1.加速するIoT
IoT市場が加速している。IDC Japanの調査によれば、国内IoT市場の市場規模は、2017年の支出額は5兆8160億円で、2022年までに年間平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)15.0%で成長し、2022年の支出額は11兆7010億円になる見込みだという。また総務省の平成30年版情報通信白書によると、IoTデバイス数は2017年には約270億、2020年には約400億の予測としている。言い換えれば、あらゆるモノからデータの価値を収集できる時代の到来とも捉えることができ、このインパクトは、人々のライフスタイルを変革させる可能性を秘めたものだと筆者は考えている。
IoTサービスは、情報を取得するセンサ、情報を伝えるネットワーク、情報を収集し価値へと変えるソフトウェアの組み合わせで実現する。これまでに数多くのPoC(Proof of Concept)を経て、実用サービスが立ち上がりつつある一方で、PoCから先に進めないサービスも数多く存在している。IoTサービスの成功には、サービスの拡大に比例して大きくなるデバイス費用と通信費用をいかに抑えるかが重要なファクターとなる。
今、余分なものを削ぎ落とし、必要十分な機能を安価に提供できるIoTに特化したネットワークが求められている。
2.LPWAネットワーク「Sigfox」とは
SigfoxはLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークのひとつで、フランスのSigfox社が提供するグローバルIoTネットワークである。Sigfox社と契約した各国のオペレータがインフラの構築・運用を行っており、2019年4月現在、全世界60か国でサービス提供されている。日本国内においては、筆者が所属する京セラコミュニケーションシステム株式会社が電気通信事業者として展開している。人口カバー率は2019年2月時点で94%に達しており、都心部に限らず多くの場所がすでに通信可能エリアとなっている。
Sigfoxのアーキテクチャは非常にシンプルだ。①デバイスからデータ送信。②受信した基地局全てからSigfoxクラウドへデータ送信し蓄積。③Sigfoxクラウドからユーザ側アプリケーションへデータ転送。基本的には以上である。この統一された仕様で世界中どこからでも利用できる。また課金モデルに関しても、自国のオペレータと契約すれば他国での利用も可能であり、サービス提供国ごとに異なる事業者と契約を結ぶと言った煩雑な対応は必要ない。
さらに、利用者自身でインフラ整備をする必要がないにもかかわらず、通信費用年額100円から※という超低価格による通信サービスを提供している。また通信モジュールの価格も2ドル程度からと低価格となっている。
今後、モバイル通信において高速・大容量の5Gが全盛となることは間違いないだろう。しかし、単純なセンサデータの収集であれば、IoT専用サービスを利用するという選択肢がある。Sigfoxはシンプルと低価格に徹底的にこだわり抜いた、いわば「0Gネットワークサービス」なのである。
※ 通信料金は契約回線数および1日あたりの通信回数によって異なる。
次週に続く-
【著者略歴】
宮下 純一(みやした じゅんいち)
京セラコミュニケーションシステム株式会社
LPWAソリューション事業部
LPWAソリューション部
LPWAソリューション課 課責任者
2005年京セラコミュニケーションシステム株式会社入社、研究部配属。
以降、広域無線LANシステム、地デジ中継局FRCワイヤレスリンクシステム開発、自治体向けソリューションの開発普及、人工知能の活用によるセキュリティシステム開発、画像認識サービスLabellioの活用、顔認証システムの開発普及に従事。
2019年1月、Sigfoxネットワークの日本展開を加速させるため、技術責任者としてLPWAソリューション部に異動。