徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所(pLED)
2.1 pLEDの概要
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所(以下pLEDという。)は、2019年3月に設立された、光分野の研究を行う研究所である。pLEDは設立当初より、可視発光のLEDの開発が多様な応用展開を促したことを念頭に、次世代の光(深紫外、テラヘルツ、赤外・赤外光周波数コム)の光源開発と応用開拓を主眼とした研究分野「ポストLEDフォトニクス」を設定し、これを推進すると同時に、学内に医・歯・薬・栄養・保健分野の学部・学科が揃っている特色を生かした医光融合研究にも力を入れている。これらの先進的な光応用研究は、同じく1章で述べた、「次世代ひかりトクシマ」が掲げる「創造的超高齢社会の実現」に向けた取り組みの一部となっており、それらの研究成果が、大学から地域・社会へと波及・普及することを目指している。
このような背景から、pLEDは、大学の研究特区であるいわゆる附置研としての機能を担いつつ、同時にその他の多様な機能や役割を担っている。その一つが、次節で紹介する研究成果の事業化を念頭においた「産学連携の強化」である。これに対応するため、通常研究所のトップは研究所長となるが、pLEDでは事業化の推進の観点から最高経営責任者(CEO)としている。更に、独自のURAセクション(所内では経営戦略室と呼ぶ)を有し、地域や企業との連携から、研究成果の事業化に至るまで、研究計画や知財戦略のマネージメント等多岐に亘るコーディネートを行っている。また、研究成果の事業化においては、pLED発のベンチャー企業となる「株式会社SpLED (スプレッド)」を設立し、成果の極大化を目指し、事業のプレーヤーおよび産学連携のハブとしての機能を担っている。
更に、2022年度からは、元々の光分野の専門教育組織である徳島大学理工学部理工学科情報光システムコース光系とpLEDが融合し、光システムコースおよび 新生pLED(名称はpLEDのまま)が誕生した。これにより、教育と研究開発,高度専門人材育成の環境が質・量共に、より一体的に強化され、その結果、産学連携・地方創生に貢献することが期待される。
最後に、設立から現在までのpLEDの主な研究成果の一つとして、「製品応用に弾みとなる、不活化に有効な深紫外光量の定量化に成功 ~ 様々な環境に応用可能な不活化基礎データの取得に成功 ~」(2020年10月27日プレスリリース、図2)を紹介する。未曽有の事態となった新型コロナウイルスの感染拡大において、pLEDはいち早く、次世代の光(深紫外光)を用いたウイルス不活化において定量的な検証を行い、実際の不活化作業や装置開発の参考となる知見を発信した。
2.2 産学連携に向けた情報発信
前述のとおり、pLEDの大きな役割として、研究成果に基づく産学連携を進め、最終的には事業化に基づく地方創生につなげていくことが期待されている。このような背景の下、pLEDでは多様な広報活動や企業との情報交換を活発に行い、産学連携の展開を図っている。pLEDの研究成果は、通常学会や論文誌上で発表され、HPでも紹介される。これらの中で、特に重要な研究成果等においては、プレスリリースとして広く積極的に発信される(図3(上))。近年では、大学等のプレスリリースを主要なポータルサイト等に紹介する有償のプレスリリース配信サービスも利用でき、インターネットを活用することで、情報発信の選択肢は増えてきている。これらのサービスは、国内向けだけでなく、広く海外に向けた配信も可能であり、pLEDでも、インパクトの高い研究成果においては国際的な情報発信サービス「EurekAlert!」にて配信を行っている(“Comb of a lifetime: a new method for fluorescence microscopy,” News release 1-JAN-2021.)。更に、新型コロナウイルスの問題が生じた近年においては、オンラインによる情報発信は必須となりつつあり、pLEDでもオンデマンドでコンテンツを配信できる環境を準備中である。
pLEDでは、設立当初より、リアルな情報発信の機会として、大都市近郊の大型施設で開催される産業界の展示会への出展参加にも力を入れている。図3(下)は、2022年3月に東京ビッグサイトにて開催された機械要素技術展(RX Japan株式会社主催)に参加した際の展示ブースの写真である。本展示会には、公益財団法人 とくしま産業振興機構の主導の下、県内の企業と教育・研究機関が共同で参加し、主にモノづくりに関連した内容の展示を行った。このような展示会ではpLEDの研究成果を発信すると同時に、それらの知見を具体的に産業応用に展開する視点での展示を心がけており、実際にブースを訪れた企業の方々から、後日相談の問い合わせをいただく機会も増えてきている。
(下)機械要素技術展参加時の徳島県ブース(2022年3月、東京ビッグサイト)
このような取り組みの中で、最終的には、pLEDの研究成果に基づくシーズと、企業や社会が抱えるニーズが結び付き、種々の問題解決や新製品・新技術の実現など、広く社会実装につながることが期待される。一方で、このようなコミュニケーションにおいて、pLED側の研究者も多くの情報に触れることで、大学の中だけでは生まれることの無い新たな研究のアイデアに結び付く可能性もあり、有意義な情報交換の機会となっている。また、図3(上)で示したように、pLEDより研究に関する情報を発信し、これらに対して企業等より問い合わせをいただく場合が多いが、一方で、社会人として企業で働く徳島大学の卒業生から直接問い合わせをいただくケースもあり、このような繋がりの重要性を感じることも多い。
次回に続く-