三菱電機(株)は、(株)三菱UFJ銀行、衛星データサービス企画(株)、GHGSat Inc.(ジーエイチジーサット、以下、GHGSat社)と衛星データを利用した温室効果ガス排出量の可視化に関するパートナーシップ契約を締結した。
4社は本パートナーシップを通じて、衛星が観測した世界中の温室効果ガス排出量のデータから、観測対象ごとの傾向をモニタリングし、分析した情報を企業および自治体などのユーザー向けに提供するサービスの実現を目指す。このサービスの提供を通じて、温室効果ガス削減などの社会課題解決に貢献するという。
温室効果ガスは、地球温暖化を引き起こす気候変動の主な要因であり、地球環境への影響から排出量削減に向けた取り組みが世界的に進められている。2023年に開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)では、パリ協定の目標達成に向けた世界全体の進捗を評価するグローバル・ストックテイクの実施が初めて採択され、企業や政府、自治体は自らの温室効果ガス排出量をより正確に、統一された基準で把握する必要性が高まっている。特に産業界では、低炭素技術への転換や再生可能エネルギーの普及など、多額の投資による長期的な視点に立った戦略的な計画が必要となっている。
今回、4社は温室効果ガスの削減に取り組むユーザーを対象に、衛星データを利用した温室効果ガスの排出量をわかりやすく可視化するサービスの検討を進める。具体的には温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」※1シリーズ衛星の広域にわたる観測データと、GHGSat社が持つ衛星コンステレーション※2による温室効果ガスの発生源のピンポイント観測データを融合し、温室効果ガスの排出量をわかりやすく可視化したデータを提供するサービスについて検討する。継続的に温室効果ガスの排出量をモニタリングし、客観的で精度の高いデータを提供する他、エネルギーパイプラインのガス漏れなどの異常を迅速に通知し、事故を防ぐなど、安全管理にも寄与することを目指す。ユーザーは新規に設備を導入することなく、衛星データに基づく温室効果ガスの排出量を把握可能となる。また、温室効果ガス削減に向けた具体的な目標設定や効率的な進捗管理を行うことで、透明性・サステナビリティを高めることができる。
三菱電機はGOSATシリーズ衛星の開発に携わっており、現在開発中の温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)は従来よりも広い範囲を隙間なく面的に観測可能となる予定である。本サービスの提供開始に向け、同社は、GOSAT-GWを加えたGOSATシリーズ衛星から取得した信頼性の高い観測データの処理を迅速化し、ユーザーに対しリアルタイムに情報提供するための検討を行う。加えて、多岐にわたる分野での衛星観測ソリューションサービスで得た知見を活かし、温室効果ガスの観測データに地理・空間情報などのデータを融合させることで、衛星データをわかりやすく可視化する。これらの取り組みを通じて、本パートナーシップに貢献するとのこと。
※1 環境省、JAXA、国立環境研究所による共同プロジェクトのもと開発された、二酸化炭素・メタンなどの温室効果ガスの濃度分布などを観測する衛星。GOSATは、Greenhouse gases Observing SATelliteの略
※2 多くの衛星で編隊を形成し、協調した動作をさせるシステムのこと
プレスリリースサイト(mitsubishi):https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2024/1115-b.html