3.河川横断測量へのグリーンレーザドローン活用
レーザドローンによる河道や河川堤防の再現性を確認するために,クワ畑等の木本 とツル・ヨシ群集等の草本の植生で覆われている高水敷や草本で覆われた河川堤防において,トータルステーションで取得された横断測量成果と比較した.ドローンによるレーザ計測は,落葉樹 の萌芽期である4月と植生が繁茂した9月の2 時期に,約100点/m²の計測密度で実施した.この比較では,植生被覆域の地上到達度と地形再現性を評価した5).
地上到達度では,横断測量の断面線から水平位置0.5m,標高0.05m以内に到達した点群と地上到達点と見なし,その点数と照射点数の割合を植生種ごとに確認した.その結果を表2の地上到達度に示す.4月の地上到達度は,河川堤防の人工草地で83%と最も高く,多くの計測点が地盤を捉えている.一方,葉の大きいカナムグラ群落が21%と低く,それ以外の草本が30~50%,木本が約30%の地上到達度を示した.9月の地上到達度は全ての植生で4月より低い.有人機の航空レーザ測量よりビーム径が小さく,100点/m²程度の高密度な計測ができるレーザドローンでも,葉が大きい植生被覆域や夏季の地上到達度が低くなることがわかる.
地形再現性では,横断測量成果の標高較差を確認した.その結果を表2の地形再現性,点群による断面表示図を図3に示す.4月の結果に着目する.カナムグラ群落以外の植生は平均二乗誤差で約0.1mを示し,凹凸のある植生被覆域でも0.1m程度の位置精度で河道形状を再現できることが確認できた.また,9月の平均較差は0.15m以上の値を示した.以上の結果から,最適な時期におけるドローンレーザ計測の実施が重要なことや植生の種類によって横断図による地形再現精度が異なることがわかった.
図4は,冬季に計測した点群による陸部と水部が存在する測線の横断表示である.グリーンレーザドローンによる水部計測では,水質,水面,河床の状態により測深能力が異なる計測特性が確認されている.この地区では最大2.8m程度の測深を確認でき,横断表示により陸部と水部が連続的につながった断面が再現できることを確認できた.
以上の結果より,植生が繁茂していない時期にグリーンレーザドローンによるデータ取得を行うことで,陸上部と水部の横断形状を再現でき,河川横断測量成果として利用できることを確認した.
4.堰・護床ブロック点検へのグリーンレーザドローンの適用
堰周辺や護岸工周辺においてTDOT GREENによる点検を実施した事例を紹介する.図5は河川の堰周辺を取得した三次元点群の鳥観図であり,レーザ計測時に取得された反射強度をグレースケールで色分けしたものである.100点/m²以上の高精細な三次元点群は,堰本体,門柱,ゲート,護床工のブロックひとつひとつの形状が確認でき,さらに一部の護床工が崩れている状況を把握できる.
次に,別の河川でTDOT GREENで取得した点群を用いて,護床ブロックを点検した6).この護床ブロックは,水深50cmから2mに位置しており,常に水中にある.点検では,崩れや損傷のある箇所をわかりやすく可視化するために計画河床高とTDOT GREENで取得された三次元点群の差分解析を行った.図6は,ドローンで取得した写真地図と差分解析結果の段彩表示図を示す.写真地図から,この護床ブロックの一部が流出していることが確認できる.TDOT GREENは,数点~数百点/m²程度の密度で水底を計測することができため,ブロック損傷箇所の把握が可能となる.また,段彩表示図から,下流側ブロックの約2/3が沈下しており,その中央部は水底地形と伴にさらに沈下していること,上流側ブロックの約1/3が,ブロックの損傷と流出していること等,ブロック形状の把握と伴に面的な沈下量が定量的に把握できることが確認できる.
5.まとめ
本稿は,グリーンレーザドローンの概要と,グリーンレーザドローンを横断測量といった河道形状の状況把握に利用した事例と,堰や護床工の点検にグリーンレーザドローンを用いた事例を紹介した.この結果で得られた知見を以下に示す.
グリーンレーザドローン(TDOTGREEN)は,100点/m²以上の高密度な3次元点群を取得でき,フットプリント5㎝程度(対地高度50m)により,高精細な形状を再現できる.
河川横断測量へのグリーンレーザドローン適用では,三次元点群により,陸部と水部が連続的につながった断面表示ができること,ただし,最適な時期の計測の実施が重要であり,植生の種類によって横断図による地形再現精度が異なる留意点が必要である.
グリーンレーザドローンを用いた堰や護床工の点検では,堰本体,門柱,ゲート,護床工のブロックひとつひとつの形状,さらに一部の護床工が崩れている状況を把握できること,河床計画高と点群の差分解析により,ブロック損傷箇所をわかりやすく可視化でき,ブロックの損傷状況と面的な沈下量が定量的に把握できる.
以上の結果から、グリーンレーザドローンは,河道、河川堤防の形状、護床工の状況を面的かつ定量的に把握できることがわかった.また、ドローンを用いた三次元計測は、狭域の計測や複数回の計測(モニタリング)に適しており、河川管理の高度化・効率化に寄与できる可能性が確認できた.一方,グリーンレーザドローンの課題は,水部の計測で,水質,水面,河床の状態により測深能力が異なることが挙げられる.今後は,計測実績を増やして測深予測,適用可能な範囲を明確にできるようにすることで,高度で効率的な河川管理の実現に寄与していきたいと考えている.
参考文献
5) 間野耕司, 森田真一,小澤淳眞,井関禎之,冨井隆春:UAVレーザ計測による地形再現性と計測特性に関する検討,一般社団法人日本写真測量学会平成30年度秋季学術講演会発表論文集, p33-34,2018.
6) 堺浩一,間野耕司,橘菊生,西山哲:UAVグリーンレーザ計測による河川構造物点検への適用検討,河川技術論文集第27巻, 2021.
【著者紹介】
間野 耕司(まの こうじ)
株式会社パスコ
■略歴
1999年3月岐阜大学大学院工学研究科土木工学専攻修了.1999年4月株式会社パスコに入社後,航空レーザ測量,MMSおよびUAVなどの三次元計測業務に従事し,現在に至る.その間,2018年岡山大学大学院環境生命科学研究科環境科学専攻を修了.博士(工学).