大阪大学 産業科学研究所の筒井真楠准教授・川合知二招へい教授、産業技術総合研究所の横田一道研究員、華中科技大のYuhui He教授による国際共同研究グループは、固体膜中に加工するナノポアの構造と配置を最適化することで、世界最高レベルの発電性能を有する逆電気透析膜の開発に成功した(図)。
逆電気透析発電は、微小な細孔に発現するイオン選択性(陽イオンまたは陰イオンのどちらかだけがよりナノポアを通りやすくなる性質)を利用し、海水と淡水から再生可能エネルギーを得る一つの手法として世界中で研究開発が進められているものである。これまでの研究では、1個のナノポアについてMW/m2レベルの極めて高い発電性能が得られていた一方で、複数のナノポアを高集積させたマルチナノポア構造になると、その性能はせいぜい数W/m2に留まってきた。このため、逆電気透析膜の広い産業応用には、単一のナノポアの優れた特性がなぜ複数のナノポアになると劣化してしまうのかを明らかにし、マルチナノポアによる高発電性能を達成することが重要な課題であるとされてきた。
そこで共同研究グループは、半導体技術を用いてナノポアの構造と配置を系統的に変えながらナノポア発電素子の性能評価を実施し、マルチナノポアの低い発電性能がどういった要因によるものなのかを調べた。その結果、ナノポアを密に配置しすぎるとナノポア間で干渉が起き、発電効率が著しく低下することを明らかにした。そしてこの結果を基に、窒化シリコン膜中に最適な集積度(100億個/cm2)で加工した直径100ナノメートルのマルチナノポア構造を用いて、100W/m2という世界最高レベルの発電性能を達成することに成功した。
本研究成果は、Cellの姉妹紙である「Cell Reports Physical Science」に、10月7日(米国時間)に公開された。
プレスリリースサイト:https://www.atpress.ne.jp/news/330486