アクポニ、汽水アクアポニックスを使ったバナメイエビの養殖試験

(株)アクポニは、同社が運営する神奈川県藤沢市のアクアポニックス農園にて、バナメイエビの養殖試験を開始した。

 本実証実験では、アクアポニックスに塩水を使用し、国内ニーズの高いバナメイエビを養殖する。また、その水を野菜ベッドに循環させ、耐塩性の高いスイスチャードや付加価値の高いハーブ等の植物を栽培する。実験期間中、エビと植物に必要なデータをセンサで測定することで、両者の共生効果について調査を行い、汽水アクアポニックスの実用化を目指す。

 水産庁の調べによると、エビは日本の水産物の消費品目の上位4位であり国内での需要が高いにも関わらず、そのほとんどを輸入に依存している(参考:水産庁 令和4年度 水産白書「我が国の水産物の需給・消費をめぐる動き」)。

 現在、日本において実用化されているアクアポニックスは淡水養殖だが、汽水アクアポニックスが実用化されれば、環境負荷の低い方法でエビを含む国産水産物の大規模な陸上養殖が可能となり、その活用の幅が大きく広がる。近年、エビ養殖に関する問い合わせが増加しており、アクアポニックスの可能性を拡大するために今回の試験を行うことを決定した。

■実証実験詳細
場所:湘南アクポニ農場(神奈川県藤沢市)
期間:2024年9月末まで(予定)

実証システムについて:
・NFT(薄膜型水耕法)
・水量 2,500L
・バナメイエビ600尾、野菜300株が育成可能
※野菜はスイスチャードおよびローズマリー等複数のハーブ類を予定

■本実証実験のポイント
1. IoTでエビと野菜のデータを収集/汽水アクアポニックスに最適な植物の選定
 本実証実験ではアクアポニックスを一元管理する独自のサービス「アクポニ栽培アプリ」を利用し、IoTを活用してバナメイエビと野菜のデータを収集する。
 これにより、農場環境や成育状況が把握できるようになるため、バナメイエビ養殖の環境最適化に加えて、汽水アクアポニックスに最適な植物の選定を行うことが可能になる。収集するデータは以下のような項目があげられる。
□測定項目
・給餌量
・バナメイエビ、各野菜の収穫量
・気温、湿度、水温、塩濃度、DO(溶存酸素量)、pH、EC(電気伝導度)、空気中二酸化炭素濃度 など

2. エビの国内生産の可能性を探り、環境負荷低減とコスト削減の両立を目指す
 アクアポニックスは水産養殖と水耕栽培を組み合わせることで効率的な資源循環を行っており、魚やエビのエサ由来の窒素を野菜の肥料として使用している。
 一般的に、陸上養殖のみを行う場合、エサに含まれる窒素のうち88%は定期的な飼育水の入れ替えで廃棄される。過去に同社が行った実証実験において、アクアポニックスでは通常廃棄される窒素を野菜の肥料として約99%有効活用できることが分かった。さらに、使用する水の量は陸上養殖と比較し約3分の1になるため、水使用量を約66%削減できる。
 現状、日本で消費されるエビは東南アジアをはじめとした海外からの冷凍品輸入がほとんどである。しかし、アクアポニックスによるバナメイエビ養殖が可能であることが実証され、それに伴いエビの国内生産が増えれば、輸送により生じる二酸化炭素排出量の削減も期待できる。また、同時に事業者の輸送コスト等の削減にもつながるため、環境負荷軽減とコスト削減を両立したビジネスの実現に貢献できる。

3. 国産エビと野菜を同時に生産し、食料問題リスク軽減とビジネスモデル拡大へ
 近年、世界における食料需給の変化と生産の不安定化により、日本においても食料供給が不足するリスクが増大しているといわれている。エビの国内生産の可能性が高まれば、消費者はより新鮮で安心感のある国産エビを身近で購入できるようになる。また、同時に野菜の生産を行うことで、食料自給率の向上に加え、農業従事者の高齢化や人手不足といった課題の解決にも一部貢献することができる。
 さらに、排水をせずに水を循環させるアクアポニックスの特性を生かして、山間地域など沿岸地域以外でもエビ養殖の実施が可能になる。汽水アクアポニックスが実現すれば、日本人に人気の高いエビや海水魚など、生産物の活用イメージがより明確化される。同社ではエビ養殖とあわせて排熱や余剰電力を活用する循環型のビジネスモデルを提案し、日本全国にアクアポニックスを拡大していくとのこと。
想定されるビジネスモデル例
・工場の排熱や地熱・温泉熱を利用したエビ養殖
・再エネや余剰電力を利用したエビ養殖
・バーベキュー場等の娯楽施設においてエビの釣り堀を併設
・山間部で育てたエビとハーブで6次化商品を開発 など

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000018039.html