概要
ヒトを含む脊椎動物にとって、眼から得られる視覚の情報は外界の変化をとらえる上で重要であり、そのために眼にロドプシンという光センサーを持つ。藤藪千尋 京都大学理学研究科博士課程学生、山下高廣 同講師、行者蕗 甲南大学研究員、日下部岳広 同教授、佐藤恵太 岡山大学助教、大内淑代 同教授、川野絵美 奈良女子大学准教授 の共同研究グループは、魚類がロドプシンを眼だけでなく脳での「みる」仕組みにも使い分けていることに着目し、光センサーのユニークな進化の道筋を明らかにした。
ヒトを含む多くの脊椎動物のロドプシン遺伝子は、イントロンに分割される遺伝子構造を持つ。しかし、多くの魚類は例外的にイントロンがないロドプシン遺伝子を眼で利用し、イントロンのあるロドプシン遺伝子を眼ではなく脳の松果体で利用する。本研究では、魚類の中でも比較的古くに多様化し、任天堂のゲーム「どうぶつの森」にも登場する「古代魚」を中心に解析を行い、約4億年前に起こった珍しい遺伝子重複を皮切りにして、新たに誕生させたロドプシン遺伝子を眼で使う一方、もともと眼で使っていたロドプシン遺伝子を脳で使うようになり、さらにはもともと脳で使っていた別の光センサーピノプシンが代替される形で姿を消した、という魚類における光センサーの玉突き的置換プロセスを明らかにした。
本成果は、2024年10月8日に国際学術誌「Cellular and Molecular Life Sciences」にオンライン掲載された。
プレスリリースサイト:https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1286.html