3.3 弊社の流速(流量)、流向センサ
河川の流速、流向の計測は以下の目的で使用される。
- ①
水位計、河川断面係数により流量を算出することで、下流域での洪水予測が可能となる。
- ②
下流域への土砂の流出量や汚染物質の流出量の把握が可能となる。
- ③
大型河川に流入する、支川の樋門、樋管部の流速、流向を把握することで支川の排水能力の把握や逆流の検知を行い、適切なゲートコントロールにより内水氾濫の低減が可能となる。
など、水位計だけでは把握できない事象に対し有用なデータを取得することが可能となる。
弊社の流速、流向計は、河川横断方向に対し斜めに対向して設置された超音波送受波器の伝搬速度の差を計測しているので、河川の横断平均流速の計測が可能であり、上記目的に対しより正確なデータの取得ができる。
計測の原理は
・河川を斜めに横断する形で超音波パルスを送信/受信する
・超音波パルスの伝搬時間は河川の流速により変化するため、この伝搬時間を正確に計測する
・計測された伝搬時間を用い、下式で流速を算出する
V=(R1+R2)2 ×(t1-t2)/(2×D×t1×t2)
V:横断平均流速(m/sec)
R1:A→Bの距離(m)
R2:B→Cの距離(m)
D:A→Cの距離(m)
t1:A→B→C の経路の伝搬時間(sec)
t2:C→B→A の経路の伝搬時間(sec)
上式において、計測範囲の水中の音速が一様とできる場合は、音速を含む必要がなく、水温や懸濁物の影響で水の比重が変動した場合でも音速の変動が流速算出には影響を与えないため安定した計測が可能となる。
大型河川の場合は、偏流成分の除外のため、図-7に示すようにV字型の配置とするが、小型河川(川幅100m以下)の場合は一軸伝搬(A→BとB→A)でも計測は可能である。
-
(1) 超音波式流速(流量)計
河川幅100m以上の大型河川で流速を計測するために使用される。
1軸の計測間隔は200mが最大であるが、複数のポイントでの計測も可能であるため、送受波器を増やし側線を増やすことにより200m以上の河川幅にも対応が可能である。 -
(2) 小型河川流速計
河川幅100m以下の中小河川で流速を計測するために使用される。 -
(3) 小型河川流向計
河川幅30m以下の小河川で流向を計測するために使用される。
3.4 弊社の情報伝達、収集装置:ゼロエナジーゲートウェイ
モニタリングシステムでは、各センサーで計測したデータをインターネット経由でクラウドやサーバーに送信するゲートウェイが必要となる。
従来のゲートウェイは商用電源を必要とし、現場に設置する際の電源の配線工事に多大な費用と期間を要していた。
本製品は、920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop®」とLTEによる無線通信機能を備えたIoTゲートウェイで、太陽発電駆動に対応することにより、外部からの給電が不要なため、通信線配線、電源配線が不要な装置である。
参考
OKIテクニカルレビューVol235 太陽電池を利用したゼロエナジー水位計 依田、境
OKIテクニカルレビューVol237 ゼロエナジーゲートウェイ~太陽光発電駆動のIoTゲートウェイでインフラ監視の導入を容易化 久保、橋爪、依田
【著者紹介】
森 孝之(もり たかゆき)
静岡沖電気株式会社 技術部
■略歴
1977年 沼津工業高等専門学校 工業化学科(現 物質工学科)卒業
同年 興国ゴム工業株式会社(現 興国インテック株式会社)
1989年 沖電気工業株式会社
2000年 静岡沖電気株式会社(現職)
2018年~ NPO法人 光ファイバセンシング振興協会 監事