TOPPAN、長距離輸送中の温度管理を実現する 無線通信ラベルを開発

 凸版印刷(株)は、温度を一定時間ごとに測定・記録し、その履歴データを無線通信によりデータベースに転送できる薄型カードサイズの「温度ロガーラベル」を開発した。

 本「温度ロガーラベル」は、貼付された荷物の表面温度の変化を任意のタイミングで自動的に記録し続ける。5m程度の長距離通信が可能な「UHF帯」と、スマートフォンへの搭載が進む「NFC」の2種類の周波数帯に対応。経由地や最終目的地などで専用アプリケーションを使って読み取られた、出荷からその時点までの「ログデータ(日時と温度などの記録)」と読み取り場所などの「トレーサビリティ情報」は、専用のクラウド型管理システムに転送され、輸送中の温度変化を時系列的に追跡・管理する。
 また「本温度ロガーラベル」は使い切り型のバッテリーを搭載、データダウンロード用の端子や表示用ディスプレイを省くなどシンプルな構造を採用した結果、既存の「温度ロガー機器」と比較して10分の1以下の低価格での提供を予定している。
 本製品は、2021年10月から2022年3月にかけて実施された、「日本酒輸送実証実験」(令和2年度農林水産省実証実験〕に参画した「日本酒コールドチェーンコンソーシアム〔参加企業:(同)オープンゲート、光輝(株)、Taeltech Japan(株)、(株)南部美人、(株)萬乗醸造)」によって、日本国内の酒造メーカーから中国国内の保冷倉庫までの梱包箱の表面温度を30分ごとに測定し、記録するツールとして採用された。

▮開発の背景と狙い
 食品の長距離輸送では通常の物流とは違い、厳格な温度管理が求められる。特に、肉や魚、野菜などの生鮮食品、乳製品や総菜などの要冷蔵食品は、鮮度の維持と品質劣化の防止のために、商品ごとに設定された温度で輸送を行うことが必要である。
 輸送時の温度を管理するツールとして、一定間隔で温度を測定し記録する「温度ロガー機器」はこれまでにも市販されていた。それらは1台当たりの価格が数千円~数万円と高価なため、すべての梱包に装着するにはコスト面での課題があり、更に使用後の回収にかかる手間などが導入にあたっての障壁となっていた。そのため、国際輸送など長距離にわたる温度管理が求められるシーンでは、使用後に回収する必要がなく「ワンウェイ」で利用できる、低価格な温度ロガーの需要が高まっている。

▮製品の特長
① 構造と機能のシンプル化で既存品の10分の1以下の低価格を実現
 温度センサ付きICチップの搭載、使い切り型バッテリーの採用、動作設定はスマートフォンアプリのみで行うなど、構造と機能をシンプル化した。その結果、操作パネルを実装し電池交換を前提とした既存の「温度ロガー機器」の10分の1以下の低価格を実現。すべての梱包に貼り付けて個々の温度変化を記録する運用や、配送後にラベルを回収しない「ワンウェイ利用」など、これまでにない使い方が可能である。
② 温度測定の間隔は最短1秒から最長60分、測定開始のタイマー機能も搭載
 温度測定の間隔を1秒ごとから60分ごとまで22段階から選択可能、例えば、60分ごとの測定なら6カ月間分の温度履歴を記録できます。また、温度測定の開始をタイマー設定することができるので、冷蔵保管庫内での作業時間が短縮され、作業者の負荷を軽減する。
③ 温度測定モードの選択により38,000回以上記録可能
 温度測定モードを3種類から選択できる。ICチップに測定日時と温度情報を記録する「通常モード」と、温度情報のみを記録し、データを読み取った後に管理システム上で日時と付け合わせる「コンプレスモード」。さらに、「常温」「冷蔵」「冷凍」といった「温度帯区分」のみを記録する「リミットモード」を導入した。「リミットモード」では、「通常モード」より8倍多く38,000回以上の回数を記録することができる。
④ データ読み取り「専用アプリ」と、温度履歴を管理する「クラウド型管理システム」を用意
 「温度ロガーラベル」に保存された温度記録を読み取る専用のアプリケーションと、読み取った温度記録を可視化するクラウド型の管理システムを統合的に開発。クラウド型管理システムには、「温度ロガーラベル」への不正アクセスを防ぐ「アクセス認証機能」や、輸送品の状態を管理する「トレーサビリティ管理機能」など、長距離輸送時の温度管理に求められる機能を搭載している。

▮販売開始時期と価格
  販売開始時期: 2022年6月
  価格: 未定

▮令和2年度農林水産省実証実験での採用について
 凸版印刷の「温度ロガーラベル」は「令和2年度農林水産物・食品輸出促進緊急対策事業のうち海外フードバリューチェーン再構築緊急対策事業」に参画した「日本酒コールドチェーンコンソーシアム」により温度記録ツールとして採用された。本実証実験では、南部美人、萬乗醸造、笹一酒造、菊水酒造、黄金井酒造、および若鶴酒造の6酒蔵の製品を日本各地からトラックで出荷、横浜港・大阪港から中国・上海港、寧波港、深セン港までの海上輸送、各港から都市部の配送拠点までにおいて、日本酒を5℃以下で管理し、温度を30分間隔で計測した。
 温度記録データは倉庫や配送拠点で読み取られ、クラウド型管理システムに転送、その履歴情報を酒造メーカーや商社、販売会社などの担当者はPCやスマートフォンで閲覧することができ、日本の酒蔵から中国国内の配送拠点まで、日本酒が適切な保存状態を保ったまま輸送されたことが確認できた。本実験は、2021年10月から2022年3月にかけて実施された。

ニュースリリースサイト(TOPPAN):https://www.toppan.co.jp/news/2022/05/newsrelease220516_1.html