愛知工業大学 工学部機械学科 教授 内田 敬久
1.研究室の概要
愛知工業大学工学部機械学科内田敬久研究室では、蛇型ロボットや脚型ロボットなど生物模倣型ロボットと車輪型・クロー型移動ロボットを開発している。また、応用として草刈ロボット、サービスロボットの研究も行っている。水中ロボットの研究は2014年より開始し、特にひれ推進によるロボットの開発を進めている。
2. 水中ロボット開発の背景
戦後から開発されてきた多くの社会インフラは建設から30年を超えており、老朽化が深刻になっている。社会インフラは定期的な点検が必要であり、その際は人間による目視や計器による点検が行われている。しかしながら、特に河川や海岸など水を伴う分野では巡視・点検を行っている割合が低いことが報告されている。この要因は、水中にある構造物は目視で状況を把握しにくいことや点検時に専用の機器・設備を用いる必要があり点検費用が高額であること、人による点検では陸上以上に事故の危険性が高く安全性を考慮する必要があることが挙げられる。そこで近年、ロボットが注目されており、水中構造物の調査・点検への導入が進んでいる。それに伴い、水中ロボットの市場規模は大きく拡大すると考えられる。
これまでに開発されているほとんどの水中ドローンの推進には、スクリューが用いられている。これは、スクリューの回転により推進力を得る機構であり、スクリューの向きにより前進・後退、旋回、潜水・浮上の3次元方向への移動が高速で可能である。しかしながら、スクリューで海中の生物を傷つける恐れがあるだけでなく、海藻を巻き込み故障することや浮遊物や沈殿物を巻き上げ調査や点検に支障をきたす恐れがある。沖縄において海底火山の爆発により海中に漂う軽石の影響で船舶の航行が不能になったのは記憶に新しい。
また、水中ロボットの研究において、生物模倣の研究も長年行われてきている。魚、亀、エイなどは体やひれを動作させ特徴的な遊泳をする。生物模倣型ロボットはアクチュエータや材料の弾性を利用して形状や動作を再現している。また、水中生物は、様々な環境下で生活しているため、環境適応力が高い。このため、生物模倣型ロボットは、様々な環境での利用が期待される。例えば、海藻や軽石が漂っていたとしても、流体の流れに沿ってロボットを動かすことで、巻き込みや損傷することなく推進が可能である。しかしながら、一般的にスクリューに比べて推進力は劣り、そもそも調査や点検を目的としていないため、このままでは調査・点検ロボットへの応用は困難である。
そこで図1のように調査点検ロボットを目的とした生物の特長を活かしつつ生物の形状にとらわれるのではなく、ロボットだからこそ実現できる形状と動作により新たなロボットと推進方法を生み出すことができると考えられる。スクリュー、ひれ、ハイブリッドなど様々な推進方法のロボットを使用環境によって使い分けることで水中ロボットの応用がさらに広がっていくと考えられる。
図1 水中ロボットのコンセプト
3. 開発ロボット
一般に点検・調査に求められるロボットの動作機能は、3次元方向に高速で移動できること、波やうねりなどの外乱を受けてもその場に停止し続けることである。そこで、研究室では、ひれ推進による特徴的なロボット(Albero, Cakram, Cerchio)を開発してきた。これらのロボットの大きさは、また構造物の点検などを想定し、狭い空間での移動にも対応できるように、全長・全幅・全高それぞれ1m以下である。
Albero は、図2に示すように、3自由度のひれを左右2つずつ合計4つ持ち、中央部に制御ボックスを配置しているロボットである。4つのひれを用いて、ローリング(前後)運動とフェザリング(捻り)運動を組み合わせた抗力型推進を実現している。推進原理は、水の抗力を大きくし前方から後方へ動かくことで反力を得るパワーストロークと水の抗力を小さくし次のパワーストロークの開始位置までひれを前方に戻すリカバリーストロークを繰り返すことで推進するボートを漕ぐようなパドル推進である。Alberoは、前進に対しては高い推進性能があるものの姿勢を維持したままの上下左右への移動は不得手であり、姿勢維持には工夫が必要である。このため、姿勢維持と潜水・浮上にはバラストにより浮力の調整機能を付与している。
Cakramは、図3に示すように全周に一体型のひれとひれを支える基軸となるきじょうから構成されている。Cakramは、きじょうを同じ周波数で位相差をもたせて上下に動作し進行波を発生させることで、水から進行波の進行方向とは反対向きの反力を受けこれを推進力としている。Cakramは、旋回動作を行わずに姿勢を維持したまま全方向への移動が可能である。推進性能が低いため、波などの外乱が小さく流れのない池などの利用に向いている。
Cerchioは、図4に示すように4つひれを有する円盤形ロボットである。推進力を得るために独立したひれを円周上に等間隔で配置している。2自由度のひれにより推進力の大きさと方向を独立で制御し、4つひれの合力としてロボットを推進する。このため、潜水・浮上を含めた3次元方向の推進を実現している。
図2 Albero
図3 Cakram
図4 Cerchio
これらのロボットには、図5のように三次元位置、速度、姿勢などの状態把握のためのセンサを搭載している。慣性センサIMUによる姿勢と、圧力センサによる深度計測は比較的使用環境に左右されず、安定して安価に計測が可能である。また、オプションとして、カメラやデプスカメラを用いたオプティカルフローなど画像処理による相対位置推定や機械学習による物体の点検調査を可能としてる。例えば、図6のようにコンクリートブロックの異状検査では撮影画像から機械学習によりひび割れなどの検知や生物の判別が可能である。超音波による深度や物体の計測は現在研究中であり安価で使用しやすいセンサ及びデータ信号処理の開発が待たれる。
図5 ロボットセンサ
図6 ひび割れ検知
水中ロボットの操作は、ロボットと操作者のリアルタイムで安定した通信のために、有線ケーブルを用いている。また、緊急時にロボットを回収することも可能である。さらに様々なセンサ情報を把握しかつ個々のひれなどのアクチュエータの操作は熟練のスキルが必要であるため、ユーザインターフェースと半自律制御を組み合わせた操作方法も開発している。
4. おわりに
研究室には大学院生と学部生合わせて14名が在籍し研究活動を行っている。また、愛知工業大学には、学部・学科を超えた教員・学生のロボットを通した交流施設であるロボット研究ミュージアムがある。ミュージアムでは学生は自由にロボット製作をすることができ、研究室にとらわれず、異なる知識を持つ学生と交流し、刺激を受けてよりよいロボット開発につなげている。水中ロボットの開発もその中で行われており、研究室とは別に水中ロボットの大会や展示会参加を目的とした学科や学年の垣根を超えた学生チャレンジプロジェクトのチームを結成し、沖縄海洋ロボットコンペティションや水中ロボットコンベンションin JAMSTEC、ロボカップアジアパシフィックなどで成果を発表している。プロジェクトを通して、ものづくりの知識のみならず、人間力も身につけることができエンジニアとしての基礎を学んでいる。今後も研究活動を通して人材育成に力を入れていきたい。
【著者紹介】
内田 敬久(うちだ よしひさ)
愛知工業大学 工学部機械学科 教授
ロボット研究ミュージアム 教授
Yoshihisa Uchida, Dr. Eng., Professor
Department of Mechanical Engineering, Aichi Institute of Technology
■略歴
2003年4月 愛知工業大学工学部機械工学科講師
2007年4月 愛知工業大学工学部機械学科准教授
2018年4月 愛知工業大学工学部機械学科教授(現在に至る)
2019年4月 愛知工業大学地域連携本部ロボット研究ミュージアム教授(現在に至る)
2021年4月 愛知工業大学学生支援本部キャリアセンター長(現在に至る)
2021年4月 愛知工業大学学長補佐(現在に至る)
水中ロボット、モジュールロボット、草刈ロボット、サービスロボットに関する研究に従事
九州職業能力開発大学校 生産電子情報システム技術科 職業能力開発教授 寺内 越三
1.はじめに
九州職業能力開発大学校は2005年から海中ロボットの開発に取り組んでいる。はじめはOBE(海底電位差計)の姿勢監視用海中ロボットの開発1) に取り組み、2009年からは水中ロボットコンペティションへの出場に向けた競技用AUV(自律型海中ロボット)の開発2) に、2014年からは沖縄海洋ロボットコンペティション(以下、「沖縄海洋ロボコン」という。)への出場に向けた競技用AUVの開発3) に取り組んできた。
海中ロボットの開発は大学校4年次の開発課題実習において行われ、生産機械システム技術科、生産電気システム技術科、生産電子情報システム技術科の3科から、4から7名の学生が集い、3科の教員の指導の下、1年間かけてロボットの設計・製作・評価に取り組む(図1)。
筆者の赴任後2020年からは、地元マリーナや海洋環境団体と共に海中ロボットの開発に取り組みながら、自律航行システムや超音波ピンガー検出システムなどの海中ロボット技術の評価を目的に、水中ロボット競技会や沖縄海洋ロボコンに出場してきた。
本稿では、近年開発に取り組んでいる「船底点検ロボット」や「海洋ごみ運搬ロボット」と、筆者が担う沖縄海洋ロボコンの広報活動について紹介する。
図1 実習室の様子(2022年)
2.船底点検ロボットの開発
2020年から3年間、船底点検ロボットの開発に取り組んだ。
北九州市の新門司マリーナは、ヨットやボートの保管や修理を行っている。海上に係留保管されるボートの船底や取水口に貝類などが付着すると、航行スピードの低下を招く。また航行時には船底が損傷したり、プロペラが破損したり、エンジン負荷が発生したりすることがある。船底を点検するためにはクレーンによる上架やダイバーによる潜水が必要となるが、ボートの上架やダイバーの依頼にはコストが掛かり、即座に対応することができない場合もある。容易に使用できる点検機器があれば、利用者のトラブルに即座に初期対応できる。
そこで本課題では、海洋レジャーの安全と振興、およびマリーナサービスの充実を目的に、ROV(遠隔操縦型海中ロボット)「船底点検ロボット」を開発した4) (図2)。開発したロボットは、ハーバースタッフ1名でも持ち運べるように、縦横サイズはA2サイズ、質量は10kg程度になるように設計した。また船底点検と海底落下物の調査のために3台(上方・前方・下方)のカメラと2灯の水中ライトを搭載し、ゲームコントローラからの遠隔操作により潜航し、海中に投光しながら撮影動画を手元PCに配信することができる。本課題は新門司マリーナとの共同研究として実施した。5月にハーバースタッフへのユーザーヒアリングを行った上で設計・製作に取り組み、12月に船底点検作業の実証実験を実施し、2月にスタッフと共に成果物について評価会を開催した(図3、4)。
図2 船底点検ロボット(2022年)
図3 ロボットを評価するハーバースタッフと学生たち(2021年)
図4 ロボットを評価するハーバースタッフと学生たち(2022年)
3.海洋ごみ運搬ロボットの開発
2022年から、海洋ごみ運搬ロボットの開発に取り組んでいる。
海洋ごみは、海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響など様々な問題を引き起こしている5) 。海洋ごみの約8割は陸域起源で、陸で発生したものが河川を伝わって海に流出したことが分かっており6,7) 、全国各地では海洋ごみ問題の周知啓発と、海洋ごみの流出を少しでも防ぐことを目的に、街頭清掃活動や海岸清掃活動が実施されている8) 。
筆者らは、海中ロボット技術を用いて海洋ごみ問題に取り組む中で、海洋環境団体Mr.DIVER(代表:福田佑介)に出会った。Mr.DIVERは10余名からなるボランティアダイバーチームで、海洋ごみの啓発を目的に北九州市の観光地などで水中清掃活動を行っている。水中清掃とは、ダイバーが河川や海中に潜水し、不法投棄された大型ごみや生活排出された小型ごみの収集を行う活動である(図6)。ごみを収集する際は川底まで潜水し、収穫ネットにごみを拾い集め、一定量たまったところで浮上し、川岸まで泳いで運搬する。川岸までは10mから50mを往復する必要があるためダイバーは体力を消耗し、作業効率が低下する。ダイバーが拾い集めたごみを浮上地点から川岸まで運搬するロボットがあれば、ダイバーは水中作業に専念することができ、水中清掃活動の効率化を図ることができる。
そこで本課題では海洋環境の改善と海洋ごみ問題の啓発、水中清掃活動の効率化を目的に、ダイバーを支援するUSV(無人水上艇)、無線遠隔操作型船型協働ロボット「海洋ごみ運搬ロボット」を開発した4) (図5)。
2022年10月、小倉城のほとりを流れる紫川の水中清掃活動に参加し、初めて海洋ごみを運搬することができた。この様子はNHKにより全国放送され、読売新聞の全国紙に掲載された。また2023年10月には、ダイバーの安全確保のために製作した水中ライトと水中スピーカーを装備して、人気観光地である門司港レトロの水中清掃活動に参加した。当日は90分の清掃活動において5往復することで、回収した海洋ごみを全て運搬することができた(図7)。
図5 海洋ごみ運搬ロボット(2022年)
図6 Mr.DIVERによる水中清掃活動
図7 門司港レトロにて海洋ごみを運搬する学生たち(2023年)
4.沖縄海洋ロボコンの広報活動
沖縄海洋ロボコンは2014年12月にプレ大会が開催され、2015年の第1回大会に合わせて公式Webサイト(図8)が開設された。筆者は2019年から、Webサイトの管理や協賛依頼フライヤーの作成(図9)、協賛特典の作成など広報活動を推進してきた。ここではWebサイトや協賛活動の現状と今後の課題について述べる。
沖縄海洋ロボコンのWebサイトには主に2つの役割がある。1つは大会に出場する選手への情報提供、もう1つは大会に協賛する企業への情報提供である。選手に向けては、はじめに開催日程を告知し、次に競技規約と出場申し込み画面を公開する。その後、大会当日のスケジュールと出場ロボットポスターを収録したガイドブックを公開し、開催後には期間中の写真を公開する。企業に向けては、はじめに協賛依頼フライヤーと協賛申し込み画面を公開し、次に協賛をいただいた企業のリンクバナーを掲載する。そして開催後には実施報告書を公開する。また協賛をいただいた企業への特典として、Webサイト、ガイドブック、横断幕および選手ゼッケンに企業名を掲載し、返礼品としてオリジナルTシャツを贈呈している(図10)。
2021年からは企業協賛のみで大会を運営しており、今後も大会を継続し充実させるためには、より多くの企業に協賛してもらう必要がある。そのためにも、今後はWebサイトに企業が選手やロボットを応援したくなる仕組みと、選手がロボコンで得た技術や経験を協賛企業で活かしたくなる仕組みを構築することが、大会の活性化に繋がると考える。
具体的には、大会前に各チームの研究背景や研究目的、海中ロボットの概要や選手の意気込みを公開する。また大会期間中には、チームの交流会を開催してその様子を公開したり、開催後には、優勝チームのインタビュー記事を公開したりするなど、選手たちの姿を積極的に発信することが考えられる。
そのほか、海洋産業への就職につながるような企業情報を公開したり、大会期間中に企業と選手の交流会を開催したりすることが考えられる。加えて情報発信の仕方も、関係者がWebサイトを自発的に閲覧するプル型から、大会事務局から関係者に定期的に情報を通知するプッシュ型の運営に転換することが効果的だと考える。
大会の継続と充実に向けて、今後とも広報活動の推進に努めたい。
図8 沖縄海洋ロボコン Webサイト
図9 協賛依頼フライヤー
図10 協賛企業名入りゼッケン
5.おわりに
本稿では、地域と共同で開発した海中ロボットと沖縄海洋ロボコンの広報活動について紹介した。
学生たちは海や河川に出向き、ハーバースタッフやボートオーナー、ダイバーなど異分野の技術者と交流しながら、外部からの期待を背に緊張感やモチベーションを高めて海中ロボットの開発に取り組んできた。企業との共同研究や地域貢献といった実施形態によって、学生たちの発想力や責任感が向上したと考えられる。
ロボコンの運営においては、選手たちは大会前に競合相手のチームやロボットを確認する機会がない。Webサイトにおいてチーム情報を発信したり、選手同士のWeb交流会を開催したりすることができれば、選手同士が互いの存在を意識し、大会に向けた緊張感やモチベーションを高めることができるだろう。また企業に選手を応援してもらう仕組みを構築することが、大会のさらなる活性化に繋がると期待される。
2023年12月、内閣府はAUV戦略を策定し、「海中ロボコンの開催によりAUVの開発に携わる若い研究者の育成を推進する」ことを掲げた9) 。沖縄海洋ロボコンの開催、そして継続と発展に向けて、各企業様には大会の趣旨に賛同をいただき、ご協賛をお願いしたい。
※本論文中の意見は執筆者個人のもので、沖縄海洋ロボットコンペティション実行委員会の公式見解を示すものではない。
参考文献
浅海用OBEMの開発, 九州職業能力開発大学校 平成17年度開発課題最終発表会, 2006
浅海用AUVEMMの開発, 九州職業能力開発大学校 平成21年度開発課題最終発表会, 2010
自律型海中ロボットKPC_AUV2014の開発, 九州職業能力開発大学校 平成26年度開発課題最終発表会, 2015
海中作業用ロボットの開発, 九州職業能力開発大学校 令和4年度開発課題最終発表会, 2023
環境省:令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書, 2019
公益財団法人かながわ海岸美化財団:なぎさのごみハンドブック, 2011
日本財団・日本コカ・コーラ株式会社:陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査, 2020
日本財団:海ごみゼロウィーク, https://uminohi.jp/umigomi/zeroweek/(2024.5 確認)
内閣府総合海洋政策本部:自律型無人探査機(AUV)官民プラットフォーム提言書, 2023
【著者紹介】
寺内 越三(てらうち えつぞう)
九州職業能力開発大学校 生産電子情報システム技術科 職業能力開発教授
■略歴
2002年3月 職業能力開発総合大学校 研究課程 電気・情報専攻 修士
2002年4月 熊本職業能力開発促進センター 情報・通信系
2013年4月 沖縄職業能力開発大学校 専門課程 電子情報技術科 職業能力開発准教授
2019年4月 九州職業能力開発大学校 応用課程 生産電子情報システム技術科 職業能力開発教授
2021年から沖縄海洋ロボットコンペティションに実行委員として参加
EMBERION社(フィンランド)はPbS(硫化鉛)を使用したCQD(コロイド量子ドット)デバイスを開発&カメラ化に成功。アプロリンクは日本市場に対して製品販売とサポートをする。
特長
・PbS(硫化鉛)センサ搭載 CQD(コロイド量子ドット)カメラ
・1つのセンサで可視から近赤外(400-2000nm)を捉える広波長イメージング
・120dBのハイダイナミックレンジ
・400fpsの高速フレームレート
・独自の回路設計により低ノイズを実現
仕様
解像度 :640(H) x 512(V)
フレームレート :400 fps
ピクセルサイズ :20 um
データ階調 :14 bit
ダイナミックレンジ:120 dB
レンズマウント :Cマウント
インターフェース :カメラリンク or GigE
外形寸法 :102 x 112 x 160 mm
アプリケーション例
・1920nm付近にピーク波長を持つ水分量の可視化用途(食品・農業・美容・医療・建築・工業)
・霧や煙、屋外での悪環境下での監視用途、HDR機能を活用した温度監視(サーマルイメージング)
・従来のセンサでは不可能であったVIS+SWIRを活用した医療イメージング(皮膚表面+皮下組織)
プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000131932.html
STマイクロエレクトロニクは、デュアル・オペアンプ「TSB952」を発表した。同製品は、52MHzのゲイン帯域幅を備え、チャネルあたりの消費電流は、36V動作時にわずか3.3mAである。低消費電力が求められる設計において、優れた性能を提供する。
電源電圧範囲が4.5V~36Vと広いため、柔軟な設計が可能になり、業界標準の電圧を含むさまざまな電源で動作することができる。また、広い電源電圧範囲により、過大なスパイク・ノイズや電圧低下への耐性に優れたシステム構築にも貢献する。さらに、出力がレール・ツー・レールでスイングできるため、電源のシグナル・コンディショニングなど、幅広いダイナミック・レンジが求められるアプリケーションに最適である。
TSB952の動作温度範囲は-40℃~125℃と広く、産業および車載環境で使用可能である。2024年後半には、車載用のAEC-Q100認証取得済み製品も発表される予定。産業用・車載用ともに4kVのESD耐圧(HBM)を備え、EMI対策が強化されている。
また、ウェッタブル・フランク構造の超小型DFN8パッケージ(3mm x 3mm)で提供されるため、省スペースかつ低コストの基板設計が可能になる。既存設計における性能や効率向上に貢献する、業界標準のSO8パッケージも用意されている。
DFN8およびSO8パッケージで提供される産業グレード製品は、現在量産中。車載用の認定取得済み製品は、2024年第3四半期から提供が開始される予定。1000個購入時の単価は0.96ドルで、STのeStoreから無償サンプルを入手可能。TSB952は、STの10年間長期供給保証プログラムの対象製品である。
プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001396.000001337.html
(株)ミライト・ワンは、令和5年度より参画している愛媛県のデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」に、6月6日、本年度も採択されることが決定した。
愛媛県宇和島市では、海面養殖業者の後継者不足や従事人口の減少が課題となっており、その解決策の一つとして、スマート給餌機※1の導入が検討されていた。しかし、従来の通信方法であるLTE方式であったことから、通信コストが高額となり、海上での通信環境に優劣があることが導入のネックとなっていた。
ミライト・ワンは、愛媛県が令和4年度から実施しているデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」に、令和5年度から参画し、海上のWi-Fiエリア化を進めてきた。同社は、令和5年度の時点で海面養殖場をWi-Fiエリア化し、従来の給餌機一基に対して1LTE回線にて運用していた通信環境を、複数の給餌機を1つのWi-Fi基地局(画像)で稼働できる環境を整え、通信コストを低減させる効果があることを確認した。なお、海上Wi-Fi基地局における電源供給については、太陽光パネルを採用している。
これらの結果を踏まえ、本年度においては、海上でのWi-Fiエリア拡大を目指し、新たにHOP技術※2を用いて、より遠方の海上に設置したスマート給餌機やスマートデバイスとの安定した通信を確保できるか、また通信コストの低減について、検証していく。前年度に引き続き、海上のWi-Fiエリア化を進めることで、通信コストの低減や通信品質を確保し、愛媛県宇和島市における海面養殖産業のDXを推進するとしている。
※1:スマート給餌機とは、センサによって魚の状態を把握し、その状態に応じた給餌を行う。海から離れた遠隔地からでも無線通信を利用してスマートフォンやパソコンによる給餌の調整が可能である。魚の食欲を判定するAIを搭載した機器もある。
※2:HOP技術とは、複数の無線通信基地局がそれぞれ隣接する他の無線通信基地局を経由してデータを伝送することで広範囲で無線通信を利用できる技術である。
プレスリリースサイト:https://www.mirait-one.com/info/001179.html
住友ゴム工業(株)と九州大学は、6月1日付けで「高分子バイオマテリアル研究に関する寄附研究部門※1」を開設した。これにより再生医療などの医療技術の発展に向けて産学提携でさらに研究開発を加速させていくという。
住友ゴム工業(株)と九州大学は、これまでに機能合成高分子(高分子バイオマテリアル)技術の共同研究を進めてきた。
今回の研究部門の設置の主な目的は、特定の細胞の接着性を制御するためのより高性能な特殊高分子の設計・合成に加え細胞・タンパク質・高分子※2間の相互作用を解明するための最先端のナノバイオ面解析(ナノサイズのセンサにより細胞が接着した表面の分子相互作用を解析すること)により、医療や生体解析などの分野で用いられる高分子を用いた人工組織や医療材料などの高分子バイオマテリアル学を創成するための研究を進めることである。
この研究により、有機・高分子合成※3、バイオ界面分析※4、細胞工学※5の3つの分野を統合した研究開発が可能となる。再生治療などの医療技術への応用展開に関する研究を推進することで世界的に進行する高齢化社会※6に向けたさらなる医療技術の発展に貢献するとしている。
【研究部門の概要】
・名 称 :高分子バイオマテリアル研究部門
・設置部局名 :九州大学先導物質化学研究所
・時期および期間 :2024年6月1日~2028年3月31日
・寄附研究部門教員 :講師 小林 美加
テクニカルスタッフ 張 怡
・部局教員 :教授 田中 賢
:准教授 穴田 貴久
※1 大学や研究機関などで運営される、企業や個人からの寄附金を基に研究を行う部門
※2 同じ種類の小さい分子(モノマー)が互いに多数結合し、それに相当する構造単位のくり返しによって構成された分子、またはそれから成る物質
※3 独立した分子である単量体を反応させ、分子量の大きな高分子を合成する化学反応
※4 バイオマテリアルや生体分子などが相互作用する界面における化学反応の解析
※5 細胞を対象とした工学的技術、分子生物学、生化学、材料工学の知見を融合し、生体内で起こる現象を再現・解析する技術
※6 出典:高齢化の国際的動向 – 内閣府
プレスリリースサイト:https://www.srigroup.co.jp/newsrelease/2024/sri/2024_050.html