直下型地震と地下水位変動の関係の解明 ―地下水位は地殻歪みを感知するセンサとして機能―

 京都大学大学院総合生存学館 山本駿 大学院生、工学研究科 小池克明 教授、総合生存学館 山敷庸亮 教授、熊本大学理学部 嶋田純 名誉教授の共同研究により、2016年4月に発生した熊本地震前後の長期にわたる多地点での地下水位観測データを詳細に分析した結果、地下水位は地殻歪みを感知するセンサとして機能し、特に主要な帯水層である砥川溶岩での変動が地殻歪みと関連することがわかった。
 地下水位データから降水量、気圧、地球潮汐の影響を統計学的に除いた残差成分は、2011年3月東北地方太平洋沖地震後は低下したが、2014年頃から上昇に転じたという傾向の変化が見出され、この低下は応力解放、増加は地殻歪みの増大によると解釈した。熊本地域でのその後の2つの地震でも、衛星測位システム(GNSS)による地殻変動と地下水位残差成分変動のパターンが変化する時期が整合した。帯水層の3次元数値モデルに観測井の分布を重ね合わせたところ、地震発生源になった布田川断層帯に連続する砥川溶岩の地下水位ほど地殻歪みに敏感であることを明らかにできたとのこと。

本研究の成果は、2023年12月21日に英国Nature Research社が刊行するオンラインジャーナル「Scientific Reports」誌で公開された。

【今後の展開】
 地下水位と地殻歪みの関係をより詳細に明らかにするためには、水質や地殻深部由来ガスなどの地球化学的観測および衛星測位システム(GNSS)や微小地震活動などの地球物理学的観測による結果と併せた総合的な解釈が必要である。また、本研究で見出された特徴が、他の地域での多孔質で透水性の高い帯水層における地下水位変動でも見られるかを確かめるために、観測データの蓄積や残差成分の解析を含むデータの解釈を深め、地下水位-地殻歪み関係の普遍性と精度を高める今後の研究発展を期待するとしている。

プレスリリースサイト(kumamoto-u):https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/sizen/20240307