1.はじめに
新たな機器・技術を導入するにあたっては、実際に自分の目で見て、手で触れて、説明を聞き、多くの候補から比較した上で検討することが望ましい。当社はそのような機会を展示会や見本市、セミナーなどのリアルなイベントで提供し、産業振興を支援している。2024年4月に開催した「Sea Japan」はわが国唯一の国際海事展として1994年から隔年で主催しており、今年30周年を迎えた。今回は海洋・港湾業界も対象とした「Offshore & Port Tech」も初開催し、海事・海洋・港湾の技術交流を推進した1)。
この度「Offshore & Port Tech」の初開催を記念したプレイベントとして、水中・水上ドローンのデモンストレーションイベントを昨年11月に実施したが、予想以上に大きな反響をいただいたのでここでご紹介したい。
2.背景
近年、水中ドローンや水上ドローンをはじめとする「海の次世代モビリティ」への注目が高まっている。国土交通省は沿岸・離島地域における海域利活用の課題解決から海洋産業の活性化にもつなげることを目指し、2020年11月から「海における次世代モビリティに関する産学官協議会」(図-1)を開催するなど、取り組みを加速させている。
また、一般社団法人水中ドローン協会が2019年4月に、日本水上ドローン協会が2023年9月に設立されるなど国内の普及促進に向けた動きも活発化しており、様々な分野での利用拡大が期待されている(図-2)。海事業界においても検査や点検、調査などへの活用を始めるところや、検討している企業が増加していることから、2022年に開催した「Sea Japan 2022」においても関連の展示ブースは非常に賑わっていた。
一方で新たに活用を検討するユーザーからは、「何ができるかを知るには現場に近い環境での動作を見る必要があるが、そのような機会が少ないため、導入に踏み切れない、または検討に時間がかかる」という声があがっていた。国内で行われている様々な業界別の産業展示会においても水中ドローンなどの出展は増えており、水槽やシミュレーターを使ったデモも行われていたが、現場に近いリアルな環境で、多くの機体を一堂に見て、触れることができる機会はまれだった。そのため、展示会に加えて、新たなデモンストレーションイベントを企画することが、普及促進のスピードアップに貢献するのではないかと考えた。
3.イベント企画
「[検査・点検・調査]Ocean Demonstration」というタイトルで当該の企画を立ち上げ、2023年11月に実施することとした。会場は東京都港湾局とも相談し、東京夢の島マリーナを使用させていただいた。企画は一般社団法人日本水中ドローン協会にもご協力いただき、2023年3月に和歌山県で開催された「第2回わかやまスマート養殖フェア」での水中ドローン実演・体験企画を参考にした2)。イベントの構成としては、最初に会議室で各社がプレゼンテーションを行って各機器の詳細を説明。その後、参加者全員がビジターバースへ移動し、実際にデモンストレーションで機器を動かしながら質問や商談をするという内容とした(図-3)。
次回に続く-
参考文献
- 「Sea Japan 2024」プレスリリース,2024.2.27(https://www.seajapan.ne.jp/6681/)
- 「一般社団法人日本水中ドローン協会」イベントレポート,2023.3.9(https://japan-underwaterdrone.com/works/wakayamasmart_report/)
【著者紹介】
橋本 健(はしもと けん)
インフォーマ マーケッツ ジャパン株式会社 事業推進部
■略歴
産業展示会の主催をはじめ、BtoBイベントの企画関連業務に従事しており、現在は「Sea Japan / Offshore & Port Tech」(https://www.seajapan.ne.jp/)と「バリシップ」(https://www.bariship.com/)を担当
千葉県出身。早稲田大学卒。2000年より新聞社に勤務し、センサや計測、測定、検査の専門展をはじめ、ものづくりを支える業界を対象に数多くの産業展示会の主催者業務に従事。その後、企業や団体の販促・PR支援業務、ITソフトウェア企業での企画業務を経て、2022年より現職。2015年に中小企業診断士登録。