Webジャーナル「センサイト」創刊によせて
筆者がセンサ世界に入ってから半世紀になる。この間、計測センサは産業発展、社会発展に大きく寄与してきた。1960年代は[計装]として石油精製、製鉄、化学、電気機械工場などで基幹的な役目を担い、1980年代になってからは自動車への応用による量産センサ、2000年以降は携帯電話などへのデバイスセンサへと進展してきた。近年は個人・社会・産業全体を含む社会システムへの対応が重視されている。特に[社会実装]の考えが定着、[Big Data]、[M2M]、[IoT]さらには[Sensor of Things]など、まさにセンサなくして社会システムが成り立たなくなってきている。しかし、果たして今のフィールドセンサは社会責任を果たしているであろうか?ここでは筆者の経験をもとにフィールドセンサの課題について考察する。
1 課題解決への努力[ソリューション]
センサが機器内で使われている場合は一部品であったがフィールドに使用されるようになると環境条件・使用条件などが多様化し、それぞれへの対応設計すなわち[ソリューション]に向けた回答が要望される。これからのセンサ供給側はこの[ソリューション]に対応できる力の強化が必要となる。
2 信頼性確保への努力
フィールドセンサでは、外部環境も複雑であるばかりでなく長期間連続計測などの要望が出てくる。例えば、ダムでのセンサ寿命は10年場合によっては30年が要求されるなど製品の保証機関1年を超える別な信頼性が必要になる。加えて次のような要求が出てくる。
2.1 互換性: フィールドでは長期間使用の中で、センサの交換が行われることが起きる。その場合に異なるセンサ供給側の相互互換性と交換作業の容易さが重要である。
2.2 データの継続性: センサを交換した場合、センサ出力のデータの継続性が重要となる。最近は、システム運用でソフトが重要な役割を担う場合が多く、センサ交換した時のデータフォーマット、プロトコルなどが規定される必要がある。
2.3 校正と実装技術: フィールドで長期間使用する場合、ドリフトなどの経年変化が起き定期的な校正が望まれる。その場合、センサの脱着・現場校正方法などの現場実装技術が重要となる。
3 フィールドセンサへの課題解決
フィールド向けセンサの要望を供給側単独で解決できる範囲は限られている。そこで現場に即した課題対応を担う以下の機能を有する第3者的な活動機関・組織を設立することが望ましい。
3.1 ソリューション提供: ニーズに応じた最適なソリューションを提供する。あるいは企業から提起されたソリューションの妥当性を検討・評価する。
3.2 検収助言: センサが現場フィールドに適応できているか納入検査する時の検収事項などを助言する。
3.3 現場設置認証: センサの[設置技術基準]のようなガイドラインを作成提供、センサ機能を十分に引き出せる設置工事を行う助言をする。
3.4 認証機関: センサが必要とされるフィールド対応に適するか評価・認証する。センサをグレード分類しユーザが安心して選定できるようにする。
3.5 フィールドエンジニア制度: 現場に応じたセンサの選定から施工方法、維持管理方法などについて的確なアドバイスを行うエンジニアを育成、資格認定及びスキル維持を行う。
これから要望が増加するフィールド向けセンサの課題とその解決案について私案を述べた。
紙面の都合から要点の列挙にとどまったが、今後SENSAITがこれら課題解決のための引き金になることを望んでいる。