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OKI、光ファイバーセンサ向け「WX1034光スイッチ」を販売開始

OKIは、光ファイバーセンサWX1033シリーズに接続される16系統の光ファイバーを集約し、1台のセンサで最大80kmにわたる温度分布やひずみ分布の測定を可能にする「WX1034光スイッチ」の販売を3月2日より開始した。
これにより、社会インフラ構造物など広範囲の予防保全のために実施する、光ファイバーセンサによる測定やモニタリングの効率を大幅に向上することができるという。

橋りょうをはじめとする社会インフラ構造物や製造設備などの老朽化に伴い、施工品質の確保、予防保全や健全化監視のために広範囲のモニタリングを効率的に実施するニーズが高まっている。OKIは、電源供給の必要がなく厳しい環境下でも測定できる光ファイバーセンサを用いたインフラ構造物全体のモニタリングに取り組んでおり、長距離・広範囲にわたる温度・ひずみを分布的かつリアルタイムに測定する独自のSDH-BOTDR(注1)方式を採用して、実証実験を通じ、その有効性を検証してきた。
しかしながら、この光ファイバーセンサによるインフラ構造物の予防保全等の適用範囲を広げ、社会に実装していくためには、より広範囲でさまざまな構造物の中に複数の光ファイバーを張り巡らすことが必要である。OKIはこの認識のもと、センサの効率的な設置、運用を課題として取り組んできたとのこと。

WX1034は、16の測定チャネルを備え、かつ測定チャネル間をリアルタイムに切り替えることができる光スイッチ。光ファイバーセンサWX1033シリーズとWX1034を組み合わせることで、最大16系統の光ファイバーによる測定が可能となる。これにより1台の光ファイバーの測定距離を1系統1kmから16系統80kmまで拡張することができ、測定距離あたりの導入コストを大幅に抑えることができる。また接続された複数の光ファイバーをつなぎ替えることなく、測定チャネルを自動で切り替えながら、1系統の光ファイバーあたり約20秒間隔で連続測定することができます。これにより、エッジサーバーやクラウドシステムなどと組み合わせて、遠隔から高効率に測定・モニタリングを行うIoTシステムの構築も可能という。

なおOKIは、WX1034の販売開始に先立ち、鹿島建設(株)と共同で、光ファイバーを組み込んだ複数のグラウンドアンカーの張力をWX1034と1台のセンサでリアルタイムに把握できるシステムを開発し、その有効性を確認しているとのこと。

OKIは光ファイバーセンサWX1033シリーズとWX1034を組み合わせることで、社会インフラ全体を遠隔から常時リアルタイムに監視できる施工管理/維持管理ソリューション、さらにはAI等の活用によって直接人が判断することなく監視できるシステムとして発展させ、社会インフラの予防保全などさまざまな社会課題の解決に積極的に貢献していくとしている。

【販売価格と提供開始時期】
・標準価格
 「WX1034光スイッチ」:1,500,000円(税別)
 「光スイッチ拡張ライセンス」:1,000,000円(税別)
  ※光ファイバーセンサWX1033シリーズとの組合せで使用
・提供開始
 2021年3月2日
・販売目標
 2022年までに20億円

【主な仕様】「WX1034光スイッチ」
 光ファイバー入力コネクタ :1チャネル
 光ファイバー出力コネクタ:16チャネル
 チャネル切替時間:0.2秒以内
 挿入損失:1.0dB以下
 外形寸法:W:430mm×D:420mm×H:51.5mm
 設置形態:卓上設置、19インチラック設置

(注1):SDH-BOTDR
SDH-BOTDR(Self Delayed Heterodyne -BOTDR:自己遅延ヘテロダインBOTDR)は、OKI独自の新技術(特許取得済)により、「ブリルアン散乱光」の周波数の変化を電気信号の位相シフトに変換して捉えることで大幅に測定時間を短縮した新たな光ファイバーセンシング手法。

プレスリリースサイト(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2021/03/z20119.html

STM32マイコンで低コストのコンピュータ・ビジョン開発を可能にするエッジAI スタータ・キット

STマイクロエレクトロニクスは、汎用32bitマイクロコントローラ(マイコン)STM32*ファミリ用のソフトウェア・パッケージ「FP-AI-VISION1」およびカメラ・モジュール・キット「B-CAMS-OMV」を発表した。
これらの製品により、STM32マイコンを搭載したシステムで動作する高性能のコンピュータ・ビジョン・アプリケーションを低コストで開発することができるという。

FP-AI-VISION1には、STM32H747マイコン上で畳込みニューラル・ネットワーク(CNN)を実行するコンピュータ・ビジョン・アプリケーションのサンプル・コードが含まれており、これらはすべてのSTM32マイコンに簡単に移植することができる。また、開発者が選択したデータ・セットを使用してニューラル・ネットワークを再学習させることができるアプリケーション・サンプルも含まれているため、さまざまな用途に柔軟かつ高い自由度で利用することができる。
さらに、画像取得用のシンプルなUSB ビデオ・カメラ(ウェブカメラ・モード)をサポートするとともに、食品の分類や、低消費電力モードからシステムを再開する際のトリガとして利用可能なユーザ検知などのサンプル・コードが含まれている。STM32 wikiでは、オンライン・ツール「Teachable Machine」を活用して、STの組込みAI開発ツール「STM32Cube.AI」とFP-AI-VISION1による画像分類アプリケーションの開発方法について解説しているとのこと。

FP-AI-VISION1向けに最適化されたカメラ・モジュール・キットであるB-CAMS-OMVには、トレーニングや導入に必要なハードウェアが含まれている。同キットには、5Mピクセルのイメージ・センサ「OV5640」を搭載したSTのカラー・カメラ・モジュール「MB1379」が同梱されており、アダプタ・カードに装着して使用できる。このアダプタ・カードは、すべてのSTM32 Discoveryキット、およびZIFコネクタを備えた開発ボードとの互換性を有している。また、STの車載用グレースケール・グローバル・シャッター機能搭載カメラ「VG5661」にも使用可能。
さらに、WaveshareコネクタとOpenMVコネクタを搭載しているため、他社製の赤外線カメラや可視スペクトル・カメラを取り付けることで、さまざまなコンピュータ・ビジョン・アプリケーションに対応することができる。STM32 wikiでは、STM32Cube.AIで生成したコードをOpenMVのエコシステムに統合する方法について解説しているという。

FP-AI-VISION1には、さまざまなフレームバッファ処理機能、カメラ・ドライバ、画像取得、プリプロセッシング、およびニューラル・ネットワークの推論処理などのソフトウェアが含まれている。STの人工ニューラル・ネットワーク用Cコード生成ツール「X-CUBE-AI」で生成された浮動小数点ベースのモデルや量子化モデルなど、複数のニューラル・ネットワーク・モデルが利用可能。また、柔軟なメモリ設定が可能なため、アプリケーションに応じた微調整も可能とのこと。

FP-AI-VISION1は、STのウェブサイト( www.st.com )から無償でダウンロードできる。B-CAMS-OMVは、www.st.comおよび販売代理店から入手可能で、参考価格は約56.00ドル。

*STM32は、STMicroelectronics International NVもしくはEUおよび / またはその他の地域における関連会社の登録商標および / または未登録商標。STM32は米国特許商標庁に登録されている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001134.000001337.html

浸水を検知、LINE通知とともに地図上で浸水地点を見える化する浸水検知センサ

亀岡電子(株)は、任意の場所に設置したセンサが浸水を検知すると、LINEで通知するとともに、地図上で浸水地点を見える化する安価なセルラー通信式浸水検知センサ(KAMEKER3)を発売開始した。内水氾濫による浸水検知に特化し、LINE通知を行うセンサの発売は国内初(亀岡電子)。
年々全国各地で水害発生リスクが高まるなか、身近な場所の浸水状況をいち早く知らせることで、人的被害や家財への被害を最小限に抑えることに寄与するという。

■展開背景 平成30年の西日本豪雨、令和元年の台風19号、令和2年の7月豪雨による被害など、毎年のように日本全国で水害が多発しているなか、各自治体では危機管理型水位計や防災カメラの設置が進められている。しかしながら、これらの機器は設置工事費を含めると1基数百万円になるものが多く、主要な河川等限られた場所にのみ設置されているのが現状であるとのこと。

■セルラー通信式浸水検知センサ(KAMEKER3)の特徴
KAMEKER3は、河川の水位を測るセンサではなく、内水氾濫時に早期に浸水する道路脇や、住宅近くの水路脇に設置することで、住民の避難に直結する「より身近な浸水情報」を提供できる、他には無い特徴を持った商品。
①シンプルな機能
・浸水を検知したいポイントにセンサを固定するだけ。システムに関する知識や電気的な専門知識は不要。
②低価格
・危機管理型水位計の10分の1程度のコストで導入可。通信費+アプリ利用料も500円/月以下。
③大掛かりな工事が不要
・乾電池式、セルラー通信式なので、電源引込工事、ネットワーク配線工事が不要。
④LINEでアラート通知
・専用アプリではなく、広く普及しているLINEを活用。
⑤浸水情報を地図上で見える化
・浸水している場所が地図上で赤く表示される。
⑥市販の乾電池で2年以上稼働
・市販の単三電池3本、単四電池2本で2年以上稼働。

■実証実験について
2019年7月から京都府福知山市の協力により、セルラー通信式浸水検知センサ(KAMEKER3)の設置を開始し、現在も福知山市内18ヶ所で実証実験を継続中。福知山市以外にも、複数の自治体において実証実験を実施し、そこで得られた課題をもとにセンサを改良することで、自然環境下においても安定して浸水を検知出来るセンサを完成させた。

■今後の展望
本製品は、従来の危機管理型水位計や防災カメラ等と競合するものではなく、身近な場所の浸水をLINE通知することによって「より迅速な初動対応に繋げる」という補完的な役割での使用を想定している。予算の都合で今まで手の届かなかった場所に安価なセンサを設置することによって、少しでも早く浸水を知らせ、人的被害や家財への被害を最小限に抑える一助となることを目指す。
2021年度は近畿地方、中部地方を中心とした複数の自治体で正式導入を予定しているが、九州地方をはじめ日本全国の自治体や自治会(住民個人)への導入拡大も展望しているとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000060321.html

屋内測位技術とその利活用(1)

名古屋大学
未来社会創造機構
教授 河口 信夫

1.はじめに

スマートフォンと衛星測位システムの普及により、誰もが自分の位置情報を手軽に獲得できる時代が到来している。しかし、衛星測位システムが精度よく利用できるのは天空に障害物の無い屋外であり、屋内では高い精度が得られない場合や、利用できない場合が多い。人々は、その生活時間の多くを屋内で過ごしているにも関わらず、屋内の位置情報は十分に利用できる環境にあるとは言えない。現時点では、衛星測位と同様に単一の技術で様々な屋内環境をカバーする屋内測位技術が存在していないのが大きな理由である。
一方、実用的な屋内測位技術も多数登場しており、屋内環境に応じて適切な測位技術を用いれば、目的に応じた位置情報の利用が可能になる。
本稿では、まず、様々な屋内測位技術を紹介した後に、その様々な応用可能性について説明する。また、屋内位置情報の活用について現在研究開発が進んでいる分野についても述べる。

2.様々な屋内測位技術

現在、実用が進んでいる屋内測位技術は、外部環境に機器が必要な技術と、測位端末が自律的に測位を行う技術と大きく2つに分類できる。また、利用するセンシング技術として、電波を用いるもの、音波を用いるもの、可視光を用いるもの、レーザーを用いるもの、磁気を用いるもの、気圧を用いるもの、加速度・角速度センサを用いるもの、などがある。電波を用いる技術の特徴について表1に、その他のメディアを用いる技術について表2に示す。

表1 無線を利用する屋内測位技術
利用する無線技術 位置決定手法 精度 既存設備の利用 スマートフォン等汎用端末 応用事例
無線LAN(WiFi) RSSI,
電波マップ
(端末側)
数m~100m Android/iPhone,
SkyHook,
CISCO WCE
RSSI
(環境側)
数m~数+m
(スキャナ)
DF.sensor,
Ekahau,
WiFiパケットセンサ
TDOA 1m~3m Hitachi AirLocation
UWB TOA,
TDOA
3cm~50cm × × Ubisense,
iPhone,
AppleWatch
BLE RSSI,
電波マップ
10~30m iBeacon
AOA 1m以下 × × Quuppa,
BLE5.1
ZigBee RSSI   × × X10
LoRa RSSI   × ×  
携帯電話(LTE)基地局 基地局ID+位置情報 数十m~数百m Soracom
(API)
TBS TOA,
TDOA
数m~100m × × MBS,
Locata
RFID,NFC 近接情報 数cm × Felica
GNSS
(疑似衛星/Pseudolite)
TOA 数m~15m ×  
IMES/iPNT ID 数m~15m ×  
表2 その他のメディアを利用する屋内測位技術
利用するメディア 位置決定手法 精度 環境側機材 端末側機材 応用事例
非可聴音
(超音波)
TOA,
TDOA
数cm~30cm程度 音波ビーコン/マイク マイク/スピーカー ActiveBat
可聴音 近接情報 ID登録位置の近傍 音波ビーコン/マイク マイク/スピーカー  
画像/レーザー/距離画像センサ 画像マップ/VSLAM/点群地図マッチング 数cm 広角カメラ/LIDAR ARKit(iOS), ARCore(Android)
画像/レーザー オブジェクト認識 数cm~数m カメラ/LIDAR 人流センサ
可視光
(輝度変化)
RSSI,
AOA
数mm~数cm*2 LED照明 専用端末 LinkRay,
Picalico
磁気 磁気マップ 数m 磁気センサ Indoor Atlas
気圧 基準位置との比較 数m(高度) 気圧センサ  
加速度・角速度 PDR 数m 加速度・角速度センサ  

2.1 無線を利用する屋内測位技術

無線を利用する技術においては、環境側で既存の設備が利用できるものと、新たに専用の設備を必要とするものがある。また、測位端末においても、スマートフォンのような汎用端末が利用できるものと、専用の端末を必要とするものがある。以下では、個別の技術について説明する。

・無線LAN/WiFi
無線LANによる測位やスマートフォンの普及により、特に専用の機器を用いる必要が無いため、広く利用されている。主な測位手法としては2種類存在する。端末側において受信した無線LAN基地局の情報とデータベースを用いて位置を推定する手法と、環境側において端末から発せられたプローブパケットを複数の基地局で受信し位置を推定する手法である。
前者の手法では、無線LAN基地局が持つ固有の48ビットのID(BSSID)を利用している。このIDに基地局の位置を紐づければ、無線LAN基地局からの電波を受信しただけで、端末の位置が推定できる。電波強度(RSSI)を用いて複数の基地局からの距離を計算して位置を推定する手法や、電波強度の空間的な分布(電波マップ)を事前に測定し、電波環境のモデルを構築して位置を推定する手法などが存在する。既設の通信用の基地局を流用することが可能であるため、環境側の設備を設置する費用は考慮しなくて良く、都心部など衛星測位による位置情報取得が困難な環境において、衛星測位の補完としても用いられており、AndroidやiPhoneなどのスマートフォンOSでは、測位支援技術として広く使われている。
一方、後者の端末側のプローブパケットを利用する手法は、無線LANの電波を検知するためのスキャナの設置が環境側で必要である。複数のスキャナを設置し、無線LAN端末が発信する電波を受信し、その電波強度から測位が可能になる。さらに、端末固有のIDが利用できれば、複数場所の移動経路も獲得可能である。しかし、近年、無線LANプローブパケットのランダム化が進んでいるため、トラッキングの精度は下がりつつある。
無線LANにおいても、TDOA(Time Difference of Arrival)を用いた手法で屋内測位を行う技術や製品も一時存在していたが、基地局に専用機材を必要とするため現在は普及していない。

・UWB(Ultra Wide Band)
UWBとは、超広帯域の無線(6~9.5GHzで500MHz以上の帯域)を用いて,近接で高速通信を行う技術であるが、同時に測位も実現できる。環境側に複数の計測用のアンテナを設置し、端末とアンテナ間の距離や方向を推定する手法が主流であり、多数の実績がある製品も存在している。アンテナの設置により数cmの精度を出すことも可能であり、小型のタグを用いて工場や倉庫などでの商用利用が進められている。またAppleは2019年のiPhone11以降にU1チップを搭載しUWBを用いた端末間の相対位置を取得する機能を実現している。現時点では Apple Watch などのApple製品のみであるが、将来的には、任意のデバイス間の相対位置が取得できる可能性がある。固定のU1デバイスを用いれば屋内測位も可能になるであろう。

・BLE (Bluetooth Low Energy)
Bluetoothは、2.4GHz帯で主にワイヤレスイヤホンや、マウス、キーボードなどを接続するための無線通信プロトコルであるが、その省電力版であるBLEは、Bluetooth4.0から導入された技術で、ボタン電池で数カ月の利用を可能としている。特にAppleが2013年にiOS7以降で導入したiBeacon規格はアドバタイズに特化した小型のBLEデバイスで、低価格で導入が可能であり、広く普及した。iOS端末がiBeaconの電波を受信すると、対応するソフトウェアの起動や様々なイベント通知を行うことが可能であるため、オンラインでの活動と実店舗を結びつけるO2O(Online to Offline)を実現するデバイスとして注目された。Eddystoneは、Googleが2015年に発表したオープンなBLEビーコンの仕様であり、端末識別のためのUIDやURLに加えて、センサ情報を送信可能なTLMというフォーマットを有している。BLEにおいては、IDで位置を推定するだけでなく、複数のビーコンからの電波を用いて位置を推定する手法も提案されている。また、ビーコンを配置するだけでなく、ビーコンを位置推定したい人やモノに持たせ、複数のBluetoothのスキャナを用いて位置推定をする手法も提案されている。

・ZigBee, LoRa
ZigBee(IEEE802.15.4)やLPWAの一つであるLoRAなど、様々な電波を持ちいたプロトコルでは、WiFiやBLEと同様に、IDや電波強度によって位置推定を行う手法が提案されている。

・携帯電話基地局(LTE)
携帯電話の基地局にはCell IDという固有のIDが付与されている。Cell IDと位置情報を結び付けたデータベースを用いれば位置推定が可能となる。

・TBS(Terrestrial Beacon System)
スペクトル拡散などを用いた測位システムで、都市部などにおいてGNSSの補完として用いるために提案され、実用化が進んでいる。MBS(Metropolitan Beacon System)は米国のスタートアップ企業であるNextNav社が展開するサービスで、ISMバンド(902 – 928 MHz)を利用する方式、Locataは豪州で、2.4GHz帯のISMバンドを利用するシステムである。

・RFID, NFC(Near Field Communication)
RFIDは、商品管理などに用いるための無線タグであるが、マラソン等におけるゴールや中継地点の通過時刻記録などにもアクティブタイプやパッシブタイプのRF-IDが広く使われている。NFCは交通系のプリペイドカードやおサイフ・ケータイなどに代表される非接触の近接通信方式であり、流分野等で用いられる無線タグなど、カードや端末をかざすことで環境側に設置された端末、タグから位置情報を取得し、来店情報などの記録に使われている。

・GNSS(Pseudolite)
衛星測位(GNSS: Global Navigation Satellite System)は、屋内では利用できない事が多い。そこで、疑似衛星(pseudo-satellite)と呼ばれる測位衛星と同じ内容を持つ電波を発信する機器を用い、屋内でもGNSS用の端末を用いた測位を実現することが可能になる。しかし、GPS電波との干渉の問題などもあり広く実用はされていない。

・IMES(Indoor Messaging System)/iPNT(indoor Position Navigation Timing)
GNSSで用いているメッセージフォーマットで、電波による測位ではなく、位置情報そのものを発信し、屋内測位を行うシステムはIMESと呼ばれ、2005年にJAXAから提案され、2007年からは米国防省より日本国内限定で独自のPRNコードを割り当てられ、10年間の実験運用を開始した。しかし、2017年に10年間の実験期間が終了して利用ができなくなっている。iPNTは、その後継技術として高精度な時刻同期まで含めた技術として提案されている。

次回に続く-

参考文献

1) Faheem Zafari, et.al, “A Survey of Indoor Localization Systems and Technologies”, IEEE Communications Surveys and Tutorial, Vol.21, No. 3, pp.2568—2599(2019).

2) Hakan Koyuncu, Shuang-Hua H Yang, “A Survey of Indoor Positioning and Object Locating Systems”, International Journal of Computer Science and Network Security, Vol. 10, No. 5, pp.121-128(2010).

3) Ali Yassin, et.al. , “Recent Advances in Indoor Localization: A Survey on Theoretical Approaches and Applications, IEEE Communications Surveys and Tutorial, Vol.19, No. 2, pp.1327—1346(2017).

4) German Martin Mendoza-Silva, et.al. , “A Meta Review of Indoor Positioning Systems”, Sensors, Vol.19, 4507(2019).

5) IndoorGML : https://www.ogc.org/standards/indoorgml

6) IMDF Specification : https://register.apple.com/resources/imdf/



【著者紹介】
河口 信夫(かわぐち のぶお)
名古屋大学 未来社会創造機構 教授・博士(工学)

■略歴
岐阜県生まれ。名古屋大学工学研究科博士課程後期課程情報工学専攻満了。名古屋大学工学研究科助手、講師、助教授等を経て、2009年より名古屋大学大学院工学研究科 教授。2014年より現職。
専門は、ユビキタスコンピューティング、位置情報システム、スマートシティ基盤、移動イノベーションなど。
著書に、「情報処理大辞典」(分担、オーム社)、「つながるクルマ(モビリティイノベーションシリーズ)」(コロナ社)など。
NPO法人位置情報サービス研究機構(Lisra)に加え、自動運転ベンチャー株式会社ティアフォーを設立。

屋内Wi-Fi 測位の基本と最前線(1)

九州大学大学院
システム情報科学研究院
石田 繁巳

1.はじめに

スマートフォンを使っている人であれば、自分の今いる場所に基づいた道案内やお店の検索など、場所に依存したサービスを当たり前のように利用しているだろう。スマートフォンには衛星からの無線信号を使って測位を行うGPS (Global Positioning System)モジュールが内蔵されており、GPSで測位した結果に基づいて今いる場所を特定し、場所に依存したサービスを実現している。GPSよりも高精度な測位を実現する準天頂衛星システム「みちびき」の話題は、本稿執筆時点では記憶に新しく、屋外環境では容易に位置情報を入手できるようになったと言える。
一方で、道案内などを屋内環境において提供している例はあまり見かけない。屋内ではGPSのように広範囲で利用可能な測位システムが存在せず、各環境に測位システムを導入しなければならない。高い導入コストに見合うサービスを導入場所で実現しなければならないことから、誰もが簡単に無料で使える測位システムがほとんど導入されていないのが実情である。
屋内で利用可能な測位技術の研究開発は古くから行われており、研究開発は現在も活発に行われている。特に、屋内環境ではWi-Fi*1が広く普及していることからWi-Fi を用いて測位を行うWi-Fi 測位技術への期待は大きく、主に高精度化に向けて様々な研究開発が進められている。
本稿ではWi-Fi測位技術の基本を説明した後、近年報告された技術について概説する。
なお、紙面の都合上、近年報告された技術に関しては「このような技術がある」という紹介を目的として、基本アイデアの説明のみにとどめる。

*1 Wi-Fi Alliance の認証を受けた無線LAN 機器はWi-Fi 機器と呼ばれることから、「無線LAN」と「Wi-Fi」はしばしば混同されて使わ れている。本稿では無線LAN 機器のWi-Fi Alliance 認証の有無については考慮せず、無線LAN をWi-Fi と記述する。

2.Wi-Fi 測位のキホン

Wi-Fi測位技術はその測位方式の違いにより2種類に大別できる。1つ目は、多辺測位(multilateration)・多角測位(multiangulation)である。 Wi-Fi通信で得た距離や角度を用いて、いわゆる三辺測量・三角測量を行う。2つ目は、位置指紋測位 (fingerprinting)である。あらかじめ測位エリアの各所で何らかの物理量を測定しておき、測位対象端末で測定した物理量と近い物理量となる位置を探索することで測位を行う。
以下では各方式について説明する。

2.1 多辺・多角測位

図1にWi-Fiを用いた多辺測位、多角測位の概要を示す。いずれの方式も「位置が分かっている基準点」となるWi-Fi端末が必要であり、図はWi-Fiアクセスポイント(AP)が基準点であるものとして描いている。多辺測位では、3つの基準点と測位端末との距離r1~r3をそれぞれ測定し、基準点を中心とする半径r1~r3の円の交点を求めることで測位端末の位置を推定する。多角測位では、2つの基準点において測位端末の方位角ϕ1、ϕ2を測定し、方位線の交点を求めることで測位端末の位置を推定する。
端末間の距離や角度はWi-Fi通信によって推定する。測位端末が送信したWi-Fi信号は電波が伝搬するとともに減衰することから、APで受信したときの信号強度から減衰量を測定して距離を推定できる。また、複数のアンテナを用いてWi-Fi信号を受信すれば到来方向に応じてアンテナごとに信号受信時刻にわずかな差が生じることから、各アンテナが受信する信号間には到来方向に応じた位相差が生じる。このため、複数のアンテナを持つAPでWi-Fi信号を受信し、アンテナ間の位相差を測定することで電波の到来角を推定できる。

図1 多辺測位、多角測位の概要

現実環境では距離や角度を高精度に推定することは困難であるため、誤差を含む距離・角度を用いて多辺測位、多角測位を行う。例えば多辺測位であれば、基準点を中心として誤差を含む距離?̃1~?̃3を半径とする円を描いても1点で重ならないことが考えられる。このため、4つ以上の基準点からの距離を測定し、基準点を中心として誤差を含む距離を半径とする円が重なり合う点の中から「尤もらしい位置」を推定することで測位を行う。

2.2 位置指紋測位

図2に位置指紋測位の概要を示す。位置指紋測位においても多辺測位、多角測位におけるAPのような基準点が必要であるが、多辺・多角測位とは異なりAPの位置は分からなくても構わない。その代わりとして、測位に必要な情報を収集する「トレーニング」が必要である。トレーニングでは測位エリア内で各APの信号強度を測定し、測定した位置と対応付けて記録する。信号強度の測定は測位エリアの中のあらゆる場所で行い、測位エリア内の各所での信号強度情報を収集する。測位を行う場合には測位端末で各APの信号強度を測定し、トレーニング時に収集した信号強度情報の中から測位端末で観測した信号強度と似ている場所を探索し、その場所に測位端末があると推定する。

図2 位置指紋測位の概要

現実にはトレーニングにおいてAPの信号強度をすべての場所で測定することは困難であることから、数メートル角などに測位エリアを区切り、その中心点で信号強度を測定する。測位時には信号強度が似ている場所を複数箇所探索し、その重心などを求めることで測位を行う。

次回に続く-



【著者紹介】
石田 繁巳(いしだ しげみ)
九州大学 システム情報科学研究院 情報知能工学部門
先端情報・通信機構学講座 助教

■略歴
2006年 芝浦工業大学工学部卒業。
2008年 東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。
2012年 同大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。
2008年 (株)アクティス入社。
2013年 米国ミネソタ大学客員研究員。
2013年より九州大学システム情報科学研究院助教。
無線通信、センサネットワークなどに関する研究に従事。
ICMU Best Paper(2016年)、山下記念研究賞(2016年度)、
電子情報通信学会通信ソサイエティ活動功労賞(2019年)など受賞。

超音波屋内位置測位技術(1)

(株)イーソニック
中山 哲治

1.はじめに

位置測位において屋外では、スマートフォンやタブレットで利用できる手法としてGPSが使われている。一方ビルや地下の屋内においてはGPS信号が取得できないため専用の位置情報装置が必要となる。現在、スマートフォンやタブレットで受信可能なビーコンは、BluetoothやWi-Fiを利用したビーコン(以降、電波ビーコンと呼ぶ)が一般的である。しかしながら電波ビーコンでの位置測位ではまだ精度において問題点がある。

2.電波ビーコンの問題点および音波ビーコンの優位性

図1 電波ビーコン受信領域

電波ビーコンは装置から発信される電波の強度の範囲内で位置を特定するものである。電波の特性上、1点から発信される電波は球状に広がるため、広い範囲での受信となり位置測位としては、精度の低いものとなってしまう(図1参照)。直径1メートルぐらいを受信範囲とするために電波強度を落とすという選択肢もあるが、それでは天井への取付けた場合、受信範囲外になるので、テーブルにのせてスマートフォンの高さの位置に置くことになる。某図書館でこのテーブルの手法を試していたが、子供がイタズラで別の場所に移動してしまうということがあったようである。
他に精度を上げる手法として電波ビーコンを3か所(または4か所)に配置し3点からの電波強度で位置を決定する方法がある。しかしながら、3つの電波ビーコンに出力強度は多少のばらつきがあるため実地にて出力強度を計測し位置決めをする必要がある。また装置のいずれかが出力低下や、故障で動作しなくなってしまったという事態が発生するとまったく異なった位置情報になってしまう。その他の要因で出力強度が変わってくる可能性があるので頻繁に現地での補正が必須となる。位置測位としては位置がずれるよりも信号を受信できないほうがましである。これらを踏まえると1つの装置にて精度の高い位置情報を取得できるのがベストと考えられる。

図2 超音波ビーコン受信領域

そこで電波という手法から離れて、1装置において精度を上げるため、指向性の高い超音波に着目したビーコン(以降、超音波ビーコンと呼ぶ)の開発が開始された。超音波ビーコンはその指向性という特性により、受信範囲が大幅に狭められるため、位置測位おいて高い精度が得ることが可能になる。一般的に屋内の建物の天井は2.5メートルほどであり、そこに取り付けることを前提として解説していく。スマートフォンを持っている歩行中に対し発信される信号の受信から解析までを行う。人の歩行速度を5km/h(1.4m/s)とした場合、円形照射の端を横切ったときでも90%以上の受信ができるようにするためには、少なくとも0.5秒以内に信号を受信する必要がある。そのためには照射角度として60°は必要となる(図2参照)。

写真1 超音波ビーコンとアプリ

スマートフォンの位置で直径およそ1.5メートルの範囲での受信ということは、1メートルごとに曲がり角があっても「1メートル先を左折」という細かい案内も可能となる。そのため大型地下駐車場おいて自分の自動車の駐車位置までをナビゲーションをするようなアプリケーションの作成が可能となる。また電波ビーコンでは、信号が壁を突き抜けてしまうので、隣の部屋との区別がつかなかったが、超音波信号は壁を突き抜けないため、隣の部屋との区別ができるようになる。
また、吹き抜けのある建物であれば、電波ビーコンではできなかった上下階の区別も可能となる。それにより目的の部屋と隣、上下の部屋との区別が可能になり3次元的なナビゲーションをすることも可能となる。(写真1参照)

先に解説したように超音波ビーコンの優位点は、指向性による高精度の測位ができるということであるが、電波の影響を受けやすい計器類のある環境下での利用においても注目されている。

※図および写真は株式会社イーソニック提供

次回に続く-



【著者紹介】
中山 哲治(なかやま てつじ)
株式会社イーソニック 代表取締役

■略歴
1986年  国立静岡大学 工学部 精密機械工学科 卒業
1986年~ 日本DEC株式会社(現日本HP) 製品開発部
1992年~ 日本タンデムコンピューターズ株式会社(現日本HP) 技術本部
1999年~ 株式会社イーアンドディー 取締役
2013年~ 株式会社イーソニック 代表取締役
JIIA一般社団法人 日本国際情報通信協会会員

磁気を用いた屋内測位(1)

奈良先端科学技術大学院大学
総合情報基盤センター
准教授 新井 イスマイル

1.はじめに

屋内測位は未だに屋外で利用されるGNSSほどの共通解がなく、手法が多岐に渡って研究開発されている。その中でも無線LAN、Bluetoothといった電波を用いたものが特に盛んに研究開発され実用化されているが、ビーコンが複数観測できない場合は測位誤差が大きくなったり、機器の設置コストが無視できなかったりと課題が残る。スマートフォンにはまだ他にも加速度、地磁気、ジャイロ、気圧、照度センサ、カメラやマイク、セルラー通信、NFC等活用可能性のあるセンサ・インタフェースがたくさん搭載されているため、それらの活用が望まれる。
本稿ではその中でも特に磁気センサを取り上げる。本来、磁気センサは地磁気を感知して方位を知るためにスマートフォン等に搭載されている。地図アプリ利用時は測位軌跡やジャイロセンサの併用もあったりして磁気センサ単体の問題に気づきにくいが、磁気センサ値のみを用いたコンパスアプリを利用した場合に問題に気が付く。特に鉄筋コンクリートや鉄骨でできている建物内や地下街で移動していると真っ直ぐ歩いていても値が変化することがあるので是非試して欲しい。これは主に周辺金属の残留磁気が影響している。この変化が空間内でバラつくと、位置特定の手掛かりになるのが磁気を用いた測位の基本的なアイディアである。筆者の確認した限りでは1981年には屋内での磁気の特徴がナビゲーションに役立つかもしれないと示唆している研究者がいた。[1]
磁気測位の最大のメリットは磁気センサだけで満足な測位精度が得られた時は、インフラ構築コストが必要ないことにある。実際には磁気センサだけで満足な測位精度が得られるような例は稀で、あくまで他の手法との組み合わせが現実的だが、少なくとも磁気測位を追加するために発生するインフラ構築コストはない。
本稿では磁気測位の実際の性能や可能性について原理から最新研究トピックまで紹介し、読者の磁気応用の発想を刺激したい。以降、2章にて磁気測位の原理、3章にて磁気測位の研究動向を紹介し、4章で本稿をまとめる。

2.磁気測位の原理

屋内環境で磁気がどれだけ位置によって変化するかを確認してみよう。図 1は図 2の廊下(鉄筋コンクリート造の建物2F)で観測した磁気センサ値を端末座標系におけるXYZ軸でそれぞれプロットしたものである。廊下の横幅は2m、計測区間長は20mである。1m間隔で30秒程度停留している。停留時は同じような値を示して、次の停留地点までの移動時に大きく値が変化するため階段状の線が描かれている。スマートフォンは台車に腰の高さくらいまで段ボール箱を積んだ上に載せていて、端末座標系のY軸が北を向いていてZ軸が天井を向いている状態で、北向きにだけ移動した。方位が変わらない移動なので地磁気以外の磁気がなければ移動時にセンサ値が変動しないはずだが、実際は移動のたびに変動したので、位置によって磁気が異なることが分かる。

図1 筆者の研究室前廊下20mでの観測磁気

図2 廊下の外観

屋内空間に存在する磁気の種類は主に3種類ある。地磁気、残留磁気、電磁気である。地磁気は地球そのものが大きな磁石である性質により発生する磁場で、方位を知る手がかりとして活用されている。しかし、屋内では残留磁気と電磁気の影響があり誤差要因となる。残留磁気は磁性体に磁界を与えるとその物体の保磁力に応じて残り続ける磁気である。建物には鉄筋や鉄骨、金属フレーム等、保磁力の高い大きな鉄が無数にあるため、これらの影響で磁気センサによる方位推定がうまくいかない場合が出てくる。大きなモータや発電機に含まれる強力な永久磁石の回転等も誤差要因である。電磁気は、アンペールの法則(右手の法則)の通り、導線に大電流が流れた時や、電磁石が作用した時の短期的な磁界の変化を指している。例えば、駅では電車の発着の度に大電流が発生している箇所から数m離れても磁気変化が確認できる。図 1に示したセンサ値の変化は残留磁気によるものが主と考えられる。図 2に示す廊下の左側には両開きの鉄製のドアが2つあり、右側には両開きが1つ、片開きのドアが3つあり、また右側の壁の数カ所には鉄筋の柱が入っており、それぞれがセンサ値に影響していると考えられる。

残留磁気による磁場の局所性をうまく活用できれば磁気測位が可能となる。最も単純な手法はフィンガープリンティング(以下、FPと省略)である。あらかじめセンサデータを位置(リファレンスポイントと呼ぶ)と共に記録して磁気マップを作成しておき、測位時に得たセンサデータと比較して最も近しいセンサデータを持つリファレンスポイント、あるいは上位のリファレンスポイントの重心を測位結果とする。センサデータは図 1のように端末の座標系において3次元で取得できるが、実際には磁気マップを作成した際の姿勢と一致しなければならない。グローバル座標系(地表に平行な面をXY軸、鉛直方向をZ軸とした座標系)に統一したいところだが、測位時は端末姿勢が自由なため姿勢推定が必要になる。姿勢推定は一般的に加速度センサと磁気センサを用いて重力加速度と地磁気を検知し回転行列を導出するが、磁気センサがこれまで述べた通り地磁気以外の磁気の影響を受けるため屋内では姿勢推定が困難となる。そこで加速度センサ値のみを用いて重力ベクトルを推定してグローバル座標系における鉛直成分と水平成分の2次元ベクトルを構成すると良い。図 1で示したセンサデータを鉛直成分と水平成分で表現した例を図 3に示す。測定時は端末が台車に載せられていて常に上を向いていたため鉛直成分にZ軸の値をそのまま使って、水平成分はX軸とY軸の合成ベクトルのスカラ値を用いているが、自由姿勢の場合は前述のような重力ベクトル推定に基づく手法を用いる。

図3 磁気の鉛直成分と水平成分

FPは無線LANやBluetoothの電波観測情報を基にした屋内側位でも活用されている手法である。最も単純な方法はBSSIDやMACアドレスといった電波の発信源の数だけ受信電波強度を値とする多次元ベクトルを構成してFPするものである。電波は発信源からの距離が遠ざかるにつれ受信電波強度が低下する特性があるため、似たようなセンサ値が地理的に近いところに集まりやすく、測位誤差がそれほど大きくならないが、磁気FPでは特徴的な磁界を発生するものが特定できず、磁束密度の値だけで類似パターンを見出さなければならないため、似たフィンガープリントが空間的に広く分散する可能性がある。

次回に続く-

参考文献

1) R. Baker, “Human Navigation and the Sixth Sense,” Simon and Schuster, New York, 1981.

【著者紹介】
新井 イスマイル(あらい いすまいる)
奈良先端科学技術大学院大学 総合情報基盤センター 准教授 博士(工学)

■略歴
2008年3月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程修了
2008年4月 立命館大学 総合理工学研究機構 ポストドクトラルフェロー
2011年4月 明石工業高等専門学校 電気情報工学科 助教
2013年4月 同講師
2015年4月 同准教授
2016年4月 奈良先端科学技術大学院大学 総合情報基盤センター 准教授 現在に至る

信頼性と耐久性を備えた新しい回転位置センサで自動車の電動化を推進

ams(日本法人amsジャパン(株))は、より安全かつスマートで、より環境に優しいモビリティをサポートするために設計された、磁気式回転位置センサ、AS5116の発売を発表した。
高速モーターなど要求の厳しい自動車アプリケーションにおいて、正確な非接触型の角度測定を提供することで、自動車メーカーの電動化トレンドの加速を可能にするという。

この新製品は、低いシステムコストで優れた結果をもたらす。業界初の非接触型の作動と特有の浮遊磁場除去を実現することで、電動パワーステアリングやトランスミッションシステム内にあるアクチュエータやポンプといった機能をサポートし、自動車の新世代補助モーターに、安全で信頼性と耐久性に優れたセンシングプラットフォームを提供するとしている。

より安全かつ正確なポジションセンシング
差動センシングアーキテクチャの出力は、車両内の高電圧配線やその他のコンポーネントから誘導される浮遊磁場からの干渉を除去する。また、磁気センサの非接触型動作モードにより、埃や汚れ、グリース、水気、その他の汚染物質による劣化を防ぐ。
これらの特徴は、メーカーが安全な動作を維持しながら、競合他社のセンサシステムにおいて求められる高価で手間のかかるシールドを排除することを可能にする。AS5116は、自動車アプリケーションでの使用に対応したAEC-Q100グレード0の認定を受けており、顧客のISO 26262準拠の取り組みを支援する専用の安全マニュアルが付属で提供される。
出力は、最大30,000rpmの回転速度で360度のフル回転にわたり、わずか1度(最大)の特有の非直線性を備えている。出力ノイズは5Vの動作電圧で2.47mVrmsと低くなっている。これらの特徴によってAS5116は正確な測定出力を実現し、効率的なモーター通信の基盤を提供する。自動車メーカーがトルクを最大化し、より効率的なモーター設計を実現できるようにすることで、燃料効率を高め、排出ガス量を減らし、未来のより環境に優しい道路車両に貢献する。
この製品は、フットプリント4.9mm x 6.0mmの8ピンSOICパッケージで提供され、これまでのams位置センサよりも自動車システムボードのレイアウトへの統合がより容易になっているとのこと。

AS5116回転位置センサICは、既に量産を開始している。詳細な技術情報やサンプルを希望する場合は、
https://ams.com/AS5116 を参照。

プレスリリースサイト:https://www.dreamnews.jp/press/0000231932/

Panasonic、ミリ波帯アンテナ向け 「ハロゲンフリー超低伝送損失多層基板材料」を製品化

パナソニック(株)インダストリアルソリューションズ社は、ミリ波帯[1]アンテナに適した「ハロゲンフリー超低伝送損失[2]多層基板材料」を製品化、2021年3月より量産を開始する。

ADAS(先進運転支援システム)や自動運転の開発が進むなか、それらを支える走行環境認識技術にミリ波レーダー[3]が用いられている。また、第5世代移動通信システム(5G)の特徴である「超高速・大容量」「多数同時接続」「超低遅延」の実現に向けて、無線通信基地局ではミリ波帯の使用や、超多素子アンテナを用いたビームフォーミング技術[4]の採用が進んでいる。そのため、無線通信に用いられる高周波基板の構造は大きく変わり、ミリ波帯における低伝送損失および多層化の可能な基板材料が広く求められているという。

従来、アンテナ用基板材料として主に採用されてきたフッ素樹脂基板材料[5]は、熱可塑性樹脂であるため多層化が困難でした。今回開発した「ハロゲンフリー超低伝送損失多層基板材料(品番:R-5410)」は、熱硬化性樹脂からなるプリプレグで、アンテナ層をビルドアップ工法[6]により形成・多層化することが可能である。高周波基板の設計自由度向上に寄与し、材料・加工コストを低減した小型・高密度なアンテナ一体型モジュールの実現と、より高効率なアンテナ性能の実現に貢献するとのこと。

【特長】
1. 低伝送損失で、ミリ波帯アンテナの低損失・高効率化に貢献
 ・伝送損失 0.079 dB/mm(@79 GHz)(当社従来品※1:0.081 dB/mm)
2. アンテナ層の多層化、高周波基板の設計自由度向上に寄与
3. 基板製造時の加工コスト低減に貢献
 ※1:当社従来品(超低伝送損失多層基板材料“MEGTRON7”R-5785)

【用途】
ミリ波帯アンテナ用基板(車載ミリ波レーダーや5G無線通信基地局など)、高速伝送基板

【特長の詳細説明】
1. 低伝送損失で、ミリ波帯アンテナの低損失・高効率化に貢献
独自の樹脂設計技術により、当社従来品同等レベルの低誘電特性と、低粗化銅箔との十分な密着強度がある。そのため熱硬化性樹脂基板において業界トップレベルの低伝送損失を実現し、ミリ波帯アンテナの低損失・高効率化に貢献する。

2. アンテナ層の多層化、高周波基板の設計自由度向上に寄与
熱硬化性樹脂からなる低損失のプリプレグであるため、アンテナ層とそれ以外の層(高周波回路の信号層など)の絶縁接着・貼り合せとしての適用だけでなく、アンテナ層をビルドアップ形成・多層化することが可能。高周波基板の設計自由度向上に寄与し、小型・高密度なアンテナ一体型モジュールの実現と、より高効率なアンテナ性能の実現に貢献する。コア材である銅張積層板(品番:R-5515、既発売)もラインアップしており、設計に応じての使い分けが可能である。

3. 基板製造時の加工コスト低減に貢献
熱硬化性樹脂材料であるため汎用基板用の既存設備での加工が可能であり、特殊な薬液や工程を必要とせず、基板製造時の加工コスト低減に貢献する。

【用語説明】
[1]ミリ波帯
 30~300 GHzの周波数範囲。
[2]伝送損失
 プリント基板上の配線(伝送線路)を通る信号が材質や距離などに応じて減衰する度合い。
[3]ミリ波レーダー
 ミリ波帯電波を送信し、物体からの反射波を受信することにより、物体の位置・速度を検出するセンサ。車載ミリ波レーダーは主に76~81 GHzが割り当てられており、衝突防止システムに代表されるADAS(運転者支援システム)を構築するセンサの1つとして自動車への搭載が加速している。
[4]ビームフォーミング技術
 複数のアンテナ素子を配列し、その位相を制御するフェーズドアレイアンテナにおいて、特定の方向に指向性の高い電波を飛ばす技術。
[5]フッ素樹脂基板材料
 熱可塑性のフッ素樹脂(PTFE、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化炭素樹脂などとも呼ばれる)を絶縁体としたプリント基板材料。フッ素樹脂は一般的なプリント基板材料に用いられるエポキシ樹脂に比べてミリ波帯での比誘電率、誘電正接が優れている。
[6]ビルドアップ工法
 コアとなる基板の上に絶縁層(プリプレグ)と導体層(銅箔)を1層ずつ積み上げていき、多層の配線層を形成する工法。

プレスリリースサイト(panasonic):
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/02/jn210225-2/jn210225-2.html

エナジーゲートウェイ、蓄電池AI最適制御システムを販売開始

(株)エナジーゲートウェイとインフォメティス(株)は「蓄電池AI最適制御システム」を共同開発し、蓄電池メーカー向けに2月25日より販売を開始した。

エナジーゲートウェイとインフォメティスは、Post-FITに伴う住宅用蓄電池市場の拡大を受けて、蓄電池メーカー向けに「蓄電池AI最適制御システム」を開発した。電力センサから集積した詳細な電力データをもとに、インフォメティスが開発するAIアルゴリズムを用いて家庭の太陽光発電量と電力消費需要量を高精度に予測し、家庭で契約している売買電の料金に応じて自家消費を最大化しながら、電気料金の最適化を行う蓄電池の自動制御サービスという。

■ 世界の定置用蓄電池の出荷容量は7年間で約8倍に
 世界の定置用蓄電池の出荷容量は2026年に約12万MWhと、2019年比で約8倍と予測(*1)されている。また、日本の住宅用蓄電システムの導入ポテンシャルは2021年予測で14万台、2025年には18万台(*2)と、年々増加するとされている。世界的に進む脱炭素の流れや、日本政府の2050年カーボンニュートラルの宣言を受け、住宅用蓄電池市場は今後ますます拡大していくと考えられるとのこと。
*1 矢野経済研究所「定置用蓄電池(ESS)世界市場に関する調査を実施(2020年)」
*2 一般社団法人日本電機工業会「JEMA 蓄電システムビジョンVer.5(2020年)」

■「蓄電池AI最適制御システム」の特長
1.蓄電池のAI最適制御機能
 分電盤に設置する電力センサが電気の使用を計測し、「Metis Engine」のAIアルゴリズムが日々の電気の使い方を学習、家庭の電気の使用量を予測。気象予報と連携し太陽光による発電量を予測し、発電量が使用量に満たないと予測された場合、電気料金の安い時間に充電するよう蓄電池を制御する。

2. 蓄電池の稼働状況・家のエネルギー使用状況を「見える化」
 専用のスマートフォンアプリが太陽光発電システムによる発電量・自家消費量・売電量や、家庭における電気の使用時間・消費量・家電の使用状況、蓄電システムによる充電量・放電量などといった電気の流れをわかりやすく表示し、かしこい暮らしをサポートする。また、「家電のつけっぱなし」「電気の使い過ぎ」などを知らせる機能や、「気象警報」などの防災機能を搭載し、あんしんな暮らしをサポートする。

3. クラウド上で機能を提供し、ECHONET Lite規格に対応したゲートウェイで制御
 AI最適制御機能は、エナジーゲートウェイのIoTプラットフォーム上で提供するため、市場状況の変化や新しい料金プランなどにも柔軟に対応し、常に最新の機能・サービスにアップデートする。また、ECHONET Lite規格と連携しているため、さまざまなメーカーの蓄電池に対応することが可能。

プレスリリースサイト(energy-gateway):https://www.energy-gateway.co.jp/news/2021/02/01.html