エネルギーハーベスティングコンソーシアム(2)

(株)NTTデータ経営研究所
竹内 敬治

4. EHCの具体的な活動内容

 機密情報扱いとなる活動が多いため、詳細には記すことができないが、最近のEHCの活動内容(図4)を紹介する。

図4 EHCの活動内容
図4 EHCの活動内容

4.1 総会

 EHC総会は年4回開催される。原則として全会員が参加し、第2部と懇親会には、公的な立場のオブザーバ(官公庁・自治体・国研・大学)も参加する(非公開で、事前招待・承認制)。
参加者数は、100~200人程度であったが、2020年度以降は、新型コロナウイルス感染拡大により、ほぼオンライン開催となった。

4.2 意見交換会

 様々なテーマの意見交換会、見学会を不定期に開催してきた。新型コロナによって、会員企業間の直接の交流機会が減少したことから、2022年以降、会員企業が順次発表する会員企業意見交換会をオンラインで定期的に開催するようになった。

4.3 WG活動

 具体的な活動目標を定め、一部企業が参加するWG活動を行ってきた。テーマは非公開である。WG活動は自主活動であるが、一部は国家プロジェクトへと発展したものもある。

4.4 国家プロジェクトへの参画

 EHCとして参画した主な国家プロジェクトを以下に挙げる。EHCは任意団体で法人格を持たないため、EHC会員企業や、事務局である株式会社NTTデータ経営研究所が、契約の当事者となる。

 経済産業省 2012年度「国際標準共同研究開発事業」
「MEMS振動発電デバイスの特性測定方法に関する国際標準化フィージビリティスタディ」
(一般財団法人マイクロマシンセンターと株式会社NTTデータ経営研究所の共同実施)

 総務省 2014~2016年度
「スマートなインフラ維持管理のためのICT基盤の確立」
(アルプス電気、NTTデータ、NTTデータ経営研究所の共同実施)

 NEDO 2014~2016年度 クリーンデバイス社会実装推進事業
「省エネルギー化センサシステム普及拡大のための環境発電デバイス実装事業」
(アルプス電気、竹中工務店、パナソニック、富士電機、NTTデータ経営研究所の共同実施)

 NEDO 2014~2015年度
「エネルギー・環境新技術先導プログラム「センサモジュールの研究開発」」
(アルプス電気、テセラ・テクノロジー、東京応化工業、東京大学、東北大学、弘前大学の共同実施)

 NEDO 2015年度
「エネルギーハーベスティング技術の用途の特定と市場動向・技術開発動向に関する分析」
(NTTデータ経営研究所が受託)

 NEDO 2016~2020年度 IoT推進のための横断技術開発プロジェクト
「超低消費電力データ収集システムの研究開発」
(東芝、アルプス電気、テセラ・テクノロジー、DSPC、神戸大学、東京工業大学、産総研、東京大学の共同実施)

4.5 展示会への共同出展

 会員のシーズ技術紹介や実証実験成果報告などを中心に、国内外で共同出展を行ってきた。
 ET/IoT展には、2017年から2019年まで、3年連続で共同出展を行い、IoT Technology優秀賞受賞を3年連続で受賞した。2017年は、株式会社フジクラの「マルチホップ無線EH型環境センサシステム」、2018年は、アルプス電気株式会社(現:アルプスアルパイン株式会社)と株式会社NTTデータ経営研究所が共同開発した「局所集中型超低消費電力無線通信技術」、2019年は、富士電機株式会社の「電池レス無線SAW温度センサ」である(図5)。
 海外では、2016年に米国で、2017年にドイツで、会員企業の共同出展を行った。

図5 ET/IoT展でのIoT Technology優秀賞受賞技術
図5 ET/IoT展でのIoT Technology優秀賞受賞技術

4.6 情報提供

 会員企業向けに、エネルギーハーベスティング技術を体系的に整理した報告書を提供している。また、2017年10月からは、ニュースレターを発行し、海外動向を中心に、最新の情報を提供している。現在、ブログ「WBB最新情報」の更新は行っていないが、会員向けに海外の最新情報の提供を続けている。ブログの記事よりも情報量は格段に多い。

おわりに

 エネルギーハーベスティングは、世界的ブーム後の「冬の時代」を乗り切り、徐々に普及の兆しが感じられる。ガートナー社のハイプ・サイクル(図65)に沿った動きといってもよいのではないか。
 エネルギーハーベスティングを巡る今後の大きなトレンドとしては、EUの電池規制における「一次電池の段階的廃止の動き」6、及び6G(第6世代移動通信システム)での採用の動き7がある。いずれも、2030年頃が転機となりそうである。
 EHCの、2022年3月時点での会員企業は50社である(図7)。また、正式オブザーバとして登録されている官公庁・自治体・国研・大学は、100を超え8、日本における産官学連携のハブともなっている。引き続き、我が国企業のエネルギーハーベスティング事業の立ち上げを支援していきたい。

図6 ガートナー社のハイプ・サイクル
図6 ガートナー社のハイプ・サイクル
図7 EHCの構成メンバー(2022年3月時点)
図7 EHCの構成メンバー(2022年3月時点)




【著者紹介】
竹内 敬治(たけうち けいじ)
株式会社NTTデータ経営研究所
エネルギーハーベスティングコンソーシアム事務局

■著者略歴
1988年3月京都大学大学院工学研究科修士課程修了(工学修士)。大手シンクタンクなどを経て、2010年5月より株式会社NTTデータ経営研究所。
2010年5月、エネルギーハーベスティングコンソーシアムを設立し、事務局を務める。
JST CREST・さきがけ複合領域「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」領域アドバイザー。
文科省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム「磁歪式振動発電事業化プロジェクト」事業プロデューサ(金沢大学客員教授)。
JST未来社会創造事業大規模プロジェクト型「センサ用独立電源として活用可能な革新的熱電変換技術」採択課題「磁性を活用した革新的熱電材料・デバイスの開発」アドバイザー(NIMSリサーチアドバイザ)。 NEDO技術委員。(いずれも記事掲載時点)