ROHM、VCSELとLEDの特長を融合したVCSELED™を開発

ローム(株)は、垂直共振器型面発光レーザーVCSEL*1素子をレーザー光向け樹脂製光拡散材で封止した、新しい赤外線光源の技術「VCSELED™」を確立した。本技術は、自動車のドライバーモニタリングシステム(DMS*2)や車室内モニタリングシステム(IMS*3)の性能向上に貢献する光源として期待できることから、現在ロームで製品化に向けた開発を進めている。

VCSELED™は、高性能なVCSEL素子と光拡散材を組み合わせることでビーム角(照射角度)をLED同様に広げており、VCSELよりも広い範囲で高精度にセンシング可能である。また、小型パッケージに発光素子と光拡散材を搭載しているため、アプリケーションの小型・薄型化にも貢献するという。

VCSELED™に搭載するVCSEL素子は狭帯域発光波長を特長としており、LEDと比べて約1/7となる発光波長幅4nmを実現。受光側の認識性能向上が図れるほか、LEDで懸念される赤見え*4も解消できる。同時に、波長の温度変化に関しても、LED(0.3nm/℃)の1/4以下となる0.072nm/℃を実現し、温度変化に左右されない高精度なセンシングが可能である。さらに、発光時の応答速度はLEDの約7.5倍速い2nsで、赤外光で距離を計測する、ToF(Time of Flight)アプリケーションの高性能化にも貢献するとのこと。

ロームでは、VCSELED™を新たな赤外線光源部品の技術ブランドと位置づけ、製品化を進めている。試作サンプルを2024年4月、民生向け量産用サンプルを2024年10月、車載向け量産用サンプルを2025年中にそれぞれ販売開始する予定。また、今後も車室内モニタリングシステムに対応するレーザー光源の技術開発を進めていくとしている。

<用語説明>
*1) VCSEL:
  Vertical Cavity Surface Emitting Laser(垂直共振器型面発光レーザー)の略称。従来は、通信用途で採用されていたが、近年ではセンシングシステムの発光部光源としても採用されている。
*2) DMS:
  Driver Monitoring Systemの略で、ドライバーモニタリングシステムのこと。運転手の顔や目線の動きから安全運転を継続できない可能性を検知し、音や文字等で知らせることで交通事故の発生を未然に防ぐ安全運転支援機能。
*3) IMS(ICMS):
  In-Cabin Monitoring Systemの略で、車室内モニタリングシステムのこと。検知範囲を助手席や後席まで拡大し、乗員の認識や生体センシングを行うことで安全性や快適性の向上につなげることができる。
*4) 赤見え:
  赤外LEDをセンサ等に用いて高出力で使用した場合、可視光線に近い波長の光が発せられて人間の目が感知してしまうことがある。このときセンサがわずかに赤色に見えることから赤見えと呼ぶ。

 「VCSELED™」は、ローム(株)の商標または登録商標。

プレスリリースサイト(rohm):
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2024-04-09_news_vcseled&defaultGroupId=false