【研究のポイント】
・木材由来、電気絶縁性のナノセルロースをナノ半導体に変換することに成功
・目的や用途に応じて、電気特性と3D構造を広範かつ系統的にカスタマイズ可能。ウェアラブルセンサやバイオ燃料電池発電用途における有用性も実証
・全て木材由来、持続可能なエレクトロニクスに向けた端緒を拓く成果として期待
【概要】
大阪大学産業科学研究所の古賀大尚准教授、東京大学大学院工学系研究科の長島一樹准教授、高橋綱己特任准教授、九州大学大学院総合理工学研究院の末松昂一助教、岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太研究教授らの研究グループは、木材由来のナノセルロースを用いて、電気特性と3D構造を幅広く制御できるナノ半導体の創出に成功した。
環境調和型の次世代エレクトロニクスに向け、持続可能な電子デバイスの開発が希求されている。古賀准教授らの研究グループは、持続可能な生物資源、木材ナノセルロース由来の紙「ナノペーパー」を用いて、紙の電子ペーパーや生分解性ペーパーメモリといった環境調和型の電子デバイスを世界に先駆けて開発してきた。しかし、ナノペーパーは電気を通さない完全な絶縁体であったため、これまでは主に基材としての利用にとどまっており、電子デバイスとして動作させるためには枯渇性資源由来の半導体が不可欠だった。
今回の研究では、ナノペーパーによる紙ならではの3D構造設計技術、および、段階的炭化・形態保持炭化技術を駆使し、絶縁体~準導体まで系統的な電気特性制御が可能、かつ、ナノ~マイクロ~マクロのトランススケールで3D構造制御が可能な新奇ナノ半導体を得ることに成功した。これにより、目的や用途に応じた電子機能や3D構造のカスタマイズが可能になり、全て木材由来の電子デバイスを作製することも夢ではなくなる。持続可能なグリーン・エレクトロニクスの実現に向けた道を拓く成果として期待されるという。
■ 特記事項
本研究成果は、2022年4月27日(水)午前0時(日本時間)に米国科学誌「ACS Nano」(オンライン)に掲載される。
タイトル:“Nanocellulose Paper Semiconductor with a 3D Network Structure and Its Nano–Micro–Macro Trans-Scale Design”
著者名:Hirotaka Koga, Kazuki Nagashima, Koichi Suematsu, Tsunaki Takahashi, Luting Zhu, Daiki Fukushima, Yintong Huang, Ryo Nakagawa, Jiangyang Liu, Kojiro Uetani, Masaya Nogi, Takeshi Yanagida, Yuta Nishina
なお、本研究は、JST 創発的研究支援事業(JPMJFR2003)、JST さきがけ(JPMJPR19J7)、JST CREST(JPMJCR18R3)、JSPS科研費「基盤研究B」(JP18H02256)・「新学術領域研究(水圏機能材料)」(20H05224)、物質・デバイス領域共同研究拠点:人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンスにおける共同研究「COREラボ」(20186002)、日本国際賞平成記念研究助成、MEXTナノテクノロジープラットフォーム事業(JPMXP09S21OS0029)の支援を受けて行われた。
プレスリリースサイト(okayama-u):https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id959.html