(株)矢野経済研究所は、国内の工場デジタル化市場を調査し、製造現場におけるIoT活用実態やサービス化する製造業の動向、スマートファクトリー/デジタル工場やデジタルツイン/CPSへの取り組みなどを明らかにした。ここでは、工場デジタル化市場規模予測について、公表する。
1.市場概況
国内の工場では多くの業種・業態において、生産設備・機器の保全やライン稼働監視などで、IoT/クラウド、AIなどを使った異常・故障監視、稼働監視、保全、エネルギー使用量の見える化などの次世代型のメンテナンス/見える化が始まっている。さらには品質管理や外観検査など検品、生産最適化、作業者支援といった部分でもIT活用が広がっている。この背景には、製造現場における人手不足や生産性向上、省エネルギーといった工場由来のテーマの他、IoTを始めクラウド、センサーシステム、AI/解析ソリューションなどのIT技術の進展、および各種のハードウェアやサービスの低廉化がある。
これらにより、製造現場では多様なデジタル活用が起こっており、2020年度の国内の工場デジタル化市場規模を、ユーザー企業の発注金額ベースで1兆5,760億円と予測する。
2.注目トピック
「IoT活用による次世代メンテナンス/次世代型の見える化が進む」
生産設備・機器の稼働データをクラウドにアップロードし、そのデータを機器メーカーやメンテナンス事業者なども利活用することで、異常検知や予兆保全、CBM(状態基準保全)といった高度な保全や次世代メンテナンスを実現し、ダウンタイムの最小化を図る取り組みが進んでいる。実際に、既にCBMで100件(PoC:Proof of Conceptを含む)ほどの実績を持つITベンダーもあり、ここ1年で倍増した模様である。
また、例えばコンプレッサーの利用コストの8割前後が電気代(残りがイニシャルコスト、メンテナンスコスト、部品など)と言われ、コンプレッサーでは省電力化(電気代削減)が大きな訴求力を持つことは明白で、この部分でIoTモニタリングによる電力使用量の「次世代見える化」ニーズは大きい。
さらに近年、大型設備(ボイラーやコンプレッサー、ポンプなど)では、初めから通信機能(IoT機能)が組み込まれているケースが増えている。そのため、工場や生産ラインを新設するユーザー企業や省人化・省力化志向の強いユーザー企業、人手不足が深刻なユーザー企業などでは、生産現場でのIoT活用が急速に注目される状況となってきた。
3.将来展望
コロナ禍で2020年度中は保留になったプロジェクトの復活や、工場でも遠隔/リモート、省人化、接触レスなどのシステム構築志向もあり、2021年度の国内の工場デジタル化市場規模を、ユーザー企業の発注金額ベースで1兆6,760億円(前年度比6.3%増)になると予測する。
2025年度に向けては、一部業種での設備投資自体の停滞は見込まれるものの、輸送用機械器具製造業や電子部品・デバイス・電子回路製造業、生産用機械器具製造業などでの旺盛な工場向けシステム投資意欲を背景に、堅調に推移する見通しである。加えて、その他業種の既存工場でも老朽化した生産設備・機器の更新需要、省人化・自動化対応ニーズの高まりがあり、工場デジタル化市場は堅調に推移すると予測する。
プレスリリースサイト(yano):https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2725