3. 流量計の選定方法と製品コンセプト
流量計として必要な主な要件は以下のような性能、仕様である。
・測定精度、および信頼性
・広い測定レンジ(最小流量から最大流量までの測定範囲)
・多くの流体の種類(液体、気体、蒸気ほか)が測定できる
・各種条件(温度、圧力、粘度ほか)の流体が測定できる
・測定によって生ずる流体のエネルギー損失が小さい
・応答性が良い、など
2項で紹介したように、多くの種類の流量計が製品化されているが、選定方法について表5および表6にまとめた。1 流量測定の目的、要件、2 流体の性質、状態、3 流量計の設置条件の各項目を検討して仕様条件を確認した上で、流量計メーカーの仕様書を比較することにより製品を選定する。
また、表7に流量計の種類と適用可能な流体をまとめた。
図1に液体用超音波流量計の製品コンセプトの事例を示す。高精度測定用のスプール形(配管一体形)、配管の外側にセンサを取付て測定するクランプオン形、および現場に持込み可能なポータブル形の3種類が製品化されている。
4. 最近の流量計の技術動向
表8に最近の流量計の技術動向をまとめた。1台の流量計で、複数の状態量を測定、出力する機能を持つマルチバリアブル形。プロセスの異常を診断、アラーム信号を出力する診断機能。計装コストを削減する2線伝送式などが主な動向といえる。
IoT技術の進化にともない、工業用流量センサも一層の技術開発が期待されている。
1. マルチバリアブル形: 1台の流量計で、複数の状態量を測定、出力する機能 | |
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流量計 | 測定、出力する状態量の例 |
コリオリ式 | 質量流量、体積流量、密度、温度、など |
差圧式伝送器 | 質量流量、体積流量、差圧、静圧、密度、温度、など |
渦式 | 飽和蒸気の質量流量、温度、など |
2. 診断機能: プロセスの異常を診断、アラーム出力する機能 | |
流量計 | 診断する内容例 |
コリオリ式 | 気泡、付着、など |
差圧式伝送器 | 導圧管の詰まり、など |
渦式 | 電極付着、など |
3. 2線式: 計装コストの削減 | |
コリオリ式、電磁式 |
参考文献
1) 大木眞一「流量計測入門講座」DVD教材 日本工業出版 (2018)
2) 山崎弘郎 センサ工学の基礎(第2版) オーム社 (2014)
3) 松山裕 実用 流量測定 (財)省エネルギーセンター (1995)
4) 大木眞一「センサ基礎講座 流量・流速センサ」計測技術 日本工業出版 (2020.7)
【著者紹介】
大木 眞一(おおき しんいち)
・日本工業大学 特別研究員
・日本工業出版 「計測技術」企画委員
・一般社団法人 次世代センサ協議会 技術委員
■略歴
横河電機(株)にて、流量計開発設計・製品企画・流量設備設計などの業務に携わる。
■主な著書
・「渦流量計の創造」 日本工業出版 大木他
・「流量計測入門」 日本工業出版 DVD教材
・「蒸気流量計測」 日本工業出版 DVD教材