験を行った。

 これにより、複数基地局設置、複数端末を接続した環境で5G端末を搭載した次世代ディスプレイカートを移動させる中で平均1Gbpsを超える通信に成功したほか、ボールの落下地点を利用者にスムーズに示し、他のコンペメンバーともリアルタイムにお互いのプレー状況が確認できるなど、新たな体験を提供した。

 この試験を通して、ゴルフ場でのプレーと最先端のICTである5Gを融合させることにより、ゴルフ場の経営改善課題であるプレー回転率およびユーザビリティの向上を解決し、利用者の満足度向上や利用機会の創出をめざすという。さらに、今までに無いエンターテインメント体験を得られることで、県内外からの利用者の増加など、地方創生に貢献していくとしている。

 なお、本試験はNTT Comが実施主体となり、総務省から請負った令和元年度5G総合実証試験「移動時において複数基地局、複数端末の環境下で平均1Gbpsを超える高速通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討」として実施してるとのこと。 

※ 次世代ディスプレイカートでは、5Gの低遅延、大容量、高速の特長を活かし、カート付近にいる通行人に向けて高画質な映像を、カートに搭載された高精細な4Kディスプレイに表示することが可能。

ニュースリリースサイト(NTT Com):
https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2019/1114.html

ロボットによる海洋計測(2)

長崎大学副学長・教授
山本 郁夫

また、海洋計測は水中ロボット以外の方法もある。例えば、図7に示すような船型ロボットにより採水装置を海中に下して海水を採水し、環境汚染調査を行ったり、人工衛星により海の表面の画像を取得し赤潮や海洋プラゴミの把握を行う方法などがある。

図7 船型ロボット UKIBOT

本稿では筆者らが最近行った飛行ロボットによる赤潮自動検査通知システムの開発について紹介したい。これは、マグロ養殖を行っている人たちが、マグロの赤潮プランクトンへの脆弱さを懸念してなんとか早期に赤潮の予兆を発見したいとのニーズに基づき始まった研究である。マグロにとって有害な赤潮プランクトンは5種類あり、少量でも海水中に含まれるとマグロは死滅する。筆者らは飛行ロボット(図8)とAI(人工知能)デープラーニングによる有害赤潮プランクトンの形状判別法により本問題を解決した。

図8 赤潮サンプリング飛行ロボット AKABOT

図9に示すようにまず、広域海面空撮用飛行ロボット(図9では空撮用ドローンと称す)により海面の画像をカメラにより収得し、108色の海面色から赤潮予兆のある5色の海面を識別し、識別された色の海域に図8に示す赤潮サンプリング飛行ロボット(図では採水用ドローンと称す)が向かい、採水器が採水用ドローンから海中に繰り出され、所定深度(1m、3m、5m)の海水を自動で採水し、戻ってくる。次に、採水された海水が顕微鏡を介して人工知能にて赤潮有害プランクトンを含むか瞬時に判別して、結果をリアルタイム通知する仕組みである。

図9 飛行ロボットによる赤潮自動検査通知システム

本方法により従来通知まで半日要していた時間を15分に短縮できた。センサは飛行ロボットの位置認識のためのGPSと搭載カメラであるが、今後カメラシステムの小型化と人工知能搭載が可能となれば採水した時点の画像から有害赤潮プランクトンの判別が可能となる。また、潮流計を海域に配置すれば、赤潮の分布予測も可能となり、赤潮予報も現実味を帯びてくる。この仕組みは海洋プラごみの漂流予測にも応用でき、プラごみの検知と回収の問題解決にもつながる。

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【著者略歴】
山本郁夫(やまもと いくお)
長崎大学副学長・教授

1983年3月 九州大学工学部航空工学科卒、同大学院工学研究科修了、博士(工学)。
1985年4月 三菱重工本社技術本部、
2004年4月 海洋研究開発機構、
2005年4月 九州大学大学院総合理工学府教授、
2007年4月 北九州市立大学教授、
2013年4月 長崎大学教授、
2019年4月 同大学副学長。

GlobalScot(スコットランド名誉市民)、フランス国際賞受賞。
専門はロボット工学。実用的なロボットを世界に先駆けて開発することで定評がある。三菱重工業株式会社で10000m(10900m)無人潜水ロボットやB787主翼、JAMSTECで300km(317km)以上を自律で航走する水中ロボットを開発してきた。大学では小型飛行体や小型水中ロボット、本物そっくりにおよぐ魚ロボットを世界に先駆けて開発している。宇宙遊泳する魚ロボットも開発した。30年以上のロボット研究歴の中で英国、フランス、日本などでPractical Roboticsの創出法に関する本など多く執筆している。

水中ロボットの測位用センサ(2)

東京大学生産技術研究所
海中観測実装工学研究センター
特任助教 松田 匠未
東京大学生産技術研究所
海中観測実装工学研究センター
准教授 巻 俊宏

他にも音響発信・受信器を用いた測位方法がある。トランスポンダと呼ばれる特定の信号を受信すると一定時間後に応答する装置を用いる。音響信号を発信してからトランスポンダの応答信号を受信するまでの時間からトランスポンダまでの距離を計算できる。また複数の受波器によって応答信号の時間差からトランスポンダの方向を検出できる。トランスポンダを用いて、GPSで位置を計測できる水上船舶や正確に位置を把握している海底基準局などを座標基準として、それに対して相対的に座標を求めることができる。受波器間の距離(「ベースライン」と呼ぶ)に応じてLBL(Long Base Line)、SBL(Short Base Line)、SSBL(Super Short Base Line)の3つの方式がある。図2のように海底に複数のトランスポンダを設置する場合はLBL方式であり、図3のように船舶に複数の受波器を設置して、水中のトランスポンダの位置を計測する場合はSBL方式である。また図4のように波長と同程度の非常に短い間隔で設置された受波器アレイを用いる場合はSSBL方式と呼ぶ。LBL方式はベースラインが長くとれるので正確な測位が可能であるが、トランスポンダの設置位置の精度が測位精度を左右するため、設置時に正確な位置決めが要求される。SBL方式はLBL方式のような設置位置の事前計測は不要である。またSSBL方式の場合はさらにベースラインが短くなるため、装置の設置が容易になる。SBL方式とSSBL方式ではベースラインが短いため、トランスポンダとの距離が離れると測位誤差が増加するという欠点がある。

図2 LBL方式による測位
図3 SBL方式による測位
図4 SSBL方式による測位

また上記のセンサ以外にも高級な慣性航法装置(INS:Inertial Navigation System、図5)やドップラ式対地速度計(DVL:Doppler Velocity Log)を組み合わせれば、長期間にわたり高精度に測位することができる。INSはセンサ自身にかかる力を高精度に計測することで測位する装置であり、DVLは海底に音響ビームを照射して、反射波のドップラシフトを検出することで海底に対する速度を計測する装置である。これらは現在の水中ロボットの標準的な測位手法となっているが、1千万円以上のコストがかかり、また物理的なサイズや重量、消費電力も大きいという欠点もある。INSは電源を入れるたびに計測誤差を補正するキャリブレーションという手続きも必要で、空のドローンのように手軽には導入できない。

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【著者略歴】
松田 匠未(まつだ たくみ)
2012年3月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 修士課程修了 修士(環境学)
2012年4月~2015年3月 日本学術振興会 特別研究員
2015年3月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 博士課程修了 博士(環境学)
2015年4月~2019年3月 東京大学生産技術研究所 特任研究員
2019年4月 東京大学生産技術研究所 特任助教
現在に至る

・所属学会
IEEE,日本船舶海洋工学会,海洋調査技術学会,日本ロボット学会
・受賞歴
2011年 MTS/IEEE OCEANS 2011 KONA Student Poster Program Second Place Awards
2014年 IEEE OES Japan Chapter Young Researcher Award 2014
・専門分野
知能ロボティクス,フィールドロボティクス,自律型海中ロボット(AUV),マルチロボットシステム,確率ロボティクス



巻 俊宏(まき としひろ)
東京大学生産技術研究所 准教授。

2003年東京大学工学部システム創成学科卒業。
2005年東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻修士課程修了、修士(工学)。
2008年東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻博士課程修了、博士(工学)。
同年4月東京大学生産技術研究所助教、同年10月〜12月ウッズホール海洋研究所(米国)客員研究員を経て、2010年4月より現職。
専門は海中プラットフォームシステム学。海のフロンティアを拓く岡村健二賞等を受賞。
IEEE, 船舶海洋工学会等の会員。

Blue Economyと日本・スコットランドの協業(2)

英国大使館・スコットランド国際開発庁
松枝 晃

1-1.石油・ガス

北海油田開発の時期から数えると、50年以上の歴史がある。
これまで、435憶バレル相当の石油・ガスが採掘されている。2014年以降の油価下落後も、生産量は落ちていない。ローコスト化の努力により現状の油価でビジネスが可能になっており、北海油田の価値最大化を目指し2025年までに£170憶の投資が予想されている(図3)。

図3
                                         

図4,5にここ数年の開発・生産状況と近年のプロジェクトを示す。
実効的な残余量は、これまで採算があわなかった小規模の貯留層の生産がどこまでローコスト化できるかによる。
図3にあるように100から200憶バレル相当の残余量が見込まれている。

図4
図5

1-2.再生可能エネルギー

北海油田は、harsh environment(過酷な環境) だと言われるが、これは再生可能エネルギー源が多くあると言う事になる。実際、ヨーロッパ地域の洋上風力エネルギーの25%はスコットランド周辺にあると言われている。
2018年末の時点で再エネは約10GWの発電容量がある。スコットランド政府は2020年には全ての電力供給を再生可能エネルギーで賄うという目標をたてており、 2017年には約68%、2018年には約75%が達成されている。2030年には全てのエネルギーの50%を再エネで賄うという目標を立てている(2017年時点で20%)。
https://www.gov.scot/publications/annual-energy-statement-2019/pages/3/

図6

洋上風力発電では、浮体式にする事でより沖合、より深い海域に設置が可能になってきている。それに伴い1)設置に向けた調査、海底の整備(Surveys / Seabed Preparation),2)基礎、係留(Foundation and moorings)3)設置、ケーブル(installation, cables,)4)IMR 点検、保守、修理(Inspection Repair Maintenance ), 5)設置後のセンシング、モニタリング などの技術開発が必要になっている。

波力潮力発電は、風力に続くものであり英国内では合計40基を超える発電デバイスが設置されている。スコットランド北部とストローマ島の間にあるMey Genプロジェクトは最大のもので、2019年には、Gridに接続されて電力供給を行っている。しかし全体では依然コスト低減が必要な状況で、発電デバイスの大容量化が一つの方策とされている。

図7に近年計画されているプロジェクトの概要を示す。技術課題としては、1)基礎と係留(ピラー、アンカー、ムアリング。コスト低減)、2)設置(開発コストとリスクの大きな部分を占める)、3)材料と腐食(ダメージを防ぐ事で致命的な故障やライフサイクルコスト低減)、4)。点検と状態モニタリング( 石油ガスの検査技術が有効、IoT化自動化によるコスト低減)。5)発電と配電(送電用のケーブル、コネクター、配電機器)などがある。なお、Offshore Renewable CatapultにAnnual report、Technology reportなどがあり参考となる。
https://ore.catapult.org.uk/reports-and-resources/reports-publications/ore-catapult-reports/

図7

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【著者略歴】
松枝 晃(まつえだ あきら)
英国大使館・スコットランド国際開発庁 上席投資担当官
金沢大学 工学部 電気工学科卒、
1981年オリンパス光学株式会社(当時)。研究開発部門で回路設計、新規事業開拓、オープンイノベーション等経験。
2010年スコットランド国際開発庁。センシング技術を中心に日本スコットランド間の技術案件を担当。2012年から海洋関係。北海のSubsea技術と日本の海洋関連技術のコラボレーションを促進。

日本財団オーシャンイノベーションプロジェクトの取組み(2)

日本財団 海洋事業部
辰野 誠哉

2.「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム」について

日本財団は、本コンソーシアムでの取組みを通じ、海洋開発技術者育成に関する企業ニーズの把握と大学教育とのマッチングを図るとともに、大学及び個別の企業のみでは実施することが難しい教育、実習等を、企業や公的研究機関の協力を得て広く国内外で実施することにより、海洋開発技術者の育成体制の構築を目指している。

図1 コンソーシアムの活動の全体像

図1に示すのは、本コンソーシアムの活動の全体像である。「海洋開発を理解する!・海洋開発に携わる日本の企業と交流する!(理解増進事業)」、「国際性を身につける!(海外派遣支援事業)」、「知識・経験を身に付ける!(知識・知見習得事業)」、「より実践的な知識・経験を身に付ける!(リカレント教育事業)」の4本柱で取組みを進めている。
対象は大学生・大学院生および若手の社会人技術者である。具体的に、学生対象の取組みに関しては、海洋開発産業の魅力を伝えるためのセミナーや、海洋掘削船「ちきゅう」、洋上風力発電施設、石油・ガス生産施設等において海洋開発の技術を学ぶ現場体験型のセミナーを開催したり、海外大学のサマースクールや海外企業へのインターンシップへの派遣を積極的に実施している。また、これらセミナーやスクールに参加した学生に対して「履修証明書」を発行し、企業の方がリクルート等をする際に、学生が何を学んだかを「見える」仕組みとしている。さらに、サマースクール等に参加した学生を「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアムフェロー」として認定し、同輩、後輩たちに海洋開発産業の魅力を伝える役割を担っていただいている。一方、社会人対象の取組みに関しては、海外の専門家によるワークショップ、セミナーを開催し、技術者の実践的な知識習得を図っている(図2)。

図2 コンソーシアムの活動の具体例

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【著者略歴】
辰野 誠哉(たつの せいや)
日本財団 海洋事業部 海洋開発人材育成推進室 アドバイザー

2015年 東京理科大学大学院 理工学研究科 機械工学専攻修了。
2016年 国土交通省 入省
2016年-2018年 国土交通省 海事局 海洋環境政策課
内航船の省エネ化、次世代船舶(LNG燃料船、自動運航船)の推進等に従事
2018年 現職

AIを用いた掘削現場でのトラブル回避技術の開発(2)

(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
草薙 和也

2. 石油開発

石油開発業界では海洋への進出が近年の大きなトレンドとして挙げられ、陸上に比べて多額の投資を必要とする海上での開発プロジェクトでは作業効率・コストの最適化への要求がより一層高い。
本章では、海洋石油開発の現状と展望、そして石油掘削の概要について説明する。

2.1. 石油開発現場の海洋への展開
2014年の原油価格下落を受け、FID(最終投資決定)が行われた世界の石油開発プロジェクト件数は一時期減少したものの、それ以降の原油価格の上昇を見て陸上・海洋プロジェクト共にFID件数は回復基調にある。IEAが2018年4月に公表したOffshore Energy Outlookによると、2040年まで継続して海洋油ガス田の開発が進むと見込まれており、IEAが仮定するNew Policies Scenariosに基づく試算では、2040年において世界で生産される原油の約28%が海洋油田から生産されると予測されている(表1)。

表1. IEAのNew Policies Scenariosに基づく2016年と2040年の総石油生産量に占める海洋の比率
(出所:IEA Offshore Energy Outlook 2017)

これまでにも世界各地で海洋油ガス田が開発されてきているが、比較的開発が容易な浅海域からの生産量の減退に伴い、より深い水深での油ガス田開発が進んでいる。近年では米国メキシコ湾、ブラジル、西アフリカなどにおいて大水深域の開発が進められているが、操業会社は技術面・経済性において今までより困難な開発コンセプトの実現が求められる。海洋掘削は更なる水深・深度のターゲットを目指して今後も技術的な発展の余地がある。掘削現場でのトラブル発生回避を可能とし、コスト削減に寄与する技術は重要な役割を果たすことが期待される。

2.2. 石油開発におけるデータ利用
掘削作業を把握するために必要な種々のデータはマッドロギング(泥水検層)として収録され、深度、泥水流量、ビットにかかる荷重・トルクなどの時系列データが収録される(図2)。リグではこれらのデータが逐次モニターに表示されており、エンジニアは値の変化を観察しながら坑内で生じている現象の把握に努める。しかしこれらのデータ収録はあくまで現場における状況把握を目的としており、記録として保存こそされているものの、事後において実際の現象と照らし合わせて解析されることはほとんどなかった。
近年ではサイバーベースに代表される統合制御監視システムのリグが一般的となっており、リグ上で稼働するほとんどの機器がこの統合制御監視システム上で管理されているため、それら機器の制御データもマッドロギングデータと合わせて利用されるケースも増えている。

図2. マッドロギングシステム(出所:株式会社物理計測コンサルタントHP)

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【著者略歴】
草薙 和也(くさなぎかずや)
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 デジタル推進グループ デジタル技術チーム

■略歴
1992年1月16日生
2016年3月 京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻 修士課程 修了
同年4月 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 入構

■専門分野
Drilling Engineering(石油掘削)

タッチエンス、香川大学とライセンス契約 、第三の触覚センサの開発

タッチエンス(株)は、国立大学法人香川大学と高尾研究室のMEMS触覚センサおよび手触り感の評価方法に関する技術について、ライセンス契約を締結し、新たな触覚センサの開発をスタートすることを発表した。
(※画像は「ショッカクチップ6軸」)

■ライセンス契約の背景
タッチエンスは、2011年に産学官連携のスキームによって誕生し、研究開発段階である触覚センサの量産化を目指して活動している開発型ベンチャー企業であり、すでに第一の触覚センサであるセンサ自体が柔軟に変形する世界初の柔軟触覚センサ技術の製品化・量産化に成功している。

これに続き、2018年にはDEFTA Healthcare Technologies, L.P.等を引受先とした第三者割当増資による資金調達で、第二の触覚センサとなる東京大学 下山研究室のMEMS触覚センサ技術に基づく世界最小の多軸触覚センサの量産化に向けた開発を実行している。

今回、触覚センサ市場をリードしている同社の大学発技術の製品化、ビジネス化の実績・ノウハウを評価する香川大学と、香川大学 高尾研究室の持つ手触り感の計測に特化したMEMS触覚センサ技術を評価する同社の思惑が一致したことでライセンス契約が締結された。本技術は高尾研究室を中心に推進されている、科学技術振興機構(JST)のCRESTプロジェクトから創出された研究成果を用いている。

人間の指先の手触り感検知能力を上回る新しいMEMS触覚センサデバイスを小型・低コストで実現することで、ロボット・美容・ヘルスケア分野での新たな触覚センサ市場の創造を目指すとしている。

■今後の事業展開について
柔軟触覚センサ「ショッカクキューブ」、世界最小の多軸触覚センサ「ショッカクチップ」に加えて、この手触り感計測の触覚センサ「ショッカクプローブ」の共同開発パートナー企業を探索し、2年後に市場投入することを予定しているという。

これらのセンサによって、新しいユーザーインターフェース、より高機能化されたロボットハンド、小型高性能化された美容・ヘルスケアデバイス、医療器具のインテリジェント化といった製品の実現に貢献することで、2025年に100億円の売上を目指しているとのこと。

ニュースリリースサイト:https://www.atpress.ne.jp/news/198126