シリコンフォトニクス技術で多彩な光センサを実現する超小型光集積回路チップ

 OKIは、光回路の半導体であるシリコンフォトニクス技術を用いて、光ファイバーセンサ、レーザー振動計、光バイオセンサなど、多様な用途に適用可能な超小型光集積回路チップの開発に成功した。
 これにより、LSI(注1)のような超小型化・低消費電力化、大量生産による光センサモジュールの圧倒的な低コスト化を実現できる。光センサは、光損失の少ない光ファイバーや光導波路を用いて、光のまま振動や歪、温度などの物理現象を検出・処理・伝送する技術であり、それ自体が省エネルギーでセンシングを実現するグリーン技術になる。シリコンフォトニクス技術は、これまで局所的な活用に限られていた光センサの適用領域を拡大できる技術であり、GX(注2)の進展への大きな貢献が期待できるという。

 社会インフラの老朽化や労働人口不足、環境問題、健康寿命の延伸など、現代社会が抱えるさまざまな課題に対し、高精度なセンサ技術と膨大なセンサデータを円滑に収集するネットワーク技術が求められている。エネルギー損失が少ない光の性質を活用した高精度な光センサは、これを実現する有効な技術の一つである反面、大型・高価であるため、研究用途や大規模インフラへの適用など一部への適用に留まっていた。

 OKIは長年、光通信用トランシーバを中心にシリコンフォトニクス技術の研究開発に取り組んできた。現在も研究対象にさまざまな光センサを加え、開発を継続している。シリコンフォトニクス技術は、個別の光部品を光ファイバで配線することにより実現していた複雑な光回路を、半導体の微細加工技術を用いてシリコン基板上に統合・集積回路化する技術である。コンピュータに欠かせないLSIと同じ製造方法を用いるため、小型軽量化、省エネルギー化、大量生産による低コスト化が可能である。これまで大きく重厚でハンドリングの難しかった装置を、スマートフォンやタブレットのようなサイズ感で実現でき、光センサの適用領域を飛躍的に拡大できるとのこと。

用途例:以下のような用途に適用可能。
・光ファイバーセンサ
 光集積による小型化、低価格化により、橋梁やトンネル、法面など、ありとあらゆる社会インフラの
 モニタリング・保守への適用拡大が可能

・レーザー振動計
 従来の光回路に対して体積比で約20万分の1の小型化ができ、ドローンやロボットへの搭載が可能なほか、
 一般的な振動計よりも広帯域な周波数特性を活かし、設備点検の高度化、省人化に貢献

・光バイオセンサ
 多様で複数の異なるバイオ物質を迅速・簡易に判別可能で、バイオテクノロジー・ヘルスケア領域での
 検査高度化に貢献

・光トランシーバ
 光アクセスネットワーク用の超小型・低コスト高速トランシーバーが実現でき、大容量データ通信に貢献

用語解説
注1:LSI(Large-Scale Integration:大規模集積回路)
 シリコンなどの半導体チップ上に微細な電子部品や配線を高密度に集積したデバイス

注2:GX(Green Transformation)
 温室効果ガスの排出を削減し、持続可能な社会を実現するための取り組み

プレスリリースサイト(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2024/10/z24041.html