3.Sigfox通信の特長
Sigfox通信はセンサデータの送信を主に行うことを想定した非常に単純化された通信仕様となっており、デバイスは電池で長時間運用することが可能だ。上り通信は最大12バイトのデータを1日140回まで送信することができる。12バイトは小さなサイズではあるものの、センサデータであれば十分だ。送信時に下り要求フラグを立てることで、8バイト固定長の下りメッセージを送信することもできる。これは、デバイス制御や設定変更などに利用できる。
また、SigfoxはUNB(Ultra Narrow Band)と呼ばれる超狭帯域通信技術であり、日本のISMバンド920MHz帯中の192kHzの帯域幅において、100Hz幅のみを使用してメッセージを送信する。これにより端末の多元接続を実現している。
4.シームレス・グローバルローミングサービス「Monarch」
Sigfoxは世界各国の通信基準に準拠するため、RC(Radio Configuration)と呼ばれるリージョンを設けている。
RC1 | RC2 | RC3 | RC4 | RC5 | RC6 | |
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リージョン | 欧州 | 北中米/南米 | 日本 | 南米/APAC | 韓国 | インド |
周波数(MHz) | 868-878.6 | 902.1375 -904.6625 |
920.5-929.7 | 920.1375 -922.6625 |
922-923.4 | 865-867 |
EIRP(dBm) | 16 | 24 | 16 | 24 | 14 | 16 |
Sigfoxには、基地局が送信するビーコンを受信してこのRCを自動的に識別し切り替える、シームレス・グローバルローミングサービス「Monarch」がある。このサービスを利用すると、IoTデバイスが海外へ移動したとしても通信を維持することができるため、海外輸送されるアセットのトラッキング等が容易に実現できる。
5.Sigfoxジオロケーションサービス「Atlas」
Sigfoxは位置測位に強みを持つLPWAでもある。GPS情報をメッセージに乗せて送ることももちろんできるが、それ以外にも独自の位置測位サービスを提供しており、ニーズに合わせて利用することができる(図1)。
Atlas Native(基地局ベースの位置測位で、精度数km以内)であれば、低消費電力でおおよその位置を特定でき、特殊なセンサを必要としないためデバイスコストを抑えることができる。Atlas Wi-Fi(Wi-Fiアクセスポイントを利用した位置測位で、精度数百m以内)であれば、屋内での利用も可能となる。また、今後リリース予定のAtlas Bubble(精度10m以内)であれば、さらに詳細な位置を把握することができる。
次週に続く-
【著者略歴】
宮下 純一(みやした じゅんいち)
京セラコミュニケーションシステム株式会社
LPWAソリューション事業部
LPWAソリューション部
LPWAソリューション課 課責任者
2005年京セラコミュニケーションシステム株式会社入社、研究部配属。
以降、広域無線LANシステム、地デジ中継局FRCワイヤレスリンクシステム開発、自治体向けソリューションの開発普及、人工知能の活用によるセキュリティシステム開発、画像認識サービスLabellioの活用、顔認証システムの開発普及に従事。
2019年1月、Sigfoxネットワークの日本展開を加速させるため、技術責任者としてLPWAソリューション部に異動。