日本電波工業(株)(NDK)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が真空環境下において宇宙用材料等から放出されるガス(アウトガス)を計測するために共同で研究開発した高精度ガス計測センサ「Twin-QCM」について、このたびNDKは海外向け販売を本格的に開始したと発表した。
(画像は「Twin-CQCM センサモジュール」)
海外販売にあたり、欧州委員会(EU)の基準適合マークである「CEマーキング(*1)」対応を行った。これによりTwin-QCMは、国際的な安全性の基準を満たすとともに、EU域内への輸出に必要な安全指令に適合していることが証明され、欧州市場での販売が可能になるとのこと。
Twin-QCMは、従来品に比べて、その優れた精度、温度補償機能の安定性から、今後、国内外の宇宙機開発におけるコンタミネーション(汚染)(*2)対策に大きく貢献できるもの。JAXAでは人工衛星で使用される材料のアウトガス(コンタミネーションの原因)測定にすでに使用している。今後は使用範囲を拡大し、人工衛星実機スケールでの測定にも本センサを適用して、宇宙機のコンタミネーション対策の最適化を進めていくという。
NDKでは、宇宙産業以外の用途として車載機器用接着剤、放熱材等有機材料の分析もターゲットとしていく。JAXAと共同で研究開発した成果を利用したことを示す“JAXA COSMODE(*3)”付与製品として、コンタミネーション抑制のためアウトガス計測を必要とする有機材料、半導体、建材メーカー市場等一般産業分野への展開を本格化する予定だとしている。
(本センサの開発結果については2017年3月に発表済み。2018年11月より“Twin-CQCM”、“Twin-TQCM”の2種の受注活動を実施中。)
(*1) CEマーキング
欧州地域で販売される、指定の製品に貼付を義務づけされた基準適合マーク
(*2) 宇宙機開発におけるコンタミネーション(汚染)
宇宙空間においてはプラスチックや接着剤等の材料から放出されるアウトガスによるコンタミネーション(汚染)が問題となる。例えば、地球観測衛星や天文観測衛星の望遠鏡レンズ表面等にアウトガス由来の物質が付着しコンタミネーションが生じると、光学性能や画質を低下させ、ミッションとしての衛星寿命が短くなってしまう。このため、材料からのアウトガスの発生を可能な限り抑えられるよう、正確な計測結果に基づく部材選定が重要になる。
(*3) JAXA COSMODE
企業等と連携し、宇宙開発の成果を広く社会に還元し、宇宙航空の魅力を地上の生活へ届けるためJAXAが展開している「ブランド」です。COSMODE付与対象となるのは、JAXAの特許・技術を利用して生まれた商品や、JAXAの画像・映像等の著作物を活用し生まれた商品
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プレスリリースサイト(JAXA):http://www.jaxa.jp/press/2019/07/20190712b_j.html