凸版印刷と順天堂大学、共同研究講座「救急AI色画像情報標準化講座」を開設

 凸版印刷(株)と順天堂大学(画像)は、医学・医療に用いる、画像や映像などのデータの記録/伝送/共有手法を標準化し、医療・医学領域の情報資源として広く活用できる基盤の整備・構築を目指して、2021年6月1日(火)に共同研究講座「救急AI色画像情報標準化講座」を順天堂大学医学部附属浦安病院に開設する。
 なお、本共同講座における研究は、(一社)日本救急医学会の「救急AI推薦研究」(※1)に承認された、研究課題名「AI活用に向けた、画像・映像デジタルデータ品質について」の一部となっている。

▮開設の背景  昨今、少子高齢化により患者増と医師不足が指摘され、医療の効率化が求められている。また、新型コロナウイルス感染拡大から、個人のスマートフォンなどを用いたオンライン診療が始まっている。 こうした中で対面での診療と比較し、正しい情報伝達の難しさや、デジタルデバイス間の画質不足による問題点の改善が求められている。 医学・医療において患者の状態等を正確に把握するためには、画像・映像などのデジタル視覚データは、美しさや綺麗さが優れていることよりも、色や質感表現などの品質管理が重要である。さらに、判断の間違い、診断の不正確さの要因にならないような技術や、画像・映像データの真正性 (※2)を担保する仕組みやガイドラインの確立が不可欠になっている。

 他方で、5G や光通信などのデータ容量が課題とならない高速大量通信の普及により、4Kや8K等の高精細映像による情報共有や、デジタル視覚データそのものをAI 試料とする活用が行われる。こうした取り組みは、医学・医療にとどまらず、Society5.0 の実現に向けて様々な分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる社会実装が求められている。

 順天堂大学大学院医学研究科救急・災害医学の田中 裕 教授らは、生体センシング機能を備えた傷病者端末の設計開発研究(※3)において、電子トリアージシステムの開発を行ってきた。この研究では、傷病者に装着した脈拍センサや血流センサなどからのセンシング情報を収集すると共に、臨床現場に敷設した無線ネットワークとの間にアドホックネットワークを構築することで、傷病者の位置や病状変化をリアルタイムで監視・収集・整理し、その情報を図的に提示すると共に、一定のルールに基づき緊急度が高い傷病者を提示できるような救命救急医療支援システムの構築を行った。本研究から視覚的情報の正確な把握が非常に重要であることが明らかとなった。

 この度このような背景から、凸版印刷が持つ印刷色を正確に再現可能とするカラーマネジメントシステム(CMS)技術と、順天堂大学浦安病院/救命救急センターの多くの救急医療情報を活用し、正しい画像・映像情報を伝えるプロトコルの標準化の基盤構築を目指し共同研究講座を開設する。

 本共同研究講座では、救急医療において提供される医療画像(色)情報の正確性を評価・分析し、提供される医療画像情報の「標準化」を行い、医療画像情報提供のプラットフォーム構築と、色情報を数値化し、標準化された画像情報を利用した救急医療現場への臨床的応用を目指すと同時に、本プラットフォームを活用した安全・安心な医療サービス提供に向けて、臨床応用を進めていくという。

※1 一般社団法人日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会 救急AI推薦研究

※2 真正性 【英】authenticity
 正当な権限において作成された記録に対し、虚偽入力、書き換え、消去及び混同が防止されており、かつ第三者から見て作成の責任の所在が明確であることである。なお、混同とは、患者を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性を誤ったりすることをいう。
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5.1版(令和3年1月)」より
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275.html

※3 平成19年度独立行政法人 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)、
 先進的統合センシング技術領域、代表東野輝夫大阪大学教授研究課題「災害時救命救急支援を目指した人間情報センシングシステム」災害時救急救命支援に向けた電子トリアージシステムの設計開発

ニュースリリースサイト(TOPPAN): https://www.toppan.co.jp/news/2021/05/nsrelease210531_1.html