用語:LPWA(Low Power Wide Area – 省電力広域データ通信)は、最近、IoT(Internet of Things)で、多く語られるようになったキーワードの1つである。電波の送受信装置は約10mm角~20mm角と、非常に小さなPCB(電子回路基板)に載るものであり、モジュール部品(複数の電子回路素子を組み合わせて1つの部品としているもの)として総務省の認証が受けられ、それを使っていることが証明できる限りにおいては、無線局設置の免許を必要とせずに、無線での数kmのデータ通信ができる仕組みのことだ。
日本では「Senseway社」が4月18日に、LPWAの一種であるLoRa(https://www.lora-alliance.org/)を使い、三井不動産との提携を発表している。商業施設やマンション等の屋内でのLPWAの利用を考えており、建物の隅々に温度センサーなどを設置して、これまでの空調などのシステムをより低いコストて構築できる。また、東京近郊の八王子市では、小規模な河川の氾濫などの情報をいち早く知らせる防災システムが市中全域で出来上がっている。また、福岡市もNTTネオメイト社との提携で市内のほとんどの地域をLoRaWANでつないでいる。まだまだ他にもLPWAのシステムを使ったデータ通信システムで地域をつなぎ、防災などに役立てよう、という動きは多い。他にも、インターネットで「LPWA 防災」のキーワードで検索すると、数多くの広域システムが防災の名の下に多く開発・運用されていることがよくわかるだろう。
●世界中に数多くあるLPWAの規格
他にもLPWAには日本でよく使われることになるであろうと思われる「LoRa」の他に「SigFox(仏)」なども名乗りを上げている。また、諸外国に目をむければ、さらに長距離の通信もできる、強力な電波を使うもの(←これ、Low Powerなのか?)というものも多く発表されており、非常に大きな世界的な流れになっている。世界中のLPWAの規格はおそらく数十はあるだろう、と言われているが、正確な数字は現状把握できていない。
●大規模災害対応を求められるLPWAシステム
特に、日本では2011年3月11日の東日本だ震災にともなう多くのインシデントが現実に発生し、その差異はインターネットの接続や電話線、携帯電話網なども途切れることが周知されていることと思う。であれば、LPWAを使った防災システムでは、インターネット網を使わないLPWAのみでの接続が重要な意味を持ってくることはあきらかであろう。また、当然だが、これらの災害時には、LPWA網を構成する個々のシステムのハードウエアが入る筐体の耐水性や、耐震性などももちろん問題になるだけではなく、電力供給も途切れることがあるために、太陽電池や、夜間運用のための蓄電池などの独立した電源システムも必要になることは言うまでもない。当然だが、これらの周辺機器も含めて、防水や防振は当たり前の属性となる。
また、LPWAのほとんどの規格では、通信スピードの遅さのみならず、時間あたりに通信できるデータ量に制限があり、動画のデータなどは現状ではまず送ることができない。無線LANと同じ感覚では使えないのだ。これは技術というよりも、法の問題なのだが、大規模災害時には、問題となることもあるかもしれない。今後は防災システムとしては「映像が送れない」というのは大きな問題となる可能性もある。しかしながら、非常に低い電力消費で常に低価格で災害監視ができる、というメリットは測り知れず、今後は世界各地での防災などに多く使われることが期待されている。
また、災害時などに使われるシステムは、非常時ではないときでも時々使って、いざというときにちゃんと動くことをいつでもテストしている、という機能も必要になる。昨今のシステム構築では「コスト」も重視されることが多く、普段の接続確認や有効活用などがどこまで考えられているか?ということも不安でもある。