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旭化成の「3密見える化ソリューション」東邦大学で採用

旭化成(株)は、新型コロナウイルス感染症対策を目的に同社が提供するCO2センサを用いた換気状況の確認サービス「3密見える化ソリューション」(以下「本ソリューション」)が東邦大学の習志野キャンパスで新たに採用された。

CO2センサで密閉・密集の状況をモニタリングすることにより、適切な換気を管理できることは広く知られている。東邦大学では学生や教職員の安全、そして保護者の安心を確保するため感染症対策を推進しており、このたび、さらなる対策の向上を目的に、習志野キャンパスの理学部Ⅲ号館、Ⅳ号館およびⅤ号館に、当社の本ソリューションが導入された。これにより、各教室のCO2濃度、温度および湿度情報を管理部署で一括確認することが可能になる。さらに同社が提供する無償アプリ「換気View」をインストールすることで、学生・教職員を問わず誰でもスマートフォン等からその場所のCO2濃度をリアルタイムに確認できるようになるという。

東邦大学では、1月からの大学入学共通テストや入学試験においても本ソリューションを活用する予定で、学生や教職員のみならず、受験生に向けても安心できる環境の提供を目指す。また、今後得られたデータを蓄積し、さらなる効果的な感染予防策を講じていくことで、より安全に学習、研究活動に取り組めるようなキャンパスを提供していくとのこと。

本ソリューションについて
本ソリューションに使われる同社の製品は温湿度センサに加え旭化成エレクトロニクス株式会社の子会社であるSenseair社製のCO2センサを内蔵しており高精度かつ低消費電力であることが特徴。内蔵バッテリーで約1年間充電不要で稼働する。
クラウド版のサービスでは約1分間隔でセンサの計測データをクラウドに送信し、遠隔で各センサの情報を確認することができる。また、設定した基準値にCO2濃度が達した際にアラートメールを送信する機能もあり、過去60日間のデータをCSV方式でダウンロードすることも可能。
また、iOS/Android端末向けに提供している無償版アプリ「換気View」をインストールすることで、センサの情報をタブレットやスマートフォンなどに表示させることができるという。

ニュースリリースサイト(asahi-kasei):https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2021/ze220113.html

河川水位をAIで予測。自治体向け防災ソリューション「水位予測AI」を共同開発

(株)MatrixFlowは、三信電気(株)と提携して、全国の自治体向けに、電子機器とAI活用プラットフォーム「MatrixFlow」を活用した「水位予測AIソリューション」を開発、2021年12月から提供を開始した。
MatrixFlowの技術を使うことで、従来は”測定”に留まっていた河川水位の”予測”が可能となった。 この開発により、水位の増加を事前に察知し、今後起こりうる水害リスクの早期対処に貢献するという。

■背景
近年、豪雨や台風による水害などで深刻な被害が多発している。主に2級河川以下を管理し直接住民に対して避難指示を行う自治体においては、気象予測だけでなく水位予測を用いて、従来よりも早い段階で水害リスクを把握する必要性が高まっている。 この課題に対し、国土交通省では、298の洪水予報河川について、6時間先迄の水位予測情報を提供している。※1
しかし、全国の河川数は7000にもわたるため、水害リスクの早期把握のためには洪水予報河川以外も含めて、6時間以上の水位予測が求められていると考えられる。 さらに国土交通省は「水害レポート2020※2」の中で「国土強靭化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進」を掲げ、新しいデジタル技術の活用を推進している。
上記背景より、三信電気とMatrixFlowは、水位センサから送られてくるリアルタイムの水位データ、過去の雨量などの気象実績データ、及び気象予報データを用いた機械学習により、「水位予測AIソリューション」を共同で構築した。
これにより、ほぼ全ての河川での1週間後の水位予測が可能になり、早期の水害リスクの把握が可能となる。 今後、自治体や企業向けに提供を開始するとのこと。

※1 http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/r03/101/news_05.html
   https://www.sankei.com/article/20210401-EMLGUIGCGVLTJEFRERCLK33FJY/
※2 https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/pdf/suigai2020.pdf

■特長
1.三信電気のセンサーゲートウェイの特長
・最大4チャネルのアナログセンサを接続可能な、マルチ通信ゲートウェイ
・各種センサ(超音波水位センサ、投込み水位センサなど)を選択可能
・LTE/LPWA/Bluetoothの通信機能を搭載

2.MatrixFlowの特長
・API機能による、自動化とリアルタイムモニタリング可能
・周辺環境や特殊な事情に合わせて、予測したい地点毎に複数データを追加可能

ニュースリリースサイト(matrixflow):https://www.matrixflow.net/news/

新東工業、生産設備の稼働状況を可視化するIoTサービス「設備稼働モニタ」

新東工業(株)は、製造業のデジタル化を支援するIoTサービス「設備稼働モニタ」の販売を開始する。

今回、同社が販売を開始する「設備稼働モニタ」は生産設備の稼働状況を「見える化」することに特化したアプリケーション。具体的には、生産設備の制御装置(PLC)に稼働状況を収集するための機器(データコレクタ)を設置して、常に閲覧したい稼働情報を収集する。これにより、WEBアプリを通じて稼働状況のモニタリングが常に可能となる。

稼働状況の見える化に特化する理由として、刻一刻と変化する生産現場では “今、どのような状況なのか?何が起きているのか?”を把握することが、現場改善を進めていく上で最も重要な情報になるからである。そして、ものづくり企業全体のデジタル化を段階的に進めていくためには、稼働状況の見える化は最初に始める必要がある。

設備稼働モニタで見える化する内容として、日別・設備別の稼働状況や設備の動きに関わるトレンドグラフ、設備アラームや保全アラームなどの履歴表示などがある。また、設備稼働モニタは、システム構成をシンプルにすることで設置に関わる工事費用を大幅に抑えることができ、中堅・中小企業でも導入しやすい価格設定としているという。

【設備稼働モニタ導入の具体的なメリット】
①設備の状態監視により安定稼働を実現する
設備の最新データをグラフなどで確認でき、異常発生前にアラームで知らせる。また、保守点検のタイミングを通知することにより、計画的な点検に活用することができる。更には、設備点検や保全作業の際にも、作業手順や対象部品の確認をスムーズに行うことができる。

②稼働状況を見える化して改善につなげる
アラームの発生と復旧時間の履歴を把握することで、設備課題の早期発見と対策につなげることができる。また、設備の動作状況を可視化することで稼働率向上に向けた改善活動を進めることができる。更には、設備のムダな待機時間の削減により、CO2削減やエネルギー削減など現場改善を促進することができるとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000058550.html

建設工事向け、3Dデータを現場で視える化ハイエンドモデル『Trimble SiteVision Rover』

(株)ニコン・トリンブルは、測量・建設向けに三次元モデルの表示・確認・収集が行える超高精度屋外ARシステム「Trimble SiteVision Rover(トリンブルサイトビジョン ローバー)」の取り扱いを開始した。

■建設工事現場に最適な、超高精度AR「Trimble SiteVision Rover」
今回リリースとなるTrimble SiteVision Roverは、測量用のIMU搭載高精度GNSS「Trimble R12i GNSS」と堅牢なコントローラー「Trimble Data Controller TSC7」にソフトウェア「SiteVision for Windows」を組み合わせたシステム。


□IMU搭載の受信機で簡単・スピーディーに正確な位置を取得
昨年発売のTrimble SiteVision Handyは片手で手軽にARを体験できる反面、精度面では手ぶれの影響を受けてしまう。
Roverタイプは測量用のTrimble R12i GNSSを使用するため、Handyと比較して約1.2倍の精度で位置情報を取得する上、ポール先端の座標値をピンポイントで確実に取得可能。
さらに、Trimble R12i GNSSは、本体が傾いた状態でも内蔵のIMUセンサが受信機の姿勢を検知し、ポール先端の座標値を算出。観測ポールをまっすぐに立てられない場所でも、簡単・スピーディーに高精度な位置情報が取得できる。

□地下埋設物の確認に
道路の掘削工事で特に注意すべきなのが、地下に設置された水道、電気、ガスなどのライフラインを傷つけないことである。Trimble SiteVision Roverは、測量用の数cm精度で現場画像に構造物を透過表示。正確な位置、サイズ、属性を可視化できる。

□すばやい杭芯工事に
構造物の杭芯を設置するのは、目標物に乏しい整地された現場ではなかなか苦労する。Trimble SiteVision Roverでは設計内容が三次元画像として現場に復元可能。レイヤーの重ね合わせで、杭芯だけでなく完成モデルまでも確認でき、すばやく杭芯設置位置を特定できる。

□過酷な環境での作業に
一般的な造成地は、直射日光、粉塵、降雨など、電子機器にとって非常に過酷な環境。しかしTrimble SiteVision Roverは測量用の堅牢な機材のため、そんな環境だからこそ安心して使用できる。

■製品情報
 https://www.nikon-trimble.co.jp/products/product_detail.html?tid=376
●販売価格:最寄りのニコン・トリンブル ジオスペーシャル事業部正規販売店へお問い合わせのこと
●商品構成:アンテナ一体型ハードウェア、バッテリーパック、充電器、日除けアタッチメント、アンテナ接続ケーブル

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000015437.html

JX通信社、積雪した東京都心で交通事故多発、東京都内で前日比30倍覚知

(株)JX通信社は、2022年1月6日に観測された関東平野の積雪に関して、同社が提供するビックデータ リスク情報サービス 「FASTALERT(ファストアラート) 」を通じて収集・配信した、雪の降り始めから積雪後の交通機関の乱れまで等、多くのデータを独自分析した記事を公開した。

同社は「データインテリジェンスの力でより豊かで安全な社会を創る」というビジョンのもと、膨大なビックデータの中から、AIで良質なリスク情報のみを収集し、速報として伝えている。
この度、2022年1月6日のに観測された関東平野の積雪に関して同社が提供している、ビックデータリスクセンサ「FASTALERT (ファストアラート) 」で収集・配信した、雪の降り始めから積雪後の交通機関の乱れまで等、多くのデータを独自分析した記事を公開した。
分析記事(https://fastalert.jp/news/14993)

尚、FASTALERTは日常的な取材活動に必要不可欠なツールとしてNHKと全ての民放キー局、全ての一般紙に採用されるなど、国内の大半の報道機関に浸透しており、最近では防災やBCP、障害監視やサプライチェーンのリスク管理など広範なニーズに対応する情報ツールとして、政府・自治体やインフラ企業をはじめとする幅広い業種の顧客に利用されているとのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000109.000005993.html

Locarise,、湘南モノレールへ詳細な乗降者数計測システムの提供開始

Locarise(株)は、12/1より公開された湘南モノレール(株)の提供する特設サイト内に、駅の乗降客数の計測および混雑状況の提供を開始した。

◆「Locarise TRAFFIC」による混雑情報の提供
通勤・通学で公共交通機関を利用するユーザーにとって、混雑を避けるために得る情報は、リアルタイムであればあるほど便利で有益な情報である。 しかし、多くの公共交通機関では1時間や30分単位での混雑情報を専用アプリなどで発信する取り組みはあるが、より細やかな混雑情報を提供することは技術的・コスト的な壁があった。 今回、湘南モノレールの提供する特設サイト内で15分単位に情報更新を行うことによって、より便利で快適な利用環境をユーザーに提供することが可能となった。

情報の取得には、Locariseが提供するソリューション「Locarise TRAFFIC」を用いている。同ソリューションは、世界最高水準・高精度の3Dセンサを設置することで、正確でリアルタイムな店舗・施設等の利用状況の測定を実現する。Locariseの使用する3Dセンサは欧州の公共施設などでも導入実績が多く、精度・安定性において大きな信頼を得ており、世界でも厳しい基準といわれる、EUにおける個人データ保護に関する法律GDPRにも適合しているとのこと。これにより、通勤・通学に駅を利用するユーザーのみならず、同地を訪れる観光客にも混雑状況を避け快適な交通機関利用を実現することが可能になった。

事業背景
この特設サイトでの取り組みは、サイトを提供する湘南モノレールが国土交通省事業の一環である「人流データを活用した地域課題解決モデル事業」により実施しているもの。特設サイトは2022年2月末まで公開しており、利用されたユーザーの意見や感想をもとにその後の運用を検証していく取組である。

〇国土交通省 報道・広報ページ:人流データを活用したモデル事業の実施対象を決定しました
 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo17_hh_000001_00012.html

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000057029.html

匠の分析技術をAIで標準化・速度6倍に 安定供給とベテランの技能継承に貢献

第一工業製薬(株)と(株)HACARUS(ハカルス)は、「カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)」の製造工程における途中経過の判定に、近赤外線カメラといったセンサによる撮影と人工知能(AI)を組み合わせ、従来の検査速度を約6倍にする検査技術を開発した。
これまでは検査員が経験に基づいて行っていたものを自動化。品質の高さや供給体制の安定化を実現し、検査員の負荷軽減と熟練技能の継承につなげるという。

【従来の課題】手の感触や目視判定
第一工業製薬では、セルロースを原料にCMCを製造し、リチウムイオン電池から高級養殖魚の餌まで幅広い用途で活用されている。製造工程では、水分含有量の調整が不可欠で、適切な配分が決まっている。 ただし水分含有量の測定は、可視光による画像検査では難しく、従来は溶剤を用いた容積測定や、育成に5年以上かかるベテラン検査員らによる製品表面の目視検査、手で握った際の感触などで判定していた。
第一工業製薬は、ITを活用した事業改革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の一環で、検査結果を数値化して工程の標準化を図るため、人工知能(AI)の活用を企画。少量のデータでAIを構築し、外観測定技術の課題解決策を提示している「ハカルス」と連携して、測定技術を開発した。

【成果と意義】精度も改善、熟練技能が継承容易に
測定は、近赤外線カメラといった最新のセンサと、撮影した画像を分析するAIを組み合わせて行う。CMCには用途に適した水分含有量があり、カメラを当てた際に赤外線の吸収や反射の度合いが異なる。適切な水分量の正常品に対して、水分過多であれば撮った画像が黒くなりすぎたり、水分不足であれば白くなりすぎたりする。その水分量の適切な状態やピーク値をグラフ化し、数値で表現できる点も特長である。

実証実験を経て、2021年11月から試験運用を開始。現場の作業効率化と費用削減を図っており、以下のような効果を見込んでいる。
・測定装置を導入したその日からベテラン検査員と同等の判定が可能になった。結果は客観的な数値として示されるため、共通の判断基準の構築によって、検査員ごとのばらつきを低減し、工程の標準化や供給量の安定化につながる。また、一部製品は今まで測定値指標も手触り判定も不完全であり、トラブル停止の要因となっていたが、停止トラブルをゼロにできた。熟練技能を可視化でき、継承が容易になったため、工程安定による製造量増加や、工場、製造ラインの拡張も見込める。
・自動化によって、1回の測定検査にかかる作業時間は、30分程度だったのが、5分程度と約84%削減できるケースが見られた。時間短縮によって作業点数も大幅に増加させる事が可能となり、従来の作業負荷削減、より効率的な生産や省力化を進められる。
・人件費をはじめ、検査や検査員育成のコストが今後2~3年で50%程度削減できると見込んでいる。

【今後の展開】多彩な化学物質の検査に応用へ
水分含有量の測定技術は、CMC以外の化学物質でも測定できる見通しで、今後、他の素材への適用も進める方針。

ニュースリリースサイト(hacarus):https://hacarus.com/ja/press-release/dks-cmc-20220106/

洋上風力発電の方向性と可能性 (1)

足利大学 理事長
牛山 泉

1.はじめに

 近年、世界各国で地球温暖化が原因と考えられる自然災害が頻発し、年を追うごとに劇甚化の傾向にある。21世紀における人類最大の課題の一つが地球温暖化防止である。
 これに対する最強の切り札は、原子力発電の安全・コスト神話が崩れてしまったいま、二酸化炭素を発生しない再生可能エネルギー(以下 再エネ)の積極的な導入しか残されていない。主要国の再エネによる発電比率は、2018年現在、水力発電中心のカナダ66.3%、イタリア39.7%、スペイン38.2%、ドイツ35.3%、イギリス33.5%、原発中心のフランスが19.6%、石炭火力中心の中国が25.5%であるのに対して、わが国は18.0%に過ぎず、そしてアメリカが16.8%と続く。最近の15年以上、欧州では原子力、石炭火力、石油火力の発電所は全く建設されておらず、さらに欧州の新規電源の20%は風力発電なのである。1)
 一方、2021年には、第5次エネルギー基本計画の改定がなされ、第6次基本計画においては、再エネのみが純増となった。「2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)、2050年度に脱炭素」という政府の基本方針からバックキャストする考え方で、わが国のエネルギー政策史上、初めて再エネを最優先するという画期的なものとなった。
 2030年のエネルギー構成の目標は再エネが36~38%(第5次エネ基では22~24%)と前回より大幅に割合を増やし、一方、原子力を20~22%で据え置き、化石燃料系(石炭・石油・LNG)を41%、新たに水素・アンモニア1%が初めてミックスに組み込まれた。今回の野心的ともいえる再エネの主力電源化は世界の政治・経済の動きの中で、再エネを使わない企業は国際サプライチェーンから外されてしまうような動きをも先取りして対応したといえる。なお、これまで「最大限活用」がうたわれてきた原子力に関しては、新増設やリプレースなどについても触れていない。
 こうした再エネ導入活性化の動きの中で、風力発電の急進展が目立つが、2020年には太陽光と風力の合計設備容量が1,500GWに達し、原発(約400GW)の4倍近くにもなったのである。

2.世界と日本の風力発電の現状

 世界の風力産業にとって2020年はCOVID 19のパンデミックにもかかわらず史上最高の年となり、前年比53%にも相当する93GWが新規に導入され、洋上風力も6.07GWが新規導入された。
世界の風力発電の累積導入量の推移を図1に示すが、2020年末には、約34万基の大型風車が回り、設備容量は734GW(原発730基相当)に達している。累積導入量の多い国は、中国288GW、米国122GW、ドイツ63GW 、インド39GW、スペイン27GWと続き、日本は4.4GW(2521基)で22位に低迷しているのが現状である。また、洋上風力発電の累積導入量のトップ5は、1位は英国10.21GW(28.9%)、2位は中国10GW(28.3%)、3位はドイツ7.73GW(21.9%)、4位はオランダ2.61GW(7.4%)、5位はベルギー2.26GW(6.4%)である。
 特に、その国の電力に占める風力発電の比率(導入率)については、デンマーク48%、アイルランド38%、ドイツ27%、英国27%、ポルトガル26%、スペイン22%、スウェーデン20%など7か国が20%を超え、10%を超える国はオランダを始め8か国になる。世界全体の電力の8%は風力発電が供給し、原子力発電大国フランスでも9%が風力であるのに対し、日本はわずか1%にすぎない。1) 2)

2.1 欧州における洋上風力発電導入の動き

 欧州においては陸上の風況の良いサイトが次第に乏しくなり、景観問題や騒音問題も少ないことから1990年代初頭から洋上への進出が検討されてきた。本格的に洋上風力発電が始まったのは2000年代に入ってからで、英国を中心に拡大し、2020年末には22.4GWに達し、欧州主要5か国を中心に5400基の大型風車が洋上で回っている。欧州における国別の洋上風力発電導入量は2020年現在、英国10.4GW(42%)、ドイツ7.7GW(31%)、オランダ2.6GW(10%)、ベルギー2.3GW(9%)、デンマーク1.7GW(7%)、となっており、これら5か国で99%を占めているが、圧倒的に英国が多いことがわかる。

図1 世界の風力発電導入量の推移
©IRENA Visit www.irena.org/statistics for more information
図1 世界の風力発電導入量の推移

 さらに欧州の洋上で回っている風車のメーカーは、Siemens Gamesa16.9MW、3674基(68%)が多く、次いでVestas、5.7 MW, 1290基 (24%)の2社の寡占状態である。
 また、欧州での洋上風力発電事業者は20社以上存在するが、2020年までの累積でトップ7を挙げると、Oersted(17%), RWE Renewables(10 %),Vattenfall(6%), Macquarie Capital(6%), Iberdrola Renewables (4%), Global Infrastructure Partners(4%), Netherland Power(4%), となっており、OerstedやRWE など複数の企業が既に日本に進出している。
 また、近年の洋上風力発電用の風車の大型化も顕著で、2010年時点で平均3MWであったものが、2017年には6MW、そして2020年には8.2MWに達している。大規模洋上ウィンドファームのトップ10は、Hornsea Project I(1,218MW, )を筆頭に英国が6件、オランダが3件、ドイツが1件となっており、海洋国の英国が圧倒的に多い。
 これらの洋上ウィンドファームの多くは北海に設置されているが、北海は偏西風帯にあり風況に恵まれている上に、遠浅で水深が深くないことから着底式の設置に有利である。しかし、最近ではウィンドファームの平均水深も44m、平均離岸距離も52kmと、陸地から離れ、水深の深い海域に展開されていく傾向がある。
 さらに欧州諸国は以前、北海の海底油田の工事をしていたことから海洋構築物の設置経験があり、そのための特殊船舶も多く保有するため、これを洋上風力発電設置に転用できることも有利であった。欧州風力発電協会では洋上風力発電の導入目標を、2019年11月には、「2050年までに洋上風力発電450GW開発計画」を公表し、このうちで英国は80GW(原発80基分)を占めており、これにより、EU全体の電力需要の50%(洋上のみでは30%)を供給するとしている。3) 4)
 特に洋上風力導入に熱心な海洋国の英国においては、世界中の風力発電企業の研究施設や製造拠点を集積し、英国の一大産業として発展させる壮大な計画があり、事業規模は13兆円、2030年までに7000基以上の洋上風車を設置して、国の電力需要の3分の1を賄うとしている。

2.2 米国およびアジアでの洋上風力発電導入の動き

 米国における風力発電の導入量は2019年3月時点で、97GW(総本数56,000基)に達しており、これにより米国の電力需要の6.5%を賄っている。再エネに占める風力の割合は、1998年には1%に過ぎなかったが、2008年には7%になり、さらに2018年には22%にも達している。これに伴って発電コストも2010年には円換算で14.8円/kWhであったものが、2018年には4.6円/kWhまで低下している。導入量の多いのはテキサス州の25GWを筆頭に、アイオワ州8GW、オクラホマ州8GW 、カリフォルニア州6GW、カンザス州6GW、そしてノースダゴダ州の3GW と続く。
 一方、洋上風力発電も勢いづいており、ニューヨーク州では2035年までに9GW、マサチューセッツ州でも2035年までに3.2GWと高い導入目標を掲げている。米国全体では、2023年までに2.1GW、2030年までに18GWという目標を掲げており、8兆円規模のビジネスチャンスになるものと期待されている。なお、米国の風力発電導入を促進してきたPTC(生産税控除)が2019年末で終了したことから、陸上風力は2021年以降は導入量が減速するのに対して、2023年以降は洋上風力発電が増大するものと見込まれているが、課題は送電線の増強である。5)
 また、アメリカ以外では、中国、ベトナム、台湾、日本もシェアを伸ばす予想され、英国と同様な海域策定計画は、アジア諸国でも検討されており、例えば台湾では2025年までに5.5GWの開発を予定している。6)


次回に続く-



参考文献

  1.  Global Wind Energy Council; Global Wind Report 2019, (2020).
  2.  IEA Offshore Wind Outlook 2019
  3.  山家公雄;日本の電力改革・再エネ主力化をどう実現する, インプレスR&D (2020)
  4.  Offshore Wind Europe-key trends and statistics (2020)
  5.  山口日出夏;バイデン大統領就任後の米国の環境政策と風力エネルギー, 第21回風力エネルギー利用総合セミナーテキスト, 足利大学総合研究センター, 2021年6月
  6.  石原孟; 洋上風力発電の現状と将来展望, 第21回風力エネルギー利用総合セミナーテキスト, 足利大学総合研究センター, 2021 年6月.


【著者紹介】
牛山 泉(うしやま いずみ)
足利大学理事長

■略歴
1942年長野県生まれ。1971年上智大学大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士。
エネルギー変換工学を専門とし、主に風力発電など再生可能エネルギーの研究に従事。1971年より足利工業大学(現足利大学)機械工学科講師、助教授、教授を務め、2008年度より2期8年間学長。2016年度より足利大学理事長、大学院特任教授。日本機械学会フェロー、1977年に足利工業大学において日本風力エネルギー学会創設、元会長、日本太陽エネルギー学会元会長、フェロー、日本技術史教育学会前会長、経済産業省(METI)および新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)洋上風力発電委員長、新エネルギー財団(NEF)風力委員長、などを歴任。論文は風力関連を中心に160件、著書は単著共著合わせて26冊(うち5冊は中国、台湾、韓国で翻訳出版)。受賞はWWEC世界風力エネルギー会議栄誉賞、WREC世界再生可能エネルギー会議パイオニア賞、同功労賞、文部科学大臣賞、日本風力エネルギー学会特別表彰など12件。

浮体式洋上風力発電の水槽模型試験における計測技術について (1)

(国研)海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所
中條 俊樹

1.はじめに

 我が国の洋上風力発電は、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(「再エネ海域利用法」)が2019年に制定される等、環境整備が進みつつある。さらに、「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」は洋上風力産業ビジョン(第1次)1)において、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札と位置付け、導入目標を2030年までに1,000万kW、2040年までに浮体式も含む3,000万kW~4,500万kWの案件を形成するとしている。
 浮体式洋上風力発電は着床式に比べ普及は遅れてはいるものの、国内外で複数の実証試験を経て商用展開が開始されている。我が国においては福島県沖の実証研究は終了したが、グリーンイノベーション事業2)の開始もあり、開発の機運が再び盛り上がっている。
 浮体式洋上風力発電の安全性の検証には、数値計算と並び水槽模型試験が重要である。本稿では、当所で近年実施した水槽試験について、風車の大型化と合わせ紹介する。

2.水槽模型試験の目的と供試模型

 水槽試験の主な目的は、構造物の基本的なコンセプトの確認や安全性の検証等が考えられるが、より詳細には、例えば以下が挙げられる3)

・ 浮体形状ごとの動揺等を把握する実験
・ 動揺制御を目的とした実験
・ 数値解析の検証を目的とした実験

 また、物理的・数値的な実験結果に基づいて、船舶や海洋施設に関する模型試験や実船試験の標準的手法を提言する世界的な団体であるITTC(International Towing Tank Conference)によれば、試験目的を新技術の開発のレベルを評価するための指標である技術成熟度(TRL: Technological Readiness Levels)と模型縮尺について関連付け、コンセプトの確認や大まかな意味での最適化が主目的となるTRL1~3で1/100~1/25、実機に向けた種々の環境要因を取り込んだ性能評価(主に水槽実験、規模と目的によっては実海域)が主目的となるTRL4~6で1/25~1/10、主に実海域での実証実験であるTRL7~で1/5~1/1の縮尺を想定している4)
 一方で、試験施設には寸法上、性能上の制約があり、必ずしも狙った通りの試験が実施できるわけではない。上記3)によれば、可動部や制御系を搭載する最も多くの試験模型は、縮尺1/30~1/70程度である。
 近年、風車は図1に示すように大型化しており、その大きさ・質量を幾何学的相似則で縮尺すると、10MWおよび15MWの参照風車は表1の通りとなる。縮尺1/50の場合、15MW風車ではロータ直径は5m近くになり、送風範囲としては6m×5m程度以上の送風面積が必要となる。この送風面積は、浮体の波浪中の動揺を考慮すれば、より広い面積が必要となる。このような送風面積に対応する送風機を設置可能な試験水槽は極めて少ないと考えられる。なお、風速はフルード則により近似することが多いが、翼性能の観点で広く用いられるレイノルズ則とは両立できないため、水槽試験ではスラスト荷重やタワー・浮体水面上に働く風荷重を相似させることを優先することがほとんどである。

図1 風車の発電容量とロータ直径の推移
図1 風車の発電容量とロータ直径の推移 5)
表1 大型風車の寸法・質量と模型縮尺の関係
  Actual model 6)
Turbine Rotor diameter (m) Hub height (m) RNA mass (t) Tower mass (t)
DTU 10MW 178.3 119 674 628
IEA 15MW 240 150 1446 1211
  Scale mode (1/100)
Turbine Rotor diameter (m) Hub height (m) RNA mass (kg) Tower mass (kg)
DTU 10MW 1.78 1.19 0.67 0.63
IEA 15MW 2.40 1.50 1.45 1.21
  Scale mode (1/50)
Turbine Rotor diameter (m) Hub height (m) RNA mass (kg) Tower mass (kg)
DTU 10MW 3.57 2.38 5.39 5.02
IEA 15MW 4.80 3.00 11.57 9.69

次回に続く-



参考文献

  1.  経済産業省、洋上風力産業ビジョン(第1次)、2020.
  2.  国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構、グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化プロジェクトに係る公募について、2021.
  3.  公益社団法人 日本船舶海洋工学会:第2 部 日本船舶海洋工学会浮体式洋上風力特別検討委員会 水槽実験技術WG 平成26 年度報告書,浮体式洋上風力特別検討委員会 最終報告書,2015.
  4.  ITTC (International Towing Tank Conference), Recommended Guidelines Model Tests for offshore Wind Turbines, 2014.
  5.  国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構、浮体式洋上風力発電技術ガイドブック、2018.
  6.  COREWIND, COst REduction and increase performance of floating WIND Technology (COREWIND), 2020.


【著者紹介】
中條 俊樹(ちゅうじょう としき)
(国研)海上・港湾・工区技術研究所 海上技術安全研究所
 洋上風力発電プロジェクトチーム チームリーダー
(兼)海洋先端技術系再生エネルギー研究グループ グループ長

■略歴
2008年 独立行政法人 海上技術安全研究所入所
2011年 同 主任研究員
2020年 洋上風力発電プロジェクトチーム チームリーダー
2021年 海洋先端技術系再生エネルギー研究グループ グループ長
海洋構造物、特に浮体式洋上風力発電の波浪中応答評価、安全性評価に従事。

“3E+S”とは地産地消 -自然エネルギ―の利活用は自然と共に生きる事- (1)

Xodus Group Japan(株)
代表取締役社長
小川 逸佳

 日本には古来より「地産地消」という考えがある。それを日本のエネルギー政策基本方針である3E+Sに当てはめてみると、最後の「S」は安全性であるSafety、三つのEはそれぞれ、Energy Security(自給率)、Economic Efficiency(経済効率性)、Environment(環境適合)を指す。更に経済産業省より、2021年10月に第六次エネルギー基本計画(1)が発表されているが、優先順位は、まずは安全性、それからエネルギーの安定供給、経済効率性の向上により低コストでのエネルギー供給、最後に環境への適合を図るという、基本計画本文ではカーボンニュートラルを一番先に取り上げながらも、実質的な内容においては、脱炭素化に重きを置く欧州とは乖離した順位付けになっている。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2020/005/

 3E+Sは経済産業省の中でも、資源エネルギー庁が主だって進めている政策だが、その大前提には日本には資源がないという概念がある。資源のない、すなわち他国からの輸入エネルギーに頼るという前提のもと、エネルギーの安定供給、経済性、二酸化炭素ガス排出削減などを考慮したエネルギーミックスを検討するというものが、3E+Sの位置づけであるといってもよい。そこには投資でも行かされている、リスクの分散化という概念も機軸となっている。リスク分散によって、政権交代や国交による輸出国の輸出制限のリスクを考慮し、一国に頼りすぎない、偏りのないエネルギーのポートフォリオを作るというのが、言い換えればこの政策の目指すところである。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2020/005/

 3E+Sは方針としては結果的に正しいとしても、もし前提が間違っていたらどうだろうか?資源のない国日本、それは本当だろうか?なぜなら、ここで資源と考えられているものは、主にエネルギーの元になる石油と天然ガスを指し、世界で脱炭素化の波が吹く中、それは本当に「資源」と言えるものなのだろうか?ここで一つ明確にしたいことは、現人類が生きている限り、石油と天然ガスは「原材料」として使われるため、技術革命や人間自体が根本的に変わらない限り、プラスチックの原料として、または化学品の元として、化石燃料の採取は続けられる。しかし、原材料としての化石燃料は、脱炭素化という目線から見れば、燃やしてエネルギーを取り出す過程で起こる、二酸化炭素及びその他有害ガスが出ないので問題ではないということだ(2)。

 しかし、前述の通り、日本の3E+Sにおいては、資源とはあくまでも主に石油と天然ガスなので、今欧米中心に世界からどんどん淘汰されていく「資源」を元に、エネルギー政策を立ててしまってもよいのだろうか?また、その化石燃料を主だった資源としてエネルギー政策に入れている限り、国際リスクを完全に取り除くことは不可能である。

 更には3E+Sは決して新しい概念などではなく、日本に昔からある「地産地消」である。結果から言うと、国産でエネルギーを賄うことが出来れば、一気に3E+Sが達成できるということだ。また、本当の意味での3E+Sを達成するためには、再生可能エネルギーの割合を最終的には100%にする必要があるとも言える。それでこそ初めて自給、安全性、経済性と脱炭素化が可能になる。自然エネルギー(3)を資源として日本を見ると、日本は決して資源に乏しい国ではない。なぜなら日本には広大な海域があるからだ。

 しかし、現状では日本における自然エネルギーの導入率は欧州や中国に大分後れを取っている。またその内容も太陽光と水力で18%に留まり、残りの82%のエネルギー需要は輸入に頼っているということだ(4)。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2020/007/#section1

主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較
主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較

 エネルギーの定義はさておき、生活の利用法で括ると、具体的に熱利用(家庭用、工業用)と、電気利用(石炭、石油、ガスを燃料とする火力タービンや原子炉)としての利用がある。自然エネルギーは直接電気に変換されるが、熱は電気では代替えすることが難しい分野である。その為熱の脱炭素化にはグリーン水素やグリーンアンモニアが検討されている。


次回に続く-



参考文献および注釈

  1. https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html
  2.  しかし、石油を運ぶ途中で事故が起きた場合のオイルによる海洋汚染、また天然ガス採掘中にどうしても漏れてしまうメタンガスの温室化効果については別とする。
  3.  再生可能エネルギーも無尽蔵ではないため、自然エネルギーという言葉をあえて使用している。
  4.  原子力発電の原料も輸入である。


【著者紹介】
小川 逸佳(おがわ いつか)
Xodus Group Japan株式会社 代表取締役社長

■略歴

  • 2019年7月~2021年6月
  • 英国国際通商省 エネルギー・インフラストラクチャーセクター 対英投資上級担当官 英国洋上風力、洋上風力海底送電線、潮流・波力発電などの自然エネルギー・エリアにおける、日本投資家・企業へのアドバイスと英国政府、自治体、学術機関や諸団体・協会との連携を一環としたプロジェクト・サポート。 また、産業クラスター中心の二酸化炭素回収・貯留プロジェクト、港湾の脱炭素化プロジェクト化。 水素ハブの形成、水素サプライチェーンとオフテイカーの連携と実証。
  • 2021年6月~2012年11月
  • Star Magnolia Capital Ltd. Co-Founder & Partner 香港と上海に拠点を置く、マルチ・ファミリーオフィスの超長期投資ファンド立ち上げと運用。ヘッジファンド、プライベート・エクイティファンドへの投資以外にも、ブロックチェーン事業や植物工場案件などを担当。
  • 2010年10月~2009年7月
  • Sullivan & Cromwell LLP ニューヨーク州弁護士

学歴
2009年 University of Pennsylvania Carey Law School卒業