東京理大、整流特性を示す新たな面内ヘテロ接合素子の簡便合成に成功

 東京理科大学 研究推進機構 総合研究院のTan Choon Meng博士(研究当時)、福居 直哉助教、髙田 健司助教、前田 啓明助教、西原 寛教授らの研究グループは、Znを中心金属とするメタラジチオレン配位ナノシート(Zn3BHT)において、シートの下半分をCu2+溶液、上半分をFe2+溶液に浸漬してトランスメタル化反応を進行させることにより、温和な条件で簡便に面内ヘテロ接合(tmFe/tmCu)を作製することに成功した。また、作製したtmFe/tmCuは整流作用を示すことを明らかにした。本研究成果をさらに発展させることにより、新たなエレクトロニクス・光学デバイス開発への貢献が期待されるという。

なお、本研究は、物質・材料研究機構(NIMS)、京都工芸繊維大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、ケンブリッジ大学との国際共同研究の成果である。

グラフェンやカルコゲナイドなどの二次元物質の研究は、物性物理学や材料科学の分野で世界的に重要な影響を持つようになっている。二次元物質とはバルク結晶を極端に薄くしたものであり、この構造的特徴により従来とは異なる新しい物性の発現が期待されている。その中でも特に、金属元素と有機配位子から構成される配位ナノシートには無数の組み合わせがあるため、ヘテロ構造の作製に適した物質として有望視されている。これまで、異種材料を垂直方向に積層することは広く研究されてきたが、水平方向に接合したヘテロ構造に関する報告はほとんど無かった。そこで本研究グループはZn3BHTをCu2+やFe2+溶液に逐次的かつ空間的に限定して浸漬することにより、ダイオード挙動を示す面内ヘテロ接合素子の作製に着手した。

本研究では、絶縁性Zn3BHTをCu2+溶液やFe2+溶液に浸漬するだけで、トランスメタル化反応が進行し、中心金属ZnがCuやFeに置換された新たな配位ナノシート(tmCu, tmFe)を合成できることを実証した。また、Zn3BHTの下半分をtmCuに、上半分をtmFeに置換することにより、ダイオード挙動を示す面内ヘテロ接合素子tmFe/tmCuを作製することに成功した。本研究におけるトランスメタル化を利用した新たな合成法は、面内ヘテロ接合素子を簡便に作製する上で非常に優れた手法といえる。

本研究成果は、2024年1月5日に国際学術誌「Angewandte Chemie」にオンライン掲載された。また、審査時の評価が高かったことから、全掲載論文の5%以内であるVery Important Paper (VIP)に選出され、バックカバーにも選出された。

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プレスリリースサイト(tus.ac):https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240207_2732.html