劣化判定センサによる劣化診断・余寿命推定技術

三菱電機(株)受配電システム製作所 受配電システム部


<診断サービス名>
劣化判定センサによる劣化診断・余寿命推定技術

「劣化判定センサによる劣化診断・余寿命推定技術」は、センサを用いて受配電設備における有機絶縁物の余寿命(使用限界)を推定する技術である。これにより、従来の劣化診断技術では対応できなかった「無停電診断」と「専門作業者の派遣不要」を実現した。

受配電設備の更新計画における有機絶縁物の重要性
受配電機器は電気エネルギーを工場や建物へ供給する役割を担っている設備であり、長期にわたり信頼性・安定性を確保して稼動することが求められる。この受配電設備には導体の保持や相間の絶縁のため、非常に多くの有機絶縁物が使用されているが、そのほとんどが非修理系(補修も交換も不可能な部品)である。
また、有機絶縁物は汚損物の付着による化学変化などで材質が変化し、絶縁性能が劣化する。絶縁性能が一定以下まで劣化すると部分放電が発生する。部分放電の発生は有機絶縁物の劣化を更に進展させるため、電気的トラブル(地絡・短絡)に至る危険性が非常に高まる。電気的トラブルは操業被害などを含む波及事故に直結する。
このように、非修理系かつ劣化が事故に直結する有機絶縁物の寿命を、受配電設備としての寿命と言っても過言ではない。
しかし、有機絶縁物には経過年による更新基準(TBM※1)のみであり、使用状態による更新基準(CBM※2)が確立されていなかった。このため、受配電機器に用いられる有機絶縁物の劣化を精度よく診断するための技術が望まれている。
※1 TBM:時間基準保全、Time Based Maintenanceの略。一定期間で点検や更新を行う保全。
※2 CBM:状態基準保全、Condition Based Maintenanceの略。設備の状態を把握もしくは予知して点検や更新を行う保全。

有機絶縁物の劣化診断・余寿命診断技術
三菱電機では有機絶縁物の劣化に起因する事故を回避するため、部分放電の発生を使用限界と考え、診断時から部分放電発生までの期間を余寿命として推定する劣化診断技術を提供している。余寿命の明確化により事故リスクを最小限に抑えた更新計画立案をサポートすることで、多くのユーザの安全・安心な設備運用に貢献してきた(診断実績3000配列以上、2018年度時点)。

従来劣化診断の制約
従来の劣化診断技術は有機絶縁物の余寿命を明確にするためには有用であるが、以下の制約がある。
●診断対象設備の停電
絶縁物表面から付着物を採取するため、診断の設備は停電が必須である。
●専門技術者の派遣
付着物の採取を行う専門技術者の派遣費(現地作業費含む)が必要であるため、診断費用が高額となる。


劣化判定センサによる劣化診断・余寿命診断技術
前述の制約を解決するため、停電不要、専門技術者の派遣不要な有機絶縁物の劣化診断技術を開発した。センサによる劣化診断は以下の手順で実施する。

(1) 当社から郵送したセンサキットをユーザが設備内に設置。
(2) 6か月間、設備内の環境情報を測定。
(3) 測定完了後、センサを当社に返送。
(4) センサが収集した設備内の環境情報と従来の劣化診断結果データベースを用いて有機絶縁物表面の付着物を推定。
(5) 従来劣化診断技術のアルゴリズムを用いて有機絶縁物の余寿命(部分放電発生までの期間)を推定。

センサによる劣化診断のメリット
●無停電診断
センサ本体は受配電設備内の非充電部に設置可能であるため、診断時に設備の停電が不要である。従来の劣化診断では対応できなかった、止められない設備の劣化診断を実現した。
●専門技術者の派遣不要
センサはユーザにより設置が可能であるため専門技術者の派遣が不要となり、診断費用低減につながる。

今後もセンサを初めとした有機絶縁物の劣化診断手法をさらに進化させ、より多くのユーザに適用してもらうことで、受配電設備の安全・安心な運用に貢献していく。

主な仕様

診断対象設備 納入後20年以上経過した受配電設備(他社盤含む)
診断対象絶縁物 エポキシ,フェノール,不飽和ポリエステル
診断内容 放電発生までの余寿命(使用限界)
診断対象設備の公称電圧 440V~77kV(66,77kVは三菱製受配電設備のみ対象)
設置方式 マグネット貼り付け
重量(本体) 50g
寸法(本体) 120×110×14 mm

本劣化診断に関するお問い合わせ:
三菱電機株式会社 受配電システム製作所 受配電システム部 予防保全技術課
〒763-8516 香川県丸亀市蓬莱町8番地
TEL:0877-24-8055
E-mail:Swg.Consultant@nd.MitsubishiElectric.co.jp