日本初、グリーンエネルギーとIoTを活用したエビ養殖に挑戦

 裕幸計装(株)、九州大学(※1)、工学院大学 、(株)インターネットイニシアティブ〔以下、IIJ〕は、ベトナムにおける環境汚染の原因のひとつであるエビ養殖汚泥を活用し、温室効果ガス削減や電力の安定供給などを目指す「省エネ型エビ養殖統合システム」を開発し、その実証運転を開始する。本実証は、裕幸計装が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」 (※2)の助成を受け、九州大学、工学院大学、IIJが委託先として参画し、実施するものである。

 本実証は、(株)三菱総合研究所(※3)をはじめ、日越の研究機関・民間企業より技術支援を受け実施されるものであり、両国間の産学連携を通じ、日本の先進技術がベトナムの主要産業であるエビ養殖業に大きく貢献することが期待されているという。

▮省エネ型エビ養殖統合システム導入により、ベトナムのエビ養殖の効率向上を実現
 ベトナムの主要産業であるエビ養殖は、電力の供給不足や、養殖汚泥による周辺土壌・地下水の汚染、温室効果ガスの発生、養殖池での病気蔓延など複合的な課題を抱えており、エビの大量死や周辺地域の環境汚染を低減する低環境負荷型システムへの転換が急がれている。

 これらの課題を解決すべく、「循環型エネルギー創出ユニット」と「エビ増産ユニット」から成る「省エネ型エビ養殖統合システム」を開発した。

 「循環型エネルギー創出ユニット」では、養殖汚泥とレモングラスの加工廃棄物を混合・発酵させ、生成されたバイオガスを、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に燃料として供給することで発電を行う。発電した電気は、曝気装置など養殖設備に使用されるため、循環型の創エネ技術であると言える。当該システムは、カーボンニュートラル2050(※4)を目指すとしている日越両政府の取り組みに貢献するもの。

 IoTによる「エビ増産ユニット」では、IoTデバイスを使い、溶存酸素濃度、pHなどをセンサで計測するほか、IoTプラットフォームを設計、養殖池の水質データに加え、バイオガス発酵槽とSOFCの状態監視などを含むデータの保存、可視化を行い、データの閾値監視やアラート通知機能などのシステムを構築することで、養殖環境とエビの育成状況との相関性を分析する。エビにとって最適な養殖環境を見出し、養殖効率向上を目指す。

 実証期間は2024年7月~2025年6月まで、ベトナム南部ティエンザン省にて実施予定で単位養殖池(1,000m3)あたり年間約40t-CO2の削減、およびエビ生残率85%(年間平均生残率57%)という成果を見込んでいるという。

(※1)九州大学が先行研究として、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)で実施された「高効率燃料電池と再生バイオガスを融合させた地域内エネルギー循環システムの構築」を実施した。
(※2)この助成事業は、3E+S(安定供給、経済性、環境適合、安全性)の実現に資する日本の先進的技術を海外で実証し、技術の普及に結び付けること、さらに、制度的に先行している海外のエネルギー市場での実証を通じて、日本への成果の還元を目指すことを目的としている。裕幸計装は、NEDOの「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」の一環として「地域のバイオマスを利用した省エネ型エビ養殖システム高度化実証研究」を提案し、2021年9月に助成事業として採択された。
(※3)本事業の外注先として、IoTデータ分析を担っている。
(※4)日越両政府は2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すと表明した。

プレスリリースサイト(IIJ):https://www.iij.ad.jp/news/pressrelease/2024/0613.html