ST、低軌道衛星向けに低コストの耐放射線性ICを発表

STマイクロエレクトロニクスは、地球観測やブロードバンド・インターネットなどのサービスを地球低軌道(LEO : Low-Earth Orbit)から提供する低軌道衛星向けに、耐放射線性パワー・マネージメントIC、アナログIC、およびロジックICを含む9製品を発表した。これらの製品は、低コストかつ高い信頼性を備えた小型LEO衛星の設計および量産の簡略化に貢献するという。

STの新しい低軌道衛星向け耐放射線性ICシリーズは、低コストのプラスチック・パッケージを採用しており、衛星の電子回路において重要な機能を提供する。今回発表された9製品には、A/Dコンバータ、電圧レギュレータ、LVDSトランシーバ、ライン・ドライバの各1製品に加え、発電および配電、オンボード・コンピュータ、遠隔恒星追跡装置、トランシーバなど、システム全体で使用される5つのロジック・ゲートが含まれている。STは、今後数ヶ月にわたり機能を追加してシリーズを継続的に拡張し、より幅広い製品を提供する予定。

「低軌道衛星向け耐放射線性ICシリーズ」製品の単価は、STの販売代理店を通じて購入した場合、1000個購入時に約70ドル(ロジックIC)から約450ドル(データ・コンバータ)。開発モデルの単価は、10個購入時に約135ドルから約775ドル。詳細については、STのセールス・オフィスまたは販売代理店まで。

■技術情報
低軌道衛星は、より高く打ち上げられる従来の静止軌道上(GEO : Geostationary Orbit)衛星と比べて、大気からの保護を多く受けるため、曝される放射線レベルが低くなる。また、衛星の寿命も短く設計されている。低軌道衛星で使用される電子部品に求められる性能や品質保証は、従来の衛星とほぼ同じだが、耐放射線性要件は緩和される。従来、航空宇宙アプリケーション向けの部品は、厳格なQML / ESCC認定および製造プロセスに対応するために、密閉型セラミック・パッケージで提供されており、一般的に少量生産の部品には比較的高いコストがかかっていた。
STの新しい低軌道衛星向け耐放射線性プラスチック・パッケージは、最適化された認定および製造フローと規模の経済性により、ニュースペース・アプリケーションにおいてすぐに使用することができる。ユーザによる追加の認定取得やアップスクリーニングが不要なため、コストとリスクの大幅な削減に貢献する。

STの低軌道衛星向け耐放射線性ICシリーズは、最大50 krad(Si)の吸収線量(TID)、高い総非イオン化線量耐性、最大62.5MeV.cm²/mgのシングル・イベント・ラッチアップ(SEL)耐性を備えており、低軌道衛星におけるミッション・プロファイルに対応する。AEC-Q100に準拠したSTの車載用ICと同じ製造ラインで組み立てられるため、統計に基づくプロセス管理により、一貫した高品質で量産を実現している。部品のアウトガスは、特性評価により、ニュースペースで一般に許容される限度内に抑えられている。外部終端は、宇宙空間における錫ウィスカの形成を防ぐように仕上げられており、有鉛(Pb)および純錫の両実装プロセスとREACH規則に準拠している。

今回発表された9製品は次のとおり。調整可能な2A低ドロップアウト電圧レギュレータ「LEO3910」、1Msp / 12bit / 8チャネルA/Dコンバータ「LEOAD128」、400Mbps LVDSドライバ / レシーバ「LEOLVDSRD」、クワッド2入力NANDゲート「LEOAC00」、シュミット・トリガ入力付きHEXインバータ「LEOAC14」、トライステート出力のオクタル・バス・バッファ「LEOAC244」、デュアルDタイプのフリップ・フロップ「LEOAC74」、クワッド2入力ANDゲート「LEOAC08」、クワッド2入力ORゲート「LEOAC32」。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001220.000001337.html