欠陥検査に役立つ光ファイバセンサ(2)

株式会社レーザック
代表取締役社長
町島祐一

2.「耐電磁ノイズ性・耐雷性」…AE(Acoustic Emission)法による亀裂モニタリング

人間の耳にも聞こえない超音波帯域で発生するマイクロクラック(微小亀裂)を捉えることは材料劣化の予兆検知として意義がある。特に、高い電磁ノイズ環境であったり、可燃性ガスに満ちている箇所(防爆環境)では従来の電気式のAEセンサは使用が難しいため、このような場合に光ファイバによるAEモニタリングは有効な手段である。
本事例ではガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の一軸引張破壊試験において光ファイバAE法で取得したデータを紹介する。脆性材料では一般に、最終破断に向かってAEの発生頻度は急激に増え(図4)、また微小亀裂の連結によってその周波数は徐々に低下する(図5)。AE法はこうした脆性材料の亀裂進展監視の他にも、活性腐食の検知や回転機の軸受け摩耗検知、また変電所における漏電検知等にも用いられている。

図4 AE発生数
図5 AE周波数

【計測原理】
本計測で使用した光ファイバによるAE計測の原理を概説する。従来のセラミック素子を利用した圧電型のセンサと同等の性能を持っている。

図6 光ファイバドップラセンサ

光ファイバ線は、コアとクラッドの2層構造になっており、光波はその境界近傍で全反射を繰り返しながら伝播する。測定に際しては、下図に示すように光ファイバ線の一部を被計測物に固着する。この固着部がセンサ部になり、被計測物が振動するとセンサ部もその振動に併せて伸縮する。そして、固着部の一端から周波数fの光波を入力している場合、入力端から出力端までの経路内に存在するある瞬間のレーザ光の波数は一定であることから、経路長が伸縮すれば波長が伸縮する、すなわち、伝播速度は一定であるから周波数がfだけ変化する。これをレーザードップラ効果と呼び、他端から出力される光波の周波数はf-fとなる。この周波数変調量fは光ファイバの伸縮、すなわち被計測物の変位量の変位(ひずみ)速度に比例する。したがって、この周波数変調量を検知することができれば、速度計として被計測物の振動を捉えることができる。

光ファイバが伸縮する際に、ファイバ内のドップラ効果により生じる周波数変調は下式で示される。fはセンサ部で生じる周波数変調、λは光波の波長、 は光ファイバの変位速度である。ここで負号は、変位速度の増大により光の周波数が低下することを意味している。

上式に示すように、周波数変調fと変位速度dL/dtは比例関係となる。この周波数変調fは光ヘテロダイン方式を用いて検出され、周波数/電圧変換器(FV変換器)によって電圧Vに変換される。ここで変換された電圧Vと変位速度dL/dtの関係を、Kを比例定数として示すと下式のようになる。したがって、このセンサは検知した変位速度を電圧で出力するセンサであり、変位速度が大きくなると電圧出力が大きくなるという特性を持つ。

ここで、

周波数変調fを検知するためのレーザードップラ振動計システムを下図に示す。システムはセンサ回路と計測回路から構成されている。計測回路がヘテロダイン干渉法を用いて周波数変調量を検出する回路である。同図より、光源(Light source)から入射された周波数fのレーザ光は、センサ回路と計測回路に分波される。センサ回路では、計測対象物の振動によってファイバ部が微小伸縮すると、それに伴いファイバの光路長が時間的に変動する。その結果、レーザ光には光路長の時間的変化であるdL/dtに比例した周波数変調fが生じ、センサから出力されるレーザ光はf-foとなる。一方、計測回路ではAOM(周波数変調器)により周波数fMo(80MHz)の基準光を加えf+fMに変調される。そして、センサ回路からのレーザ光と計測回路からのレーザ光の周波数の差fM+fが導かれ、検知器(Detector)でfが検出され、周波数/電圧変換器(FV)で電圧値に変換される。

図7 光ファイバドップラセンサ検波回路

次週へつづく