長瀬産業、IBMの味覚センサ技術“HyperTaste”を化学品分析サービスに応用

長瀬産業(株)は、米国IBM社との間で、IBMが開発したAIを応用した味覚センサ技術“HyperTaste(ハイパーテイスト)”を、主に液体向けの化学品分析サービスとして実用化する共同研究を進めている。2023年度中をめどに、グループ会社が取り扱う化学品や食品素材の取引に活用し、グループのサプライチェーンの安心・安全、スピード、安定供給を支えることを目指す。

共同開発では、IBMが主催する異業種による基礎研究コンソーシアムIBM Research Frontiers Instituteが研究テーマの一つとして掲げる“HyperTaste”に、化学品や食品素材の取り扱いに強みを持つNAGASEグループの知見を掛け合わせ、化学品分析サービス として実用化することを目指す。 HyperTaste”は味覚成分の組み合わせを学習することで味覚をデータ化する学習型AIセンサで、電気化学ポテンシャル(液体中のイオン分布によるセンシング電極の電圧)の変化から液体中のイオン等の成分を分析する 機能を化学品の精度測定に応用するという。

一般的に、化学品取引においてはメーカー側にて評価された「分析証明書(COA)」により品質が保証されているが、分析データの転記ミスや製品ラベルの貼付ミスなどにより、分析証明書と製品の現物とが乖離しており、輸出入者や顧客側で確認が必要となるケースもある。現状、このようなケースにおいては分析に専門機器が必要であり、且つ分析に一定の時間(約1日~数日程度)がかかるため、機器の導入コストや設置場所、またリアルタイムの分析が難しいことが課題とのこと。

長瀬産業とIBMが共同開発するセンサはポータブルな手のひらサイズの装置をスマートフォンに連携可能にしたもので、現場でほぼリアルタイムでの測定が可能。2020年1月から始まった第1期の共同研究で6つの元素をppmレベル(0.0001%)まで測定する技術は実験フェーズで確立しており(※1)、2022年1月までの第2期においてさらに多様な化学品を対象に現場での検証を重ね、数種類の元素をppbレベル(0.0000001%)まで測定できる精度に向上する。23年度をめどに、まずはグループ会社で実用化し将来的にグループ外にサービスとして提供することを目指すとしている。

(※1)日本化学会秋季事業 第10回CSJ化学フェスタ2020にて発表(“HyperTaste: An AI assisted e-tongue for fast and portable fingerprinting of complex liquids”, Patrick Ruch他)

ニュースリリース(nagase):https://www.nagase.co.jp/assetfiles/news/20210518.pdf