徳島大学 研究・産学連携部 地域産業創生事業推進課
(2)専門人材育成
本学では、教育を行うための組織(教育組織)から、研究を行うための組織(研究組織)を分離・統合し、管理運営上の組織(教員組織)にて学部の垣根を越えて教員人事や予算配分を一元管理することで、学部間・研究分野間の柔軟な連携を実現し、研究組織全体の技術や知見を、各学部の教育にも活用しやすい体制となっている。この体制のメリットを最大限活用し、2022年度からは、研究組織であるpLEDの研究者も理工学部理工学科「光システムコース」を中心に学部教育への参画を強化することとし、最先端の光科学・光工学についての知見を体系的に学ぶことができる体制を強化した。
また、2020年度に分野横断型教育クラスターによる教育を進める大学院創成科学研究科(博士前期課程)を設置、クラスター科目群の一つ「フォトニクス」では、専門性高く光科学を学べるよう体制を整え、更に、2022年度からは同博士後期課程を開設しており、学部・大学院において、基礎から最先端の光科学が学べる体制を構築している。
一方、医光融合分野の観点から、pLEDとも連携して、理工学部学生向けの医療現場における機器利用体験・実習を行うとともに、医学部学生向けの理工学部と連携した講義・実習を行うなど医光融合教育を推進している。これらの教育の推進に当たっては、VR機器、物理シミュレーション、LED製造教育設備等を導入するとともに、大学院医歯薬学研究部の医療教育開発センターに設置されている臨床技能学習施設「スキルス・ラボ」を活用し、光専門教育と医学教育の融合に向けた基盤設備の充実を図っている。
リカレント教育では、地域企業のニーズを把握するため、徳島県、阿南工業高等専門学校及び本学が共同で地域企業300社以上を対象にアンケート調査を実施し、ニーズに沿った教育プログラムとして2020年度から「紫外線LED活用入門講座」を開講している。
また次世代ひかりトクシマの発足を機に、日亜化学工業株式会社(以下、「日亜化学」という。)の仲立ちにより、ノーベル賞受賞者やスタートアップ創出で世界でも名を馳せるイスラエルのテクニオン-イスラエル工科大学(以下、「テクニオン」という。)との交流が始まった。2020年12月には同大学と学術交流協定を締結し、テクニオンにおけるアントレプレナーシップ教育を受講できる機会をプログラム化するなど教育交流の具体化を図っている。2021年10月には、2004年にノーベル化学賞を受賞されたテクニオンの Aaron Ciechanover 特別研究教授を講師にお招きし、「Personalized Medicine(個別化医療)」をテーマとした海外特別講演会を開催した(図4)。2021年度までに、当該講演会も含めて通算4回の海外特別講演会を開催しており、今後も定期的な開催を継続していく予定である。
本講演会には、大学関係者だけでなく、徳島県内の高校生や教諭、県内企業等の研究者等が参加した。「Personalized Medicine」とは、個々の患者さん一人一人の遺伝情報に基づき、病気の発生率や発症しやすい体質などの予測、個人に合わせたより良い治療法や薬剤の適切な選択、医薬品の開発が可能になるものであり、一部ではすでにその実用化が進んでいる。一方で、倫理面などを含めた様々な課題があり、その現状と展望について、分かりやすくご講演いただいた。
これらの取組により、様々な年齢層の学術的探究心に訴求することで、次世代ひかりトクシマの目標である「創造的超高齢社会」の実現に向けて、学び続ける意識の醸成に努めている。
1.3 産学連携
最後に、次世代ひかりトクシマのもう1つの柱である産学連携について、概要を紹介する。
(1) 研究開発に係る産学連携
pLEDでは、経営戦略室の主導の下、戦略的な企業連携を推進している。2020年3月からは、県主導で、産官学金で産学連携を一層強化するため、企業連携グループを構築し、地域企業との具体的な連携を加速させている。特に、社会実装が間近な研究成果については本グループの支援等を得て、地域企業を中心に装置の試作や実験を重ね、地域企業による社会実装を目指している(詳細は本特集号「2章 徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所の産学連携」を参照)。
(2)新たな連携を探る地域共創(CO.TOKUSHIMA)
地域企業との共同研究や、国際連携等に関するイノベーションワークショップ等を実施し、本事業計画に関連する地域企業や自治体、中高生や大学生及び研究者、各団体等を対象としたフュ―チャーセッションをはじめとした大小様々な対話の機会を創出・提供することで、本事業の円滑な推進を図っている(詳細は本特集号「3章 CO.TOKUSHIMAの活動」を参照)。
(3)人材育成を通じた産学連携
本事業で目指す、光による「創造的超高齢社会」を実現するには、地域企業の産業競争力の強化が必要で、そのためには地域企業で活躍できる優秀な人材の育成が不可欠である。その一方で、現場における急速な技術革新と、それに対応するための教育が乖離し、卒業生は必ずしも企業が求める教育を受けていない可能性が懸念されており、地域企業の要望を反映した教育が行えるような教育システム作りが求められている。理工学部では、学生と地域企業のキャリアマッチングを支援するシステム「教育情報データベースシステム(以下、「EIDB」という。)」を構築して、運用している。EIDBには各教員の授業科目の情報、本件に賛同いただいた徳島に拠点を置く企業等の概要や推奨する授業科目が登録され、学生はその企業で働く上でどのような科目を履修するべきかを把握し、参考とすることができる。これらを通じ、本学学生の地域企業への就職率向上を目指している。
本稿では、「次世代ひかりトクシマ」の実現に向けた、近年の徳島大学の取り組みについて概要を紹介した。今後も産学を中心とした多様な連携を進め、「創造的超高齢社会」の実現を目指していきたいと考えている。