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NRIデジタル、SaaSインテグレーションサービス「OMO OnBoard」の提供開始

NRIデジタル(株)は、企業が顧客接点で進めるOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)の設計と実行を包括的に支援するサービス「OMO OnBoard」(オーエムオー・オンボード、以下「本サービス」)の提供を9月7日開始した。

本サービスは、Webサイトやスマホアプリ等、顧客との「オンライン接点」で取得した情報と、リアル店舗や展示会等に設置したAIカメラ、3D距離センサー、QRチェックインなどの「オフライン接点」で取得した情報を統合し、顧客の行動に関する情報を可視化する。
さらに、オンライン・オフラインの行動計測に連動したリアルタイムのアクション(メールやLINEの配信、デジタルサイネージ、接客等)を企業が行うことを支援する(画像参照)。なお、本サービスは、個人情報の保護およびセキュリティに十分に配慮をした上で展開をしていくという。

OMOサービスの設計から実行までをスピーディーに実現
本サービスは、NRIデジタルがこれまでにさまざまな企業において、OMOの推進を支援する中で得た知見・ノウハウを生かして開発したもの。
オフライン接点における行動計測には、3D LiDAR (TOF ※1)センサ(日立エルジーデータストレージ社の3D距離センサ)やAWL Pad(AWL社のAI顔認証システム)を活用している。QRコードによるチェックイン(入店・入場確認)と混雑可視化システムはNRIデジタルで開発した。オンラインおよびオフラインの行動をリアルタイムに統合するにあたっては、Google CloudTM ※2(Google 社のエンタープライズ向けクラウド プラットフォーム サービス)を、行動計測に連動したアクションの実行はKARTE(プレイド社のCXプラットフォーム)を活用している。
本サービスを利用することにより、企業は、顧客接点におけるオンラインとオフラインの情報を融合させた、質の高い顧客体験を提供する仕組みの設計から実行までを、1~3カ月で実現できるとのこと。

SaaSインテグレーションサービスを今後も拡張
本サービスは、NRIデジタルが企業に対し、先進的なSaaSを適切な組み合わせで短期間に導入できるように開発・提供してきたSaaSインテグレーションサービス「D2C OnBoard」(D2Cビジネス立ち上げ・改善支援サービス)、「C4M OnBoard with KARTE」(顧客データプラットフォーム構築・運用立ち上げ支援サービス)に次ぐ、新サービス。NRIデジタルでは、今後も、企業のDX推進を支援するサービスメニューを拡張していくとしている。

※1 TOFは、Time Of Flight の略称で、光の飛行時間を測ることで三次元的な情報を計測する技術。
※2 Google Cloud は Google LLC の商標。

ニュースリリースサイト(NRI-digital):https://www.nri-digital.jp/news/20210907-5986/

産業機器とホーム・オートメーションの高速化、柔軟性向上、高集積化を実現するシングルチップGaNゲート・ドライバ

STマイクロエレクトロニクスは、エンハンスメント型GaN(窒化ガリウム)FETの高周波スイッチングを実現するハーフブリッジ・ゲート・ドライバ「STDRIVEG600」を発表した。同製品は、高電流出力、およびハイサイド / ローサイド出力で厳密にマッチングされた45nsの伝播遅延を特徴とする。

STDRIVEG600は、GaNパワー・デバイスに最大6Vのゲート・ソース間電圧(VGS)を柔軟に印加することができ、低いオン抵抗を実現する。また、20VまでのNチャネル・シリコンMOSFETの駆動にも最適。ブートストラップ回路が集積されているため、部品数を最小限に抑えて基板レイアウトの簡略化に貢献する。ブートストラップ回路には、同期整流MOSFETが使用されており、ブートストラップ電圧をロジック供給電源(VCC)に到達させることで、低ドロップアウト(LDO)レギュレータなしで1つの電源から駆動させることができる。

±200V/nsのdV/dt耐性を備えたSTDRIVEG600は、厳しい電気的環境においても信頼性の高いゲート制御を実現する。ロジック入力は、最小3.3VのCMOS / TTLロジックと互換性があり、ホスト・マイクロコントローラやDSPと簡単に接続可能。ハイサイド回路は最大600Vの耐圧を備え、最大500Vの高電圧アプリケーションで使用することができる。

出力は5.5A / 6Aのシンク / ソースに対応し、ターンオン端子とターンオフ端子が分かれているため、設計時に最適なゲート制御方法を選択することができる。また、ハイサイド / ローサイド回路はいずれも電源ソースへのケルビン接続をサポートしており、より高度な制御が可能。ローサイド・ドライバ専用のグランド接続および電源電圧接続により、ケルビン接続を使用した安定性の高いスイッチングを実現し、追加の絶縁や入力フィルタなしで、シャント抵抗を使用して電流を検出することができる。

また、電源スイッチが低効率または危険な状態で動作することを防止する、ローサイド / ハイサイド双方の減電圧ロックアウト(UVLO)機能、インターロックによる貫通電流保護、過熱保護、およびシャットダウン端子といった保護機能も搭載されている。

STDRIVEG600は、生活家電、ファクトリ・オートメーション、産業用ドライブ向けの高電圧PFC(力率改善回路)、DC-DC / DC-ACコンバータ、スイッチング電源、UPS(無停電電源)、太陽光発電システム、モータ・ドライバなど、幅広いアプリケーションに適している。

また、すぐに開発を開始することができる2種類の開発ボード「EVSTDRIVEG600DG」および「EVSTDRIVEG600DM」も提供されている。EVSTDRIVEG600DGは、ケルビン・ソース付きのPowerFLATパッケージ(5 x 6mm)で提供される、150mΩ 650V GaN HEMTを搭載している。 EVSTDRIVEG600DMは、ケルビン・ソース付きのPowerFLATパッケージ(8 x 8mm)またはDPAKパッケージで提供される、ファストリカバリ・ダイオードを内蔵したMDmeshシリーズ 115mΩ 600Vシリコン・パワーMOSFET「STL33N60DM2」を搭載している。

STDRIVEG600は現在量産中で、16ピンのSO16パッケージで提供される。単価は1000個購入時に約1.07ドル。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001180.000001337.html

インターディメンションズ、宮城県丸森町・東北大学と早期災害予測の実証実験開始

(株)インターディメンションズは、東北大学災害科学国際研究所と共同で、宮城県伊具郡丸森町の協力のもと、町内8箇所に「雨量モニタリング※1」を設置し、豪雨による河川氾濫や土砂災害の早期予測の実証実験(以下、実証実験)を、2021年9月2日より開始した。

インターディメンションズと東北大学災害科学国際研究所の森口周二准教授が共同開発した「雨量モニタリング」は、低コストに雨量、土壌湿度、土中水分量、温度データ等をリアルタイムに監視できる機器で、今回の実証実験によって蓄積される観測データは、森口准教授によって分析され,土砂災害予測研究の高精度化につながることが期待される。
また、本事業は、産学官連携による新しい防災の枠組を構築する取り組みであるという。

取組みの背景
宮城県丸森町は2019年10月の令和元年東日本台風による豪雨で、阿武隈川が氾濫し、町の中心部まで大規模な洪水被害に遭った。この災害は短時間で狭い範囲に多量の雨をもたらす線状降水帯の発生が要因の1つとされている。このような局所的な集中豪雨による土砂災害を精度よく予測するためには、より高解像な雨量分布が必要となる。
今後の豪雨災害で人命を守るため、丸森町を研究対象地域としている森口准教授と、丸森町の防災体制の改善について検討した検証委員会の委員長を務めた、東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授が今回の実証実験のフレームワークを検討し、これまでの施工実績からインターディメンションズの「雨量モニタリング」が採択され、今回の実証実験が実現した。インターディメンションズは2020年7月に宮城県東松島市役所と同市内の避難所に指定される大塩小学校、宮野森小学校の 3 箇所設置に続く取り組みとなるとのこと。

※1雨量モニタリングについて
「雨量モニタリング」は、雨量センサに加え、土壌湿度センサと温度センサにより、局地的な雨量および土中水分量、温度を同時に計測できることが特徴です。各センサで計測したデータを総合的に分析し、土砂災害や河川氾濫等の予見に資する情報を提供する。
従来の広域を対象とした気象予測や土砂災害危険分布などに加えて、より詳細な雨のデータをピンポイントで把握し、雨量データに基づく判断基準を提供できるようにすることが目的。

ニュースリリースサイト(Interdimensions):https://interdim.co.jp/product/791/

ローカル5Gを活用したLNGプラントにおけるスマート保安の実現に向けた実証実験

広島ガス(株)は、このたび、総務省の令和3年度「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に採択され、このまちネットワーク(株)、富士通(株)および知能技術(株)とともに、LNGプラントにおける設備点検作業にローカル5Gなどを活用し、保安業務の高度化を実現する共同実証実験を2021年12月より広島ガス廿日市工場で行い、その有用性を検証する。

本実証実験では、4Kカメラおよび赤外線カメラ、近赤外線式メタン検知器より取得した動画像やデータをAI機能付きのエッジコンピューティングサーバーで分析・処理する。これらの機能を搭載した走行ロボットによる無人監視により、無色無臭である天然ガスなどのガス漏えいを検知する仕組みを構築し、分析・処理の結果から得た異常検知情報をローカル5Gで中央制御室へ高速に伝送するとともに可視化し早期に異常を把握しやすくすることで、事故防止や保安業務のさらなる品質向上を目指すという。

【 背景 】
 日本のガス事業は、これまで1世紀以上に渡り、国民生活と産業活動に不可欠なエネルギーを供給する担い手として重要な役割を果たしてきた。特にガス事業の根幹となる保安の確保については、ガスの製造、供給、顧客の消費、全ての段階において、万全を期す必要がある。
 広島ガスのメイン製造工場であり、宮島の対岸にある廿日市工場においては、現状でも保安レベルは高水準にあり、これは毎日の巡回とガス漏えい検査の徹底という作業員のたゆまぬ努力で維持されている。本実証実験を通して、ローカル5Gや、高性能カメラ、AI、ロボットなどの先進テクノロジーを活用して、さらなる保安業務の品質向上、巡回業務の効率化および合理化を目指す。

【 実証概要 】
1.実証場所
広島ガス 廿日市工場内LNGプラント

2.実施期間
2021年12月1日から2022年3月31日まで

3.実証実験内容
(1)ローカル5G活用モデルの創出・実装に関する調査検討(課題実証)
● 4Kカメラ、赤外線カメラ、近赤外線式メタン検知器、AI機能付きのエッジコンピューティングサーバーを搭載した走行ロボットによるLNGプラント設備の無人巡回監視およびローカル5Gでの中央制御室への高速伝送による早期異常検知
● メンテナンスを行う作業現場の動画共有にローカル5Gを活用し、中央制御室からリアルタイムで遠隔支援
● RAW画像データを入力データとしたAI学習により、設備老朽化の兆候などに関する発見精度を向上

(2)ローカル5Gの電波伝搬特性などに関する技術的検討(技術実証)
大型の金属設備やパイプラインにおけるローカル5G電波の反射・遮蔽による電波伝搬影響を実測
● 電波伝搬測定と性能評価(4.8~4.9GHz帯、屋外)
● 現行の電波法関係審査基準で定めるエリア算出法に規定されている算出式パラメーターを精緻化することで、ガス・電力および、プラント設備を有する化学工場など類似する業界への展開におけるエリア設計の効率化に貢献

4. 各社の役割
・広島ガス : 全体統括および課題実証の統括、実証実験のフィールド提供
・このまちネットワーク : 実運用および普及展開方策の検討
・富士通 : ローカル5G実証環境の構築および技術実証実験の統括
・知能技術 : 走行ロボットおよび各種カメラ、映像分析AI技術の提供

プレスリリースサイト(hiroshima-gas):
https://www.hiroshima-gas.co.jp/com/w_new/release/2021/hatsukaichi0831.htm

凸版印刷とLiberaware、屋内でのドローン活用型ソリューション開発

凸版印刷(株)は、ドローン活用した屋内点検サービスを展開する(株)Liberawareと2021年8月に資本業務提携契約を締結した。

▮提携の背景
 近年、高まる各業界の省人化・省力化需要により、点検分野をはじめ、物流分野や農業分野など、様々な分野でドローンの活用に注目が高まっている。また、次世代のインフラとして大きな可能性を有する市場のため、ドローンの技術開発・社会実装はハード・ソフト両面の全世界で注目されている。
 2016年に設立したLiberawareは屋内点検分野に特化したソリューションを開発しており、屋外に比べ、空間や通信等で実装が難しいとされる屋内ドローン分野において、デバイス開発およびサービス提供を行っている。
 また、凸版印刷は以前より、インフラ点検やVRコンテンツ制作など、ドローンを活用したビジネスを展開しており、さらに取得したデータの利活用に関するノウハウも蓄積されている。
 国内産業においては、部材・サービスを含め日本製のドローンサービスへの期待が高まる中、屋内点検分野でノウハウを持つLiberawareとの提携により、凸版印刷が持つ技術のドローン分野でのさらなる研究・開発を加速させるとともに、2023年度までに両社で事業を立ち上げることを目指すという。

▮提携内容について
・Liberawareの屋内型ドローンを利用した、共同研究および共同開発
 Liberawareが提供するドローン「IBIS」(画像)は、屋外飛行用ドローンに比べ開発が難しい屋内飛行用ドローンで、狭小空間で飛行可能な小型かつ軽量な機体と制御ソフトが特徴。
 その優位性を活かし、凸版印刷がこれまで実証実験を行ってきた、屋内空間データのアーカイブやリッチ化などの設備保守・データ利活用分野を中心に共同研究・開発を行い、従来のサービスにドローンの実装を行う。また、将来的にはLiberawareとのドローンを活用した共同サービス展開を目指す。

・凸版印刷のデータ管理ノウハウを、Liberawareのサービスと連携
 これまでBPO事業・セキュリティ事業等で培ってきた、凸版印刷が持つ高セキュリティ環境下でのデータ管理ノウハウをLiberawareのサービスと連携し、屋内点検サービスでのオペレーション構築を行う。

▮今後の目標
 凸版印刷はLiberawareと双方の技術を掛け合わせた検証や共同研究・開発等により、2023年度までにドローン分野における事業創出を目指し、社会のさらなるDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するとしている。

ニュースリリースサイト(TOPPAN): https://www.toppan.co.jp/news/2021/09/newsrelease210901_1.html

JTOWERほか、西新宿エリアにおけるスマートポールの面的設置に関する事業

(株)JTOWER、東京電力パワーグリッド(株)、東日本電信電話(株)(以下、NTT東日本)は、東京都が実施する「令和3年度西新宿エリアにおけるスマートポールの面的設置、運用及び検証事業」(以下 本事業)にて共同提案を実施したところ本提案が採択され、9月1日、JTOWERが代表事業者となり、東京都と協定を締結した。

東京都は、世界最高のモバイルインターネット網の構築に向け、2019年8月に「TOKYO Data Highway 基本戦略(*1)」を発表し、西新宿エリアを5Gの重点エリアの一つに位置付けている。また、同年12 月には「未来の東京」戦略ビジョン(*2)を発表し、西新宿エリアを「スマート東京」先行実施エリアと位置付け、5Gと先端技術を活用した分野横断的なサービスの都市実装に向けた取り組みを推進している。
JTOWERではこの取り組みの一環として、2020年、都庁前に5Gアンテナ基地局やWi-Fi等の機能を搭載したスマートポール2基の建柱を先行して実施している。また、東京電力パワーグリッドは、同エリアにおいて配電地上機器1基の上部スペースに5Gアンテナ基地局とデジタルサイネージを設置する取り組みを実施しており、NTT東日本は各スマートポールの光回線整備や一部スマートポールのWi-Fi環境整備を実施している。

本事業では、西新宿エリアにおける5G通信網のカバーエリア促進やスマート東京の実現に向け、新型スマートポール20基を設置し、各種実証事業等の取り組みを行うとともに、スマートポールの他地域への展開を見据えたビジネスモデルを構築することを目的としている。
JTOWER、東京電力パワーグリッド、NTT東日本の3社は本事業にて、インフラシェアリングを活用したスマートポール、光回線・電源設備等のインフラ整備、通信環境を活用した付加価値の高いスマートサービスの提供という各社の実績・強みを融合し、迅速かつ効率的に5G基盤整備を行うとともに、先端技術を活用したスマートシティサービスを展開するとのこと。

なお、本事業にあたり、ポール型とサイネージ型(画像:イメージ)の2種類の新型スマートポールを開発する。「つなげる、つたえる、みえる」をコンセプトに、5Gアンテナ基地局、高速Wi-Fiアクセスポイント、給電、非常用バッテリーといった「つなげる」機能に加え、デジタルサイネージといった「つたえる」機能、AIカメラ、環境センサといった「みえる」機能を搭載予定。日常のいつでも誰でもインターネットにつながる環境、情報発信のツールとしての役割に加え、非常時の通信・電源機能、避難情報の発信等、防災への活用も期待されているという。

JTOWER、東京電力パワーグリッド、NTT東日本は、本事業を通じ、東京都がめざす「スマート東京」の実現に貢献するとともに、本事業を機に、今後も各社の連携を強化し、地域のデジタル化推進に向けた支援を幅広く展開していくことで、日本の「Society 5.0」の進展をめざしていくとしている。

(*1)「TOKYO Data Highway 基本戦略」(令和元年8月策定)
世界最速のモバイルインターネット網の建設に着手し5Gネットワークの早期構築を目的とした東京都の基本戦略
https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/tokyodatahighway/pdf/tdh_ver01.pdf

(*2)「未来の東京」戦略ビジョン(令和元年12月策定)
東京都において、東京の未来を切り拓く長期的な羅針盤となる長期戦略の検討を進めている戦略ビジョン
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/author53762/pdf/vision.pdf 

プレスリリースサイト(JTOWER):https://www.jtower.co.jp/2021/13602/

ボールウェーブ、JAXAとの共同研究で超小型高性能ガスクロマトグラフを開発

 ボールウェーブ(株)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA) 宇宙探査イノベーションハブ(以下、探査ハブ)が実施する「太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ※1」において、「多種類の揮発性物質に対する高感度・高精度な可搬型ガスクロマトグラフ※2 の開発」を研究テーマとして、各種ガスや揮発性有機化合物の検出に利用可能な可搬型の高感度・高精度揮発性物質センサの実現と、その宇宙探査における利用及び社会実装を目指す JAXA との共同研究(以下、本研究)に取り組んできた。

 この度、その研究成果として可搬型ガスクロマトグラフのプロトタイプを開発した。JAXA 及びボールウェーブは、この成果を 2021 年 9 月 11 日の応用物理学会秋季学術講演会で発表するとのこと。

 本研究では、当社の革新的な高感度センサ「ボール SAW センサ※3」と「メタル MEMS カラム※4」を活用して、大きさ 100×100×100mm、重さ約 1kg の宇宙探査用途ガスクロマトグラフ(左)を開発した。
 さらにこの成果をもとに、手のひらサイズ(A5 判)の地上用途ガスクロマトグラ フ(右)を開発し、プロトタイプの提供を開始した。

 宇宙探査用途ガスクロマトグラフは、有人宇宙船に搭載し室内環境の常時モニタリングに使用したり、月・火星・小惑星探査においてローバー等に搭載し表土を採取・加熱し発生するガスや大気のその場での定量測定に使用する。本研究の成果は、宇宙資源の利用や生命科学の大幅な進展に貢献することが期待されるという。
 地上用途ガスクロマトグラフは、エネルギー、工業、農林水産、ヘルスケアなど様々な分野における本技術の以下のような社会実装により、安全・安心・クリーンで持続可能な社会の実現が期待される。地上用途ガスクロマトグラフについては、JAXA より「JAXA COSMODE」の使用許諾を得ている。
           *     *     *     *     *
●エネルギー/工業分野・・・天然ガス熱量評価のための成分分析、リチウム電池製造・使用中にバインダ・電解液から放出されるガスの成分分析、VOC 分析、異臭検査など
●農林水産分野・・・鮮魚・野菜果物等の生鮮食品や、食用油などの劣化の早期検出によるフードロスの低減、酒・醤油等の香気分析による醸造プロセスモニタリングなど
●ヘルスケア分野・・・居住空間のシックハウスガスや土壌中の汚染物質の検出、各種生体ガス(呼気、体臭、腸内ガス)の分析による病気発見など

※1. 国立研究開発法人科学技術振興機構「イノベーションハブ構築支援事業」に採択、支援を受けており(事業期間:2015年6月1日~2020年3月31日)、本研究はこの事業に基づく共同研究として実施する。
※2. 中空の管をリールに巻いたカラムと呼ばれる流路を混合ガスが通過する際に時間的に分離される現象を利用して、多種類のガスの種類と濃度を測定する分析装置をガスクロマトグラフと呼ぶ。一般的には卓上に設置する大型装置で、可搬型も開発されているが感度や精度の点で大型装置を下回る。
※3.球の表面を伝わる特殊なSAW(Surface Acoustic Wave、弾性表面波。固体表面に集中して伝播する振動のこと)。東北大学の山中名誉教授らによって発見された。
※4.MEMS(micro elecromechanical system)と呼ばれる微細加工技術を用いて作製される平板状の小型カラムの素材を、脆くて割れやすいシリコンから強靭なメタルに変えて東北大学で開発された耐久性の高い微細加工カラム

ニュースリリースサイト(ballwave):http://ballwave.jp/images/20210831.pdf

河川流量のモニタリング(1)

(国研)土木研究所
水工研究グループ
山本 晶

1. はじめに

 我が国は山地が国土の多くを占め、沖積平野に人口の多くが集中し、毎年台風や梅雨による水害が頻発している。近年でも豪雨による河川の氾濫等により毎年多くの被害者が発生している。また、日本では河川の延長が短く、また降雨の多い時期と少ない時期がはっきり分かれていることから水資源の確保が容易でなく、これまで渇水の被害も何度となく受けてきた。
 このような自然状況の中、我が国は古くから様々な治水対策、利水対策を行ってきている。これら対策の推進にあたっては、過去の被害や河川の状況等を踏まえ適切に計画を策定し推進していく必要があるが、そのためには長期間にわたる定常的かつ継続した水文観測データの蓄積とその解析の重要性は高い。
 ここでは、水文観測のうち流量の観測、特に洪水時における流量観測(高水流量観測という)について現状と近年の取り組みを紹介する。

2. これまでの流量観測

 流量とは、1秒間に河川の断面を通過する水の量のことであり、流速と断面積の積で計算される。河川の断面積は水深を川幅で積分したものであり、水深は水位と河床高の差分であるから、基本的に流量観測は河川の水位と流速を計測することにより行われる。
 水文観測のうち、雨量や水位についてはすでにその計測が自動化され、そのデータは瞬時に河川管理者等へ転送され、また川の防災情報等により住民に提供されている。一方、これまで、流量観測は平常時の流量観測には回転式流速計等の可搬式流速計、洪水時の高水流量観測は浮子(ふし)と呼ばれる細長い「浮き」を橋梁等から投下しその流下速度を計測することにより行われてきた。
 しかしながら、浮子測法による高水流観では、観測員の安全確保等のためやむを得ず観測を中断せざるを得ない場合が発生するなど、安全・確実に観測を実施するための体制構築が急務の課題であった。また、観測には最低5名の人員を要し、洪水時には複数の観測所において同時に測定を行わなければならず、洪水の期間によっては1カ所で複数班を用意し交代制で観測を行わなければならないなど、測定期間における人員の確保も近年の技術者不足の下大きな懸案となっている。

3. 非接触型流速計

3.1 非接触型流速計の特長

 このような状況の中、現在では各機関により機械での計測法の開発も進められてきている。
 新たな計測方法は、電波や超音波を利用したドップラー式と、ビデオ画像の解析による画像式の2つに大別される。これらの計測機器は水中でなく河川の上部から計測することから非接触型流速計と呼ばれ、浮子等によるこれまでの観測と比較して以下のようなメリットがある。

  • ◯計測に要する時間が短く、安定的、連続的な計測が可能

     浮子による観測の場合、1回の観測に数十分の時間を要するため、特に水位の上昇、低下の早い中小河川などではピーク時の流量をとらえられない場合がある。非接触型流速計では計測時間が数十秒程度であることから連続的、安定的な流速の計測が可能となる。

  • ◯橋梁などの浮子投下施設を必要としない

     浮子で観測を行う場合、浮子を投下するために橋梁等の河川を横断する工作物が必要となる。画像解析による計測では、基本的に河川の流下方向に垂直となるよう河岸や堤防上にカメラを設置するため、横断構造物を必要としない。このため観測地点選択の際の自由度が大きい。

  • ◯大きな延長を必要としない

     浮子による観測の場合、計測区間は最大流速×10~15秒程度の距離(概ね50m以上が目安)とされているが、ドップラー効果を用いた計測では点での流速が算出される。このため、観測地点の自由度が高いほか、複数の機器を用いて面的な流速分布を把握することも可能となる。

3.2 非接触型流速計の活用例

 土木研究所(土研)は、メーカーや航測会社等との共同開発により、非接触型の電波式流速計を開発した(写真-1)。電波式流速計は、ドップラー効果を利用して河川の表面流速を計測する流速計である。その概要を図-1示す。流速計から発射された電波や超音波は河川表面で反射されるが、このとき表面流速の影響を受けドップラー効果により周波数が変化する。この周波数の変化および流速計の発射する送受信波と水面の角度より表面流速が算出される。なお、写真の流速計は受信した電波の位相差により水位も計測可能な仕様となっている。

写真-1 電波式流速計
写真-1 電波式流速計
図-1 電波式流速計の概要
図-1 電波式流速計の概要
写真-2 電波式流速計での観測風景
写真-2 電波式流速計での観測風景

現在、電波式流速計は複数のメーカーにより製品化されている。写真-2は携帯型の電波式流速計を用いて橋梁上から河川の流速を計測している様子である。
 電波式、超音波式の非接触型流速計はほぼ水平に流れる河川の流速を上部から斜めに電波等を照射して計測するため、その照射角度が計測性能に影響を与える。水面に対し垂直に近くなれば誤差が大きくなり、平行に近くなれば照射した電波等が十分機器方向に乱反射せず、受信強度が低くなる。実際の測定にあたっては水面に45°程度の角度で照射することが推奨されている。
 流速水位計と他の手法による流速を比較した結果を紹介する。調査は、Acoustic Doppler Current Profiler(ADCP)を搭載した橋上操作艇を有人船でで曳航することで複数の観測地点に移動して流量及び水位を計測し、それぞれの観測地点に照射した電波式水位流速計での計測結果と比較した。
 ADCPは、主に海洋の計測技術として活用されてきた波多層型計測技術であり、かつては機器を載せたボートの跳躍、揺動、流木の接触により流速の大きな河川での計測が困難であったが、土研による橋上操作艇や流速算出アルゴリズムの改良により河川においても精度の高い計測が可能となり、近年では河川流速の調査研究の際にリファレンスとして使用されることも多い。なお、ADCPによる河川流速の計測手法は、日本(土研)を中心とした作業チームにより令和3年に国際規格化されている(ISO24578:2021)。
 図-2に比較結果を示す。計測範囲全域にかけてADCPと電波式流速水位計の流速差は0.15m/s程度であった。また、この時の計測環境(晴天、河川の水面にある程度の波が発生)では約300m先まで計測が可能であった。1)

図-2 電波式流速水位計とADCPによる流速計測値の比較
図-2 電波式流速水位計とADCPによる流速計測値の比較

 写真-3,4は平成28年の洪水時に北海道開発局が管理する空知川で画像処理による流量計測を行った様子である。
 平成28年8月の台風10号により、空知川は計画規模を超える出水となり上流の2カ所で堤防が決壊し南富良野町市街地が約130ha浸水する大きな被害を受けた。この洪水では、幾寅水位流量観測所の施設が被災したため水位データが取得できなくなった。また観測所へのアクセス道路の冠水や空知川の水位上昇により浮子による流量観測を中止し、観測地点より下流の橋梁において急遽浮子観測をおこなったものの、その橋も写真のように被災し立ち入り禁止となったことから動画撮影カメラによって撮影を行い、後日STIV法(Space Time Image Velocimetery)による流速の算定等を行った。2)

写真-3 幾寅水位観測所の様子
写真-3 幾寅水位観測所の様子
写真-4 河岸からの動画撮影
写真-4 河岸からの動画撮影

参考文献

1) 萬矢敦啓、墳原学、工藤俊、小関博司、笛田俊治:電波式流速水位計の開発、土木学会論文集G(環境)、土木学会、Vol.72、I_305-I_311、2016

2) 佐藤匡、萬矢敦啓、橋場雅弘:平成28年台風10号空知川上流における画像処理型流量観測の適用性-大規模出水に対応した流量観測高度化(その2)-、国土交通省北海道開発局第60回(平成28年度)北海道技術開発研究発表会

3) 河川砂防技術基準 調査編、平成26年4月、国土交通省水管理・国土保全局

4) 平成14年度版水文観測、国土交通省河川局監修、独立行政法人土木研究所編著、社団法人全日本建設技術協会

次回に続く-



【著者紹介】
山本 晶(やまもと あきら)
国立研究開発法人 土木研究所 水工研究グループ 水文チーム
上席研究員

■略歴
東北大学工学部土木工学科卒業
1993年 建設省入省
2003年 国土交通省東北地方整備局河川部河川計画課長
2007年 国土技術政策総合研究所危機管理技術研究センター水害研究室主任研究員
2010年 東北地方整備局河川部水災害予報企画官
2011年 国土交通大学校建設部建設企画科長
2013年 国土技術政策総合研究所河川研究部水害研究室主任研究員
2016年 香川県土木部次長
2018年より現職

河川モニタリングに対する社会的ニーズと最新技術・機器(1)

静岡沖電気(株)
技術部
森 孝之

1. はじめに

近年、観測史上最大、数十年に一度、数百年に一度という異常気象が当たり前のように発生するようになっている。以前は大河川の堤防決壊等による水害が多く発生していたが、近年は市街化による地盤の保水力の低下や、局所的な集中豪雨の発生等による内水氾濫、冠水が多発している。
このような状況下では、日本国内のどこでも予想を超えるような水害が発生する危険性があり、これまでの「ハード(土木工事)」の防災対策だけで水害を防止することは経済的にも非常に困難であり、「住民の人命を守る」こと、「財産被害を軽減する」ことを目的とする「減災」観点の対策「河川モニタリング」等の重要性が増してきている。

「減災」において重要なのは、必要な情報を正確に、タイムリーに把握し、周知することによって、より早い対応をとれるようにすることであり、「備える時間」を確保することが必要である。
すなわち「計測」→「情報伝達」→「状況把握」→「判断」→「対応」を確実かつ迅速に行うことが重要となる。
そのため、近年の「河川モニタリング」ではセンサ単体による「計測」だけではなく、「情報伝達」→「状況把握」への適応が求められており、計測されたセンサのデータを、どのような手段で「情報伝達」するかという観点でのインターフェース、通信手段の付加が必須となっている。

最近では国土交通省が整備した「危機管理型水位計」(http://www.river.or.jp/riverwaterlevels/)により、非常に多くの中小規模の河川においても水位の観測が可能となり、これにより得られたデータは河川情報センターが運用するWebサイト「川の水位情報」(https://k.river.go.jp)を通じ広く一般にも公開されており、カメラ画像などとともに状況を把握することが可能となってきている。

2. 河川モニタリングの内容

主要な河川モニタリングの計測項目と内容、弊社で持っている機器等について下表に示す。
※各機器の詳細な特徴、仕様については次項で説明する。

表-1 河川モニタリングの計測項目と内容
表-1 河川モニタリングの計測項目と内容

3. モニタリング技術の紹介

3.1 水位計(接触式と非接触式)

水位計の方式には設置場所で分類すると接触式と非接触式がある。
接触式は水中に設置され、水圧を計測することにより水位を算出するものが主流である。
※水面にフロートを浮かべ、フロートの位置を検出するフロート方式も接触式に該当するが、本報での説明は省略する。
非接触式は、水面上方から超音波や電波を発し、水面からの反射に要する時間を計測し、距離に換算し、水位を算出するものであり、設置環境などにより選択が必要となる。

表-2 水位計の方式
表-2 水位計の方式

3.2 弊社の水位センサ

  • (1) ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)
    本製品は、太陽発電駆動によるエナジーハーベスティング技術の採用により、外部からの給電を不要とし、
    920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop®」とLTEによる無線通信機能を備えた超音波式「水位計である。

    ZE技術は太陽光発電を利用しているが、太陽光発電は天候によって発電量が左右されるため、雨天が続き発電ができず、システム停止となるリスクがある。また充電池の特性として、曇天時の小さい電流では充電効率が下がるという問題もある。ZEではこの問題に対して、小さい電流でも高効率で充電可能なキャパシタと、2次電池の2つを組み合わせることで解決している。
    「図-1 充電構成」に示すように、晴天時は充電電流が高いため直接2次電池に充電し、曇天時の充電電流が小さい時は、一旦キャパシタに充電した後、キャパシタから2次電池に充電することで、電池に対して十分な充電電流を確保し充電効率を高めている。

    図-1 充電構成
    図-1 充電構成

    さらに、低電圧駆動の回路による低消費電力化で、非常に小型の太陽電池パネルと小型のバッテリーの組み合わせでの稼働を可能とし、機器の大幅な小型化を実現した。
    また、通信機能として920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop®」とLTEによる無線通信機能を備えることで、通信線配線も不要となり、ZE技術による商用電源不要化と合わせ配線不要の水位計の製品化を実現した。

    水位計の超音波センサ部分は、河川水位計測で30年以上の運用実績のある超音波式水位計のセンサノウハウを活用しており、必要な計測精度、長期信頼性を実現している。
    超音波による計測原理は上方から放射された超音波の水面での反射波が戻るまでの時間 t(往復)を計測し、この時間 tから次の式で水位を算出する。

    H=D-1/2×C×t

    H:水位(深さもしくは水面の標高)(m)
    D:水位を深さで表現する場合は
    送受波器から水底までの距離(m)
    水位を標高で表現する場合は
    送受波器の標高(m)
    C:空気中の音速(m/sec)※1
    t:送受波器から水面までの超音波の往復時間(sec)

    ※1音速は気温により変動するため、付属している温度検出器で計測した気温により音速補正を行う。

    図-2 超音波による水位計測
    図-2 超音波による水位計測
    図-3 ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)外観
    図-3 ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)外観
    表-3 ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)仕様
    表-3 ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)仕様
  • (2) ゼロエナジー水位計:SLX5177(水圧式)
    本製品は、太陽発電駆動によるエナジーハーベスティング技術の採用により、外部からの給電を不要とし、920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop®」とLTEによる無線通信機能を備えた水圧式水位計である。

    図-4 ゼロエナジー水位計:SLX5177(水圧式)外観
    図-4 ゼロエナジー水位計:SLX5177(水圧式)外観
    表-4 ゼロエナジー水位計:SLX5177(水圧式)仕様
    表-4 ゼロエナジー水位計:SLX5177(水圧式)仕様
  • (3) 超音波式水位計
    常時給電により稼働し、豊富な出力オプションインターフェースを持つ超音波式水位計である。
    ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)と異なり、電源、通信線の配線が必要で、通常は近傍に設置されたテレメーターなどによりデータを送信するため、連続で水位を計測することが可能。

    図-5 ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)外観
    図-5 ゼロエナジー水位計:SLX5172(超音波式)外観
    表-5 超音波水位計仕様
    表-5 超音波水位計仕様
  • (4) 小型Web配信「冠水レーダー」
    電波により反射面までの距離と、電波反射強度計測の機能を持つ電波センサと、Webサーバー機能を持つロガーを組み合わせた装置である。
    市街地、道路、アンダーパスなどの冠水や浸水を検知、計測する装置で、住宅浸水の早期検知や冠水道路への車両の進入の防止等に利用される。

    図-6 小型Web配信「冠水レーダー」の概要
    図-6 小型Web配信「冠水レーダー」の概要
    表-6 小型Web配信「冠水レーダー」電波センサ部仕様
    表-6 小型Web配信「冠水レーダー」電波センサ部仕様
    表-7 小型Web配信「冠水レーダー」データロガー部仕様
    表-7 小型Web配信「冠水レーダー」データロガー部仕様

参考

OKIテクニカルレビューVol235 太陽電池を利用したゼロエナジー水位計 依田、境

OKIテクニカルレビューVol237 ゼロエナジーゲートウェイ~太陽光発電駆動のIoTゲートウェイでインフラ監視の導入を容易化 久保、橋爪、依田

次回に続く-



【著者紹介】
森 孝之(もり たかゆき)
静岡沖電気株式会社 技術部

■略歴
1977年 沼津工業高等専門学校 工業化学科(現 物質工学科)卒業
同年   興国ゴム工業株式会社(現 興国インテック株式会社)
1989年 沖電気工業株式会社
2000年 静岡沖電気株式会社(現職)
2018年~ NPO法人 光ファイバセンシング振興協会 監事

グリーンレーザドローンの現状と河川管理での活用(1)

株式会社 パスコ
間野 耕司

1.はじめに

 近年の気候変動に伴い集中豪雨や大雨の発生頻度が増加傾向を示し,計画規模を上回る洪水が毎年のように発生している1).洪水を安全に流下させるためのインフラ施設が河道や河川堤防であり,その役割は益々重要となっている.河川管理では,河道や河川堤防といった河川管理施設で、災害リスクのある箇所を漏れなく把握し,適切に対処することが求められる.災害リスクのある箇所を把握するために,これまで数年に一度の河川縦横断測量と年1回以上の河川管理施設の点検(河川点検)が行われてきた.河川縦横断測量では,200mといった一定間隔ごとに測線を設定し、堤防天端の高さと河川堤防と河道の横断形状を把握する.また河川点検では,出水前後,堤防などの除草後の時期に,堤防や河川管理施設を対象に,地形や地物の変形(変状)などの有無を目視で確認し,その長さ・深さを巻尺などで計測している.しかし,河川縦横断測量は,測線間の災害リスクが把握できない恐れがあり,また巻尺を使った河川点検は,河道や河川管理施設の状態を適切に数値化して蓄積することが難しい.
 近年,河道状況を漏れなく把握するために,陸部だけではなく水部が計測できる緑波長光のレーザスキャナ(グリーンレーザスキャナ)を利用した航空レーザ測深(Airborne LiDAR Bathymetry:ALB)が実用化されている2).この計測システムは,飛行機で空中を移動しながら下方にレーザ光を照射することで,計測点が膨大に集合した三次元点群を取得できる.ALBで取得した三次元点群の利点は,上流から下流までの広い範囲の河道把握には適していること、数m以下の細かい地上解像度で面的(連測的)に地形や地物の形状を把握できること,位置情報を持つためデータ蓄積や異なる取得時期のデータの比較がしやすいことが挙げられる.一方で,運航費用の高い有人航空機を用いるALBは,狭い範囲の計測やモニタリングのような複数時期のデータ取得において、コスト面での課題が指摘されている.
 こうした課題への対策として,近年,計測機器の小型化・軽量化が進み,無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle: UAV,又はドローン)をプラットフォームとしたグリーンレーザドローンが登場した.有人飛行機に比べ機体コストが安いドローンにグリーンレーザスキャナを搭載することで,狭域の河川堤防や河道の把握や,複数回の計測(モニタリング)を効率的に実施できると期待されている.本稿は,グリーンレーザドローンの概要と,河川管理における活用事例を紹介する.

2.グリーンレーザドローン

 グリーンレーザドローンは,近赤外線波長帯に比べ水部での減衰が少ないグリーンレーザ光を用いたレーザスキャナを搭載する.この計測システムは,レーザ光を地上に向けて照射,計測対象物から反射し戻ってきたレーザ光の往復時間から距離を観測し,Global Navigation Satellite System(GNSS),Inertial Measurement Unit(IMU)で取得した位置と姿勢データをあわせて解析することで,三次元点群を生成できる.さらに水部では,上空から水部に照射されたグリーンレーザ光の一部が水面で反射し,一部が水面を透過して水中を進み,水底で反射する.水部のレーザ計測では,図1で示すように空中部と水部で光波の進行速度と角度が異なる屈折を考慮して補正を行う.これらを踏まえた解析を行うことにより,陸部と水部の地形や地物の形状を三次元点群で再現することが可能となる.

図1 水部の計測概念
図1 水部の計測概念

 国土交通省では,2016年に革新的河川管理プロジェクト(第一弾)において,陸上・水中レーザドローンの技術開発公募が行われ,河川管理に必要な陸部と水部の河道形状を同時に取得できる計測システムの開発が行われた3).この公募に,株式会社パスコと株式会社アミューズワンセルフが共同で参加し,陸上・水中レーザドローンの開発を株式会社アミューズワンセルフが,現場導入するための検討を株式会社パスコが担当した.その結果,世界で初めて陸部と水部を同時,且つ面的に計測できるグリーンレーザドローン(TDOT GREEN)が実用可能であること,一般的な水部測量で利用されている音響測深では船舶の進入不可により計測が難しかった水深0mから2.5m程度の浅い地形を面的に計測できる特長を示した。その後、グリーンレーザドローンは、国土交通省や測量企業で導入されており、今後、河川管理などで実用が進むと考えられている。
 以降では、TODTGREENの概要と特徴を示す.表1と図2は,TDOT GREENの最新機であるTDOT3GREENの機器仕様と外観を示す4).TDOT3GREENは,計測点数が3万点/秒であり,秒速数mのスピードで飛行できるドローンに搭載することで,100点/m²以上の高密度なレーザ点群を取得できる.また,対象物計測時のレーザ径(フットプリント)は,対地高度50mで約5㎝と小さく,航空レーザ測量に比べて高精細な形状を再現できる.レーザスキャナは,重量が2.7kgで,コンパクト化・軽量化が図られており,DJI社製 Matrice300に搭載した場合,最大約30分のフライトが可能となる.これは,現状のレーザドローンで最長クラスの飛行時間となる.さらに,TDOT 3GREENは,機器性能に適した計測諸元や計測計画を簡単に設定できる計測計画支援ソフトウェアや,現地で即時にデータ計測状況を確認できるソフトウェアが充実している.これらのソフトウェアは,リアルタイム,又は計測の数分~数十分後に現場で欠測範囲の有無を確認できるため,確実な現場作業の実現に寄与できる.

表 1 機器仕様
表 1 機器仕様
図2 TDOT3GREENの外観
図2 TDOT3GREENの外観

参考文献

1) 国土交通省 水管理・国土保全局:国土交通省 社会資本整備審議会河川分科会 安全 を持続的に確保するための今後の河川管理のあり方検討小委員会資料, http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/anzenkakuho/pdf/h2502/siryou2.pdf, 2013.

2) 中村圭吾,福岡浩史,小川善史,山本一浩:グリーンレーザ(ALB)による河川測量とその活用,RIVERFRONT,Vol84,p16-19,2018.

3) 国土交通省 水管理・国土保全局: 水管理・国土保全局 革新的河川管理プロジェクト(第1弾), https://www.mlit.go.jp/river/gijutsu/inovative_project/project1.html, 2017.

4) 株式会社アミューズワンセルフ:TDOT GREEN,https://amuse-oneself.com/service/tdotgreen.

次回に続く-



【著者紹介】
間野 耕司(まの こうじ)
株式会社パスコ

■略歴
 1999年3月岐阜大学大学院工学研究科土木工学専攻修了.1999年4月株式会社パスコに入社後,航空レーザ測量,MMSおよびUAVなどの三次元計測業務に従事し,現在に至る.その間,2018年岡山大学大学院環境生命科学研究科環境科学専攻を修了.博士(工学).