スコットランド国際開発庁・英国大使館 松枝 晃
3.水素社会
3-1.政府のコミットメント
2020年12月にスコットランド政府(Scottish Government)は、Hydrogen Policy Statement 4) を発表した。スコットランドが水素社会を推進するにあたり政府が出したコミットメントで、戦略の上位部分になる。これに続いてアクションプランが発表される事になっている。
4) https://www.gov.scot/publications/scottish-government-hydrogen-policy-statement/
このStatementには、以下の様な今後10年毎のビジョンが書かれている。大まかには、最初の10年で需要・供給を確立して市場を立ち上げ、次に生産量増加・コストダウン、さらに生産量を増やしてコストを下げてスコットランド域外に輸出すると言うものである。
• 2020年~ Demonstration, Market demands, Policy Framework. 政府の支援で交通と産業用市場を確立。
• 2030年~ Production at Scale. スケール拡大、コスト低減、国内向け価格競争力、Floating Production.
• 2040年~ Scale up & Global expansion. 最低価格の水素生産。パイプライン等海外への輸出インフラ整備。
さらに、投資額を含むいくつかの要点が書かれている。
• 水素生産目標:2030年までに5GWの生産設備容量を確保,2045年までに25GW.
• 投資: 5年で£100 million の政府予算を投入.
• Blue Hydrogen:’20半ばまでCCSと組み合わせてblue hydrogenを量産
• Green Hydrogen – Offshore Wind:長期には、洋上風力によるgreen hydrogen生産のskillとsupply chainが重要。
• 技術とInnovation:官民の資金投入, 水素燃料電池, 電気分解装置などのキー技術の確保.
• 国際コラボレーション:Shared hydrogen economy , 水素輸出.
3-2.マーケット予測
同様に2020年12月にスコットランド政府から洋上風力から水素への市場機会を評価するレポートが出されている 5)。需要と供給の両面から可能性が検討されているが、需要面での予測を図9に示す。円の大きさが需要の大きさを示している。
比較的近い将来の市場として、建物の暖房がある。これは地域の暖房が天然ガスを用いて行われており、現状の二酸化炭素排出の大きな部分を占めていることによる。
また交通では、一般の自家用車ではなくトラック、バス、鉄道などが有力とされている。これは車両の運行範囲が限定されるため、燃料供給のインフラが作りやすい事による。
また元々ある化学・産業用途も可能性のあるマーケットで、農業肥料のアンモニアの原料としての水素などがある。
図9 水素の需要予測
5) Scottish Offshore Wind to Green Hydrogen Opportunity Assessment
https://www.gov.scot/publications/scottish-offshore-wind-green-hydrogen-opportunity-assessment/
3-3.現行のプロジェクト例
3-2の評価の中で、水素のコストについても検討されており、一つのシナリオとして洋上風力発電サイトの近傍で水素を製造する案が示されている。それによると2030年頃に2.3GBP/kgの可能性があるとの事だが、これは日本の経産省の基本戦略目標 6) で示されている2030年に30円/Nm3とほぼ同じ数値となっている。
6) https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190312001/20190312001-2.pdf
実際に、洋上での水素生成に関して幾つかの実証実験が行われており、その一つにアバディーン沖15Kmの地点で行われているDolphyn Project 7) がある(図10-1,2)。2MWの風車を利用するものから始め、2027年には10MW風車10台を使用する計画である。
図10-1 Dolphyn プロジェクト
図10-2 水素製造部分
7) https://ermdolphyn.erm.com/p/1
他の水素利用に関するプロジェクト例を示す。
Aberdeen市は、Hydrogen Hubになると言うビジョンを持っており、水素利用に関して先進的な取り組みを行っている。公共交通(バス)や公用車に水素燃料電池車を使っている(図11)。
Levenmouthでは、SGN(Scotland Gas Network:企業)がH100Fife 8) というプロジェクトを行っている(図12)。第一フェーズでは、洋上風力の電力で水を電気分解してGreen Hydrogenを生成し、300家庭にクリーンガスを供給するものである。水素は、暖房その他現行の天然ガスの機能を置き換えるものである。
8) https://www.sgn.co.uk/H100Fife
図11 Aberdeen市の水素車両
図12 Levenmouth H100Fifeプロジェクト
【著者紹介】
松枝 晃(まつえだ あきら)
英国大使館・スコットランド国際開発庁
上席投資担当官
■略歴
金沢大学 工学部 電気工学科卒、
1981年オリンパス光学株式会社(当時)。研究開発部門で回路設計、新規事業開拓、オープンイノベーション等経験。
2010年スコットランド国際開発庁。センシング技術を中心に日本スコットランド間の技術案件を担当。
2012年から海洋関係。北海のSubsea技術と日本の海洋関連技術のコラボレーションを促進。
三井海洋開発(株)事業開発部 ⼩林 秀信
(3) 最少の占有面積による社会受容性と経済性の両立
ウインドファームにおいては風車の単機発電容量が大きければ基数の低減も可能となり、さらに、緊張係留による占有面積の最小化は漁業をはじめとする既存事業への影響を最小限とすることができ、浮体式洋上風力発電の普及拡大を促進すると考える。
1) 大量発電の実現
TLPの占有面積の小ささは、事業会社が確保したサイト面積を有効に活用することができ、風力エネルギーによる発電量を最大化する。セミサブとの比較において区画制限があるサイトの際まで浮体を配置できることから、国交省のマニュアルに従った配置で比較した場合、例えば下記を例とした場合、約二倍の風車基数の配置が期待できる。
【出典】国交省マニュアル「港湾における風力発電について」(平成24年6月)
【検証例】同面積あたりの最大風車設置数
2) 社会受容性
水深100mのサイトにおけるセミサブの係留長は風車を中心に直径で約2.4㎞となる。これに対し、TLPは電力ケーブルが左右に300m伸びる程度であり占有面積はほぼTLPの係留面積そのものである。TLP型における浮体間のスペースは、他の浮体形式と比し、漁業や既存事業への影響を最小限にすることが期待できる。
<TLPとSemi-subにおける占有面積の比較>
3. おわりに
TLP型浮体による洋上風力発電は、今後大型化が期待される風車への対応、日本固有の自然条件への適用性、また社会からの受容性において最も適した浮体であると考える。現在、1/60スケールでの水槽実験までは完了し、2020年代後半には実海域において、10MWを超えるクラスでの実スケールでの実証試験を実施を予定している。三井海洋開発は、この実証試験を通じ、構成する要素技術、工法をあらゆる角度から検証し確実なものにすることにより、2030年代初頭の商業設備への導入を皮切りに、我が国の浮体式洋上風力の普及、発展に貢献する所存である。
【著者紹介】
小林 秀信(こばやし ひでのぶ)
三井海洋開発株式会社 事業開発部
■略歴
20年以上にわたり、石油、ガス、化学業界にてEPCのセールス/マーケティングに従事。
2018年に三井海洋開発(株)入社。新規事業を担当。
現在 同社の風力発電事業の推進において2030年の商業化を目指し活動中。
戸田建設(株) 戦略事業推進室 安仲 ともえ
3. コスト削減への取り組み
戸田建設では今後の事業拡大に向け、ハイブリッドスパー型のコスト削減に取り組んでいる。コスト削減のポイントとして、現在、大きく以下の2点に焦点を当てている。
1点目は、スパー型の利点である大量生産性を活かした生産体制を確立することである。まず、長崎県五島市にハイブリッドスパー型浮体建造ヤード(Offshore Wind Hub 五島)を整備し、コンクリート部と鋼製部の製造、艤装品の取り付け等を実施している。浮体建造手法としては、1基分の浮体をいくつかの部材に分けて製作するブロック建造手法を採用している。浮体組立の手順としては、まず、建造ヤードで製作したコンクリート部の各ブロックと、工場で製作した鋼製部の各ブロックをそれぞれ組み立てる。次に、コンクリート部と鋼製部を連結する。最後に、タワーを連結して浮体を一体化する(図3)。組立完了後、一体となった浮体を岸壁から半潜水型スパッド台船(図4)に積み込み(図5 ロールオン)、施工海域まで曳航する。
浮体構造がシンプルな円筒構造となっているため、製造、組立時に特別な技術が不要で、さらに同一形状、類似形状の部材のため、製作の効率化が可能となる。また、組立、積込み作業は全て浮体を水平に寝かせた状態で実施するため、特殊なクレーンや大きな地耐力を必要とせず、一般的な岸壁での建造が可能である。従って、建造場所を選ぶことなくどこの地域でも容易に大量生産が可能となり、大幅なコスト削減が可能となる。
図3 浮体組立手順
図4 半潜水型スパッド台船
図5 ロールオン/フロートオフイメージ図
2点目は、スパー型の課題である洋上施工時に大型起重機船を必要とするという点を改善することである。洋上施工手順としては、まず、ハイブリッドスパー型浮体建造ヤードで組み立てた浮体を半潜水型スパッド台船にロールオン後、施工海域まで曳航する。施工海域に到着した後、半潜水型スパッド台船を潜水させた後に浮体を海面に浮き上がらせ、浮上した浮体を半潜水型スパッド台船から引き出す(図5 フロートオフ)。次に、浮体内部にバラスト水を注水し、下部に重心を移動させることで浮体を建起す。最後に、建起した浮体上部に風車本体の各部品を取り付ける。
大型起重機船を使用する場合、天候により作業可否が左右され、傭船料の増加や工程遅延の影響によるコスト増加が生じるが、半潜水型スパッド台船を利用した工法では、従来浮体の建起し等に使用していた大型起重機船を必要としない。これにより、大型起重機船の使用という課題を解決した。
4. おわりに
ハイブリッドスパー型浮体式洋上風力発電の建造と洋上施工手順は非常にシンプルであり、造船所のような特殊な設備や技術を必要とせず、全国にある一般的な港湾で建造が可能である。また、技術開発から建造、洋上施工、維持管理、撤去までの一貫体制で、ニーズに応じた様々な種類の風車を搭載可能であり、世界中の海域への対応が可能となっている。今後もより広いニーズに対応し、事業拡大を目指して更なる技術革新を進めていく所存である。
【著者紹介】
安仲 ともえ(あんなか ともえ)
戸田建設株式会社 戦略事業推進室
浮体式洋上風力発電事業部
技術企画部 技術課
■略歴
2016年 東京海洋大学海洋工学部海事システム工学科 卒業
同年 三井造船株式会社(現 三井E&S造船株式会社) 入社
2021年 戸田建設株式会社 入社 現在に至る
(株)ソニック 三井 正雄
2.1 観測例
2021年7月、台風8号が宮城県に上陸した。図5は、岩手県の釜石沖(水深49m)に設置された海象計によって、この時観測された有義波の時系列を示したものである。期間中の最大有義波高および有義波周期は、それぞれ2.34m、8.6秒であった。海象計ではこの水位変動と同時に、上述した通り任意水深層における斜め3方向の水粒子速度を計測している。これら複数の観測波動量を用いて波の方向スペクトル解析を行うことにより、波浪の究極情報とも言える波の方向スペクトルが高精度で推定可能となっている。
図6は、図5と同様に台風8号が来襲した際に推定された方向スペクトルより、特徴的な形状を選択的に5例示したものである。図中、左(26日18時)から右(28日4時)に向かって時間が経過している。なお、各図の縦軸は周波数、横軸は波の来襲方向である。
図5 台風2108号来襲時に釜石沖の海象計で観測された有義波の時系列
図6 台風2108号来襲時における方向スペクトルの形状変化
図6が示すように、当初東からの風波(周期の短い波)が卓越していた。その後徐々にピークが低周波側(図中下側)に移動し、27日の9時には周期の長いうねりが卓越していたことが確認できる。さらに時間が経過すると再度風波が発達し、28日4時には風波とうねりが混在していることがわかる。このように、方向スペクトルを確認することによって、波の発達から減衰における一連の波浪特性やエネルギー分布を把握することが可能となる。
このような波浪の方向スペクトル推定機能は、海象計が有する代表的かつ特徴的な機能であり、これによって観測地点にどのような方向から、どのような周期でどれ位のエネルギーを持った波が来襲してきたかを詳細に知ることができるようになり、各地で波浪の特性把握に大きく貢献するようになった。
2.2 解析手法の高度化
海象計では通常、任意の異なる3層の観測データを収集・収録しているが、機能的にはさらに多層のデータも測得可能となっている。図7はその一例として、2011年の東北地震に伴う津波を東京湾の横須賀で観測した結果であり、水位変動(上段)と共に各水深層の流速ベクトルを時系列表示させたものである。なお実際の観測は10層のデータを取得したが、ここでは選択的に水深5mから20mまで5層の結果を例示した。図7より、水深によらず一様な津波流速の鉛直構造を確認することができる。このように海象計では、海底付近から海面まで、多くの波動量を連続的に計測している。そこで、方向スペクトルの高精度化を期待して、これら多層の水粒子速度情報を利用した方向スペクトルの推定精度について検討した。
図7 東京湾で観測された津波来襲時における流速ベクトル時系列の鉛直分布
図8 多層のデータを利用した場合の方向スペクトルの推定例
図8 は、方向スペクル推定時に使用する伝達関数を改良すると共に、図中の (1)~(10) に示すように1層から順に10層まで観測層数を増やして推定した例を示したものである。図8 に見られる様に、従来の1層から観測層数を増加させることにより、方向集中度の増加が認められる。これは方向スペクトルの推定精度が向上した結果を示唆するものである。さらに観測層数を3層以上使用した場合、推定された方向スペクトルの形状は酷似しており、安定してほぼ同じエネルギー分布を示していることがわかる。この結果は、推定された方向スペクトルの高い安定性と信頼性を示すものであり、今後の海洋波の特性解明に有用な成果であると信じている。
おわりに
我々は、1990年頃から海象計の開発・改良に取り組み,長年に渡り海洋波の方向スペクトルの観測・解析法の研究を継続的に実施して来た。今回報告した結果はそれらのごく一部ではあるが、信頼性を有すると確信できるレベルの方向スペクトルが推定可能となった最近の状況をざっくりと紹介できたのではないかと期待したい。
わが国の波浪観測の実績は、間違いなく世界のトップクラスであろう。しかし近年指摘されている波浪状況の変化スピードは著しく、これに観測・解析手法の改良が対応できていないように思う。これを転機と位置づけ、そろそろ有義波に代えてスペクトルに基づく検討が必要であると思う。港湾・海岸分野の多くの技術は有義波諸元に基づいて検討されてきたが、今後はスペクトルの観測情報を用いたより合理的な技術の検討・開発が必要かと思う。本報告がそれら技術的検討に少しでも役立つことを願う次第である。
【著者紹介】
三井 正雄(みついまさお)
株式会社ソニック
■略歴
1992年、株式会社カイジョーに入社(独立分社後、現ソニック)
入社後一貫して波浪観測技術の開発に従事
途中、港湾空港技術研究所、九州大学にて波浪データの解析手法に関する研究に従事
STマイクロエレクトロニクスは、SiC(炭化ケイ素)パワーMOSFETの制御に最適化されたシングルチャネル・ゲート・ドライバ「STGAP2SiCSN」を発表した。
同製品は、小型のナロー・ボディSO-8Nパッケージで提供され、優れた堅牢性と高精度のパルス幅変調(PWM)制御を提供するとのこと。
電力変換における効率を向上させるSiCは、幅広く普及が進んでいる技術である。
STGAP2SiCSNは、消費電力が重視される電源システムやドライバ、コントローラなどの設計簡略化、省スペース化、および堅牢性・信頼性向上に貢献する。電気自動車の充電システム、スイッチング電源(SMPS)、高電圧の力率補正回路(PFC)、DC-DCコンバータ、無停電電源装置(UPS)、太陽光発電システム、モータ・ドライバ、ファン、ファクトリ・オートメーション、生活家電、IH調理器など、さまざまなアプリケーションに最適な製品という。
また、ゲート駆動チャネルと低電圧制御回路の間にガルバニック絶縁を内蔵しており、高電圧電源で最大1700Vの動作が可能。入出力間の伝搬遅延時間がわずか75ns未満のため、正確なPWM制御を実現すると共に、±100V/nsのコモンモード過渡電圧耐性(CMTI)により、信頼性に優れたスイッチングが可能である。SiCパワーMOSFETが低効率または危険な状態で動作することを防止する減電圧ロックアウト(UVLO)機能や、接合部温度の過度な上昇を検知すると2つのドライバ出力を低下させるサーマル・シャットダウン機能など、保護機能も内蔵されている。
STGAP2SiCSNのゲート駆動出力は、外部抵抗を使用してターンオン時間とターンオフ時間を個別に最適化できる個別出力バージョン、およびアクティブ・ミラー・クランプ機能を使用した単一出力バージョンの2種類から選択できる。単一出力バージョンでは、ミラー・クランプにより電源スイッチの過度な振動を防止することで、高周波数のハード・スイッチング・アプリケーションの安定性を向上させる。
STGAP2SiCSNの入力回路は、最小3.3VのTTL/CMOSロジックと互換性があり、ホスト・マイクロコントローラやDSPと簡単に接続可能である。最大26Vのゲート駆動電圧で、最大4Aのシンク / ソースが可能。また、内蔵のブートストラップ・ダイオードが設計の簡略化と信頼性の向上に貢献すると共に、独立した入力ピンを使用するシャットダウン・モードにより、システムの消費電力を最小限に抑えることができる。
STGAP2SiCSNTRは、SO-8Nパッケージ(5 x 4mm)で提供される。単価は、1000個購入時に約1.25ドル。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001194.000001337.html
米・スタンフォード大学発のスタートアップ・ベンチャーのエイターリンク(株)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の2021年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援(以下、STS)」第2回公募に採択されたと発表した。
NEDO が実施するSTSは、将来の大型スタートアップとなるシード期の研究開発型スタートアップの創出・育成を目的に、NEDOとVC等が協調して当該スタートアップを支援する事業。
( URL:https://www.nedo.go.jp/koubo/CA3_100309.html )
◆今回採択された助成事業および助成内容は以下の通り。
・助成事業の名称:FA用センサへの中距離無線給電と高速データ伝送技術の開発
・事業期間:2021年10月11日~2023年3月31日
・最大助成額:7,000万円
・認定VC:株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ
◆本事業の狙い
ロボット用チャック先端部のセンサをワイヤレス化することにより、断線によるライン停止を無くす。既存システムでは3カ月に1回程度の断線が発生しているが、本技術を導入することで断線がなくなり、センサおよび配線の交換による時間のロス、および交換コストの削減に繋がる。
一例として、自動車産業では近接センサ断線によるライン停止は定期的に発生しており、センサおよび配線の交換で数十分の時間を要する。大手自動車会社のライン停止は1分間で約300万円の機会損失を生むと言われている。
◆ワイヤレス給電市場の背景
国内外問わず、現在ワイヤレス給電市場は以下3点の理由により、注目を浴びている。
1)規制緩和:2021年12月、日本国内でもワイヤレス給電が使用できる省令緩和が施行予定。
2)ムーアの法則:デバイスの消費電力が低下していることにより、ワイヤレス給電が応用可能なアプリケーションは増加している。同社の調査結果では、デジタル信号処理=センサやCMOSカメラ等のデバイスは限りなく0に近い消費電力まで落とすことが可能。
3)IoT向けデバイスの爆発的増加:2040年に必要なセンサ数量は45兆個以上ともいわれており*、既存の配線・バッテリーでこれら全てをまかなうことはコストおよび物理的制限の問題により困難である。
*参考:東洋経済オンライン「45兆個の『センサー市場』」は日本の独断場だ
(https://toyokeizai.net/articles/-/154685)
◆今後の展望
本採択を契機に、同社が開発するFAロボットハンド向けワイヤレス給電システムの2023年度の量産化に向け開発と実用化をさらに加速させていくとしている。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000071264.html
アルプスアルパイン(株)と古野電気(株)は、車載向けにおいて世界で初めて補正情報無しで車両位置誤差50cmの高精度測位を実現するGNSS※1モジュール「UMSZ6シリーズ」を共同開発した。
一般道(幅員約3m)においても確実に、V2X※2の各種アプリケーションに求められる車線レベルでの車両位置測位を可能とし、自動運転機能の高度化に貢献する。今後はグローバルでの拡販を見据え、実証実験などを通じて性能評価を行うことで製品の完成度を高め、2023年中の量産開始を目指す。
自動車業界ではCASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)の技術革新が加速している。Autonomous(自動運転)の領域では、特定条件下において車線を維持しながら前方車両に自動追従して走行できる自動運転レベル2の自動車の普及が進んでいる。昨今では、高速道路走行時や低速走行時などの条件下に限りシステムが全ての運転タスクを実行する自動運転レベル3の自動車が開発され、一部販売開始されている。
一方で、自動運転レベル3の自動車の普及や自動運転機能のさらなる高度化のためには、より使い勝手が良くかつ、より高精度な車両位置測位が求められている。
この度、アルプスアルパインと古野電気が共同で開発したGNSSモジュール「UMSZ6シリーズ」は、古野電気のExtended Carrier Aiding※3技術による多周波GNSSチップを活用することで、車両位置の補正情報を不要としながらも車載向けで世界初の車両位置誤差50cmの高精度測位を実現した。RTK※4基準局や補正情報の受信部、さらには補正情報の使用に伴うランニングコストも不要となるため、コストパフォーマンスを最大化しつつ、一般道(幅員約3m)においても確実な車線レベルの車両位置測位を可能とする。
アルプスアルパインが長年、車載市場で培ってきたモジュール化技術によって、車載品質に適合しながら製品サイズ17.8mm×18.0mm×3.11mmの小型化も実現。顧客側での設計自由度の向上にも貢献する。
本共同開発では、古野電気が独自の多周波GNSSチップ「eRideOPUS 9(イーライドオーパス9)型式:ePV9000B」およびアルゴリズムを開発・提供。アルプスアルパインが同チップを他社に先駆け初めて活用し、GNSSモジュール「UMSZ6」として製品化および、実車環境での性能やV2Xをはじめとした他通信モジュールとの連携なども含めた評価を行い、車載市場へ拡販する。
今後は本製品のグローバルでの拡販を見据え、実証実験などを通じて性能評価を行い製品の完成度を高め、2023年中の量産開始を目指す。さらに、GNSSに限らず5GやV2Xなど自動運転の高度化に対応した通信モジュールを開発・提供していくことで、自動車による安全かつ快適な移動への貢献を追究していくとしている。
【主な用途】
・テレマティクス制御ユニット(TCU)
・V2Xオンボードユニット(OBU)
【主な仕様】
製品名(番号):UMSZ6シリーズ
外形サイズ :W17.8mm×D18.0mm×H3.11mm
サポート衛星 :GPS:L1 C/A, L5
GLONASS:L1OF
BeiDou:B1I, B1C, B2a
Galileo:E1B/C, E5a
NAVIC:L5
QZSS:L1C/A, L1S, L5
SBAS:L1, L5
使用温度範囲 :-40~+85℃ / 105℃
電源電圧 :+1.8V
対応機能 :Dead Reckoning (DR用Sensor内蔵)
Antenna DIAG機能
※1 Global Navigation Satellite System(全地球衛星測位システム)の略。米国のGPSのほか、GLONASS(露)、Galileo(欧)、及びBeiDou(中)がある。ここではRNSS(Regional Navigation Satellite System)であるQZSS(日)とNavIC(印)も含む。
※2 Vehicle-to-everythingの略。車と車、車と道路設置設備(インフラ)、車と人など、車と何かをつなぐコネクティッド技術の総称。
※3 ノイズの影響を極限まで抑制する技術。搬送波位相による支援を受け、デュアルバンド化により伝搬遅延の影響を除去することで、大幅なノイズ低減に成功した。
※4 Real Time Kinematicの略。搬送波位相を使った相対測位。基準局(既知の場所に設置されたGNSS受信機)からの補正情報をGNSS受信機に送り、観測に含まれる系統的誤差を除去することにより、基準局との相対的な位置を数cm~数mmの精度で求める測位技術のこと。
プレスリリースサイト(alpsalpine):https://www.alpsalpine.com/j/news_release/2021/1014_01.html
沖電気工業(株)、矢口港湾建設(株)、増毛漁業協同組合は、2020年8月から北海道増毛郡増毛町の実海域で運用しているOKIの「密漁監視ソリューション(注1)」により、このほど密漁の未然防止に成功した。あわせて、「密漁監視ソリューション」が実海域での長期的な運用において安定的な動作を確保できることを確認した。
近年、アワビやナマコなどの高級食材を狙う組織的な密漁が横行し、被害額は年々増加している。監視カメラや人手によるパトロールなどでは人件費や装置コストの負担が大きく、特に夜間の無灯火船や水中のダイバーを監視し不審者を発見するのは難しいのが現状であるという。
OKI、矢口港湾建設、増毛漁協は、この課題に対し、OKIの水中音響センサを用いた「密漁監視ソリューション」による密漁監視の試験導入を2018年に実施し、その結果に基づいて、2020年8月に実海域における本格運用を開始した。2021年7月にはシステムからの不審音検知情報に基づいて増毛漁協および留萌警察署が見回りを行った結果、不審者と不審船を発見し、該海域での密漁被害を未然に防ぐ成果をあげている。
また、同ソリューションの各装置が厳しい海洋環境下での長期的な運用に耐えるかの観点で検証した結果、水中生物などによる汚染への耐久性や太陽光発電の活用により、長期的な運用でも安定的な動作を確保できることが確認された。
「密漁監視ソリューション」は、OKIが長年培ってきた水中音響センシング技術を活用し、昼夜を問わず密漁船や水中の不審なダイバーを監視し検知することで、密漁の未然防止や密漁監視人員の省人化などを可能とする。OKIは今後も、運用により蓄積されたデータ、ノウハウを活用し、関係機関から寄せられるさまざまな要望に応え、同ソリューションの継続的な機能向上をはかっていくとのこと。
注1:密漁監視ソリューション
OKIが長年培ってきた水中音響センシング技術を活用した密漁を検知するシステム。
1.水中音響センサが、水中の音を集めてクラウドサーバーへ送信
2.クラウドサーバーで水中の音を分析、不審な音を検知すると登録通知先へメールを送信
3.通知先は任意で設定可能で、関係機関との情報共有や連携も可能
プレスリリースサイト(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2021/10/z21060.html