4.2 トンネルの変位をモニタリングした事例
トンネルの覆工コンクリートの目地部では、温度による伸縮や外力によって応力集中が起こり、ひび割れやはく落が発生する可能性があるため、目地の段差および開きを点検・監視することが重要である。ここでは、新設した高速道路のトンネル(トンネル長:約5km)に、FBG変位センサを用いたモニタリングシステムを設置し、目地の段差および開きを監視した事例を紹介する。
写真4に示すようにFBG変位センサを目地部の段差方向と開き方向の2軸を計測するように2台設置し、計測器を下層避難通路に取り付けたキャビネット内に設置した(写真5)。計測器とセンサ間のケーブル長は最大で300m程度となっている。長距離伝送が要求されていること、トンネル開通後はセンサの交換作業が困難であること、長期間連続動作が要求されること、から光ファイバセンサシステムが採用となったが、現在に至るまで約4年間にわたり安定して動作し続けている。
加速度センサ | |
---|---|
外観 | |
測定レンジ | 0 ~ 50 mm |
精度 | ±0.25mm |
動作温度範囲 | -20~60℃ |
防水性能 | IP67 |
質量 | 約1kg |
4.3 橋脚の固有振動数をモニタリングした事例
洗掘によって低下する橋脚の地盤支持力を把握するために、橋脚の固有振動数を長期間(約3年8か月)モニタリングした事例を紹介する。洗掘とは、橋脚基礎周辺の地盤が河川の流水により洗い流され、消失する現象のことで、洗掘が進行すると、橋脚の沈下・傾斜・移動といった変状が現れ、倒壊につながることも多く発生している。洗掘は、台風等の大雨による河川の増水で急激に進行する場合と、日々の河川の流水で徐々に進行する場合とがあるが、水中のため目視による状態把握が困難であり、センサによるモニタリングが有効となる。
写真6はFBG加速度センサを設置した橋梁の全景である。センサは、河川内にあるP2橋脚に設置した。写真7はセンサの設置状況である。表3にセンサの仕様を示す。
図13は、橋脚の固有振動数の推移を示すものである。固有振動数は徐々に低下しているが、大きな変動は生じていないことが確認できる。
加速度センサ | |
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外観 | |
測定レンジ | ±1000gal |
周波数レンジ | ~50Hz |
精度 | ±1dB |
動作温度範囲 | -20℃~50℃ |
防水性能 | IP64相当 |
質量 | 約1.5kg |
5.船体構造応答モニタリングへの適用
5.1 船体構造応答モニタリングとは
Hull Monitoring(ハルモニタリング)とも呼ばれ、実海域で航行中の船体構造に生じるひずみや加速度から、波浪などの外力に対する船体構造の応答や安全性を推定するもので、a) 航行中の船舶の船速や針路決定の参考にする、b) 船体の構造設計にフィードバックする、などの用途が見込まれており、主要各国の船級ガイドラインの整備も進んでいる。
5.2 FBGセンサの適用性
船体の大きさも用途によって様々だと思うが、大規模海上輸送時代の昨今、メガコンテナ船ともなると全長が400mに達するものもあるという。図14は、コンテナ船にモニタリングシステムを設置したイメージ図であり、船首付近にFBG加速度センサを、1/4L、1/2L、3/4Lの位置の梁(構造部材)にひずみセンサを、FBGセンサの読み取り装置とモニタリング結果を表示するPCを船体後方に位置する船橋(ブリッジ)に設置している。船首から船橋までの距離が数百メートルと長いこと、定点のひずみや加速度を計測すること、信号伝送路がノイズ環境下に敷設される場合もあること等を考慮すると、ポイント型の光ファイバセンサであるFBGセンサの特徴を活かすことができると考えている。
5.3 FBGひずみセンサと加速度センサ
ここに、当社が船体構造応答モニタリング用途に向けて製作したFBGセンサを紹介する。
項目 | 仕様 |
---|---|
ゲージ長 | 30mm |
ひずみレンジ | ±600μstrain |
±400μstrain | |
±200μstrain |
写真8は、製作したFBGひずみセンサの外観である。ゲージ長は、30mmでひずみレンジは±200、±400、±600マイクロストレインから選択する。計測対象となる鋼材表面に溶接によって取り付けを行う。
項目 | 仕様 |
---|---|
加速度レンジ | ±1G |
周波数範囲 | 50 Hz |
利得平坦性 | ±3dB |
写真9は、製作したFBG加速度センサの外観である。加速度レンジは±1G、周波数レンジは上限50Hzである。
6.まとめ
ポイント型光ファイバセンサの代表格と言えるFBGセンサについて、2つの分野における事例を中心に紹介した。技術的な詳細については、他にも多くの解説がされているので省略した。FBGセンサが注目され始めてから既に長い年月が経過したが、これから益々広く普及することを期待したい。
【著者紹介】
生井 貴宏(いくい たかひろ)
長野計器株式会社 開発センター FBG開発課
■略歴
2004年3月 芝浦工業大学大学院修士課程 修了
2004年4月 長野計器株式会社 入社