岡山大、植物の病原菌を感知するセンサの進化の歴史を解明

<発表のポイント>
 ・イネの病害虫に対する免疫受容体(センサ)遺伝子の進化の歴史を調べた。
 ・進化の過程で遺伝子重複により二つに増加した免疫誘導型免疫受容体のうちの一つがセンサ型へと分化し、新たにいもち病菌を認識したことを発見した。
 ・免疫誘導型受容体とセンサ型受容体は、協調してペアNLRタンパク質として一つの免疫受容体として働くことを見出した。

◆概 要
 植物は、病害虫から身を守るために病害虫を見つけるセンサの役割を担うNLR型免疫受容体を持っている。植物は、このNLR型免疫受容体の遺伝子を数多く持っており、これが植物の強力な防御システムの秘密だと考えられている。

 岡山大学の高等先鋭研究院を構成するひとつである資源植物科学研究所の河野洋治教授は、中国科学院CAS Center for Excellence in Molecular Plant Scienceなどの研究機関と協力して、NLR型免疫受容体遺伝子の進化の歴史を解析した。

 その結果、イネの重大な病気であるいもち病に対して抵抗力を高める仕組みを明らかにした。

 河野教授らは、進化の過程で一つのNLR型免疫受容体遺伝子が遺伝子重複により二つに増え、それぞれが異なる役割を担うようになったことを発見した。一つは病原体を見つける「センサ」の役割、もう一つは実際に免疫反応を引き起こす「免疫誘導」の役割である。これら二つの遺伝子が協力して働くことで、より効果的に病気から植物を守っていることがわかったという。

 この研究成果は、2024年5月30日に科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

 今後、この研究をさらに進めることで、一つの免疫受容体で多くの種類のいもち病菌を認識できる「人工免疫受容体」を作り出せる可能性がある。これは、イネだけでなく、最近いもち病が広がりつつあるコムギにも応用できると期待されている。つまり、世界の主要な穀物であるイネとコムギの両方で、いもち病への抵抗力を高められる可能性がある。この研究は、私たちの食糧生産を脅かす病気から作物を守る新しい方法の開発につながる重要な一歩といえるだろう。

 本情報は、2024年7月30日に開催された岡山大学定例記者会見で公開された。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002399.000072793.html